勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。   作:小指の爪手入れ師

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私は言いようのない達成感を覚えた。
やっちまった感とやってやったぜ感が合わさって最強に見えるぜ。

正直深夜に書くと思考力が落ちて丁度いいと気付いてしまった。こういう物は何も考えずに書いた方が良いよね。本能的に出来るものがきっと良い作品だよ(暴論)

ですからお願いします。ここはどうなってこうなるって言う理由は後付けで許してくだしあ。


不遇な少女達を保護せよ!

ㅤ前回のお話。ゴールデン本当(マジ)ゴールデン、以上。

ㅤ他のエピソードなんて何一つとして記憶しちゃいないね。と言うか思い出して良い記憶じゃないと本能で分かる。

 

ㅤジメジメとした空気も彼の様なゴールデンなゴールデンと居れば苦じゃない。寧ろ楽しい。流石は世のちびっ子たちの登竜門である金太郎だ。だが私は金太郎を読んだことはない。

 

「ねぇねぇゴールデン!」

 

「ん、なんだよドラゴンガール」

 

ㅤ何そのアメコミヒーローみたいな名前…

 

「この服本当に借りていいの?」

 

「なんだそんな事か。男が貸してやるって差し出したもんを押し返されちゃカッコつかねぇだろうが。要らねぇならその限りじゃねぇがよ」

 

ㅤなんだよこのゴールデン、イケメンかよ…

 

ㅤ大好きだと抱き着けば何も言わずに頭を撫でてくる。これはもう癒し枠決定ですね。頼れる兄貴分としては最高にゴールデンだ。

 

「ああ、うん。これが見た目相応の反応だよなぁ」

 

ㅤ誰のことを言ってるのか直ぐに分かるな。

 

「あんたはん、女の頭を不用意に撫でるんはアカンよ? ウチが鬼やったら食べてしまいそやわ…」

 

「YA・ME・RO!!」

 

ㅤ揶揄いがいのあるゴールデンだ。嫌いじゃない。

 

「エ、エリザがあんなに楽しそうに…」

 

「いや、反応的に仲良しなクラスメイトな気がしますが」

 

「野性味溢れた方が好みなのでしょうか?」

 

「聞いちゃいねぇ!」

 

ㅤ次の夜這いが一気に怖くなってきたわ。

 

 

ㅤ閑話休題

 

 

ㅤそんなこんなで私は拠点探しの旅にゴールデン一行を連れて行くことになった。

 

ㅤ広いのでいい感じの場所を虱潰しで行く他無さそうだ。と言っても所によっては生存者も居るため生存確認が優先になるだろうが。

 

ㅤしばらく歩いて来たが、ふと既視感を覚える古本屋まで来ていた。正確な場所が分からないのでまだなんとも言えないが。取り敢えずみんなに了解を取って入ってみる。勿論こっそり。

 

ㅤ紙の匂いが鼻を刺激する。いや埃臭いと言った方が適当かもしれない。なかなかお目に掛かれない蔵書量に目を瞬かせれば、ウチのはどうだろうかと思い返してみる。我が座はエリちゃんの心象風景と言うか、とにかくチェイテを基点に広がる世界だったのでそれらしい場所が存在する。数だけならばこちらが多いかもしれない。魔改造チェイテに不可能はない。誇らしいネ。

 

ㅤ改めて見渡せば皮肉屋の童話作家が黙々と本を読み耽っていた。時々苦々しい表情になったり、鼻を鳴らしては丁寧に次のページを捲って行く様子を見てこちらの存在には気付いていないように見える。

 

ㅤ既に確信出来ているが彼に確認をしてみよう。私は少年に問い掛ける。─が、返事は無い。

ㅤと言うか一瞥もくれない。

 

ㅤ少し大きめ、司書さんに目を付けられるくらいの声で問い掛けてみる。彼の読んでいた本のページがパラパラと飛ばされる。そこでやっとこさ少年はこちらを見た。

 

「やっとこっち見─」

 

「─本も黙って読めんのかヴァカめ」

 

ㅤ若干眉間に皺を寄せ、少年ハンス・クリスチャン・アンデルセンは皮肉十割の声色で返して来た。

 

「アレだけ声を張り上げておいて聞こえていないとでも思ったか? 聞こえているに決まっているだろう」

 

「じゃあ返事くらい…」

 

「貴様本を読まんのか? キリがいい所まで読みたくなるのが読者として習性だろう」

 

「読むわよ本くらい。でもキリがいい所までって言っておいて最後まで読んじゃうのも読者としての習性よね!」

 

ㅤドヤ顔で「分かっているじゃないか」と言ってくるアンデルセンにイラつきながらも本題を聞くべくもう何度目かの問いを投げ掛ける。

 

「隣に魔本とやらは居るぞ。今さっき助けを呼んだ訳だが…察するにジキル氏からの救援では無さそうだな。彼の言ったサーヴァントの特徴に合致せず、何より速すぎるからな」

 

ㅤ童話作家なのに探偵の真似事とは…

 

ㅤ兎にも角にも彼の証言からしてここに誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)が居ることは分かった。

ㅤふむ、よく考えてみたら彼女は倒される存在にしては悪を成していない気がする。マスターになれない者を眠らせただけだ。それを悪と断ずるには些か早計が過ぎるだろう。

 

「助かったわミスター。その子に用があるから失礼するわね?」

 

「言っておくが攻撃は奴に通らんぞ?」

 

「誰が戦うって言ったの? 私は根っからの平和主義者よ!」

 

ㅤまぁキレたら暴走列車はおろか宇宙戦艦とまで言われた私ではあるが、元日本人としては平和主義者を言い張る私である。

 

「アポ取れたわよ」

 

ㅤ一応警戒されない様に外に待たせたゴールデンたちを呼ぶ。戦う気はないけれど念には念を、だ。

 

「なんか外までソニックブームが来てたんだが…」

 

「ですからエリザは既に私の料理に─」

 

「─胃袋掴めてもハートは掴めていないんじゃありませんか? 一歩は踏み出せている様ですが、二歩目で躓いているようじゃ片思いと変わりありませんよ? 何かと世話をしてくれる幼馴染程度で甘んじてんじゃねぇですよ」

 

ㅤゴールデンのサングラスが「お前が行ってからずっとこんな感じだ」と言っているのが分かる。すまないゴールデン、本当にすまない。

 

ㅤ取り敢えずバチバチ始めた二人には鉄拳を落としておいた。二人ともこれはDVでは無いのだよ。

 

ㅤ魔本の元まで向かう中途にアンデルセンに眉をひそめられ、鬱陶しそうな視線を向けられもしたがガン無視決めて少女確保に掛かることにした。

 

ㅤ閂代わりになっていたモップを取り払いいざ入室。

 

ㅤ中にはさ迷うように、何処と無く寂しそうな本がふよふよと浮いていた。大きさは私が丁度抱え込める程だろうか、思ったより大きい。

 

ㅤ第一印象は大事。と言う事でアイドルスマイルで話し掛けてみる。

 

「ハイ、アリス。貴方がみんなを困らせているって聞いて来たんだけど…お茶でもしながらお話しない?」

 

ㅤ自画自賛になるが完璧である。みんなを困らせていると聞いた云々は嘘であるが、ゴールデンもタマモも魔本も私が嘘を付いている事実を知らないので一切問題ない。清姫は言わずもがなである。

ㅤそれと思わずアリスと言ったが、これもまた無駄な争いを避けるためだ。それにナーサリー・ライムってアンデルセンが付けたわけだし…

 

ㅤ魔本は眩い光に包まれた。B連打はない。

 

ㅤ光の中から現れるのは勿論想像通りの少女であるが、予想外なのはその表情である。─少女は涙目であった。

 

ㅤ私は心の中で血を吹いた。よく分からないが小さい娘を泣かせてしまった。自分の何がいけなかったのか、本当に分からないのだが、意味が分からないが故にわたわたしているわけだ。

 

「アナタはあたし(アリス)と遊んでくれるの?」

 

ㅤそれが第一声だ。

ㅤこれ以上泣かれるのも嫌だと思い、勢い良く応える。勿論アイドルスマイル付きだ。贅沢なのだわ。

 

「喜んで!」

 

ㅤ彼女の双眸から涙の雫が零れた。

 

ㅤ─何故だァ!!

 

 

◇◆◇

 

 

ㅤソーサーに乗せられたカップからは馨しい茶葉の香りと共に湯気が昇っている。中には透き通った紅の液体が湛えられており、色は濁っている様で鮮やかと言う矛盾を抱えているものの、味を舌に覚えさせる事があるならば間違い無く美味の二文字で完結されるだろう。

 

ㅤ尚ここまで紅茶を持ち上げてみたが、私はブレる事ない緑茶派である。だが、身体が違うので紅茶でも一向に構わない。そんな事よりマカロン食べましょう。

 

「すごいのだわすごいのだわ。エリザベートったら本当にすごいのだわ! あっと言う間にティーパーティーが開けるなんて、きっと帽子屋もびっくりよ」

 

「私は帽子屋よりもチェシャ猫の方が好きなんだけれどね。ほら口元にクリーム付いてるからじっとしていて」

 

ㅤ諸君、これが癒しという者だ。隣で恋愛とは何かと言う血腥い問答が繰り広げられようが、圧倒的な癒し力を持ってすれば造作も無く中和する。最早侵食していると言っても過言ではない。

 

「でよォ、いつまでここに居るんだ?」

 

ㅤまぁ至極真っ当な問いだろう。私たちはアリスを宥めてお茶会を開き、そのまま古本屋に留まって居るのだから。

ㅤ正直落ち着かせたアリスが不意に店主に掛けた催眠を解くんじゃ無いかと心配であった。結果として助けたのに不法侵入者として通報されたんじゃ堪ったものでは無い。

 

「そろそろ出て行きたいところね…」

 

ㅤ思いもしない仲間が出来た以上ここでのイベントは消化した。あとは腰をゆっくり落ち着かせる場所を探さなければならない。今回はメインクエストを進めがてらサブクエストを終えたに過ぎないのだから。

 

ㅤ私はアリスにお茶会中断を打診した。可愛らしい返事で了承された為、道具諸々を回収、撤収準備はものの数秒もかからず終えた。

 

ㅤ扉を開け、玄関へと真っ直ぐ向かう最中、アンデルセンは口を開けっ放しで見てきた。ドヤ顔をしながら出てやった。予想外の展開だっただろうちっちゃな童話作家。

 

「ですからあのアリスと言う少女はきっとエリザと私の間で出来た─」

 

「話が飛躍し過ぎて最早ギャラクシーですよ。そんなお伽噺は刑部姫さんに描いてもらえばいいじゃありません? 現実見ましょうよ。げ・ん・じ・つ!」

 

ㅤ私のドヤ顔が一瞬で顰めっ面になった瞬間である。無言で頭を撫でてくるゴールデンや、そのゴールデンを真似るように撫でてくるアリスの優しさが心に染み渡る。

 

 

◇◆◇

 

 

ㅤ道中のホムンクルスやヘルタースケルターを薙ぎ払いながら進んでいくと、ふと裏路地が目に入った。特に意識しなければ極々普通の裏路地だ。

 

ㅤだが違う。普通ではない。路地の元々の暗さと霧の濃さで近付かなければ分からない程に抑えられた違和感があった。見れば見る程に強まる違和感、背筋に薄ら寒いものを感じた。

 

ㅤ後ろの二人(バカ共)でさえ黙るほどの強烈な違和感がやってきた辺りだろう。私は咄嗟に回避行動を取る。結果として私の腹に薄皮が切れる程度の過擦り傷が出来た。

 

「あれ、上手くいったと思ったのに」

 

ㅤ幼い声が響いた。姿は未だに見えないが既に正体は分かった。路地の違和感の正体もこの者の仕業だろう。魔霧に紛れた不思議な霧や丁寧に解体されたホムンクルスに溶けたヘルタースケルターもまた彼女を証明する鍵だった。

 

ㅤ──夜霧の幻影殺人鬼(ジャック・ザ・リッパー)

 

ㅤそれが彼女の、いや彼女たちの正体である。なお、私の言い回しが可笑しいことにツッコミを入れることは御法度である。情けない部分だけだとファンが減ると心配をしている訳では無いのである。勇者系アイドルはCOOLでなくては。

 

「アサシン──ッ!」

 

ㅤ身構えるもあちらが攻撃してくる気配は無かった。ジャックはこちらを観察するように目を細めるばかりである。特に私が凝視されている。もっと私を見て良いのよ。

 

「どなたか私たちのおかあさんは居ませんか?」

 

ㅤ極めつけはこのセリフである。完全に戦意が萎えて行くのが分かる。ゴールデンもこれにはサングラスを八の字に曲げるのみよ。

 

「私が貴女のお母さんです! そしてこの方がお父さんです!!」

 

ㅤ極めつけはこのセリフである。清姫は嬉嬉としてジャックに返答した。タマモからの支援が受けられないと察して養子縁組で家族を構成するつもりなのかもしれない。殺人鬼の娘がいきなり出来るのは色々と複雑だよお父さんは。

 

「そうなの? じゃあおかあさんは解体。おとうさんは、おとうさんは…おとうさんも解体でいい?」

 

「良いわけないでしょうが!」

 

「初めてのスキンシップですねお父さん(エリザ)!」

 

「今煽んのはデンジャーだろ」

 

「清姫さんがアップをすっ飛ばして走り出してますよ。これぞバーサーカーの鏡ですね」

 

ㅤ─言ってる場合かぁ!?

 

ㅤ私は思わず(あたま)を押さえる。いつも通り混沌としだした。オケアノスでもそうだ、私が頭を捻って考えた戦略でスマートに特異点を解決する筈がいつの間にか180度可笑しな方向へと向きが変わってしまう。私の起源が『混沌』とでも言うのか!?

ㅤちょっとカッコイイと思ったのは内緒だ。

 

ㅤやがて隣で大人しくしていたアリスが私のマントを引く。

 

あたし(アリス)も、エリザベートみたいな家族が欲しいな」

 

ㅤ目線が合っては離し、目線が合っては離しと、チラチラ見てくるアリスの愛らしさとその言葉が合わさって私の心の奥底に眠る父性を大いに刺激した。

 

「私お父さんになるわ!」

 

「しっかりしろォ! 飲まれんなァ!」

 

「金時さん、残念ですが手遅れです。彼女は犠牲になったんですよ、ギャグ時空と言う名のブラックホールの犠牲の犠牲に、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ㅤ拝啓ㅤお父さんお母さん、私は様々な過程を吹っ飛ばしてお父さんになります。

 

 

 




気付いたら出来ていたカオスをそのまま文字に起こしてみました。私の脳内がカオスに包まれる前に表に出さねば!

次回は─予定無いです!

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