ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】 作:コッコ
ラクスは戦況が悪化するにつれて苛立ちを覚えていた。
カムイ率いる白夜軍の予想外の快進撃によって、暗夜軍は弱体化し続け、更には暗夜領内に侵攻を許したのだ。
土地勘のあるジョーカーやフェリシア、サイラスが白夜に寝返っている事で更に戦況が不利になり、余計に苛立ちを覚えているのだ。
「くそが・・・!」
ラクスは地図を睨みつつ苛立ちを覚えながらも暗夜の勝利の為に策を練っていると扉が突然開かれ、そこから派手な髪色がラクスの視界に最初目に写るとラクスは溜め息をつく。
「ラクス!ご飯出来たの!」
入ってきたのはマークスの臣下で戦闘狂であり、ラクスの妻であるピエリだった。
だが、妻と言ってもガロンが始めた貴族の娘をを自身の近しい者に嫁がせて繋がりを強化する政略結婚で、ラクスはピエリの事を愛してはいない・・・むしろ嫌いな部類なのだ。
ラクスは多くの人間をこの手で殺して来たが、遊び心など入れはしなかった。
だが、ピエリは本当に楽しそうに戦い、命を奪っていく。
その殺人衝動は自身の家の使用人にまで手が及んでいるとラクスは聞いているので尚更だった。
だが、ピエリは何故かそんなラクスに常に甘えてくる。
ラクスがどれだけ遠ざけようとしてもピエリは必ず何かしらのアプローチを仕掛けてくるのだ。
ラクスは不機嫌そうな顔をしてピエリに話す。
「・・・後で食べる。置いといてくれ」
「駄目なの!最近、全然食べてないの!仕事は後にするの!」
ピエリはそう怒るとラクスは反論しろうとした時、腹の虫が鳴り響いた。
ラクスは常に戦略を考えてばかりでろくに食べていなかったのだ。
ピエリが料理を用意しても結局、食べずに終わる事もしばしばあった。
「・・・分かった」
「やったのね!」
ピエリはそう言って走り去ってしまうと、ラクスは溜め息をついた。
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ラクスはピエリの作った料理を黙々と食べていた。
ピエリはご機嫌そうにニコニコと微笑みながらラクスの顔を見てくる。
ラクスは料理を黙々と食べてはいるが、何時までも見てくるピエリが気になってしょうがなかった。
「何だ?何か顔に付いているのか?」
「何にもないの」
ピエリはそう言いながら微笑むとラクスは何時もの事かと気にしなくなった。
ラクスは食事をしながら思い出したかの様にピエリに伝える。
「ピエリ。私はカムイ討伐の為、軍を率いて暫く戻らない」
「・・・また何処かいくなのね」
ピエリは先程の微笑みから寂しそうな表情屁と変えた。
ラクスはその顔を見て胸がズキリと痛んだ。
正体不明なその痛みにラクスは戸惑うもすぐに平静になりピエリに話す。
「すぐに帰ってくるだろ。カムイ隊は王族が揃っていようと少数。今度の部隊は大隊・・・必ず勝つ」
ラクスは自分にもそう言い聞かせる様に言うとピエリは笑う。
「だったら早く勝って帰ってくるの!それまで待ってるの!」
ピエリはそう言ってからラクスに近づくとラクスの頬にキスをして出ていく。
「・・・早くに勝てるかは分からないがな」
ラクスはそう言って料理と共に置かれていた安物のワインを口にする。
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ラクスは暗夜軍の大隊を率いてカムイの捜索、及び討伐を開始しようと暗夜王城の前にいた。
ラクスの後ろには何百人と言える軍が集結しており、更にラクスが鍛え抜いた精鋭部隊である親衛隊までもがいた。
「さて、行くと」
ラクスが言いかけた時、暗夜軍の伝令が走ってきた。
「申し上げます!暗夜王城で白夜の奇襲!」
「何だと!?部隊を率いている者は!」
「白夜の第二王女カムイです!」
ラクスはカムイの名を聞いてしてやられたと考えた。
カムイは何らかの方法で暗夜王城の侵入経路を探りだし、奇襲を仕掛けて来たのだ。
「全軍、王城内に急げ!カムイ隊を迎え撃つぞ!」
ラクスはそう言って暗夜王城内に走った。
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ラクスは王城内に来るとそこには暗夜兵の死体でいっぱだった。
ラクスは一人、城内を歩いていた時、向こうから金属がぶつかる音が聞こえ、急いで音がする方向へ来るとそこでは暗夜軍と白夜軍が激しい戦闘を繰り広げていた。
「くッ・・・!玉座前まで攻められたか・・・全軍、私に続けぇ!」
ラクスはそう言ってディアブロスを抜くと白夜軍に斬り掛かる。
次々と向かってくる白夜兵に対して奮戦するラクスは奥へ奥へと進んで行くとある物が目に入った。
見慣れた派手な髪色をしたツインテールで軽装の鎧・・・ラクスはそれを見て動揺が走る。
「ピエリ・・・!」
ラクスはピエリを見つけ走ろうとした時、ピエリの体を金色の刃を持つ刀に切り裂かれた。
切り裂いたのは金色の刃を持つ夜刀神の継承者であるカムイ本人の攻撃だ。
「ピエリーーーーー!!!」
ラクスはそう叫びながらピエリの元に走る。
カムイ達もその声に驚き動きが止まるも、ラクスは構わずにピエリの元に行き抱き起こす。
「ピエリ、しっかりしろ・・・ピエリ!」
「・・・ら、くす?」
「しっかりしろ・・・!大丈夫だ、すぐに衛生兵を呼ぶ・・・だから・・・」
ラクスは今にも泣きそうになりながらもピエリにそう励ますがピエリは虫の息で助かりそうにないのは分かっていた。
「ラクス・・・ピエリ、ね・・・ずっとら、くすに嫌われてるの知っていなの・・・」
ピエリは息を切らしつつもラクスに伝えていく。
ラクスは嫌っていた筈のピエリの言葉を必死に聞こうとする。
「でもね・・・ピエリ、ラクスの事、が好き・・・になったから・・・振り、向いて・・・欲しかった、の・・・最後、に・・・振り向いてくれて嬉しかった・・・の」
「もう良い喋るな・・・!まだ死ぬ訳ではない。死ぬな・・・」
「・・・ラクス・・・あい、してるの・・・」
ピエリはそう言うと息を引き取った。
ラクスは静かに眠る様に死んでいったピエリを寝かせると静かに立ち上がりカムイの方に振り向いた。
カムイは明らかに動揺しきった顔で夜刀神を持つ腕が震えている。
ラクスは怒りを露にしつつカムイに言う。
「・・・武器を構えろカムイ。貴様は私の妻を殺しただけで戸惑うつもりか?」
「ッ!?」
「戸惑い止まると言うのなら・・・それは死んでいったピエリと私への侮辱だ。・・・さぁ、武器を構えろ」
ラクスはそう言ってディアブロスをカムイに向けた。
自身の嫌っていた筈の存在を失い、初めて愛する者を失ッたと気づいたラクスにはこれしかなかった。
ただ、目の前にいる敵と戦う・・・それだけを目的に。