ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】   作:コッコ

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闇の司祭

ラクスの裏切り。

 

その噂は仲間達の耳に入った。

 

仲間達は怒りや不安、疑惑を持ち始め暗く何処かぎこちない雰囲気になった。

アクアは負傷はしたが大した傷ではなかった為、杖で治療をすると何時も通りに動ける様になった。

そんな中での旅にカムイは一つだけ気になる事があった。

 

それはあの時、何故ラクスが自身を攻撃しなかったのかと言う物で、カムイはラクス程の腕の頭脳なら裏切る際にカムイを襲い殺せば軍が崩壊する事を分かっていた筈なのだ。

 

だが、ラクスは戦わずに逃げた。

 

カムイはその事を考えつつ歩いていると、遠くに古びた遺跡の様な場所を見つけた。

 

「アクアさん。あれは何ですか?」

 

カムイの指差す方向にある遺跡をアクアは見ると、アクアは険しい顔で考え込む。

 

「あれは・・・分からないわ。あの場所だけは近づく事を禁じられてたから・・・」

 

「禁じられた?」

 

「えぇ・・・あの場所は何かしらの実験施設みたいだけど、詳しくは王族ですら分からなかった。ただ、関わっていたのは透魔竜ハイドラとハイドラに仕える司祭だけよ」

 

「ハイドラ・・・!」

 

カムイはこの世界の真の敵の名前に反応する。

 

透魔竜ハイドラ。

 

この世界の混乱の元凶であり、カムイの敵である透魔軍を配下にする存在だ。

 

「どうする?禁じられていたとはいえ、今なら入る事は出来る筈だけど?」

 

アクアは遺跡に立ち入るかカムイに聞くと、カムイは頷く。

 

「・・・行って見ましょう。ハイドラがあそこで何を研究していたのかを確かめてみましょう」

 

カムイはそう言うと遺跡へと歩み始める。

そこに、何が待ち受けているのか知らないままに・・・。

 

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カムイは遺跡の入り口の前に来ると、遺跡の入り口は不気味に口を開いていた。

カムイは遺跡の不気味な雰囲気に飲み込まれそうになるも意を決する。

 

「・・・行きましょう」

 

カムイはそう言って遺跡に踏み入ろうとしたその時。

 

「ククク・・・」

 

何処からともなく不気味な笑い声が響き渡り、カムイは戸惑いを見せた。

 

「誰ですか!?」

 

カムイは夜刀神を引き抜き警戒すると、心地よい金属音と共に遺跡の奥から一人の人物が現れた。

それは、カムイがよく知る人物であり、裏切りの容疑者のされた者ラクス本人だった。

 

「お久し振りです・・・カムイ様」

 

「ラクスさん・・・!?」

 

まさかの再開にカムイ達は驚いていると愉快そうにラクスは笑う。

 

「驚きましたかな私が此処にいる事を?まぁ、そんなのどうでも良いですよね・・・」

 

ラクスはそう言ってカムイの前に歩み出る。

 

カムイは明らかに雰囲気が違うラクスに警戒感を募らせていると、後ろから誰かが走ってくる。

 

「ラクス!」

 

それは、ラクスの妻であるベルカだった。

ラクスはベルカだと分かると不気味な雰囲気から物腰の柔らかい雰囲気へと変えた。

 

「ベルカ・・・久しぶりだな。元気にしてたか?」

 

ラクスは優しげにそう言うがベルカは不安な表情を崩さない。

ベルカはラクスの抱える闇を知るからこそなのかラクスの正体を見破れた。

今のラクスは本人であって本人ではない存在。

 

ラクスの中身が入れ替わったかの様な雰囲気にベルカは絶望した。

 

「・・・まさか、貴方は」

 

「何だ?少し見ない内に自分の夫の顔を忘れてしまったのか?」

 

ラクスはベルカにゆっくりと近づこうとした時、前にカミラとルーナそしてレーラが立ちはだかった。

 

「・・・何ですか三人とも?」

 

「・・・貴方、ラクスじゃないわね?」

 

ラクスはカミラの言葉を聞いて微笑みを少し崩した。

 

「何の事ですか?」

 

「私の感だけど・・・貴方は元から何かしらの悩みを抱えてたんじゃないかしら?。・・・それに、ラクスはもっと堅物よ。そこまで軽い性格ではなかったわ」

 

カミラはそう言うと、ルーナも続く様に言う。

 

「えぇ・・・カミラ様の言う通りよ。此処まで軽い性格ではなかった・・・元の状態なら警戒させる様な事はしないで何時までも引っ込んでそうなぐらいネガティブな性格だもの」

 

ルーナがそう言うと、レーラも続く。

 

「明らかに何時もの父さんとは違う・・・カミラ様の言う様に本当に中身が入れ替わった様に性格が違う・・・貴方は本当に、父さんなのですか?」

 

レーラはそうラクスに問うように言うと、ラクスは黙ったまま三人を見つめる。

だが、すぐに不気味な微笑みを見せた。

 

「私は私だよ。少々、記憶を失ってただけだ・・・これが本当の・・・俺だ」

 

ラクスはそう言うと何処からか兜を取り出して被ると、剣を抜いた。

カムイ達はラクスが戦闘体制に入った事を感じると、身構えた。

 

一新即発。

 

その言葉が似合う程に互いに睨み合っていると、何処からか声が響いた。

 

《止めておけラクス。今は戦っている暇はないぞ?》

 

その声はラクス以外にもカムイ達にも聞こえたのか激しい動揺が広がった。

それを気にしないと言わんばかりに動揺が広がるカムイ達の前に黒い渦の様な物が現れ、そこから羊の頭の骨の様な黒い仮面を着け、黒い法衣を着た何者かが現れた。

 

「何者だ!」

 

マークスはそう言ってジークフリートを構えると他の仲間も続いて武器を構えた。

 

「待て待て、慌てるんじゃない。俺はこいつを迎えに来ただけてすよ」

 

不気味な雰囲気を出しつつカムイ達を制する様に手を軽く降ッた後に優雅にお辞儀する。

 

「初めまして。私の名前はマフーと申します・・・我が主、ハイドラ様に仕える司祭です」

 

マフーと名乗った司祭にカムイ達はいきなりの敵勢力出現に驚く。

 

「ハイドラの司祭がラクスさんに何の様なのですか!」

 

「ラクスを迎えに来たと言っているじゃないですか?。・・・まぁ、良いです。では、ラクス。行くとしようか」

 

「待て、ベルカがまだ彼方にいる。彼女を置いていくのは嫌だぞ?」

 

ラクスの言葉にマフーは溜め息をついた。

 

「兵器が人間の女に執着するとはな・・・まぁ、こんな結果も面白い。カムイ殿・・・そこにいる女を・・・渡す訳ないですよね?」

 

「当たり前です!ベルカさんを渡したりしません!それに、ラクスさんに何をしたのかしりませんがラクスさんも返して貰います!」

 

カムイはそう言うと夜刀神を構え、マフーと対峙した。

マフーはカムイの行動にまた溜め息をつくと黒い魔導書を取り出した。

すると、魔導書を手にしたマフーの回りに不気味で威圧的なオーラが発生し、カムイ達を怯ませる。

 

「・・・良いでしょう。特別に相手になってあげますよ。ラクス、あの女が欲しければ全力で奴等を叩きなさい。カムイ殿以外なら生死は問いません。カムイ殿は中々の実験材料になりそうですから・・・」

 

「ふん、言われなくてもやってやるさ」

 

ラクスとマフー。

 

この二人の強敵を相手にカムイ達の戦いが始まった。


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