タコツボ小隊員・篠ノ之箒!!   作:沙希

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 前回までのあらすじ。

作家姉「面倒な案件に手ェ出したな。お前らがどうこう出来る問題じゃねぇ」

You Die!「それでも、守りたい人がいるんだ!」

箒ちゃん「………ユーダイ」

作家姉「んで、代替案は?」

You Die!「私に良い考えがある!」

箒ちゃん「………そういえば、何か忘れているような」




ホモォ史♂

 

 

 

 

 シキの話から大幅にズレたので軌道修正し、ホモォへの話へと入る。

 

「………さて、ホモォか。なつめからも聞いただろうがやつらの話は篠ノ之と同義でガキにゃ別の意味で毒だぞ」

 

「……でもお姉さんはナッちゃんにホモォのやっつけ方を教えてる。大人たちが隠してるのに」

 

「本当はあいつも知らなくていーんだよ。それに教えてたのやっつけ方じゃなく、追っ払い方だからな」

 

「………お姉さんはナッちゃんに意味なく危ないこと教えないから自分たちでなんとかできるように教えたんですよね?」

 

「………まぁ、な。いくら大人が隠したって篠ノ之と同様で関わっちまったらどうしようもねーし。自衛できるに越したことはねぇ。一切何も教えないのは逆に危険だろうが」

 

 かずらはユーダイの言葉に困り顔でソファに腰を降ろした。

 出会った以上、国などから個人に対して救済措置が行えるわけではないため自衛を覚えるしかない。現状ホモォはそれほど危険なのだから。

 

「なにからなにまで話す気はねぇが、トラウマになってからじゃ遅いんだよ。それで? 何が知りたい?」

 

「お姉さんが話せる範囲で……ホモォのこと。最近の大量発生のこととか。俺やシキは殆ど何にも知らないから基本的なことだけでも」

 

「お願いします」

 

「………ふむ、いいだろ。おこさま仕様で出来るだけ詳しく教えたらぁ。SAN値減っても知らねぇぞ?」

 

「…………SAN値とは」

 

「正気度のこと」

 

 

…………………

………………

……………

…………

………

……

〈第一回 かずらのよくわかる日本史♂〉

 

「………さてそもそもホモォ………和名ニホンホモクレヒトモドキは大量発生と被害拡大こそここ1~2年と最近のことだが、存在自体は大昔からだ。確実なとこだと平安時代か『竹取物語』がその頃だったな」

 

『輝夜姫の時代から!?』

 

「もっと前からかもしれねーけどな。………まぁ、その………最古の物語の二次創作も当然ある訳だがつまり…………えーと………おこさま仕様も存外難しいな。もしも画面向こうの野郎共もこれ見てたら各自脳内補完すること」

 

『?』

 

「ホモォニついての最古の文献が平安前期のもんだってだけで二次に限らなきゃおそらくもっと前からいる」

 

「なにそれこわい」

 

「まさか、恐竜のいた時代からではあるまいな」

 

「それ、どこのミ〇オンズ。…………ん? 「二次」に限らない?」

 

「ホモォはあんなナリだが知能は人並み………あるいはそれ以上だ。言葉も通じる。当然好き嫌いもある…………『ジャンル』だとでも言っとくか。何に反応を示すか個体差が激しい」

 

 かずらの説明に二人は一昨日の出来事を思い浮かべる。

 ホモォ、ショタァとだけしか言ってなかったが、ナツメが何かを言ったのを理解できたあたり知能は確かに高いと見て間違いない。

 

「だいたいがホモォっつってるけど別に男同士に限らんからなあいつら。だから物語にだけ群がる訳じゃねーんだ」

 

「ふうん……俺がトマト好きでセロリ嫌いなのと同じかな」

 

「どんな例えだ」

 

「おう、まさにソレ。ジャンルに群がるのが奴らにとっての食事なンだよ」

 

『!?』

 

「奴ら頭ン中で栄養作れるからな。植物の光合成みてぇなもんだ。奴らは妄想で生きてる」

 

 突然の新事実に驚きを隠せない。

 頭の中で栄養を作る、それは生物を超越した何かではないのか。

 いや、幽霊や怪異が人の生命エネルギー、恐れの感情を糧としていると同じと考えれば趣旨は違えどホモォも幽霊・怪異と同じ存在ということだ。

 

「アニメ、漫画………学校とか職場だのにわらわら集まるのは生きていくためなんだ」

 

「そうなんだよ。だからなユーダイ。正直信じられねェ。脳内でネタを生み出せる個体もいるにはいるが、それだって限界がある。だから奴らの生息分布はヒトの生活圏と一致する。何もねぇ孤島のしかも森の奥じゃ生きていけねぇはずなんだ」

 

 ユーダイが言っていた、離島でホモォを見たのは何かの間違いではないのか。

 かずらはどうもユーダイの話が信じられず、疑っている。

 

「……まぁ、それは一旦置いとこう。どっちみちじっくり話聞かなきゃならねぇからな。悪ィな脱線した。先にざっと説明終わらすわ」

 

「………うん」

 

「とにかくそんだけ大昔からホモォは人間と関わりが深い。だけど奴らは長いこと人と接触するのを避けてきた」

 

「えっ、そうなの?」

 

「でも……それでは一昨日のホモォはいったい」

 

「元々そういう性質なんだ。あまりにも目撃例が無かったんで表の記録が極端に少ねぇし、妖怪の一匹として数えられたこともある。だから昔は害でもなんでもなかったんだあいつらは…………だが、近年だ!」

 

 ガリッと、再び飴を嚙み砕くかずらの様子は急に不機嫌に変わった。

 

「原因はいろいろある。ネットが普及して情報社会になったのが一番の要因かもな。ネットユーザーの低年齢層化……マスゴミの不用意なサブカルの持ち上げ……大量に流れ込んでくるにわか共。結果起こった『モラルの低下』。奇妙なことにそれと比例してホモォによる被害が増えだしている」

 

 握手会。マジコン。未成年課金。アフィリエイト。ようつべ。まとめサイト系。サブカル系。撮り鉄。BL。ニコニコ。ソーシャルゲーム。ゆるキャラ。オタク系女子。SNS等等、上げるだけでもキリがない。

 

「さぶ、かる?」

「もらる………?」

 

「あー、それがおこさまの限界だわな。いい、なんとなく雰囲気で聴いとけ。ぼんやりとわかればよし」

 

「んー………わかった。でもお姉さん、やたら詳しい。お姉さん、オタクでしたっけ?」

 

「ちげーよこっちも似たような被害にあってんだよ!最近じゃ服買いに行きゃあギャルファッションにブランド物で固めた化粧バッチリの小中学生に出くわすわ、親の金で大人ぶりやがって!野放しにしてる親も親だ!果ては小学生が援助交際!?バカじゃねぇのか一様にマナーも悪いしよォ!義務教育終わってから出直して来い!あと、援交は犯罪です!」

 

「俺達に言われても……」

 

「あの、こう言っては失礼ですが、かずらさんって見かけによらず常識人ですね」

 

 濃い目の化粧に派手な私服とは反比例して性格は、常識人その者。

 この町にいる者達は何かしら見た目か中身がどちらかに偏っているのではないのだろうかと常々思うシキであった。

 

「はぁ………まぁ畑違えど似たようなもんだ。最近はどっちも酷過ぎる。私が詳しいのは理由あるけど、その話はあとでな。いいか、重要なのは被害こそ増えたが「大量発生したわけじゃない」ってことだ」

 

「え?」

 

「勿論、数は増えてるだろう。昔よりもエサが豊富だからな。………だが増えたのは総数よりむしろ『住み分けの出来ない個体』だ。平気で人前に姿を現す奴らが爆発的に増えたんだ」

 

「それでも全体の何割か、ですよね」

 

「そうだな。でも、脅威には違いねぇ」

 

「……じゃあ危ないのは一部のホモォだけ」

 

「そう、後の奴らは今まで通り隠れてる。ただ、そいつがどういうホモォで、どんなジャンルを主食とする奴なのか………無害なのかどうなのか、ぱっと見じゃ判断できねぇ。お互い意図せず出くわすこともあるだろう。出会ったら速攻逃げる。それを徹底するこったな」

 

『………』

 

「………………とりあえずコレが、一般ピーポォのおこさまに喋ったらギリギリアウトなレベルのホモォ史だな!」

 

『アウトだったの!?』

 

「これでも精一杯ボカしたぜ? 言ったろ、ジャンル内容まで喋ると篠ノ之の事情と同様に別の意味でブラックだって。その代り今ので大体は分かったろ?」

 

「ま、まぁ………」

 

「んじゃなんか質問あるか? ねぇならお前の番だ。でけぇホモォの話、聞かせやがれ」

 

「質問は、大丈夫。子供はあまり深入りできなさそうだし………なんでお姉さんが詳しいのか聞きたいです。縁無さそうなのに」

 

「……………そうだな。私がなんで詳しいか。………当人じゃねーけど被害者だからな」

 

『…………え』

 

「いっつも………ツルんでたダチが居たんだけどよ」

 

 

 

 

 

 

『タツ! ケイゴ!!』

 

『ちょっとどうしたの二人とも!?』

 

 ダチと呼ぶ者達から救援の連絡が入り、そこへ向かえばホモォに埋もれた3人組をかずらたちは目の当たりにしたのだ。

 

『み、皆ぁ……オレじゃ、無理だ……あいつらを、たす……け、て』

 

『トモヤァアアアアア!!』

 

『ちょっ、埋もれてる! ヤバいよコレ!』

 

『タツ!ケイゴ!気をしっかり持てー!』

 

 

 

 

 

 

「…………自分たちの妄想を延々と聞かされたアイツらは男性恐怖症になって…………もうかれこれ3か月あのメンツで遊んでねぇ………どうしてくれんだ、小学校からの親友なんだぞ…………ぐすっ」

 

 

(『た、他人事と思えない』)

 

 気の強いかずらがさめざめと泣いている姿には流石に同情を禁じ得なかった。

 もしかしたらあの時、自分もホモォに襲われていたかもしれないと思うとゾッとする。

 

「ぬぉぉおおおおおおおお! だから私は二度とあの悲劇がおきないように!男子共に笑顔が戻る日まで!戦い続けると誓ったんだチクショウめ!」

 

「ただいまーお姉ちゃん。………何してんの?」

 

「あ、ナツメ。お邪魔している」

「ナッちゃん、お邪魔してます」

 

「あら二人とも、いらっしゃい」

 

「なつめェ!てめー、ダチのこたァ死んでも守れよマジでッ!」

 

「いや言われなくても分かってるけど、なに泣いてるのよ」

 

「あの……それで森であったやつのこと………」

 

「そうだ話せユーダイ!事と次第によっちゃ私がシバきに行くぞ!」

 

「そ、それはやめて!」

 

 ――――――そのあと、かずらが落ち着く(物理)まで30分かかりましたとさ。

 決め手はナツメのボディブローからの浴槽に溜めた冷水にツッ込んだことだろう。

 

 

 

 

 

 その頃のみんなは。

 

「これよりナッちゃんへの復讐会議を始める!」

 

「応!!」

 

「正面からじゃ勝てねぇ。まずは不意をついて」

 

「いやまて、後ろ蹴りを食らわした後に横から」

 

 

「ホモォよけに私らいるのはいいけど、後でナッちゃんに筒抜けになるの気づいてねーなこいつら」

 

「よっぽどショックだったのね」

 

 特に問題は無い様子だった。

 

 




 
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