ダンジョンで英雄を目指すのは間違っている!? 作:カピバランサー
俺がナァーザさんから解放されヘルメスファミリアの拠点に帰ったのは結局、日がくれるような時間帯になっていた。
早めにダンジョンから帰還したのが仇となったようだ、その分薬草などに関する知識は脳髄まで叩き込まれたが。
「ただいま戻ったっす‼」
「テオですか、無事で何よりです」
扉を開けると同時に返される言葉。
目に飛び込んできたのは正座しながら項垂れる俺の先輩、冒険者である犬人のルルネ・ルーイさんとそれを鬼の形相で見下ろすアスフィさんだった。
「ルルネさんもこんにちわ?……っす」
重苦しい雰囲気が立ち込める空間から逃げるように端の方に移動する。
ただでさえスパルタなナァーザさんの勉強の後なのだ、ここで巻き込まれるなんて真っ平ごめんだ。
だがそんな俺を逃すまいとする人物がいる。
「そ、そうだ‼ アスフィ、テオに何か言いたいことがあるんじゃなかったの⁉」
ル、ルルネさん⁉ まさか擦り付けられた⁉
背後から聞こえる仲間を売ろうとする先輩の声、後輩であり仲間である俺を売ると言う予想外の行為に思わず目を見開く。
だが、俺もこの数日で成長したのだ。
この程度で諦めるようなテオ・リードならとうの昔にミノタウロスに殺されている。
俺に話しかけようと口を開くアスフィさんに笑顔で振り返り、ポーチからこの状況を打ち破る事ができるであろう物を取り出す。
「そうっす‼ アスフィさん、言われてた頭痛薬買って来たっすよ」
「そうでした。助かります、テオ」
賄賂。
今の俺の持ちうる出来る限りの必殺技である。
「あ、あとヘルメス様って今日は居るっすか?」
「いえ、たしか『神の宴』に他の神をからかいに出掛けてるので今日はいませんよ」
そして押しの一手だ。
「は、はは。そうか~では俺は用事があるので失礼するっす‼」
同時に全速力でその場を離脱する。
こうして、俺は涙目のルルネさんの助けを求める視線を無視し、自分の部屋に逃げ帰ったのであった。
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インファントドラゴンを倒した日から数日、俺はヘルメス様の部屋にいた。
「よしっ‼‼」
思わず拳を握る俺の手には握りつぶれた一枚の紙が握られている。
その紙にかかれているのはつい先程更新した俺のステータス。
だが、そこにはいつもとは少し違う、俺は噛み締めるようにもう一度しっかりとその目で確かめる。
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テオ・リード
Lv . 2
力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0
《試練:I》
《魔法》
《スキル》
・人槍進駆
・未来視
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「ランクアップだ‼」
そう、ランクアップ。
神から与えられた『恩恵』によって得た【ステータス】。そして溜め込まれた『経験値』によって俺と言う存在の器が高次の段階へと移る作業だ。
また、一歩あの人に近づけた。
その思いが、実感が俺の胸を熱く燃やし嬉しさが溢れでる。
だがまだ足りないのだ。
あの人のような英雄になるために……改めて自分に誓いなおす。
そしてそんな俺の後ろで椅子に倒れるように座る神ヘルメス。
以前のような虚ろな目にくわえ、冷や汗をかきながら「初確認……発展アビリティ……他の神に知られたら」
そんなことをぶつぶつと呟いている。
喜び絶頂のテオとこれからの苦労を考え、震える神ヘルメス。奇しくも正反対の二人だ。
しかし、全くそんなことに気がつかない俺はヘルメス様に笑顔で話しかける。
「ヘルメス様‼ ありがとうっす‼」
「あ、ああ。気にしなくていいよ」
「これで俺にも二つ名が付くんすか?」
その言葉を聞くと共に体を椅子から転倒させる神ヘルメス。
椅子から立ち上がると同時にひきつった笑顔で俺に語りかける。
「すまないがテオ、暫くはランクアップの事を隠しておいて欲しいんだ」
首を傾げる俺に言葉を続ける。
「知っていると思うが俺のファミリアは色々な依頼を裏で受けているンだ。
そこで敵対した相手なんかにこちらのレベルが知られていると危険なんだ、だからテオがLv. 3にランクアップするまで隠しておかせてくれないかい?」
なるほど、納得だ。
「わかったっす。でもダンジョンの方は自由に潜っていいんすよね?」
「ああ、勿論だとも、そこは自由で構わないよ」
そういいながら深いため息を吐く神ヘルメス、どうしたのか気になるがやっかいごとが回ってきても困るので無視だ。
こう言うのはアスフィさんの役目だ。
「ただ、あまりに大事は起こさないように頼むよ」
「わかったっす」
俺は元気よく頷くとステータスの書かれた紙をしまいこむとダンジョン探索の準備をして部屋を出るのだった。
「よし、今日目標は13階層だ‼」
神ヘルメスの言っている意味を全く理解せずに。
テスト期間に入りエタってしまってました~
すいません……
久しぶりの肩ならし投稿です‼
短めです。
これからは出来る限りの一週間に一回は投稿できるように頑張りたいですね……