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SM主人公の名前を修正しました。
(誤)ミツキ→(正)ミヅキ
同日。
修正しきれていなかった所を修正しました。
誤字報告ありがとうございます
「…………正直に言うわね。あなたは研究職にはまったく以て、これっぽっちも向いてない。才能自体はあるのだけれど、適性が微塵も感じられないのよ。
だから――
その言葉に、僕は――――
***
「ファイアロー、ブレイブバードだ!」
ターゲットは――
「――――潰せ」
指示はそんな具体性の欠片も持っていない一言。それだけで事足りた。
高速で一直線に突っ込むファイアローに、バシャーモは何ら反応を示さない。示す必要がないのだ、
ブレイブバードが直撃する――刹那、バシャーモは重心を体の中心へと完全に移動。回転扉の要領で
「――――壱」
――――ファイアローと同様に、バシャーモを倒そうとたきのぼりを放っていた
こうかはばつぐんだ!
質量差に
だがギャラドスのたきのぼりも、その攻防によってかなりの勢いが削がれる結果へと繋がった。加えてバシャーモは攻撃のダメージを受け流すことでさらに減らす。そしてギャラドスが通り過ぎる瞬間に尻尾をむんずと掴み、たきのぼりの威力はそのままに方向だけを調節して
「――――弐」
「ワールズエンドフォール――ッ!?」
振り回した先にあったのは巨大な岩だ。最後の一匹、ドサイドンが放った
元々ドサイドンはファイアローを狙っていたのだが、早々に撃墜されたのをみて無理に方向を変えてギャラドスをターゲットに変えたのだ。一見簡単そうに見えるものの、そこにはポケモンとの信頼関係や、このバトル形式の経験、そして技の熟練度が必要となる。僕にはまだ不可能と言ってもいいだろう――もっとも、読みと基本スペック、そして技量で大体全部なんとかなる僕には必要ないのだが。
そう、今現在このように。
ギャラドスは体がなんかヤバい方向にへし折れて瀕死となり、巨石の破片が中を舞う。
その破片を落下しないうちに蹴り飛ばし、反動によって遥か空中へと連続で跳躍するバシャーモ。ご丁寧にも蹴られた破片はドサイドンへの直撃コースである。
ただの嫌がらせだ。素早さを犠牲にして得た防御力によってドサイドンのダメージは皆無同然である。
その跳躍の果てに、バシャーモは破片さえ存在しない超高度へと到達する。だが、飛ぶための翼をもたないバシャーモではそれ以降の自由は効かない。
地上へと落下するまでは体のいい的に過ぎないと思われた。
「おし、行けるぞ!がんせきほうだ!」
ドサイドンのトレーナーはこれで決めるつもりなのだろう。次のターンは行動が出来ない代わりに圧倒的な威力を誇る岩石砲を放つ指示を出す。バシャーモが何をしたいのかはわからないが、これで倒れるのだと疑問を持っていない。
まったく――
「想像力が、足りないな」
――
一蹴目――バシャーモが虚空を蹴り飛ばす。だが所詮は虚空に過ぎない。何ら起きることはなく、衝撃は周囲へと拡散する。
そして、二蹴。バシャーモは先程の一撃によって拡散した衝撃波そのものを蹴り飛ばし、反作用によって空中で跳躍する。要するに二段ジャンプだ。物理法則に中指をブッ立てて蹴り飛ばす狼藉だが、
空中での行動を可能としたバシャーモに、もはや岩石砲は必中足りえない。余裕を持った回避に成功する。
そして、再度にどげり――こんどは地表へと向けて突撃する。
尋常ではない速度で墜落するバシャーモを見て、漸くドサイドンのトレーナーはこの高高度へと跳躍した狙いを理解した。そう、落下のエネルギーを用いた攻撃の威力の増幅だ。彼は恐慌状態へと陥って冷静な判断を下すことができない。……もっとも、そもそも彼に出来ることは何もないのだが。なにしろドサイドンは、技の反動で動けないのだから。
世の中には無反動の破壊光線やギガインパクトを連打するキチガイもいるにはいるが、彼は未だその領域には達していない。というか、普通に無理である。
「――――参」
そして落下によるエネルギーを一点に集約した飛び膝蹴りがドサイドンへと直撃する。
一撃必殺。
それを体現した攻撃は、瞬く間にドサイドンのHPを削りきった。
『――――決まったぁぁ!
今回のバトルロイヤルの勝者"も"ホウエン地方ミシロタウン出身のユウキ選手だぁぁっ!!
なんと、今回の勝利でマスターランク20連勝!圧倒的な力の差を見せつけた!コイツの連勝を止められるトレーナーはいないのか――!?』
***
――――僕は
元々自分の研究職に関する適性がいっそ清々しい程に皆無である事を理解しているのだ。空間研究所で
それを察し、下手に擁護することもなくばっさりと切り捨てたバーネット博士には好感が持てる。
そんな僕が今どこにいるのか。答えは簡単だ。アーカラ島、カンタイシティ周辺、そして
ここで行われているバトルロイヤルは、他の地方にはない珍しい形式のバトルである。誰かの手持ちが全滅するまで競い合い、倒した数と生き残った数を比べて最も有利だったものが勝者となる。言ってしまえばゲテモノバトルだ、バトルフロンティアにも共通するものがある。
だが、バトルフロンティアでは1vs1が主で、多くても2vs2のマルチバトルが精々だ。それに対しバトルロイヤルでは1vs1vs1vs1の4人でのバトルとなる。下手な行動をとって集中攻撃されては
なんというか、お行儀が良すぎるというべきか、単純な指示しか出してこないのだ。相手の技術やスペック、育成力を見定めることさえなく、表面上のものだけを頼りに戦っている。
加えて――これは個人的趣向なのだが――レベル制限の存在が気に食わない。
特殊な機械を使って、基礎ポイントや才能はそのままにレベルだけを50にまで落とす技術自体は確かに優れていると思う。
ポケモンの三値に関する概念は一般的に認知されておらず、
ちなみに、主導者はテンセ・イシャ博士だ。ジャッジさんと頑張ったねお姉さんの協力の下完成させたらしい。
確かに凄いのだが――――そのお題目は生理的に受け付けない。育成力が足りない者への救済措置らしいが、そんなの育てられるだけの力量がないヤツが悪いだろう。それが元で平均レベルが下がっては御笑い種でしかないだろうに。
そして、制限したバトルでは
対するバトルフロンティアは、職員の末端に至るまでがすべてエニシダさんが口説き落とした世界レベルで活躍できる超一流のトレーナーだった。彼等は職員としての
そんな
しいて例外を挙げるとすれば――――
「よう、ユウキ。相変わらずの蹂躙っぷりだな。いっそ清々しくなってくるぜ」
「ロイヤルマスクか。……いや、僕は蹂躙なんかよりも、もっと熱くなれるような戦いを望んでいるんだが……要望のレベルが高すぎたんだろうな。どうやらここには存在しないらしい」
もっとも、
彼こそが僕が先程挙げていた、このバトルロイヤルに於ける例外――バトルロイヤルの伝道師、ロイヤルマスクだ。伝道師と名乗るだけあって、相棒のガオガエンと共に戦う姿は思わず関心してしまう程に洗練されていた。自分だけを見て充分な結果を出すのではなく、他人がどう動くのかも計算した上ですべてを利用し、十二分の結果を手に入れる。ことバトルロイヤルに於いて、彼は僕以上に経験を積み、高い力量を持っていた。
それも当然だろう。バトルロイヤルはアローラに伝わる伝統的なバトルスタイルで――
「…………いつ見てもバレバレの変装だな。よくもまあ、そんなモノで誤魔化せる」
「なんのことかな?ぼくはククイとかいうイカした格好のイケメンとは特に交流はないぜ」
仮面の下を知っている者からするとあまりに白々しいセリフを吐くロイヤルマスク。確かに言っていることは嘘ではない。だが、それは当然だ。同一人物なのだから交流できる方がおかしい。
そこを追求することも出来るとはいえ、別にロイヤルマスクの正体がククイ博士だとバラしても僕には何のメリットもないのだ。放っとこう。
彼がここにいる理由は至って簡単、研究に一段落着いたことを僕に伝えるメッセンジャー兼ただの息抜きだ。ポケナビのカレンダー機能を使うと、当初予定していた一週間という期限はとっくに過ぎていた。たとえ空虚なものでも、とりあえず打ち込んでいれば時間は普通に過ぎていくらしい。あっという間ではないあたりがミソだ。普通に長い。とはいえその間に博士やリーリエと連絡を取らなかったのは――――
結局の所、僕は廃人でしかないのだろう。
「ま、そこはどうでもいいな。とりあえず闘おう。悩みだのなんだのは闘っている間にだいたい全部解決する」
「恐るべき脳筋の発想…………でも、今から闘うのはぼくと君じゃない」
「何を言って………ああ、
僕達の視線は、今この施設へと入ってきたばかりの少女――ミヅキへと向けられていた。
***
ミヅキは控えめに言って激おこだった。相変わらず表情は真顔である。一瞥しただけでは伝わらないだろうが、周囲のトレーナーにはその怒気が伝わるのだろう。彼女を中心とした半径数メートルに人影はみえなかった。
原因はわかっている。だいたい全部ユウキが悪い。
彼女がユウキと別れてから――つまり、アーカラ地方での初めての試練。その場のキャプテンはスイレンという、ちょっと悪戯っぽくも可愛らしい少女だった。一人旅では存在せず、ユウキとの旅では
なのに、ユウキが自分の師匠だと言った瞬間、彼女の対応は様変わりした。それはもう、手首にモーターでも仕込んでいるのではないかと思うぐらいの手のひらクルーだった。
こちらの一挙手一投足に敏感に反応し、一定以上の距離には決して近付かず、扱いが尋常じゃなく慎重になり、笑顔を浮かべることもなくなった。
ならばとこちらから踏み込んでみれば、涙を浮かべて悲鳴と共に後ずさる始末だ。
癒しだった少女にカントー時代を彷彿させるそんな対応をされては、流石にミヅキの強化ガラスのハートも傷ついた。
この苛立ちはどこへ向かう?――当然、
こんど会ったらとりあえず殴ると固く決意して特に問題を起こさずに試練をクリアし――
「――――久しぶりだな、ミヅキ」
「ユウキさんのぉ………バカァァァァッ!!!」
なんとなく入ってみたロイヤルドーム。その入口付近で堂々と「よく来たな!」をやっていた彼に、全力での腹パンを実行した。
「ゴフッ…………!?
そこは……物理、に頼らず……普通……ポケモン
「相手に圧倒的有利なフィールドで正々堂々と怨みを果たせと?絶対無理だって即死します。
「一理ある、が…………それを今使うか」
スーパーマサラ人の超スペックを余す所なく発揮し、鎧通しの応用で腹パンの衝撃を内部に余す所なく拡散。衝撃を軽減しようと後方へ吹き飛ぶという逃げ道も潰されたユウキはただ苦痛を正面から受け止める他にない。
無振り無補正
そんな2人の様子を見て引き攣った笑みを浮かべながら、ロイヤルマスクが2階から降りてくる。
「よくぞ来た!!われこそはバトルロイヤルの伝道師!その名もロイヤルマスク!!」
「…………なにやってるんですか博士」
「ロイヤルマスク!」
ミヅキがガチレスを返すと、ロイヤルマスクは普段よりも強い口ぶりで年押しをする。彼女にはイマイチ理解出来なかったが、まあ博士のやってる事だしと別にいっかとスルーすることにした。
その間にもロイヤルマスクの話は続く。
「アローラに伝わる伝統的なポケモン勝負のスタイル…………バトルロイヤルを教えるぜ!」
「バトルロイヤル…………?」
「ああ!ルールは簡単、習うより慣れろ!
まずはお試しだ!一匹ずつポケモンを出してやってみよう!」
「ちょっと待ってそれが説明なの!?」
「わー、ロイヤルマスクー。おれも試合したいー!」
ロイヤルマスクが一言で説明を終えると、2階から声がかけられる。ハウだ。ロイヤルマスクは快く頷き、もう1人のトレーナーを探そうと周囲を見渡す。
「よーし!じゃあそこのきみ。
そしてぼくも交えての4人で勝負するぜ!」
「ふっ……これが愚かなる神の采配だとしても、あえて乗ってやらんこともない。この
「げげーっ!」
誘われた1人――グラジオの姿を見て、ハウが露骨に嫌そうな表情を見せる。彼のお陰で救われた所もあるが、それでも遠慮はしない。スカル団員へのガチ切れっぷりを見てちょっとした不安はあったとはいえ、ハウはその辺の見極めは上手いほうだと自分では思っている。
「待て、ロイヤルマスク……。僕も
「いや枠もう全部埋まってるし。そもそもきみ今半死半生だろ。マトモに闘える訳ないじゃないか。あと、きみが戦っても蹂躙にしかならないからさ、若い芽を早々に摘んじまうつもりか?」
若い芽を積む、という言葉にユウキはハッとした表情を浮かべる。ミヅキの身体能力が想定よりも高すぎたからちょっと忘れていたが、まだトレーナーとしては未熟もいい所なのだ。ここで圧倒的な実力差で叩き潰すと悪影響が生まれかねない。
諦めて、言葉を吐き捨てた。
「ちっ…………貸しにするぞ」
「構わないぜ。
――――さあ、なんでも発見体験大冒険!
ポケモンバトルロイヤル――レディファイト!!」
最初は戦闘描写でゲーム:アニメ=8:2のつもりだったんだけどなぁ……最近は全体としてゲーム:アニメ=8:2(ゲーム要素の8割=ストーリー、アニメ要素の2割=戦闘シーン)になりつつある。個人的には別にこれでもいっかなーと思ってはいるのだけれども……でも今話はバトルロイヤルだからと自由にやりすぎたなぁと少し反省。後悔?いえまったく。
ミヅキの攻撃によるダメージですが、これの具体例を出すと、Lv.50でスカーフor鉢巻持ちガブリアスの逆鱗の約2倍のダメージ量になります。要するに人外です。スーパーマサラ人マジパネェっすわ。ちなレッドやセンリはこれ以上の模様