怪物だって傷つくよ!   作:空飛ぶマネッキー

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爆発

 

 一名を残し、僕の蜘蛛の目によりその場に倒れた。

 

「ひ、ヒィッ!」

 

 小柄な男は情けない声を出し今にも逃げ出しそうだった。

 

「君を残した理由は…………わかるよね?」

 

 脅しかけるよう手にコンバットナイフのような形の糸を持ち、喉元に向ける。

 

「君達の親玉のトリ頭の居所を教えてくれないかい?」

 

 命まで奪う気はない、だが向こうは今にも喉を刈られるのだと恐怖に陥っているだろう。脅しにはこれが一番だ。

 

「さぁ、はやく」

 

 横に切り裂くように突きつけ、早く吐いてくれと願一向だったが。

 

「オイオイ、俺の子分を虐めないでくれよぉ~」

 

「お、親分……」

 

 背後に軽い口調の男の声が聞こえ、手に持つナイフを背後にぶん投げた。

 そのナイフはトリ頭のサグーに刃を指で止められ、軽く舌打ちをした。

 

「オイオイ、荒っぽい。カルシウム取ってんのかぁ? ガハハッ」

 

 サグーはナイフをまるでキャッチボールでもするかのように僕にひょいと投げた。

 

「一体何のようだぁ?」

 

 サグーは笑みを浮かべていて、僕がここに来た理由も知っているだろうに。

 

「彼女はどこなんだい?」

 

「オイオイ、質問してるのは俺の方だぜ?」

 

「彼女の居場所を教えてくれたら何もしない」

 

「話が通じねぇなこりゃ、なら教える気はない。ガハハッ」

 

 これは絶対理由を言っても教えてはくれないだろう。子供の頃からそういう奴等はよく見て来た。彼は人が嫌がる事をとことんと楽しむタイプの男、自分が嫌いなタイプである。

 

 僕は少し下唇を噛みながら話を合わせる事にした。

 

「…………彼女には飴玉の借りがある。理由はそれで充分じゃないかな」

 

「フゥゥゥん? あの女は俺が楽しんだちゃんと後に返してやるよ」

 

「なら答えは簡単だね」

 

 僕は彼の予想通りの返事に少し胸の奥がスッとした気がした。何故なら彼を叩きのめす理由ができたからだ。ただ少女を返してくれるのならこのまま帰ったであろう。

 だが自分のイラつきは収まらなかった。

 

「力でねじ伏せて……君から無理矢理……吐かせよう……!」

 

 肉体が真なる姿に戻っていくのを感じる。

 

「ガハハハッ、ガキが……調子に乗ってんじゃねぇぞ」

 

 男の表情が冷静なものへと変わった瞬間に蜘蛛に似たサグーに変わった僕は足をバネのようにして飛び出した。

 男が蜘蛛の突撃を受け止めるが、勢いは止まらずお互い廃工場の壁をぶち破るほどだった。

 

 お互い、転がりつつも僕は即座に立ち上がり男に高速の打撃の猛攻を振る舞った。

 一発、一発、また一発。

 男は口から血を吐き出し、僕は少々今までの恨みをその顔にもう一度叩きつけてやろうとしたが。

 

 男は笑っていた。不敵な笑みで。

 

 それを見た途端、マズイ、と本能が察知し今すぐに数歩後ろに下がった。

 廃工場内は油や錆びた金属のような匂いで充満していた。ここは元は作業場だった所のようだ。

 

「オイオイ、もう終わりかぁ? ガハハハッ玉無しかてめぇ?」

 

 男の姿は段々と黒い皮膚、獰猛な毛に肉体が膨張するように膨れ上がっていた。

 

「鶏の姿かなって思ってたんだけど違うらしいね」

 

 男は、2.5メートルはありそうな黒いオオカミに似たサグーに変わっていた。

 

「髪は只の趣味だ」

 

 サグーは腕を回したり柔軟運動を何回かやり終えた後。

 

「さぁ第二ラウンドでもやりあおうぜぇ?」

 

 奴は走り出し、僕は指に糸を絡め銃を作り出す。サグーを撃ち抜こうと狙い撃つが、サグーは俊敏に四足歩行でジグザグに動き避ける。

 そして自分の腹に強烈な蹴りが打ち込まれていた事を吹き飛びながら気づいた。宙で上半身を捻らせ着地しようとしたが。

 

「ぐッ…………!?」

 

 腹に蹴りを入れられまた宙に舞った。

 

「お前はリフティング100回ぐらいできるか? 初心者はな…………!」

 

 もう一度腹に痛みが走った。

 

「まず!」

 

「がばァ……!?

 

「ガハハハ! 100回が目標なんだよ!」

 

 宙に飛びながら痛みを感じながらも意識だけははっきりしている。アイツに100回も蹴らせる気は無い。

 

「今だ!」

 

 床から糸の弾丸がサグーの逃げ場を防ぐように突然現れ、一瞬だけサグーの身動きが止まる。そしてその一瞬の隙を糸のナイフで肩を突き刺した。

 

 サグーは顔を痛みで歪め、僕を左手で振り払った。

 床に転がった後、やってやったと笑い声が少し出てきた。

 

「…………今の……狙ってたのか? それなら大したガキだ」

 

「さぁ? 君の判断に任せるよ。生憎、此方はネタを言いふらすマジシャンじゃないからね」

 

「ガハハハ、なら俺も本気で行くぜ?」

 

 サグーは肩に深く突き刺さったナイフを抜いた。すると傷口が塞がっていった。

 

「面倒だな……」

 

 彼はまだ車を炎上させた力持ち残してある。つまり本気じゃなかったのはあらかじ間違いではない。

 僕は心の奥底で舌打ちをした。

 

 サグーはふと人間の姿に戻り、黒いナニカを取り出した。

 それは銃にしてはチャチすぎた。恐らくモデルガンだ。

 そしてまたサグーの姿に戻り、モデルガンを構えた。

 

「ガハハハ、それで何をする? って顔をしているな。ご名答、これはタダのBB弾を入れる奴だ」

 

 奴の言ってる事は半分、怪しさが混じっている。

 

「そう身構えんなよ、って言っても無駄か?」

 

 男はモデルガンを3発笑いながら撃ち始めた。

 僕はすかさず、その3発を口から出した糸で絡めた。そして手に三つのBB弾を持ち何か種をあるだろうと確認しようとしたがガソリンの匂い意外するものは……

 

「ドカン」

 

 突然熱気を感じ、全身が焼けるのを感じた。そして耳を突き破るような爆発音が終わる頃にはさっきの位置とはかけ離れた場所にいた。この廃工場の二階の手すりにまで吹き飛んでいたらしい。

 下からサグーがからかう声でこう言った。

 

「警戒したのは褒めるが、それは悪手だ」

 

 頭の血管がブチ切れそうに腹が立った。

 

「ガハハハ、カルシウム不足って奴か?」

 

 サグーは容赦なくBB弾を撃ち始め、僕はその場から走り出し逃げ出す。後ろから何度か爆風が背中を押してくれる。

 少々体は痛むが、奴の能力の一部はこれで判明した。爆発させる能力で間違ってはない。まだタネまでは理解してないが。

 体は動く、頭も動く、致命者はない。まだやれる。

 

 僕は逃げながらも撃ち続ける男の姿を捉えながら一向にチャンスを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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