ダンジョンで英雄を目指すのは間違っている!?   作:カピバランサー

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怪物祭-豊穣の女主人

 ランクアップしLv. 2となってから数日、テオは毎日のようにダンジョンに潜っていた。

 すでに到達階層は15層に到達している。ソロで活動しているので無茶をせずに探索しているものの、今でもかなり力をもて余しているのが現状だ。

 

 「ランクアップした身体能力もかなり慣れてきたな。金もかなり貯まってきたし新しい防具も買えそうだ」

 

 すこぶる調子がいい。

 固い甲殻をもつハード・アーマードやダンジョン・ワームでも簡単に槍で突き、斬る事ができる。

 どうやらランクアップも含め《人槍疾駆》でかなり槍も強化されているようだ、ヘルハウンドに槍を焼かれても無傷だったときには流石に驚いた。

 

 「これなら明日あたりに防具を買って、18層を目指せるかもな」

 

 13層以降の中層に進出して採集できる素材も積極的に集めている、採集できる確率は低いものの効率が良いのかかなりの数が集まっている。

 ナァーザさんに売るのを含めてもかなりの金になるはずだ。

 

 「それに……」

 

 ーーそれに、なんだかやけに強いモンスターとエンカウントするのが多い気がするのも原因の一つかもしれないな。

 ランクアップしてからやけに強いモンスターと出会うことが多くなった。

 

 「まぁ、これが中層では普通なのかな」  

 

 聞ける相手もいないので特に気にしないように心がける、強いとしてもそれはあの人に近づくのが早くなるだけだ。損な事など何もない。

 

 「っと‼」

 

 曲がり角でであったアルミラージを凪ぎ払い塵に還す。 

 マホトーク等の自然武器を使って来るので厄介だが、こうして近づいてしまえば対処は容易い。

 注意するのは15層から出現するミノタウロスだけだが今まで一度も闘っていない、それ以外のモンスターは敏捷的にも勝っているためさほど気にする必要はない。

 

 とはいえここはダンジョンだ、油断は命取りになる。 

 今のように素材やドロップアイテムを大量に持っている状態では万が一もあるだろう。 

 

 「しょうがない、今日のところは切り上げるか」

 

 深紅の長槍を手元に戻しながら地上を目指す。

 そうした時だたった。

 

 「ブゥオオォォォォオ‼」

 

 「っ‼」

 

 思わず槍を構えモンスターの姿を探す。

 ミノタウロスの声でもない、中層のモンスターでもないだろう。 

 未知のモンスターの声、イレギュラーを想像し思わず息を飲む。

 そして俺の目の前に現れたのは……

 

 「……たしかバトルボアだったっけ」

 

 檻に捕獲されたバトルボア、そしてそれを取り囲むガネーシャ・ファミリアの冒険者達だった。

 その光景に警戒を解きながらため息を吐く。

 ガネーシャ・ファミリアの冒険者達はそのままこちらを気にする様子もなく地上を目指していった。

 

 「何だったんだ、あれは?」

  

 オラリオに来て日が浅いので何をしようとしているのかよくわからない、というかダンジョン以外の事以外殆ど何も知らないのだ。

 

 その事を改めて思いしり、ため息を吐く。 

 これは地上で何かあっても俺は知らないと言うことだ。別に俺はダンジョンに潜るだけが趣味でも義務だとも思っていない、楽しそうな事は出来るだけ参加したいのだ。

 

 「ミィシャさんにでも聞いてみるかな……」

 

 そんなことを呟きながら俺は再び地上を目指して歩き始めるのだった。  

 

 

 

~~~~

 

 

 

 「あぁ、それは怪物祭(モンスターフィリア)だよ。テオくんは初めてだったんだね」

 

 ミイシャさんは思い出した様子のあと面倒くさそうな顔を見せる。

 

 「怪物祭っすか? 何をする祭りなんすか?」

 

 「ガネーシャ・ファミリアの冒険者が住民の前でモンスターをテイムして見せるって言う見せ物だよ。 

  ギルドの上からの命令で私たちも働かされて……ほんとに何であんなのやってるんだろうね」

 

 「ちょっとミィシャ、そんな事を冒険者に言ったら駄目だよ」

 

 面倒くさそうにぼやくミィシャさんを隣に座る受付嬢であるエイナ・チュールさんが咎める。

 ハーフエルフの女性で冒険者にも人気の女性だ、ミィシャさんの同僚でよく話をしているところを見る。 

 話したことは無いが……

 

 「エイナは真面目だねぇー、まぁともかくテオくんもなんなら明日観に行ってみるといいよ。

  オラリオでもかなり人気の祭りだからね」  

 

 「そうっすね、息抜きがてら観に行ってみるっす」

 

 俺は礼を言うとその場を離れ換金所で換金し、ヘルメス・ファミリアへと帰るのであった。

 

 

 

 

~~~~   

 

 

 

 

 怪物祭当日、俺は豊穣の女主人へと向かっていた。

 懐も暖かい事もあって今日は飯も豪華にいくことにしたからだ。 

 豊穣の女主人では怪物祭だからか、朝から酒を飲んでる人も多く見かける。

 そんな中独りで飯を食べる。

 

 ……別に仲間がいない訳ではない。

 問題は俺がオラリオに来たばかりということにあるのだ。

 

 「そう、これはなるべくしてなったんだ……」

 

 少し塩辛い飯を食べながらぼやく。

 

 「あなたは何を泣いているんですか……」

 

 そんな俺に掛けられる声。

 横をみると無表情なエルフの女性が立っていた、この前の【勇者】との決闘の際に話をしたウェイトレスだ。

 

 「あ、久しぶりっすね。

  えっと……エルフのウェイトレスさん? あと別に泣いてないっす」

 

 「お久し振りですね、貴方はあれからも変わってないようだ」

 

 「そうっすか? あれからも俺も色々な成長したんすけど」

 

 「いや、あの時と同じやけ食いをしている。

  貴方のような人はこの街では珍しい」

 

 エルフの女性は微かに微笑みながら話す。 

 

 「可愛い……いつもそんな顔で笑えばいいのに」  

 

 「え?」

 

 ーーやばい‼ 心の中で思ったことがそのまま口に出てしまった‼

  

 「ち、違うんっす‼ なんと言うか無意識って言うか……と、とにかくさっきのは忘れてほしいっす‼」

 

 驚いた様子の彼女を傍目に必死弁明する。 

 テオらしくもないミス、普段はしないミスに焦って上手く言葉に出来ずに滅茶苦茶な事を言ってしまっている。

 

 そんな俺の様子を見て再び彼女は可笑しそうに笑う。

 

 「ほんとうに貴方は可笑しな人だ。 

  建前だとしても嬉しいものだ」

 

 「いや、建前じゃないっすけど、まぁいいっす」

 

 どことなく複雑ではあるが、忘れてほしいと言ったのはテオ自信なので言い直すのもおかしいだろう。

 そんな事を考えながら残っている飯を頬張る。

 

 「俺と話していても大丈夫なんすか? ミア母さんに怒られてしまうっすよ?」

 

 「大丈夫です、もう山場は乗りきりましたから。

  それに今はミア母さんの注意はシルに向いてますから」

 

 「そうっすか、でも俺と話しても面白くないと思うっすよ」

 

 「いえ、私が貴方と話しても見たかったので」

 

 なんだか緊張する。

 ヘルメス・ファミリアの先輩たちと話す事しか無いのでいまいち会話の仕方を忘れている気がする。

 残った飯を全て平らげると再び彼女に話しかける。

 

 「なら、ついでに一緒に怪物祭を見に行かないっすか? ちょうど独りで行くのが悲しくなってたところっす」

 

 そんなテオの提案に悩む様子を見せるエルフの女性。

 しかし……

 

 「行ってくるニャ、ミア母さんはミャー達が適当に誤魔化しておくニャー」

 

 店の奥から黒髪の猫人(キャットピープル)のウェイトレスが行くように促す。

 

 「ですが……」  

 

 「どうせフロアしか出来ないし今は用無しニャ? 行くついでにシルを連れ戻してくるニャ」

 

 「そう、ですね。では少し待っていてください」

 

 彼女は納得したのか店の奥に消えていく。

 

 ーーというか用無しって、結構辛辣だな

 

 俺はその間に飯代を払っておく。

 そんな俺に先程の猫人のウェイトレスが話しかけてきた。

 

 「お前はあれかニャ? リューのこれニャ?」

 

 そう言いながら小指を立てる。

 テオは苦笑すると首を振りながら答える。

 

 「違うっすよ。ただの話し相手っす」

 

 「ならこれからニャ‼ 甘い言葉で落とすニャー」

 

 ……かなりおバカな人のようだ。

 

 「大丈夫ニャ、リューが人に興味を持つなんて凄く凄く珍しいニャ。

  今、ニャー達の中でも話題になってるニャ」

 

 「そ、そうっすか……」

 

 正直、そんな事を言っているのはこの人だけのようなし気もするがあえてつっこむのは止めておく。

 

 「お待たせしました」

 

 そんな話をしている間に彼女は普段着らしき姿に着替えて戻ってくる。

 白いポロシャツにショートパンツ、そしてその上から緑色の外套を纏っている。

 普段着かは怪しいものだか別に話すだけだ、気にする必要もないだろう。

 

 「ニャー‼ それ戦闘服ニャ⁉」

 

 「そうです」

 

 「駄目ニャ‼ 女として終ってるニャ‼

  行くついでにこの赤目に貢がせてくるニャー。

  赤目、わかったかニャ⁉」

 

 「え? う、うっす」

 

 突然のふりに思わず返事をしてしまう。

 そんな俺の様子に猫人のウェイトレスは大きく頷くとさっさと行けとでも言うように手を払うしぐさをする。

 

 「気にする必要はないですよ。

  ではいきましょうか」

 

 「う、うっす?」

 

 こうしてテオの怪物祭(デート)が始まるのだった。

 

 

 




リューさんの雰囲気あってる? まちがってないよね? 

好きなキャラだけに言葉で遣いとかが合ってるか不安になりますね……

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