戸惑いを隠せない気持ちと、念願のジャパリパークで働けるという気持ちが混ざり合った複雑な心境の中、未来は電話で伝えられた住所へと向かう。
やがて目の前に現れたのは如何にも「都内」と感じさせられる立派な高層ビルだった。
見たこともないほど奇麗な内装に気を取られつつも未来はエレベーターへと足を進める。
やがてエレベーターは一階へ到着し、未来はそれに乗り込んだ。電話で伝えられた場所である最上階へと向かうボタンを押すとドアが閉まる。
目にも止まらぬ速さで動き出した階数表示にこれまた未来が驚いているとエレベーターはあっという間に最上階へと到着した。
ドアが開いたその先に見えたのは「ジャパリパーク運営部」の文字。
恐る恐るドアに近づき「コンコン」と二回ノックする。
すると中からは「どうぞ」の声。
未来は「失礼します」と言うと共に思い切ってドアを開いた。
入ってまず目に飛び込んできたのはポップな文字で書かれた「ようこそジャパリパークへ!」の文字と可愛いらしい動物の擬人化イラスト。
奥には沢山の事務机とパソコンや椅子、そして社員らしき人の数々。
私が唖然としていると横から声が聞こえてくる。
「こちらへどうぞ」と秘書らしき格好の女性が私を招いていた。
招かれたその先は個室になっており、もう一度「失礼します」の声とともにドアを開けた。
中に入ると大きな机を囲んでソファーが二つ。応接室の用だった。
促されて未来はソファーに座る。向かい側には若い男性が一人座っていた。
未来が自己紹介をしようとしたその時、男性が先に話し始めた。
「初めまして、私はジャパリパーク運営部代表の
そう聞かれると未来は食い気味に「もちろんです!」と答える。
すると新良は傍に置いてあったフォルダーから一枚の紙を取り出した。
「契約書です。内容を良く読んでからサインをお願いします。」
それは労働契約書だった。内容に落とし穴が無いか一応しっかりと確認する。
未来は契約書に度々出てきた「フレンズ」とのワードに違和感を覚えたが、元々「革新的な動物園」と告知されていたこともあり、質問することなく契約書にサインをした。
「これで私は...ジャパリパークで働けるんですよね....?」
未来は当たり前のことを新良に尋ねる。
新良は一瞬不思議そうな表情を見せたが、すぐに元の表情に戻し「はい、もちろんです。」と答えた。
未来がホッとするのもつかの間、新良は再び口を開いた。
「ジャパリパークの開園はまだ先です。今日から数えて三日後に全従業員の選定が終了します。そして来週から一週間、社員研修を行います。その前にまた、もう一度連絡をしますので今日はもうお帰りになられても大丈夫ですよ」
その言葉を聞いて未来は「分かりました、ありがとうざいます!」と答え、「いえいえ」と笑顔で見送る新良を後目に「失礼します」とその場を立ち去った。
再び家に帰るために未来はエレベーターの一階へと向かうボタンを押す。
ドアが開き未来は乗り込んだ。
そしてやっと「ジャパリパークで働く」という事を本格的に実感した。それと同時にこれまでの苦労と努力も一気に実感し、改めて自分を褒めちぎりたい気分になった。
やがてエレベーターは一階へと到着する。
エレベーターの移動時間は行きよりも長く感じられた。
再び奇麗な内装に目をやってから未来はビルを出る。
そしてビルの最上階を眺めたのだった。