ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】 作:コッコ
広い草原広がる中、カムイ達と過去に死んだ筈の試作品00と対峙していた。
過去の存在とはいえ、試作品00はマフーの部下である為、油断出来ずにいると試作品00は話す。
「そこまで警戒しなくても何もしません。むしろ、そんなに警戒しないで下さい」
試作品00はオドオドしながらそう言うと、咳払いして挨拶する。
「もうお分かりかも知れませんが僕は試作品00。貴方達に僕の友人の過去を見せた張本人です」
試作品00の流暢な挨拶に危険は無いとカムイ達は判断すると少し警戒を解く。
試作品00は話を続ける。
「さて・・・何故、僕がラクスの過去を見せたか分かりますか?」
「・・・いいえ」
カムイは答えると試作品00は話す。
「簡単な事です。彼の真実を知っておいて欲しかった事と、貴方方が戦う事になるマフーがどの様な存在なのかを知らせる為だったのです。僕はマフーの試作品の人工兵・・・出来損ないです。それ故にマフーからの警戒もなく此処までこれました」
「何故知らせようとしたのですか?最後にはマフーに殺されていた筈です」
「確かに死にました。ですが、僕は特殊な方法で魂を残してこの時が来るのを待っていたのです。暗黒の司祭マフーを倒してくれる人、ラクスを狂気から解放してくれる人が来るのを」
試作品00はそう言いながら手を振りかざすと回りの風景が変わった。
広い草原から古びた屋敷一室の様な所でそこではラクスが無数の鎖に縛られていた。
ラクスは気力を失ったかの様に動かず、ただ動かない。
「ラクス!?」
ベルカが叫んでラクスに触れようとするも、透き通って触れる事が出来なかった。
「無理だよ。今見せてるのは幻・・・場所を移動している訳じゃないんだ。それに、そこにいるラクスは彼の善意。狂気と自身の奥底の記憶に負けて縛られてしまったんだ」
「どうすれば彼の所にいけるの!教えて!」
ベルカは必死に試作品00に問うと、試作品00は答える。
「一つだけ、方法がある。ラクスの心の中に入るんだ。だけど危険だよ?なんたってラクスの狂気が君達が来るのを待ち構えているんだから」
「狂気が・・・!」
ベルカは狂気と聞いて少し身を震わす。
カムイ達は狂気が何なのか分からないでいると、それを察した試作品00が答える。
「ラクスの狂気・・・それは、彼の悪意。マフーが植え付けた拒絶すべき存在です。この狂気によって、ラクスは苦しめられ続けてきました。狂気が一度現れれば・・・貴殿方の仲間すら傷つける程に理性を失う」
カムイは説明の中に思い当たる事があった。
それはラクスがまるで理性を無くしたかの様にアクアを襲った事だった。
カムイが見たラクスは狂気だと分かった。
「それでも構わない。私一人でも・・・」
ベルカは狂気が潜むと警告されてもなお、ラクスの元へ行こうとする。
そのベルカの隣にレーラが立った。
「私も行くわ。母さんだけ行かせない・・・父さんに今まで母さんを泣かせた事を問い詰めなきゃ!」
「レーラ・・・」
「なら、私達も行こうかしら?」
そこにレーラに続いてカミラとルーナが立った。
「カミラ様・・・!」
「私も貴方を泣かせた旦那さんを問い詰めたいのよ。そうじゃないと彼、立ち直らないでしょ?」
「私だって同じよ。大切な仲間が死地に行こうって言うなら私だって行く覚悟はあるわ!」
二人の言葉にカムイ達も続いて立っていく。
その姿を見た試作品00はカムイ達に向けて微笑む。
「・・・貴殿方ならラクスを助けられるかもしれませんね・・・では、準備は出来てますか?」
「はい・・・!」
試作品00の問いに答えたカムイは力強く頷く。
試作品00は両腕を大きく開いて魔方陣を展開した。
魔方陣を展開した後、試作品00は一つの錆び付いた古い剣をカムイに渡した。
「もし、彼が立ち直れたら・・・この剣を渡してください。きっと、彼の守りとなり、力となってくれる筈です」
「分かりました。では、行ってきます」
カムイ達は魔方陣の中へと入ると、消えていった。
その姿を見送った試作品00の体は徐々に薄れていき、消えかけていた。
「力を使いすぎましたか・・・けれど、本望・・・ですね・・・ラクス・・・良い、仲間を手に入れられましたね・・・」
試作品00はそう言うと完全に消えてしまった。