ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】 作:コッコ
因みにシリアスから少し遠ざかっています。
こんなのコッコの作品じゃないと言う方は速やかなご避難(バック)をお願いします。
とある辺境の街。
その街は片田舎と言うには建物が多く、都会と言うには規模が小さい何処にでもありそうな所だった。
だがその街はある事で有名で、よく男女の二人旅が訪れる。
"そう、男女の二人旅だ"
その有名な物とは、男女のカップルが街の名所とも言える木の下で口と口を重ねれば必ず永久に結ばれると言う物だ。
口と口・・・そう、つまりキスの事である。
これは、カップルの名所である街で巻き起こる前代未聞の事件の記録である。
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カップルの名所である街に異様な格好をした男女が歩いていた。
「たく、今度は俺達が旅行かよ」
「良いじゃない別に。母さんがせっかく用意してくれた旅行よ」
「どうせならベルカと来たかったよ・・・」
その男女は此処とは違う異世界の住民、マーシレスとその娘のスミカ。
マーシレスとスミカはベルカから日頃の仕事の休みと親子の仲を深めさせようと用意した旅行に来ており、カップルの名所ではあるが、少しだけ観光名所としても名があるこの街に立ち寄ったのだ。
「しっかし、カップルの名所か・・・本当にやけにカップルが多いぜ」
マーシレスはそう言って辺りを見渡すと、右も左も前も後ろも全てカップルで埋め尽くされていた。
今にもハートが出てきそうな雰囲気の中、二人は観光していると、向こうからとんでもない速さで走ってくる鎧姿の騎士が走ってきた。
「レーラ!マクラス!何処にいるーーーー!!!」
その騎士は暗夜の懐刀の異名で呼ばれるラクスだが、暗夜の重臣的存在のラクスは現在は威厳を放り捨てて鬼の形相で走っている。
「レーラのお父さん!?」
「あいつ、何してんだ?」
二人は立ち尽くしてラクスを見ていると、ラクスは二人の前で止まった。
「マーシレスとスミカか!今回はどう・・・いや、今はそれは置いておくとして・・・マーシレス、スミカ。レーラとマクラスを見ていないか!」
「レーラとマクラス?見てないぞ俺は」
「私も」
「・・・そうか」
二人の答えにラクスは息を切らしつつ落胆すると、ラクスの後ろからラクスの部隊である親衛隊数名がやって来た。
「本当に、待ってください・・・隊、長・・・!」
「はぁ・・・はぁ・・・やっと、追い付きました・・・」
息を切らしてラクスにそう言うと、ラクスは息を切らした親衛隊を見て怒鳴り散らした。
「馬鹿者!息を切らしている暇があるならレーラとマクラスを探せ!あの二人がアレを実行する前に何としてと止めるんだ!!!」
「し、しかし・・・それでしたら待ち伏せすれば済む話では・・・?」
「甘いぞ・・・彼奴らが私の追跡を予想して今すぐに実行しようとはしないのは明白。それに彼奴らはキスをする前に此処を観光する可能性もあしな・・・それに何時、来るか分からない二人を待っていたらアレ以上の行為をするかもしれないだろ!!!」
「いやいや、お嬢様が嫁入り前にそれ以上はしないと思いますが・・・多分」
ラクスの無茶苦茶な言動に親衛隊達は困り果てた様子でラクスを宥める。
その光景をマーシレスとスミカはこの空気をどうするかと考える。
「・・・なぁ、スミカ。取り敢えず彼奴から訳を聞いてくれ」
「はぁ!?何で私なのよ!聞くなら父さんが聞きなさいよ!」
「いやだって、関わりたくないぞ。関わったら間違いなく面倒な事になる感じだぞ本当に」
マーシレスとスミカはどちらが訳を聞く役になるのか揉めていると、ラクスは一通り親衛隊を一喝したのか、親衛隊を散開させて捜索させ始める。
「・・・さて、取り敢えず私は時間が無い。何か用があるならまたの機会にしてくれ」
ラクスはそう言って走って行き、残された二人は立ち尽くして唖然としつつも助かったと内心では安心していた。
「はぁ、何だったんだよ・・・レーラとマクラスが二人きりになるのがそんなに駄目なのか?」
「二人きり・・・あぁ、成る程ね。分かったわ」
「何が分かったんだよ?」
「この街、カップルの名所でしょ?ある木の下でキスをすると永久に結ばれるって聞いてるでしょ?」
「・・・あぁ、成る程な。要するにレーラとマクラスが此処にデート的な何かで来てて、それを察知したラクスが親馬鹿本能丸出しで部隊を連れて追いかけてきたって事か」
マーシレスはそう言うと、スミカは頷くとマーシレスは呆れつつもラクスに同情する。
「まぁ、分からない事はねぇけどな・・・」
マーシレスはそう呟き、それを聞いたスミカが首を傾げていた時、また誰かがマーシレス達の前に走ってきて止まった。
「マーシレスさん、スミカ!」
「どうした?えらく慌てて。レーラと熱々のデートをしてるんじゃなかったのか?」
マーシレスは半分からかいつつマクラスにそう言うと、マクラスはマーシレスの両肩を掴んで必死な形相をした。
「お願いです!匿ってください!」
「な、何だよ!匿うって誰から」
マーシレスが聞きかけた時、向こうからゆっくりと歩いて来る何時もの鎧姿ではなく、私服を着ているレーラが現れた。
「マクラス、そこにいたのね。あ、マーシレスさんとスミカさんも来てたのですか?」
「あぁ、観光にね。なぁ、何かマクラスがかなり怯えてるが・・・一体、何しようとしてやがったんだ?」
マーシレスは意を決してそう聞くと、レーラは両手で頬を押さえながら照れる。
「もう、マーシレスさんたら!此処に来た理由は分かりますよね?」
「噂の・・・願い事をしに来たの?」
スミカがそう聞くと、レーラは微笑んで頷く。
「そうです。マクラスさんと・・・その、デートで来たんですがマクラスさんが照れちゃって逃げ出してしまったので迎えに来たんです///」
レーラの言葉を聞いたマーシレスはマクラスを見てみると、全力で首を横に震るマクラスがそこにいた。
マーシレスとスミカは間違いなく、騒動に巻き込まれた事を感じとり、後退りながら誤魔化す。
「おいおい、マクラス本人は首を物凄く横に振ってるぜ?何したらそうなるんだよ」
「え?普通に買い物に行こうと誘って、馬車に乗せたあと飲み物に入れた睡眠薬で眠らせてからこの街に運んで例の名所でキスをしようとしただけですけど?もしかして邪魔をするのですか?もし邪魔をするなら・・・友人である貴方方二人でも容赦は致しませんよ?マクラスさんは私の物です、例え貴方方二人が立ちはだかろうと彼を物にして見せます」
レーラは今まで輝かしていた瞳を暗く濁しながらそう言うと、マーシレスは得体のしれない雰囲気を感じとり、寒気が背中を走る。
「(おいおい、こいつヤンデレ系女子だったのか!?瞳が濁っちまってるぞおい!)」
「と、父さん・・・!」
スミカもレーラの以上に気付いたのかマーシレスを呼び掛けると、マーシレスは未だに瞳を濁らせているレーラの方を向くと。
「じゃぁ、俺達は観光するからまたな」
それを言うと、マーシレスは全速力でスミカを引っ張って逃げた。
「くそ!観光に来ただけで何でヤンデレ化したレーラと会わなきゃならねぇんだよ!」
「父さん!後ろ後ろ!」
「え?」
マーシレスは後ろを見ると、レーラが微笑みながら全力で追い掛けて来ていた。
「ちょっと待てーーー!何で追い掛けて来てるの!?マクラスは置いてきたじゃん!」
マーシレスがそう叫んだ時、横にレーダーの反応を感知したマーシレスが見てみると、そこに共に全力で逃げるマクラスがいた。
「お前も来てたのかよ!?」
「いやだって、置いてかれたら捕まるじゃないですか!」
「だからって此方に逃げてくんなよ!」
三人は必死に病んだレーラから逃げていると、前方にラクスが歩いているのが見え、全速力でラクスの元に走った。
「ラーーークーーースーーー!!!」
「ん?何だマー・・・て、マクラス!見つけたぞ!」
「ラクス卿!お叱りは後で受けますから助けて!」
マクラスの必死の叫びを聞いたラクスはマーシレス達の後ろを見ると、全力で追い掛ける病み状態のレーラが追い掛けていた。
「な、何だ・・・!?」
ラクスは微笑みながら全力で追い掛けているレーラを目撃した時、マーシレス達はラクスを通り抜けるとレーラは飛び上がって足を付きだし。
「ぐほぉッ!?」
ラクスを思いっきり飛び蹴りして突破してきた。
「ら、ラクスさんがレーラにやられたわ!」
「おいおい、もう理性がねぇじゃねぇか・・・!」
「逃がしませんよ、マクラスさん!」
完全に理性を失ったレーラの追撃は激しさを増して行き、街中での命懸けの鬼ごっこを強制的に興じられているマーシレスはある事に気づく。
「・・・マクラスを彼奴に渡せば俺らはたすかるんじゃね?」
「あ・・・」
「え?」
マーシレスの言葉にスミカはそれには気付かなかったと言う顔をし、マクラスは聞きたくなかった言葉を聞いたとばかりの顔をする。
暫く、無言で走っていた三人はマーシレスの行動でまた騒ぎながら逃走する。
「おっと足が滑った!」
「うぉ!危な!?」
マーシレスがわざとらしく足を器用に出してマクラスを転ばそうとするが、マクラスは運良く避けた。
だが、そこでスミカからも器用に足を出される等の妨害が起きる。
「私も滑った!」
「ちょ、何やってるんですか!足を掛けて転ばそうとするのはやめてください!」
「うるせぇ!さっさと転けてレーラの熱いアプローチに答えて来いやぁ!」
「そうよそうよ!あの子、かなり性格が良いのに逃げるなんて!」
「今そこで性格の良さを出されても説得力ありませんから!寧ろそれを言うタイミングが悪すぎます!」
「「うるさい!大人しく転けて捕まれや!!!」」
二人からの足掛けを受けてマクラスは遂に転けてしまい、すぐに立ち上がって逃げようとするもレーラに素早く迫られてのし掛かられた。
「さぁ、捕まえましたよ。ふふ、もう照れ屋さんなんですから」
「た、助けて!襲われる!意味深げな方で襲われる!!!」
「勘弁してくださいマクラス。私は本当に貴方が好きなんです・・・絶対に逃がしませんし、逃がすつもりはありませんからね」
レーラは濁らせた瞳でそうマクラスに告げると、マクラスは詰んだと悟った。
レーラに掴まれて立ち上がらされかけた時に覚悟を決めた瞬間、レーラの肩に手が置かれ、レーラは振り向くとそこにはラクスが怒りの形相で立っていた。
「レーラ」
「と、父さん・・・!」
「何か言う事はあるか?あるなら言え、そして謝れ」
ラクスの凄みにレーラは体を震わせながら頭を下げた。
「すみません・・・」
「たく、今回の騒動と言い・・・マクラスを襲ってると言い・・・お前は何をしている?マーシレスとスミカにも迷惑を掛けやがって後で二人にも謝るように。それと私はマクラスの事は絶対に認めん。マクラスの人柄には関心はあるが、奴と親族にはなりたくないし、そもそもお前をまだ嫁に出したくない」
「嫌です!私は絶対にマクラスと結婚します。だって、本当に好きなんです・・・もう、心の全てを明け渡してでもほしいのです!それにこの歳になって嫁に行かなかったら行き遅れになってしまいます!」
レーラの年齢は19歳。
ラクス達の世界で15歳が成人とするとレーラは十分、嫁入りに遅れている。
何故なら暗夜も白夜も身分関係なく女性は成人を迎えると20歳を迎える前に結婚させる為、20歳を越えてしまうと行き遅れと考えられてしまうのだ。
因みにレーラの元に身分の高い貴族や騎士達からの見合いの話が来てはいたが、ラクスが全て闇に消し去っているのは別の話。
ラクスと正気に戻ったレーラが口喧嘩をし始めた所で、マーシレスとスミカが戻って来た。
「まぁまぁ、嫁に行くか行かないかはレーラの将来だろ?気長に覚悟を決めておけ」
「お前はいきなり現れて何を言ってやがる?」
いきなり現れたマーシレスに呆れるラクスはもう疲れたとばかりに額に手を当てた。
「今回はもう帰らせて貰う。マクラス、親衛隊全員を呼んでこい。帰るぞ」
「はい」
マクラスは助かったと言う顔をしつつ親衛隊を呼びに行き、残されたラクスは溜め息をつく。
その後、マクラスは親衛隊を連れて来たが親衛隊の一人が誤って転けてしまい、手にしていた酒をラクスに浴びせて更なる修羅場を呼んだのは別の話。
滅茶苦茶になったな・・・