「私、ここで働く!」
元々動物園で働くと心に決めていた未来にとって、「ジャパリパーク」という新しい動物園で働くこと、それは絶対に達成したい目標となった。
しかし、今と同じ生活をしていて動物園で働ける訳がない。動物園で働くのには知識も多く必要だ。
未来は動物園に行きたい気持ちを抑え、「動物園で働ければ毎日動物と、今よりもっと身近に触れ合えるんだ!」と自分に言い聞かせ、毎日勉強に勤しんだ。
その間も動物ブームは全く衰えず、むしろ加速していったのだった。
そして、気付ばあっという間に発表から一年を迎えようとしていた。
大学を卒業し、新社会人となった未来はノートパソコンを開く。一年前のあの日の自分と重なった。
ジャパリパークで検索をかけ、公式HPを開く。
前とは変わらず、準備中のままだが右下に「正社員募集」と付け加えられていた。未来はそれをクリックし、応募フォームに名前や電話番号、自己PRなどを書き込む。自己PRは一瞬手が止まったが、正直に自分が動物をどれだけ好きなのか、赤裸々に綴ることにした。
少し緊張したまま、送信ボタンにカーソルを合わせ、思い切ってクリックする。やがて送信完了、と画面に表示され無事に動物園への応募が完了したことを確認し、パソコンをそっと閉じた。
一週間後、未来の自宅へ一通の封筒が届いた。封筒には「ジャパリパーク人事部」の文字、間違いなく一次審査の結果だ。
恐る恐るテープを剥がし、中身を取り出し文字を読む。
そこには「一次審査通過」の文字。
勿論喜びたいのは山々だったが、あくまでもこれは一次審査で、ジャパリパークで働くにはあと二つの審査を潜り抜けなければならない。動物園で働く上で必要な情報を持ち合わせているかを問う筆記試験、そして何より大事な面接試験だ。
未来はそれに向けて、また毎日勉強や面接練習に勤しむのだった。
そして一か月後、筆記試験の日を迎えた。
試験官の「始め」の声とともにすぐさま問題を開く。が、そこで未来は絶句することになる。
殆どの問題が、予習してきた問題の類似問題だったからだ。驚きつつも未来は問題を解き続け、終了15分前には周りより一足早く終わっていた。
そして一週間後、また封筒で合否の通知書が届く。今回の筆記試験はかなり自信があったが、前回の一次試験とは大きく違い、そう簡単に合格するものでもない。「もしかしたら落ちてるかも...」と思いながらも封筒を開ける。
そこには「二次審査通過」の文字。
未来は大きく声をあげ喜んだ、そして封筒を自分の部屋へ持っていこうと持ち上げたその時、封筒からもう一枚の紙が落ちてきた。
通知書に気を取られて気づかなかったのだ。
その紙を拾って文章を読む。そこには驚くべき内容が記されていた。
「筆記試験において得点上位三位の者は面接を控除する。」
つまり、筆記試験で高得点だった者は面接無しで合格、という訳だ。
「そうなのか。」と軽く受け流しつつも文章にもう一度目をやる。
「なおその三名にのみ、この面接控除に関するお知らせを同封しております。この紙を受け取った上でジャパリパークで働く意思のある者ののみ以下の電話番号に電話してください。」
一瞬思考回路が停止する。頭の中で自問自答を繰り返す。、
「これってつまり...私..合格?」
やっと自分の中で結論が出た、が突然のことに頭が追い付かない。
特に喜びもないまま無意識に紙に書かれていた電話番号へ電話をかける。
3コールもしないうちに相手は電話に出る。
「はい、ジャパリパーク人事部です。」
まだ驚きを隠せないながらもイメージダウンだけは避けたいため声は自然と普通に戻った。
「突然お電話してしまい申し訳ありません。先週二次審査を受けて、今日その結果が返ってきたんですが、合否通知書と一緒に面接控除に関するお知らせみたいのが送られてきたんですけど、これってどういう事なのでしょうか?」
未来がそう言うと、相手は急に事務的な口調から人間としての純粋な口調に切り替わる。
「〇月〇日、〇〇区〇〇〇〇にある桜企画ジャパリパーク運営部までお越しください。よろしくお願いします。」
そう伝えられ、電話は切られた。
相手が言っていた住所を忘れないうちに未来は急いでメモを取る。
未来はようやく頭が現在の状況に追い付いた。
するとさっきまで抑えられていた喜びが一気に爆発する。
そしてもう一度通知書を手に取った。
「私、ここで働けるんだ!」