ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】 作:コッコ
ベルカの裏切りの後、ラクスは暗夜に戻りベルカ暗殺の計画を練っていた・・・が、ラクスの生存を風の噂で聞き付け信憑性を探りそして得たレオンにラクスが生きている事を知られ、刺客を放たれる様になった。
ラクスは長きに渡る逃走と戦闘の中で、白夜王国へ落ち延びると白夜の兵士に倒れていた所を助けられ、匿われる形で白夜に滞在する事になった。
何日か滞在する中、カムイ王女の帰還、ミコト女王暗殺、暗夜の進攻、そして戦争等と様々な事が度重なり、カムイは白夜に着いて戦い、ラクスも白夜への恩を返す為にカムイと共に白夜に着いて暗夜王国との戦乱へと身を投じた。
激しい戦いの中、匿って貰った兵士の義娘であるオボロと仲を深めていき、やがて結婚し一人娘が産まれ共に戦う様になった頃、運命の再開をラクスはシュヴァリエ公国で起ころうとしている事はまだ誰も気付かない。
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カムイ達はシュヴァリエ公国を訪れ一息ついていた。
「此処が、シュヴァリエ公国ですか・・・」
「そうだ。シュヴァリエは暗夜の前線で、反乱軍の激しい抵抗活動が繰り広げられている戦場でもある。・・・戦場と言ってもやけに静かだが・・・」
ラクスは辺りを警戒しながらそう言うと、少し歩いて回りの建物を見た時、暗闇の広がる窓の中に人影があり、ラクスが見た後に姿を隠す様に引っ込めたのだ。
ラクスは噂の反乱軍かと考えていると、向こうから誰かが歩いて来るのをラクスは確認した。
「カムイ様」
「分かってます。あの人は・・・」
向こうからやって来る人物は、暗夜特有の黒い鎧を纏い、豊満な胸を強調する様に開かれた胸元、体格も顔も整った正に美女と呼べるに相応しい女性・・・暗夜王国の第一王女カミラその人だった。
「やっと会えたわね・・・私の愛しいカムイ」
カミラはそう言ってカムイに抱き寄せた。
「カミラ姉さん・・・」
「ふふ、此処に来たと言う事は暗夜に戻って来てくれたのね。大丈夫、お父様の事は私が何とかするから」
「カムイから離れろ!カムイは私達の兄妹だ!」
ヒノカはカミラとカムイの間に割り込む様に入ると、カミラは明らかに不機嫌そうな顔になった。
「あら、血は繋がってなくてもカムイは私達の兄妹でもあるのだけど・・・そうよね、カムイ?」
「私は・・・」
カムイは迷う素振りを見せた時、ラクスが割って入った。
「カミラ王女。例え貴方の主張が正しくとも、この戦争に何の関係があるのですか?」
「あら、随分と久し振りね・・・レオンの刺客で死んだのかと思ったわ」
「残念ながら・・・まだ俺の目的は済んでいないのでまだ死ねませんよ」
カミラとラクスは互いに牽制しつつ、睨み合う。
「あの、二人とも知り合いなのですか?」
「えぇ・・・昔、彼はマークス兄さんの命を狙った暗殺者だって言う面識で」
「マークス兄さんの命を・・・!」
カムイはそれを聞いてラクスの方を見ると、ラクスは涼しい顔をしてカミラに言う。
「俺はカミラ王女に、仲間を・・・幼馴染みを殺す切っ掛けを無理矢理作らされる面識でだ。・・・裏切りの主導者め、思い出しただけでも腹が立つ」
「幼馴染みを・・・殺す?一体、何を・・・」
カムイが動揺しきっていた時、ラクスはカミラを睨み付けて問う。
「貴方がいると言う事は彼奴もいる筈だ。何処にいる?」
「あの子の命を狙う貴方に教えるとでも?」
「・・・そうですか。なら、自力で探させて貰います」
ラクスはそう言ってカミラの横を通ろうとした時、カミラの斧がラクスの前を阻んだ。
「やらせたりしないわよ?」
「・・・俺はカムイ様と同じ様に貴方と戦いたい訳ではない」
一新即発の雰囲気が流れるラクスとカミラにカムイはどうすれば良いのか分からずにいると、向こうから水色のバンダナを結んだ少女に現れた。
ラクスは少女は見て顔を歪める。
「ベルカ・・・!」
「ラクス・・・やっぱり、カムイ様といたのね」
「やっぱり?俺の行動を把握していたのか・・・まぁ、どのみちお前がノコノコと現れたんだ。この機会を逃してやるものか・・・!」
ラクスはそう言って剣を抜いて飛び掛かろうとした時、ラクスの剣を手にする腕をオボロが掴んだ。
「ちょっと!何するつもりなの!」
「武器を手にしたらやる事は決まっているだろ?」
ラクスの妻を気遣う温厚な声と普段と違う冷たく冷酷な声にオボロは背筋を震わせると、次に止めに入ったのは娘でラクスと同じアサシンでもあるレーラだった。
「待ってよ父さん!その人が何をしたのよ!」
レーラの問いにラクスは答えずにいると、ベルカが答える。
「私は・・・ラクスの元仲間。今はただの裏切り者・・・」
「裏切り・・・?」
レーラは裏切り者と言う言葉に困惑していると、ラクスはいつの間にかベルカの前に立っており、ベルカを睨み付けつつ立っていた。
ラクスの黒装束のアサシンの服とフードのせいでその姿は死神その物だった。
「数年前の決着を着けるぞ。互いの因縁と遺恨を断ち切る為にな・・・」
「えぇ・・・」
ベルカも斧を手に、ラクスと対峙しもはや二人の戦闘は避けられないとカムイとカミラは判断すると、止める事を止めた・・・止めるしかなかった。
ラクスの妻のオボロと娘のレーラもラクスの戦いに口を出さなくなった。
ラクスとベルカは静かに歩き、隙を伺いつつ回る。
「貴方にも、娘がいたのね」
「その言いぐさ・・・お前も結婚でもしたのか?」
「えぇ・・・変わってて、とても性癖もおかしい人だけどね。とても、優しい人」
「そうか・・・こんな形で戦う事がなかったら、祝ってやりたかったよ」
「・・・私もよ」
ベルカがそう言い終わった時、ラクスが斬り掛かる。
対してベルカは斧で・・・防がなかった。
ラクスは目を見開いて驚き、剣を止めようとするも間に合わずにベルカを切り捨ててしまい、ベルカは血を大量に出して倒れてしまった。
「ベルカ!」
カミラはベルカの元に来ると、抱き上げ徐々に冷たくなるベルカにカミラは涙を流す。
「ご、めんなさい・・・カミラ・・・様。私は、此処で・・・死ぬつもりだった・・・」
「そんな・・・!」
カミラはベルカは最初から死ぬつもりで現れた事に泣き崩れると、ラクスがベルカの元にやって来た。
「ベルカ・・・」
「ラクス・・・ごめ、んなさい・・・わ、たし・・・」
「・・・謝るのが、遅いぞ」
ラクスはうつ向きながら涙を流し、剣を取り零して膝をついた。
「何でだよ・・・お前なら、俺を返り討ちに出来るだろ・・・本当に強いのはお前の筈なのに・・・」
「・・・私は、貴方・・・を、裏切った・・・償わな、ければ・・・いけない・・・わ・・・」
「お前には家族がいるだろ!お前の夫は!娘は!」
ラクスの言葉にベルカは笑った。
「やっぱり・・・貴方は私を殺すつもりは・・・なかっ・・・たのね・・・義父さん・・・来て・・・くれたのね・・・」
ベルカの言葉の中に義父さんと言う言葉にラクスは反応し、ベルカの肩を掴む。
「行くな!俺をまた一人に」
「貴方は、一人・・・じゃない・・・もう、家族が・・・いるじゃない・・・」
ベルカの言葉でラクスはオボロとレーラの二人を思い浮かべると、ベルカは優しくラクスを見て微笑んだ。
「さようなら・・・もし、やり、直せたら・・・また家族・・・に・・・」
ベルカはそう言って事切れると、ラクスは暫く涙を流しながらも立ち上がり、カムイの元に戻った。
「・・・俺の野暮は終わった。勝手な事をして、すまない」
「・・・いいえ」
ラクスの心中を察してカムイはそれ以上の事は言わなかった。
カミラはベルカの死に悲しみ、泣き叫ぶ中、ラクスは拳を握りしめカムイに言う。
「進みましょう。立ち止まっている暇は・・・ない」
「・・・はい」
カムイ達は悲痛な表情を浮かべつつシュヴァリエを後にし、オボロとレーラは憎み、愛した友を失った悲しみを背負うラクスをただ見守るしか出来なかった。
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暗夜と白夜の戦争はカムイ達の活躍によって終結し、数年の月日が流れた。
戦争が終わっても暗闇の広がる暗夜王国の墓場をレーラは歩き、一つの墓の前に立った。
「・・・随分と探したのよ。父さん」
レーラの前にある墓にはラクスとだけ書かれた墓があり、レーラは手にしていた花束を墓の前に置いた。
「もう・・・母さんと私を置いて急にいなくなったらと思ったら、死んでたなんて・・・噂を辿ってあちこちを旅して見つけたのは父さんの墓。・・・何で、一言もなく死んだのよ・・・」
レーラは涙を流し、ラクスの墓に問うも返る訳がなく、レーラは墓から背を向けた。
「・・・父さん。私はやっぱり、父さんと同じ暗殺者になる。今の暗夜に暗殺者達を束ねる人がいないから好き勝手殺してる人が沢山いる。だから・・・その好き勝手している人達を纏めて必要な時にしか刃を出さない様にしたい。だから・・・私は、私の身近を進むね」
レーラはそれだけを言うと去り、道を歩いていると木に持たれている水色のお下げをした少女の元に来る。
「お待たせエポニーヌ」
「別に良いわよ。貴方のお父さんのお墓参りでしょ?」
「・・・父さん、恨まないの?」
エポニーヌは暫くレーラを見つめた後、溜め息をついた。
「過去は過去だしもう死んだ奴なんか恨まないわよ」
「エポニーヌ・・・」
「ほら、辛気臭い顔なんてしないで行くわよ!貴方の歩く道って奴を」
「・・・はい!」
レーラはエポニーヌと共に暗夜王都へ足を進める。
この後に、レーラは暗夜王国において最高の暗殺者として知られ、自身が同業の暗殺者の刃に倒れるまで彼女の統括で必要以上の殺しは無くなった。
レーラの傍らには常に義賊として活動し、レーラの生涯の友とされるエポニーヌは詳しい事は残されてはいないが、レーラが暗殺された後、レーラの意思を継いだとも、他の大陸に渡ったとも言われている。
ただ、レーラとエポニーヌは互いに常に信用し合い裏切る事は絶対にしなかったと言う事はどの書物でも残されている。