作家「ちょっと姉を(ボディブロー決めた後)冷水にツッ込んできた」
作家姉「と、おもーじゃん?で、You Die!。お前が言ってたホモォの話を聞かせろ」
You Die!「鼻☆塩☆塩。あれは今から36万……いや、先週の出来事だ」
箒ちゃん「物凄い桁の間違い方だな」
「…………」
《…………》
ユーダイと巨大ホモォは長く微動だにしなかった。
ユーダイは謎の白いでかい何かに直面した動揺で………巨大ホモォはこっちを振り向いたまま固まっていたから突然ユーダイが落ちてきた事にビックリしたのだとユーダイは思っていた。
「あづっ…………痛っ……」
我に返ったのはユーダイが先だった。
どうやら、足首の捻り方が拙かったらしく、痛みが徐々に酷くなってくる。
(どうしよう、歩けるかな………)
しかし、ズキズキと痛む片足でこの樹海と悪路を進んでいける自信はない。
そう判断したユーダイは―――――
「………あの!」
《…………》
「あの………女の子を見なかったかな?この島の子なんだけど、はぐれちゃって」
いくらユーダイでも異常なのは分かっていた。
でも、足を捻挫して逃げ出すことも出来そうになかったので混乱の中、色々血迷ってユーダイは会話を試みた。
「湖に行くって言って走っていっちゃって………俺、湖がどこかも分からないんだ」
今でもそれが正しかったのか、分からない。
目の前にいる得体のしれない何かにこんな事を聞くのもおかしな話だとは思った。
「うっ、風が………うわっ!?」
《…………》
「え、ちょっ、え!? どういうこと、どこ行くの!?」
突風で目を一瞬閉じた瞬間、身体が浮き上がり、気がつけばホモォの身体の上だった。
ユーダイはずしずしと重い足取りで奥の方へと進むホモォとこの状況に困惑していた。
「あれ?やっぱり言葉通じてないのか?しゃ、喋れないのか。そりゃそうか。あの俺、湖に行きたくて…………だから道を教え………」
し――――――――ん……
「あ、あいうぉんとぅー ごーとぅ ミズウーミー!!」
虚しくもユーダイの願いをホモォは応えることなく歩みを進めるのだった。
▽
「………で、俺そのでかいのに背負われて森の奥に進んでった」
『………………』
話を聞いていた3人は流石にドン引きしている。
普通そんな得体のしれない地球外生命体の様なナリをした生物に絵面的にも連れ去られそうになっている光景にしか思えないからだ。
「お前の心臓には毛でも生えてんのか」
「得体の知れないバケモノに連れ去られてる絵面じゃないの!」
「んー、でも俺、動けなかったし………」
「そういう問題ではないぞ………」
「危ない雰囲気も何もなかったから。ほら、今無事だしさ!」
「危機管理がまるでなってねぇ」
「ユーダイあんた、シキの時もそうだけどお人好しがすぎるわよ!」
「大丈夫だよ。みんな心配し過ぎ」
「お前はお気楽すぎるぞ」
「いや、俺だってやばいときは分かるから」
「いつか痛い目みるぞお前………」
「もう……わかりました。今後気を付けます」
お気楽に言っているが、全然反省の色が見えないことに一同はため息を漏らす。
しかし、そのお人好しさがユーダイのリーダーとしての資質だというのは、まだ出会って間もないシキでさえも理解しているのだから。
「それで?どうなったのそのあと」
「………うん。それで、しばらくしてふつーに湖についた」
「マジかよ」
▽
森の奥へと進んでいくと、目の前には綺麗な湖が広がっていた。
まさか、ホントに言葉を理解できるとは思ってもいなかったから。
「わぁ……ここが。あの、ありがとう。連れてきてくれたんだね」
脚に負担がかからない様にユーダイが降り易い様にむにーっとバランスボールみたいに潰れ、ユーダイが降りた瞬間にボンッと元に戻った。
(これ、一体どうなってるんだろう)
目の前のホモォの身体の構造について考えたが、いまは美夏の捜索が最優先。
湖の辺りを散策しようとしたのだが。
「うわっ!?」
ホモォの前足がユーダイの行く手を阻んだ。
「えっ…な、何? どうしたの?」
スッ チョイチョイッ
「?……足?えっと、ちょっと捻っちゃって」
行く手を阻んでいた前足で挫いた足を指したかと思えば、今度はその前足を湖の水の中に浸からせ始めた。
「………………」
― しんきんぐ ゆーだい ―
…………
………
……
…
「!」
ティ―――(゚∀゚)―――ン!!
ホモォが何を教えようとしたのか、考えに行き付いたユーダイは直ぐに捻った左足のズボンのすそを膝までまくり上げて、靴を脱いで湖に足を浸からせる。
「こうだ!」
《……………》
「ありがとう。捻挫は冷やすんだよね」
「あとなんだっけ。固定して………心臓より高く上げるんだっけな。あ、ハンカチ持ってた」
Q:ねんざしたときどうするよ?
A:Rest…安静にする。Ice…冷やす(冷やしすぎ注意)。Compression…圧迫する。Elevation…挙上する。の、『Rice』を実施する。
C:米は偉大。
「…………みかちゃん、いないな。あのスピードじゃとっくに着いてると思ったんだけど。破壊音も見失ってから聞こえないしな………。あのさ、みかちゃんって知ってる?森で毎日遊んでるらしんだけど。元気がいい………よすぎるちっちゃい女の子って……知ってるわけないか………」
捻挫した脚を冷やしながら、湖の辺りをぐるりと見渡しても美夏はどこにも見当たらない。ホモォに聞いてみても知ってそうとは思えないし、これからどうしようと考えた矢先また身体が宙に浮き、背中に乗せられた。
「ぎゃあ!に、2回目だけど唐突過ぎやしない!?」
しかし、応えは帰ってこなかった。
ただひたすら、物言わぬまま再び森の方へと向かって行く。
「…………もう」
もう溜息しか出なくなり、従う事にする。
結局ユーダイはそのまま揺られた。
春の木漏れ日と澄んだ空気と歩く振動が心地よかった。
そしてユーダイは気づけばホモォの上でうとうとと眠りに誘われていく。
その後のことは、あまりよく覚えていない。
夢か現か幻か、いまひとつ現実味のない記憶には巨大なホモォが何かと対峙する後姿。
旅行の疲れがどっと出たユーダイはひたすら眠かった。
そしてすぐ眠りについてしまった。仕方ないね。
「こら、ユーダイ!」
「ユーちゃああああんっ!」
「!」
―――――――次に目を覚ましたのは七枝の家の玄関だった。
そして、何故か美夏はとっくに帰って来ていた。
「ユーちゃんごめんね。美夏が置いてったんだって? ユーちゃんに敢えて嬉しいのはわかるけど森で怪我したらどうするの美夏! 都会っ子よ!」
「ごめんないさごめんなさいっ!きらいにならないでユーちゃああんっ!」
「ちっちゃい子をひとりにしちゃダメでしょユーダイ!」
「ご、ごめんなさい………」
目覚めたらすぐに、よくある保護者介入の三つ巴謝罪が勃発した。
非の有無を問わずにユーダイは謝罪するしかなかった。
「あんた、足怪我したの?」
「うん。ちょっと捻ったって。いてて」
「それでハンカチで固定したのね………なんか濡れてない?」
「ああそう。湖で冷やしたの」
「湖……って、森の中の?ずいぶん遠くまで行ったのねユーちゃん。……よくここまで帰ってこれたね」
「……………ここまで帰ってきた。あ、どうしよう。お礼言ってない」
「だ……誰に?」
「まだ寝ぼけてるわね………」
気づいたときにはもちろん、あの巨大なホモォは姿かたちも見えなくて、きっとあれがユーダイをここまで送り届けてくれたんだと寝起きの頭でそう結論付けた。
そんな嘘みたいな春休みの思い出。
▽
「で、終始無言?」
「終始無言」
「例のホモォの珍妙な発言がなかったが」
「あぁ、あれは最終日唯一のハイライト。あの日はイベントもそれしかなかったし」
「別にいいかな精神でそこ省略しちゃダメよ…………」
「珍妙な発言……なんだ、なんか言われたのか?」
化粧直しをしていたかずらがユーダイに問いかける。
ホモォの精神攻撃で親友を病院送りにされた経緯から、思わず反応してしまった。
「言われた……っていうより、言ってるときに俺が偶然出くわした形」
「ホモォの独り言だ?」
「うん。パキケファロサウルスの化石×夕暮れの教室って」
「日本語でおk」
『やっぱりそうなるよね………』
流石のかずらでも、そのカップリングは何なんだよと聞き返してしまうほどだったとさ。
―――――かずらもまた、夏休みの事件にかかわることになるのだが、それはまた別のお話。
連続投稿なんて、2~3年くらい前に完結させたISの時以来だ。