作品内の時間の流れも頑張って進めます!
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未来は従業員棟を後にし、大きなゲートをくぐり園内へと入っていった。
ジャパリパークは「じゃんぐるちほー」「さばんなちほー」など、現実世界の様々な地域を真似た区画ごとに分けられており、フレンズや動物は自分に合った気候のちほーで暮らしている。
つまり、実際はサバンナに生息するサーバルに会うには、さばんなちほーへ向かえばいいのだ。
未来は端末を取り出し、地図を開く。
さばんなちほーはゲートから最も近いちほーだが、歩きで行くには少し時間がかかる。
しかしそれは「お客様」の話であって、従業員には従業員専用の通路が準備されていたのだ。
未来は地図内の「従業員通路入り口」に目的地をセットし、移動を始めた。
するとその時、端末から合成音声が聞こえた。
「チョットマッテ、モヨリノラッキービーストガムカッテルヨ」
ラッキービーストと聞いて未来はこれは好都合だ、と待つことにした。
どんな外見なのだろうか、声はどんな感じなのか、未来が想像を膨らませているうちに時間は過ぎた。
そして未来の後ろから声が聞こえる。
「ハジメマシテ、ボクハラッキービーストダヨ、ヨロシクネ」
その声はさっき聞いた合成音声と同じだった。
未来が振り返ると、そこにはマスコットキャラの様な白と青色の体をしていて、立った耳をしていて、何とも言えぬ愛らしさを持った小さいロボットが立っていた。
これがラッキービーストなのか!と未来が興奮しているとラッキービーストの目が光りだし、また話し始める。
「ジュウギョウインフェザーヲニンシキ、パークガイドケンゲンヲフヨ、ミライ、ヨロシクネ」
それを聞いて未来は、思わず抱きしめたくなる気持ちを抑えてラッキービーストに尋ねる。
「さばんなちほーまで案内して欲しいんだけど、大丈夫かな?」
するとラッキービーストはすぐに返事を返してきた。
「サバンナチホーダネ、サイタンルートヲケンサクチュウ...ケンサクチュウ...」
そう言うとラッキービーストは未来の周りをくるくると回るように歩き始めた。
やがてそれは止まり、ラッキービーストは未来に向かって話す。
「ココカラダト、ジュウギョウインツウロカラバス二ノッテイクノガハヤイネ、サッソクイコウカ」
そういうとラッキービーストは歩き出し、地下にある従業員通路へと向かった。
ピョコピョコと歩くラッキービーストも可愛いなぁ、と思いながら未来はそのあとをついていった。
やがて目の前には、サファリバス...いや、ジャパリバスが現れる。
ラッキービーストは運転席に座ると、「セキ二スワッテネ」と未来に座るよう促した。
未来はそれに従い、後部座席へと座る。
従業員通路は地下にあるので、日の光が入らない。
その為、ジャパリバスはライトを点けてゆっくりと走り出した。
やがて、見ていても変わらない窓の景色にも飽きた未来は、ラッキービーストに話しかける。
いや、話しかけようとしたその時「ドン」と鈍い音がしたと思うと、直後に大きな揺れが未来を襲う。
前方に体を打った未来は、多少の痛みを我慢してバスから降りる。
見てみればバスは、カーブを曲がり切れず路側帯を超えて、壁に衝突していた。
当のラッキービーストは「アワワワワ....」と言ったままフリーズしたままだ。
未来は運営部へ連絡を入れようと端末を取り出すが、今居るのは地下通路。案の定圏外だった。
かなり長い時間トンネル内を走っていたように思う。
戻るにしてもラッキービーストはフリーズしたままで、歩きで戻るにも時間がかかりすぎる。
未来は、端末の懐中電灯アプリを起動しそれを頼りに前へと進むことにした。
ラッキービーストをリュックに詰めて。
暫くすると左手に、非常口マークとドアが見えた。
そこには「じゃんぐるちほー 従業員通路」と書かれた看板がかけられている。
何故さばんなちほーより遠いはずのじゃんぐるちほーの入口が先に見つかるのか。
不思議に思った未来は端末を再び取り出して地図を開く。
圏外の為、現在地は表示することができない。
が、その他の機能は普通に使えるのだ。
未来は端末に「じゃんぐるちほー 従業員通路」と入力し、検索をかけた。
すると、今いる場所であるじゃんぐるちほー 従業員通路が表示されたのだ。
未来は表示される地図の範囲を少しずつ広げていき、さばんなちほーへの入り口を調べる。
すると驚きの事実が判明した。
なんとさばんなちほーへの入口は、真反対の方向にあった。
つまりバスは、入口を通り過ぎていたのだ。どうりで先にじゃんぐるちほーへの入口が見つかった訳だ。
すると一瞬、背後からラッキービーストの様な声が聞こえたような気がした。
未来が背後を振り返っても、そこには誰も居ない。
もしかしたら、と思い未来はリュックからラッキービーストを出した。
しかし、ラッキービーストを出してみても相変わらずフリーズしたままで反応はない。が、もう一度思い出してみても、あの声はラッキービーストのモノのような気がしてならなかった。
未来は申し訳ない、と思いながらもラッキービーストを両手で持ち、上下に大きく揺さぶり始めた。
すると...
「アワワワワワワ」
ラッキービーストは再び声を出したのだった。
まるで死んだ振りでもしていたかの様に。
アワワワワ....ショウセツノカキカタ...ケンサクチュウ...ケンサクチュウ...
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