ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】 作:コッコ
光から遠ざかる者
「・・・軍を退いてくださいマークス兄さん」
カムイのこの言葉にラクスは頭が真っ白になる感覚に襲われる。
ラクスは自分でも気が付かない内に馬を走らせディアブロスを引き抜き素早い動きでカムイに接近する。
「(奴はもはや裏切り者だ。情など捨てろ・・・捨ててしまえ
)」
ラクスは自分にそう言い聞かせながらカムイを殺害せんと馬を走らせる。
マークスはカムイの言葉に信じられないとばかりに動揺をしておりその隙にラクスは通り抜けてカムイ近くに行き剣を振るおうとした。
「(捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ!)」
突然の事に王族両者は固まりカムイも突然の事にすぐに対処できない。
ラクスの情を捨てた一撃をカムイに当てようとしたが間一髪の所でカムイは避けた。
「チッ」
ラクスが舌打ちするとカムイと対峙してディアブロスを向ける。
いつも冷静なラクスのその行動にマークス達は流石に動揺を隠しきれずにいる。
「貴様、何のつもりだ」
「裏切り者を始末するのですよ。我らの国を、我らの王を、我らの民を棄てた裏切り者を殺しその首を二度と裏切りが出ない様に晒してやろうしているだけですよ」
ラクスは狂気じみた言葉を平然と口にするラクスに背筋が凍る思いをする暗夜の王族達は何とか止めようとするが体が動かない。
「さぁ、楽に殺してあげますから動かないでくださいね・・・」
「カムイ下がれ!」
リョウマがそう言って白夜の神器雷神刀をラクスに向ける。
ラクスはそれでもカムイに向かって行こうとするがマークスやレオンに押さえ込まれる。
「止めろラクス!」
「おい!いつものお前は何処に行ったんだよ。しっかりしろ!」
「離してください・・・離せ!」
マークスとレオンの必死の押さえに白夜側はどうすれば良いわからずにいるとリョウマが叫ぶ。
「奴から離れろ!奴は今、正気じゃない!」
リョウマがそう叫ぶと同時にカムイも含めて全員すぐに離れる。
カムイ達にはいつまでも狂気ともとれるラクスの叫びが耳に響くのであった。
~カムイside~
私は白夜王国に着く事と決めた。
白夜王国に着いたのはお母様を救えなかった罪悪感と暗夜王国が正しいとは思えず白夜王国を選んだ。
だけど、私が白夜王国を選んだ事でラクスさんはどうしてしまったのか狂ったかの様に私に刃を向ける。
狂気に飲まれた状態でもその剣劇は衰えを知らず私は避けるのが精一杯でした。
ラクスさんは壊れたかの様に私を容赦なく殺そうと迫り私はラクスさんに対して恐怖心を覚えてしまい動けずにいるとリョウマさん、いやリョウマ兄さんが前に立ってくれた。
リョウマ兄さんが武器を構えているにも関わらず私を狙うラクスさんは武器を手に私に斬り掛かろうとした時、マークス兄さんとレオンさんが押さえに掛かった。
どうやらこれは暗夜側でも想定外の事らしくマークス兄さんやレオンさんの焦った表情は久し振りに見た。
この状況をどうすれば良いのかわからずにいるとリョウマ兄さんが離れろと叫んで私達はすぐに離れていく。
後ろからラクスさんの声が響くなかで
~side終了~
ラクスはカムイ達が離れた後も暴れ続けた。
情を捨てた状態のラクスにマークスとレオンもどうすれば良いかわからないでいると竜に乗ったベルカが飛んできた。
「ベルカどうしてここに!」
「説明は後でします。とにかく離れて」
ベルカはカミラにそう言うとラクスに近づいていき鎧の上しかも馬の上にいるにも関わらず腹を勢いよく殴る。
「ぐはぁ!」
当然、ラクスは痛みと吐き気を覚えて崩れ落ちる。
マークス達はその奇妙な光景に唖然とするがラクスは立ち上がりマークス達は咄嗟に身構える。
だが、ベルカはラクスに対して身構えずに話しかける。
「しっかりして。貴方また狂気状態になってた」
「はぁはぁ、すまない・・・」
ラクスはベルカにそう言うとラクスは礼言いディアブロスを杖にしながら立ち上がる。
「いったい何だったんだ・・・」
「彼は一定まで感情を高めるとこんな風に暴走するんです。その度に私が止めるんですが一発で良かったです」
「一発・・・?」
「下手したら五回ほど殴る」
ベルカはそう言うとラクスの方へ向く。
ラクスは落ち着いてはいるがまだ心の安定はできておらず頭を片手で抱えている。
「今回の戦いは彼にとって負担が大きい。彼を離脱させる許可をください」
「・・・わかった。頼んだぞ」
「ベルカ。帰ってきたらちゃんと訳を話すのよ」
「はい」
ベルカはそう言うとラクスを竜に乗せて飛び立つ。
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ベルカは暗夜領の一角まで来ると降り立ちラクスを下ろす。
ラクスはへたり込む様に座る。
「貴方。ここ最近まで狂気なんて無かったのにどうしたの?」
「・・・別に」
ベルカの質問にラクスは誤魔化す様に一言しか喋らない。
ベルカはそんなラクスに黙ったまま見つめ静かな環境が生まれる。
「・・・」
「・・・カムイ様の事ね?」
「奴は裏切り者だ。敬称はいらん」
「・・・強がり」
「おい、それは無いだろ」
ベルカの挑発ともとれる発言にラクスは食い付きまるで子供の様な行動だった。
そんなラクスにベルカは話し続ける。
「貴方はいつもそうね臆病で強がりでいつも悲しい時も常に一人で悲しんで悩む時も一人・・・貴方には他に頼れる人を作るべきよ」
「・・・もういるさ」
ラクスはそう言うと立ち上がりベルカに向き合う。
そして、ラクスは徐に兜を脱ぎ素顔を去らす。
その顔は落ち着きのある好青年で静かに笑みを浮かべている。
「お前がいる。貧民街の時も暗夜軍の兵士として働いていた時も一緒だったお前がいる。ここ最近、疎遠になってしまったがそれでもお前は唯一私が頼れる人だよ」
「・・・」
ベルカは無表情でラクスを見ているが少し顔を赤く染めている。
ラクスはそのベルカの少しの変化に気付かず兜を被るとベルカに話しかける。
「じゃぁ、また乗せてくれないか?馬を戦場に置いてきてしまったから足が無いんだ」
「・・・貴方という人は」
ベルカは文句を言うが満更でもない様子でラクスを竜に乗せる。