ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】 作:コッコ
日の当たる白夜王国とは対の暗闇の広がる暗夜王国には、暗夜王ガロンと呼ばれる暴君が君臨していた。
暴虐の限りを尽くすガロン王には常に全身を鎧で纏い、兜で顔すら隠す騎士が控えていた。
その騎士の名はラクス。
暗夜王の懐刀と呼ばれる暗夜屈指の騎士である。
しかし、ラクスは白夜王スメラギの暗殺の際に白夜の忍びの不意討ちを受け、首元を斬りつけられ死亡した。
その姿を目元に斬り傷のある人物が無表情で見届け、姿を消していく事を知らずにスメラギ暗殺は幕を閉じていった。
_________
_____
__
数年後、暗夜と白夜はスメラギ暗殺での損害が双方大き過ぎた為、互いに戦う所ではなくなっていた。
白夜側は白夜王スメラギとスメラギに付いていた王女カムイの誘拐。
暗夜側は暗夜王国の土台を支えていた騎士ラクスと王女アクアの誘拐。
双方の土台と王女誘拐によって、戦争等と構ってる暇もなく互いに建て直しをしているのだ。
そんな中、暗夜王城では意気揚々とトレイに乗せたお茶菓子を運んでいる目元に斬り傷のあるメイドがいた。
メイドは鼻歌を奏でながら一つの部屋へ来るとノックする。
「カミラ様。言われたお茶菓子をお持ちしました」
「入って良いわよ」
メイドはその声を聞くとトレイを片手に持って、もう片方の手で扉を開けた。
中には暗夜王家の王女カミラとエリーゼの二人がいた。
「ふふ、待ってたわミラ。お茶菓子をテーブルに置いてくれるかしら?」
「はい」
ミラはカミラに言われた通り、テーブルに置くとエリーゼは大喜びだ。
「わぁ美味しそうだね!ありがとうミラ!」
「喜んで頂きとても嬉しいです。エリーゼ様」
ミラは微笑みながらそう言うと、二人はお茶会を始める。
仲の良い二人にミラは微笑みながら見守っている中で、一つの記憶が呼び覚まされる。
それは鉈や鎌、鍬などで襲ってくる村人の集団から逃れようと必死に逃げ続けるミラ自身の姿だった。
目元に血を流しながら必死に逃げ続けるこの光景にミラはいつの間にか無表情になりつつあった。
「ミラ?」
「え・・・?」
ミラは突然、エリーゼに呼び掛けられて正気に戻るとミラはエリーゼに微笑む。
「何でしょうか?」
「何だか少し元気が無かったな~て、思って」
「・・・いえ、大丈夫です」
ミラはそう返すと、今度はカミラが心配そうに聞く。
「そう?何だか何時もとは元気が無さそうだけど・・・」
「本当に大丈夫ですよ」
ミラは困ったような表情になると、カミラはやはり心配なのかミラに命令する。
「そうはいかないわ。貴方に少し休息をあげるから休んできて。貴方には多くの仕事を回してか疲れてるのよ・・・これは暗夜の王女としての命令よ」
カミラはそう言うと、ミラは諦めて一礼する。
「・・・分かりました。では、失礼します」
ミラは部屋を出ると、大きな溜め息をついて廊下を歩く。
暇を持て余すミラはそのまま部屋に戻ろうとしていると、前から軍師のマクベスがやって来た。
「おや、ミラですか。丁度良かった」
「マクベス様。丁度良かったとは?」
ミラはマクベスに訪ねると、マクベスは答える。
「ガロン様がお呼びですよ。今日も、部屋に来いと」
マクベスの言葉にミラはまたかと言う表情をしそうになるが、押さえる。
「分かりました。すぐに向かいます」
「よろしい。では、行きなさい」
マクベスはそう言って歩いていってしまうと、ミラはまた溜め息をついてガロンの部屋へと向かった。
________
_____
___
ガロンの部屋では、部屋の中で外でも聞こえる声が男と女の物で別れて聞こえていた。
そこを通る者はガロンが王城でも美女と評判のミラを連れ込んで毎夜々と、夜伽をしていると言う噂を話している。
だが、その声の正体は机に向かって大量にある案件の記された書類の山と格闘するガロンとミラがいた。
「どうしてこんなになるまで溜め込むのですか・・・」
「お前がわしの騎士を止めるからだろうが・・・」
「だからと言って止めた者を政務で濃き使わないでください・・・」
「すまんなラクス・・・」
ガロンの口からラクスと言う名が出ると、ミラは慌てた様に扉を方を見てからガロンに向く。
「ガロン様。その名は捨てたのです。今は暗夜王の懐刀ラクスではなく、メイドのミラです」
ミラの正体、それは暗殺事件で死んだとされたラクス本人だった。
何故、死んだ事にしてでも騎士を止めたかったのかと言うと、ラクスとしての人生に嫌気をさし、ガロンに頼み込んで死んだ事にして騎士を止めたのだ。
王の騎士ではなく、一人の女性として人生を歩む為に。
ラクスとしての顔は常に男として振る舞っていたおかげでメイドとして働いても何の影響もなく働けている。
「そうだったな・・・メイドのミラか。メイドとして暮らし始めてからわしの息子や娘達によく頼られているではないか?騎士のラクスはかなり嫌われておったのにな・・・」
「あれだけ殺して来れば嫌でも嫌われます。私はもうラクスではもうありません・・・メイドのミラ。それだけです」
騎士時代のミラはガロンの為ならどんな犠牲も問わない冷酷な騎士として知られていた。
ガロンの邪魔となる存在がいるなら暗殺し、反乱が起これば鎮圧して反乱を起こした者達を一族全員打ち首にする程だった。
その行動をガロン以外の王族達は気に入らず、常に嫌われ、避けられていた。
ミラはメイドとしての温厚な瞳ではなく、鋭い殺気だった瞳でガロンを睨んだ後に書類の方に目を戻す。
ガロンはミラのその行動を受けても平然と不適に笑いながら言う。
「白夜への復讐すら忘れてか?」
ガロンの言葉にミラの手が止まると、ガロンは続ける。
「お前は昔、わしの政治の圧力に負けた母と共に白夜へ亡命しようとしていた。平和で心の優しい白夜なら受け入れてくれる・・・そう信じて白夜へ向かってお前は母を亡くし、目元に永遠に消えない傷が残された」
「・・・何が、言いたいのですか?」
ミラは無表情でガロンにそう問うと、ガロンは率直に言う。
「もう一度、わしの騎士となり白夜を滅ぼさんか?奴等への復讐を果たしたくないか?」
「お断りします。私はもう、気にしていません・・・もうこれ以上の流血は望んだりしませんから・・・」
ミラはそう言って立ち上がると、ガロンにお辞儀する。
「それでは、メイドとしての仕事がありますのでこれで失礼します」
ミラはそう言うとそそくさと立ち去って行き、一人残されたガロンは不適に笑い続ける。