俺の幼馴染はコミュ力お化け 作:有象無象
そして、明けましておめでとうございます。
部屋で一人考える。
アイツとこのままは嫌だ。それだけは確かな感情だ。
どう話したら良いものか、「捨てないでくれ」なんてとてもではないがアイツには言えないし、かと言ってこのままでというのも、と堂々巡りを続けて行動に移せない。
そんな堂々巡りの中、ベッドに倒れて天井を見上げる。
そもそもなんで俺はアイツに依存しているんだろうか?
コミュニケーションが取れるのがアイツしかいないから?
いや、それならアルトリアはどうなんだ?
紛いなりにもコミュニケーションらしきものは取れているし、自惚れでなければ良好な関係が築けている筈だ。
契約サーヴァントだからか?
いや、なら第四特異点のジャックちゃんやナーサリーちゃんはどうだろう?
彼女らの契約者はアイツだ。俺とは同じ拠点を利用する仲間というだけの関係だったが自惚れでなければ最後の方は良い関係を築けていたのだ。
他にはフランちゃんとも話したし、ロマンともそこそこ話す関係だ。
あれ?意外と俺はコミュニケーション能力があるのか?ならなんでカルデアに来る前はアイツとしか話していなかったのか。
俺のスマホにはアイツの連絡しか入っておらず、クラスのチャットグループすらないシンプルなものだった。
あの頃からおんぶに抱っこだったんだな。
そんな事を考えていると、扉が開いた。
誰だろう?
顔を上げるとそこにいたのは意外過ぎる人物だった。
「少々お時間よろしいですか?」
「あ、はい」
短い肯定の後に俺はそこにいた人物─清姫─を部屋に入れた。
唯一ある椅子を渡し、お茶を入れると彼女は礼を言って一口啜って口を開いた。
「
あ、死ぬんだぁ………。
「秋人様には早急に
清姫はバーサーカーとは思えない程理性的な口調で言った。
「それは、どうしたらいいのかわからないというか」
「嘘です」
「嘘?」
「秋人様は既にどうすれば良いのかお分かりですから」
「それは……」
そうだ。
実はわかっていた。
アイツと仲直りする唯一で最も手っ取り早い方法。
それは、全てを話すこと。だが、もしそれでアイツに愛想を尽かされたら。
そう言うと清姫は大丈夫だと言う。
確信を持てない俺に清姫は苛立ったように言った。
「本当は、
「違う!」
叫んでいた。自分でも驚くほどに大きな声だった。
そんな俺を見て、清姫は満足そうに微笑んで部屋を出ていった。
気づけばなんてことは無い。そもそも躊躇う理由なんて無かったんだ。
俺は確かな足取りで部屋を出た。
─藤丸立香─
どうしたらいいんだろう。あいつが分からない。
そんなの嫌だ。
わからないということが怖い。
もしかしたらあいつに嫌われるかもなんて考えただけでおかしくなってしまう。
カルデアの皆が言う。
立香ちゃんは誰でも恐れず関わって、して欲しい対応をしてくれる、と。
実は違う。私が他人と関われるのはたとえ全てに嫌われても絶対に私を嫌わないと確信できる存在、つまりあいつがいるからなのだ。
本当の私はもっと臆病で、わがままで、どうしようもなく利己的な女だ。
きっとマシュもあいつも、私の本性を知れば離れて行く筈だ。そんなの耐えられない。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
どうしたら元に戻れるだろうか?
どうしたら嫌われないで済むだろうか?
こんな時にも利己的な思考に走ってしまう自分がやっぱり嫌いだ。
自己嫌悪に溺れそうな時、扉が開いた。
「やぁ、立香ちゃん。ちょっといいかな?」
「……ロマン?」
そこには、ロマニ・アーキマンが立っていた。
「立香ちゃんはどうしたい?」
ロマン秘蔵のココアを飲んで、他愛ない話をして、落ち着いたところでロマニが優しい口調で言った。
どうしたい──か。
そんなの決まっている。あいつと前みたいに……。そう言いかけて口籠る。
前、みたいに?
本当に、そうしたいのか?
本当は?
本当は、あいつとどうなりたいの?
「前みたい……じゃ無くて…でも、私は」
吐き出した。少しだけ。あいつとホントはどうなりたいのか。
全部を吐き出す時はまだ少し先で、その時はきっとあいつに。
「そっか、なら迷わず行きなさい」
最後まで聞いてロマンは去って行った。どこか儚げな、何時でも消えられるような、そんな笑顔だった。
─謎のヒロインXオルタ─
「何故ですか?」
「何故、とは?」
清姫の部屋で質問を投げかけた。
「
どうして恋敵を助けるのか?その問いに彼女はクスリと微笑んで答えた。
「私は
清姫は一度口を結ぶと絞り出すように続けた。
「解りたく無くても解ってしまうのです。私は、」
「私は、
彼女の言葉と共に流れた雫は狂化によるモノなのか、私にはまだ解らなかった。
─紅秋人─
「ねえ」
「あのさ」
「先にいいよ」
互いの部屋から丁度中間地点。俺とアイツは出会うなり口を開いた。
アイツに促されて、一呼吸置いて、深呼吸をしてようやく覚悟が決まった。
先に吐き出される自分の心。
捨てないでくれ。
一人にしないでくれ。
俺がアイツならその場で決別するだろう発言をアイツはただ黙って受け止めてくれた。
その果てにアイツの口が開かれる。
体感時間が引き伸ばされる。永い永い刹那に俺の思考は回り続ける。
怖い。
アイツの答えを聴くのが怖い。
それでも、
それでも、逃げる訳にはいかない。
覚悟を決めたんだ。
清姫が狂化をお抑えつけてまでくれたチャンスなんだ。
無駄にはできない。
ある意味で魔神柱の前よりも恐怖と緊張が支配する。
「そっか…な〜んだ。私と、一緒、だったんだ」
紡がれた言葉は否定でも気休めでも無く、心から漏れ出た様な安堵だった。
─藤丸立香─
「そっか…な〜んだ。私と、一緒、だったんだ」
心から滲み出でた言葉と共に心の中に安堵が広がる。
私とあいつは同じだったんだと、きっと私の言葉も受け入れてくれると……。
だから、
「これからも親友でいられるかな」
だから、
あいつの最後の言葉は、
無防備な私の心を深く突き刺した。
そっか…そうだよね。
あいつも一人の人間で、私のお人形じゃないから、だから考え方は違って当然で、だから食い違うのは当たり前で、全く同じ心だなんてあり得ないモノだから。
私がフラれる可能性なんて必ず存在していて。
「嬉しいな私も同じ気持ちだよ。これからもよろしくね。秋人」
ようやく自覚した
まああと特異点2個あるからね。
生活環境がガラッと変わったり、書いたやつ消しちゃったり、色々あってかなりヘラっていたので遅れました。申し訳ありません。