開園セレモニーが終わると、お客さんたちは係員に誘導され入園ゲートへと向かう。
いよいよ従業員以外誰も入ることのなかった園内に初めてお客さんが入るのだ。
スタッフの初々しい対応のおかげで、若干対応は遅れてしまっていたが、誰一人文句を言うお客さんは居なかった。
ゲート前に続く長い長い行列は時が経つにつれ徐々に短くなっていき、一時間もすると列は殆ど解消されていた。
それを確認した未来たちはその場を担当の従業員に任せ、従業員棟に戻ることにした。
その途中、未来の肩を新良が「ポン」と叩き、「さっきの挨拶、凄く良かったよ」と言った。「ありがとうございます!!」と未来が言うと新良は笑顔を見せてその場を去っていった。未来も続いて従業員棟に向かうために、歩き始めた。
未来は自室に戻り、パソコンを立ち上げてジャパリパークのホームページを開いた。
ブログページを開くと、記事は早速更新されていた。
タイトルは「ジャパリパーク開園!」写真には、挨拶をしている自分が写っていた。
それを眺めて達成感に浸っているうちに、未来は強烈な睡魔に襲われて眠りに着いてしまった。
昨晩挨拶原稿を考えて徹夜してしまったのが原因だろう。
未来がデスクにもたれかかり、眠っていると備え付けられた固定電話が大きな音を立てる。
驚いて起きた未来は重い目をこすりつつ受話器を取った。
相手はお客様相談室、室長の飯田と名乗った。
お客様相談室は、ジャパリパークへの様々な問い合わせの対応を主な仕事とする係である。
未来が「どうされましたか?」と問うと、飯田は「実は...ちょっと気になる問い合わせがありまして...もしかしたらイタズラかもしれませんが...」
飯田は気まずそうに切り出した。それに対し未来は「なんでしょう?」と返す。
飯田は「はい、先ほど相談室に園内の方から問い合わせがありまして...人の形をしていなくてフレンズでもない、何か奇妙な形をした青い生き物の様なモノを目撃したとの事で。実害は無かったそうですが、一つ目で凄く怖い思いをしたとの事で...嘘っぽい話ではありますが、一応確認をお願いしたいのです。場所は端末の方に送っておきます。お願いできますでしょうか?」それに対して未来は「分かりました。」と返事をして電話を切った。
オープン直後のイタズラ電話や嘘の報告はよくあることだが、もしもの事を考えた場合、一応見ておいたほうが良いと未来は考えたのだ。
未来は端末を取り出し、送られてきた住所を確認するとすぐさま手が空いている園内の職員に事の内容を説明し、付近を調査するよう命じた。
未来自身も一体のラッキービーストを連れ、車に乗り込んだ。
暫くして現場前の道路に到着すると、そこには従業員が乗ってきたであろう自転車と車が止まっていた。
未来も車を止めて、ラッキービーストと共に車から降りた。
目撃情報のあった場所にまずは向かった。
そこは道路から少し外れた場所で、ちょっと薄暗い場所だった。
未来はその近辺をラッキービーストと歩き回ったが、結局何も見つからなかった。
調査を命じた従業員からも「異常なし」という内容のメールが続々と送られてきた。
未来も調査をやめ、車に戻ろうと道路へと歩き始めた。
その道中、何もなくとも新良の耳には入れておこうと考え、電話を掛けた。
3コール目で新良は電話に出る。「もしもし」と電話が繋がっていることを確認してから未来は新良に今までの経緯を全て説明した。すると新良は少し深刻そうな口調で「一応...カコ博士の元へ行ってこの報告をしてきてくれないかい?」と言った。
カコ博士はジャパリパーク動物研究所の副所長さんで、名前だけは知っていた。
未来は多少戸惑いながらも「分かりました。」と返し、電話を切った。
そして道路へと再び歩き始めた。
後ろの木陰からは、大きな目が未来を見つめていたのだった。
あくまでも原作を参考にしたオリジナルストーリーですので、カコさんとの出会いはジャパリパーク開園後にしてみました。
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