勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。 作:小指の爪手入れ師
やっぱり戦闘メインは向かないと再実感した今日この頃、いよいよセプテム最後です。
※最後は駆け足です。
唇を嬲られ、咥内を蹂躙された。
今までの鬱憤を全て晴らそうと必死に貪られ、軋む音が響く程抱き締められる。身体が緊張し、弛緩する。身体は疎か、腕まで垂れ下がっている。指先もピクピクと動くのみ。感覚が若干麻痺しているようだが尻尾は常にピンッと張り詰めているのが分かる。
自分では分からないが、口はだらしなく開け放たれ、唾液や涙が顔を無茶苦茶にしている事だろう。アイドルらしからぬ状態は恥じ入るばかりだ。
鼓動が内側から鼓膜を強く打つ。激しく上下する胸を見るに、私の心臓はそれなりに忙しいと見える。私の中のモノがゴッソリ持っていかれたが為にこの様な醜態を晒している訳だが元凶である清姫も現在では忙しいらしく私を抱えて抗戦中だ。
相手はフンヌの王、
「くぅ──ッ!!」
中距離戦を挑もうともアルテラはセイバー、近距離こそ本領を発揮する。だが、清姫は純粋の武など無く、元より中距離戦が主だと言える。故に、アルテラは術中に嵌らざるを得ない状況の様だった。
「燃えなさい!」
アルテラが中距離戦において不得手であると察した清姫は即座に炎で陣を組む。言うなれば炎の檻、逃げ場を徹底して潰し、高威力のブレスを吐き出すつもりなのだろう。
「『
剣先を中心に螺旋を描き、炎を割いた。
檻にもポッカリと穴が空き、晴れていく。
そして、勢いをそのままアルテラは清姫に最大限の攻撃を放つ。
このままでは清姫に当たり消滅するだろう。私はソレを許容出来ない。してはいけない。彼女は友達なのだから助けなければならない。
なけなしの魔力を喉に注ごう。身体は動かずとも喉は止まらない。──さぁエリザ!心往くまで歌おう。それが彼女の力になると信じて!!
「『──────、─、──────────ッッ!!!』」
歌ったのはローマへ今日までの気持ちだ。今回で大きくローマへの印象は変わった。それも何度も何度もグルグルと、そして気が付いた─
『──
ならば曲に乗せて綴り囀らなければならない。アイドル故に。
最早形も残されていない砦、火に焼かれレーザー的なモノで残骸にモデルチェンジ。劇的なビフォーアフターを遂げている。
アルテラが一切合切を薙ぎ払い突き進んで来る。
──5m…
サビには入らない。
だが、紙にインクを一滴、また一滴と垂らされ滲む様に、魔力が大気に満ちていく様な不思議な感覚がある。
──4m…
サビには入らない。
私の薄く開かれた瞳には黄金に輝く粒子が見える。フワフワと浮いているソレは周りを侵食し、景色を荘厳に変えていく。
──3m…
サビに入る。
私に黄金の粒子が触れる。すると、スーッと溶けていき、満たされる。そう、満たされる。内にある容器が黄金で満たされるイメージで、容器さえも黄金に点滅する。
溢れる。最早黄金に染まりきった器では無尽蔵に湧き出る黄金を収めきれない。
──2m…
だるかった身体が軽い。溢れ出る黄金が私を後押ししているかの様だ。
取り出したるは盾。清姫を守る為に打って付け、何時か邪竜の息吹を防いだ時の様に、気絶などしない様に全身を強く、より強く。
──1m…
すかさず清姫の前で強化されたレトロニアを構える。その際も歌うことは止めず、黄金も尽きることを知らない。
強化される効果音が否応なしに響く。妙に響く音は確かな効力を示していると確信できている。
「──ハァアアアアアアアアアーーーッッ!!」
──
ガリガリと削れる。地面も盾も体力もあらゆるものが一級の宝具のぶつかり合いで摩耗していく。
「『
真名解放。
ただひたすらに堅く、頑なに頑丈で、勇者補正が十二分に発揮されるだけの盾。勇者の大前提に『負けない』とある。故にこの盾は私の心が砕かれない限り破壊されない。私が勇者であり続ける限り守る事を放棄しない。
「何故…何故破壊されない!?」
何故か、と来たか。私は明確な答えを用意してある。だが─
「止まれぇーーーーッ!!!!」
言ってやる暇なぞ皆無である。格好付けたい、目立ちたい、ファンサービスも上等。だが待たれよ親愛なる子ブタ諸君。
「格好つけたわりに余裕零ですわね…」
「言うんじゃ、無いわ…よぉお!!」
清姫は汗でダラダラの背中を撫でる。
いや撫でてるよね?舐めて無いよね?そこんところは信用も信頼も無いからねアンタ。て言うか手伝ってよッ!!
ついでに歌は歌い切りました。アイドルだからね、当然よね!え?アンコール?現状を見てものを言いやがれです!?
既に砦は更地に成っているが、好都合だったかも知れない。この衝撃では足場から崩壊し生き埋めは確実だったはず、今でも地面陥没で危うい状態なのだから笑えない冗談だ。
「クッ─!?」
アルテラがよろけた。当然だと言えるが…
なんせ長時間持続して宝具を解放しているのだから。正直ここまで耐久して無理でしたは鬼畜ゲーも真っ青なレベル。私だったら運営に抗議の連絡を入れてしまうね。
「私の─ゼェゼェ、勝─ゼェ─ち、よ」
「バテバテじゃないですか…」
「ほっときなさいよ!」
アルテラは
「我が
「だが、やはり分からない。何故私はお前達を破壊出来なかった?」
アルテラは真っ直ぐな視線を私へと向ける。真剣なソレを受けた私は文字通り温めておいた言葉を投げかける。
「──勇者系アイドルだからよ!!」
「アイ、ドル?そうか、アイドルか…それは良い、文明だな……」
アルテラはそう言い残し消滅した。
「未来でも潰えないジャンルなんだから、当然でしょ?」
「そうですね、私たちの愛は永遠ですもの」
「ハァ…アンタ何時まで赤いのよ?」
「永遠です!」
清姫は今なお轟々とトランザムモード続行。本人曰く『永遠』だとかなんとか。バスター強化がどの程度なのか分からないが、状態異常付与攻撃とか、与ダメージも増えていそうだ。
「でも不便…正直やりづらいわよソレ。どうにかなんないの?」
「一発大技が撃てれば収まるかと…たぶん」
たぶんとか聞こえたが手掛かりもないので採用。取り敢えず的を探す。
「的、的はっと…ん?」
肉の柱が一本立っていた。
「的だわ……」
「絶好の的ですね…」
「清姫。炭にしましょうアレ!すっごい気に障るんですけど!!」
「はぁい、了解致しました。火急速やかに灰燼へと変えましょう」
軽いノリで全力の火炎を吐き出す清姫。私も便乗して吐き出す。距離はそれほど離れていない為難無く直撃した。
「ぐぅうううわぁああああああああああああああああああーーーーーーーッッッ!!!!??」
「ウップ……」
炎を吐き出す感覚に酔いながら、節穴さんを見る。
それは見事に炎上している。
「むぅ、エリザ。まだ収まらないようです…」
「じゃあもう一発行っとく?」
まだ赤い清姫に焦げた節穴さんを勧める。
「貴様、また貴様か!?何度も何度も…ただの英霊風情が、魔神たる私に何をs──ぐぅぁあああああああああああああああああああああああああーーーーーーーッッ!!!!!!!!!!」
「目が焼け、水分が蒸発する感覚を常人の数倍で味わえるだなんて、凄いのね?えっと、魔神さん?」
最早嫌味への返答は無かった。
「終わったの?」
「魔神柱の沈黙を確認。ドクター、そっちの反応はどうでしょう?」
『こっちでも確認出来ているよ!おめでとう皆!!』
カルデアでは歓声が上がっているらしく騒がしい声がホログラフィーから漏れている。
「終わった、か」
「神祖!余は、余は良きローマ皇帝であったろうか?」
「ウム、
ローマは何故か神祖がパーティに入って戦闘をしていたらしい。
そして私たちはと言うと…
「これが聖杯?何か小さくない?」
「持ち運びやすい様に改良したのでは?近代では小型化が流行っていると情報があります。何でも小さくしたくなるお年頃だったのでしょう」
「王様自称する割にミーハーね……いや、だからこそ王様なのかしら?」
死体漁りを早々に済ませた私たち勇者一行は、聖杯を片手に談笑する。綺麗な杯片手に談笑って優雅で素敵ネ!
私たち手柄泥棒していた様な気もするけれど、咎められる雰囲気でも無いみたい。まぁ、小競り合いを繰り返していた様に見えたから案外助力を感謝されているかもしれない。
そんな事を考えていたら子ジカが走り寄ってく─
「エリちゃーーーーん!!」
「キャアーーーーーーッッ!!???」
「ありがとうエリちゃーん!」
「分かったから降ろしなさいよぉ!!」
子ジカは私の脇に手を突っ込み、持ち上げ、グルングルン回り出す。少々ワイルド過ぎる彼女は喜びをカラダいっぱいに表したいらしい。
「ぁ、清姫さん聖杯ありがとうございます」
「私は何も、エリザが見つけたのでお礼ならエリザにどうぞ」
「ありがとうございましたエリザベートさん」
「分かったからコイツ止めなさ…ウップ」
炎吐いた時の酔いがぶり返し始めた。このままではアイドルに相応しくない表現がオンラインしてしまう。何としてでも耐えなければならない。てかこの子ジカ止めろ!!
「ァ…」
「ァ?」
諸君、脇とは何処にある?いや、馬鹿にしているのではない、これは確認だ。脇とは粗野な言い方をすれば肩の下あたりにある訳だけれど、私の肩には某野菜人の様な肩パットがある。そして、心許ない胸当て的なビキニが吊り下げられているわけだよ。
まぁ─
──ずり落ちるよネ!!
「こんの……馬鹿子ジカァアアッッ!!!!!」
「ラッキースケ─ブッフェーー!!!?」
私の尖った蹴りが子ジカの鳩尾辺りを穿つ。本気出したら下半身と上半身がさよならバイバイするので抑えたが、正直良く我慢したなと思った。
そして、私はビキニを元に戻す。なお、子ジカは脇から手を引かない。彼女は一体何に突き動かされているのだろう。
「お茶の間の皆のために…ガクリ」
「先輩ーーーー!?」
などと訳の分からない供述をしており、余罪がないか調査中です。
「清姫。帰るわよ!」
「ハイ、今晩は何になさいます?」
時間の概念がフワフワなのだから朝昼晩も何もあったものではないが、まぁ気持ちの問題だから私としては重要なことだ。
「赤いモノ」
「分かりました一緒に作りましょう!」
「何作っても赤くなるならいいけれど……」
「エリザと作ったものならば何でも愛せます。ですから子供は何人?男の子と女の子の比率は?一姫二太郎が良いとは聞きますが私としてはエリザ似の女の子が欲しい…でも男の子でものーぷろぶれむですわね!和服洋服えとせとら、色々な服を作りませんと!こうしては居られませんね早速帰らなければ!!」
「いや、女同士……」
子供なんて出来る訳でもなく、正直興奮もあったものでは無い年齢固定。それと英霊が子供なんて産める筈も無い。出来るのは魔力供給だけなのであしからず。
「実はちょっとしたコネがありまして…尋ねたところ呪術なら可能との事です。何も問題はありませんね!」
「問題だらけというか、問題だけと言うか…取り敢えず落ち着いて清姫。目が据わっていて怖いんですけど!?」
「天井のシミを数えている間に終わりますよ!えっとぉ、まずは何から始めるべきなのでしょう…」
懐から電子機器の様な紙を取り出す清姫。コイツメル友に尋ねる気満々である。
その辺から強制退去が始まる。指先から色が抜け始めキラキラと魔力に還元され始める。清姫が早まる前に終わって欲しいものだ。
「むぅ、返信が来ませんね…通話に切り替えましょうか?」
「待って清姫!別に焦ることも無いでしょうし、子供はズッと先で、いやもう要らないまで有るんじゃない?」
「そんな訳にも…あ、繋がりました。─タマモさんいきなり連絡してしまいました申し訳ありませんね。この間の件で………えぇえぇ、旦那様からも許可が──」
──して無いわよ!
言葉は出ない。先に座に退去してしまったからだ。
そこからの行動は速い。窓を締切、扉に鍵を掛けた上に家具で塞ぐ。清姫対策は万全の耐火付与。
「フゥ、これで大丈夫でしょ」
「お疲れ様です。お茶を入れましたよ」
「ありがとう清姫。……清姫?」
「はぁい。アナタの清姫です!」
まぁ評価次第とは言ったものの意思の弱い私の事ですから…気まぐれに書いてしまうかもしれないですし、書かないかもしれません。
何はともあれひとまず完走と言ったところ…
皆様とはこの作品で、将又違う作品で会うこともあるでしょう。
その際もどうかご贔屓にお願い致します。