タコツボ小隊員・篠ノ之箒!!   作:沙希

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前回までのあらすじ。

You Die!「みんな、シキの親御さんを探すの手伝ってほしい」

箒ちゃん「いらないと言っているだろ小僧!」

他タコツボ小隊員「任せとけ」

箒ちゃん「なんなんだお前たちは(ドン引き)」

『俺 / 私 / アタシたち、タコツボ小隊!』





森のホモォ。
新学期


 

 ユーダイ達との出会いをきっかけに、私の人生が少しだけ変わった気がした。

 

 いや、私の見方が変わっただけなのかもしれない。

 

 ISを作った姉の妹だということで大人たちや子供にまで嫌われて、父はいなくなり殆ど一家離散したも同然だった。

 

 自分は世界で一番、不幸な人間だとばかり思っていた。

 

 でも、不幸なのは皆同じだということが、この町に来てユーダイたちと出逢って……これから先、少しずつ学んでいくことになる。

 

 

 

 

 

 

 都立梅の木川小学校。

 私がこの町に来てから1週間が経つ。

 ユーダイ達の春休みが終わり、始業式と新入生の入学式の日が訪れる。

 そして…………今日は、私の登校日だ。

 私の初めての、梅の木川小学校での登校日。

 転勤先々で、こんなにもウキウキしたりするのは、初めてだった。

 

 

 家を出た私はユーダイに学校に案内されて学校に着くと、校庭に植えられている桜の木々が満開になって、とても綺麗だった。

 そして直ぐに見知った仲間と遭遇する。

 

「ユーダイ、シキ。おはよう」

 

「あ、シューヘイ。おはよう」

「おはよう、シューヘイ」

 

 同じタコツボ小隊の一員、シューヘイと出逢う。

 数日前にも出会ったのに、なんだか挨拶するのがとても新鮮に感じる。

 

「今日から4年生かー………なんだかなー」

 

「実感ないよね。でも、シキとみんな、同じクラスで良かったよ。ね、シキ」

 

「うむ。みんなと一緒のクラスになれて、よかった」

 

 同じ学校へ通うにしても、同じクラスになれるのか不安だった。

 他の小隊の者達と一緒という可能性があるのだろうが、まだユーダイ達以外での小隊員とリーダーたちとは出会って間もない、いや、ユーダイ達との親交もそこまで深くはないのだが、今はまだユーダイ達以外に慣れていない。

 でも、その不安は気鬱でよかった。

 

「……あ、そうだ。ちょっと二人に聞いてもらいたい事が」

 

「?」

「なんだ?」

 

「シキと出会う前にね、俺おばさんち行ったんだけど――――――――」

 

ヒィユーンッ ドゴォ!!

 

「なになに、何の話ィー!」

 

『ヒガサキ / ハツミ!!』

「ごふぅっ!? ヒガっちゃん、新学期早々フランス革命は………ま、まぁいいや。とにかくおばさんちに行ったときなんだけど…………」

 

……………

…………

………

……

 

『でっかい白いだいふく?』

 

「―――――に、虫みたいな足が生えたやつ」

 

「なにそのバケモノ」

 

 ユーダイは叔母さんの住む離島で、そんな珍妙な生物をみたらしい。

 本来なら、こんな話を聞けば()()()()は笑い話か冗談話かと思うだろうが。

 

「おまえのおばさんちって、ちっちゃい離島だっけ? そのへんなのいたら大騒ぎだろ。どんだけ大きいんだよ」

 

「縦横がすべり台くらいで……」

 

『でけぇ!!』

 

「ちょ、描いてよ。どんな奴?」

 

「えー………説明したとおりだよ。えっとね………………こんな」

 

「ほんとにだいふくみたいな生物だな。ホントにこんな生物が日本にいたのか」

 

 ノートを覗き込むと、そこにはユーダイの言う通り、四本足の虫の様なだいふくモドキが描かれていた。それよりも………若干可愛いな。

 その時、ナツメが間に入り、ノートを見て。

 

「それニホンホモクレヒトモドキじゃない!?」

 

「うおっ、ビックリした。ナッちゃん、おはよう」

 

「知っているのか、雷電!」

 

「誰が雷電だ。この顔は……………うんまぁ、知っているというか、そんなでかいのは聞いたことはないけど」

 

「そもそも、これは生物なのか?」

 

「なんかよくわかってないみたいよ。一説には妖怪じゃないかとか」

 

『マジでか………』

 

 妖怪。…………妖怪とは、あの妖怪か。

 転校日までの一週間で様々な異形や目にしなかったものを見せられてきたうちの一つの、あれか。いや、あれとこれを妖怪として比べていいのか迷うな。

 

「ニホンホモクレヒトモドキ。俗称は「ホモォ」。近年急激に個体数と生息域を拡大してる生き物よ。人に被害が出るケースも増えてきてて、ちょいちょいニュースになってるわね」

 

「えっ」

「ニュースになってんのか」

「人襲うの!?」

「この見た目でか………」

 

「どこまで説明したらいいやら。んー」

 

 ナツメは悩んでいるが、被害が出ているなら詳細を知るべきではないだろうか。

 

「なんだ、何の話だ?」

「どうしたの?」

 

「タカシ、ヨッコ」

 

「!………ちょうどいいわ。タカシとシューヘイ。抱き合いなさい」パンッ

 

『いきなり何言ってんだ!? あとその手は何だよ!?』

 

「いやいやいや、絶対にやだよきもちわりぃ!」

「はなせバカ!」

 

「だってそのほうがてっとり早いんだもん。それにあたしだって見たかないわよ! ハツミ、ユーダイ、手伝って!」

 

「アイサー!」

「あ、うん」

 

「いや、良いのか? 本人たちは嫌がっているみたいだし、そこまでする必要は」

 

「実物見なきゃ分かんねぇし、シキだって見たいだろ?」

 

「まぁ、そうだな」

 

 見てみたい気はしなくもない。とりあえずシューヘイ、タカシ、すまん。

 

「てめぇ、ユーダイ! 裏切者!」

 

「ごめん協力して!」

 

「早くしろよ、見てるこっちも拷問なんだから」

 

「なら手伝ってんじゃねぇ!」

 

 ハツミとユーダイが二人を必死にくっ付けさせようとする。

 ふむ、こんなことをして意味があるのだろうか。

 

『ギャ――――――ッ!!!!』

 

「よしこれで…………」

 

「………ねぇ、ナッちゃん、シキちゃん」

 

「どうした、ヨッコ」

 

「ホモォってこれかな」

 

《ホモォ………》

 

「そっこー釣れたわね」

 

 ヨッコの呼びかけに振り返ると、そこには三つの白いだいふくみたいな物体がいた。

 ユーダイが言っていたこととノートに書かれたものと特徴が一致している。

 

「あ、それだ! 森であっただいふく…………でもそれはちっちゃいね」

 

「んー………これが標準だと思うわよ」

 

「ほんとだいふくみてぇ。ホモォってやっぱりそういう意味?」

 

 どういう意味だ?

 ホモォと言っているこの生物(?)は…………分からん。

 

「そういう意味よ。あんたよくなんにもなかったわね」

 

《ホモォ………》《ショタァ………》

 

「森のやつ、そんな鳴き方してたかな…………」

 

 妖怪や幽霊、宇宙人といった昔テレビや雑誌で議論されていたもの見せられてきたが、今度はホモォという生物とは……………。

 この町に来てから今までの常識が、全部崩れていく。

 ユーダイ達や他の小隊員たちもそうだが、この町はどうなっているんだ。

 

《ホモォ……》《ショタァ……》

 

 などと思っていると、何やらホモォがじりじりと倒れているシューヘイとタカシにじりじりと近づいている。

 

「む、待てこれ。――――――――――――。」

 

《!!》

 

 いま、ナツメは何を言ったんだ?

 するとホモォたちが、何やら驚いたように逃げ出していく。

 

「あ、逃げた………」

 

「つまりね。本人たちが嫌がろうがBLっぽい場面があると湧いて出てくるのがホモォなの。被害ってのは精神的な苦痛のこと。言われるのイヤでしょ?」

 

「あー………」

 

「すまない。びーえるというのは、何かの略語なのか?」

 

「あー…、そういえばシキはそういうのに疎そうだもんね」

 

「Bad Loveの略語よ」

 

「間違ってるけど間違ってないのが困る」

 

 ダメな、愛? 愛にダメなものは、一方的すぎることか?

 いや、それでもシューヘイやタカシの二人が嫌々ながら抱き合ったのも、ナツメの言葉に繋がらない。

 ダメな愛、ダメな愛…………タカシとシューヘイ…………男同士………愛し合う……………!?

 

「~~~~~っ、不潔だ!!」

 

「凄い、今迄のセリフを統合してよく答えに辿り着いたわね」

 

「お、男同士でそんな………いや、歌舞伎が盛んだった時代では、男同士のそういうことはあったが、とりあえず不潔だ!不潔不潔不潔!」

 

「まぁまぁ、とりあえず落ち着いて。それにしてもナッちゃん、詳しい」

 

「お姉ちゃんに教えてもらったのよ………」

 

「あー、高校生の…………」

 

「ねぇねぇ、ショタってなに?」

 

「正太郎の略」

 

「金田ァァアアアアアアアアア!!」

 

「That’s Mr.Kaneda to you punk!」

 

「誰だそいつは」

 

 私にも分かるように説明してほしい。

 こういった突然のボケに、私はまだ対応できないんだ。

 ユーダイから色々と漫画を借りたりしているが、全くついて行けん。

 

「てか、今何を言ったの?すごい勢いで逃げてったけど」

 

「内容言えないけど、お姉ちゃん仕込みの精神攻撃(わるぐち)

 

「お姉さん…………」

 

「目には目を不快感には不快感を、らしいわよ」

 

「うーん、それもそれでやだなぁ。後味悪くね」

 

 確かに、悪口は言われるのも言うのも後味が悪い。

 ……………いかんいかん、私はユーダイ達を信じると決めたんだ。

 それにもう、過去のことだ。

 

「よかったなユーダイ。バケモノの正体がわかって。俺たちの尊い犠牲の元で」

 

「トラウマにならなくてよかったな薄情者」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

(やばっ (殺気っ!!))

 

  ドカッバキッ!!  ╲╲ギャァアアアアアアッ╱╱

 

「でもナッちゃん、ニュースになってるわりには………」

 

「そうそうあんなの初めて見たよ!」

 

「そりゃそうよ。教育上ヒッジョーによろしくないから、大人たちが必死に隠してるのよ。学校とか特に念入りにホモォよけされてるし」

 

「今いたんだけど」

 

「まぁ3匹も出てくるとは思わなかったわ。それだけ数が増えてるってことかしらね。あ、さっき大人たちが隠してるって言ったけど、インパクトが薄いってのもあるわ」

 

「インパクトが薄い?…………まさか、姉さんのことか?」

 

「うん。シキのお姉さん、篠ノ之束が起こした白騎士事件。あれでホモォなんかよりもそっちに目が行っちゃってる説もあるのよ。これもお姉ちゃんの考察だけど」

 

 なるほど、道理でホモォという存在を聞かない訳だ。

 しかし、実害が出ているとなるとISよりもホモォにも目を向けるべきでは。

 

「あれ? 皆早いのね。おはよう」

 

『!』

 

 すると出入り口の方からこの場に居ない女性の声がした。

 一斉に出入り口の方へと目を向けると、若い女の先生がいた。

 

「せんせー、おはよー!」

 

「あのなせんせー、ホモォが出た!」

 

「!?」

 

「初めて見た!」

 

「あ、でもナッちゃんがおいはらったよ」

 

「ちょっ、ちょっと待って!ホモォ!? どうして貴方達知ってるの!?」

 

「今見た!」

 

「ここで!?」

 

「うん」

 

「大丈夫!? その………何にも言われてない?」

 

 すると先生は私たちの目線と合わせるように屈んで心配する。

 

「うん。ホモォにはなんにも」

 

「には?」

 

「覚えてろナッちゃん」

 

「何のことやら」

 

「……………あのね。次会ったら耳を塞いで全力で逃げてね。何も聞いちゃダメよ。何も言われても考えちゃダメ。わかった?」

 

「は………はい」

 

「あ、それと篠ノ之さん。教科書類と体操服を渡したいから、お友達とお話が終わったら来てくれるかしら」

 

「………あ、はい。分かりました」

 

「それにしても、安心した。複雑な家庭事情を抱えていて、難しい子だって言われていたけれど………ちゃんとお友達が出来たみたいで安心したわ。篠ノ之さん、まだ私たち()()()()には慣れないでしょうけど、困ったことがあれば気軽に相談しにきてね」

 

 何となく、この先生には私がまだ大人を信用していないことがバレている。

 この人は他の大人たちとは違う気がするけど………やっぱりまだダメだ。

 

「……………はい。お気遣い、ありがとうございます」

 

「うん。じゃあ後でね。………そ、それはそうと、機械のチェックしなきゃっ!」

 

 先生は大急ぎで教室を出て走って行った。

 機械のチェックと言っていたが、確か、ホモォ避けの機械があるとナツミが言っていたな。

 

「………先生、マジ慌ててたな」

 

「言ったでしょ、大人が隠してくれてるのよ。私だってユーダイが見たことあるって言わなきゃ誘き寄せないわよ。ねぇ、ユーダイ。ほんとに何も言われてないわけ?」

 

「というか殆ど喋らなかったんだよなぁ………鳴いてもなかったし。たまーにぽつぽつ独り言は言っていたけど」

 

「独り言?」

 

「そう。でも、意味わかんなくて確か最初に会った時――――――――――」

 

 

 

 

 

「パキケファロサウルスの化石×夕暮れの教室……………って」

 

 

 

 

 

………………

……………

…………

………

……

 

 

 審議拒否。

『日本語でおk』

 

 

 審議挑戦。

「何なのだ、これは! どうすればいいのだ!?」

「そもそもなぜ人じゃないんだ」

「教室に化石があって」

 

「おーい、シキー、みんなー………みんな真面目だなぁ」

 

 ユーダイ以外の全員で、謎のカップリングについて考察する私たちだった。

 

 

 

 

 

 

春休みがあけて、4年生になった私たち。

 

その時まだ知る由もなかった。

 

夏休みの離島であのような事件に巻き込まれることになるとは………………

 

 

 




森のホモォ編、は~じま~るよ~。
原作の部分をちょいちょい弄ってます。
誤字脱字、おかしなところ、感想などよろしくお願いします。

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