ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】   作:コッコ

14 / 174
if番外編:もしも、親世代で戦争が終結しなかったら・・・~後編~

~暗夜王城~  

 

暗夜王城の一室では実権を握り裏舞台から国を支配するラクスが苛立ちを覚えながら部下である親衛隊所属の密偵の報告を聞いていた。

ラクスの部下である親衛隊の密偵はラクスに怯えつつ報告する。

 

「___以上がご報告です」

 

密偵の報告はレーラとカンナの二人の捜索だが、めぼしい痕跡がなく見つからなかった為、一度帰還して報告していた。

そんな密偵にラクスはかなり不機嫌になりながら書類を片付ける。

 

「結局、二人は見つからずじまいか?」

 

「・・・はい」

 

密偵はそう怯えつつも言うと、ラクスは深い溜め息をついた後、机を力強く叩いた。

密偵がビクッとなった後、ラクスは密偵に静かに告げる。

 

密偵が苦戦するのは無理もなかった。

先の戦いで白夜出身の忍びスズカゼが妻のニュクスを庇って矢を受けて戦死してしまったのだ。

ニュクスは夫の死後、悲しみを見せなかったが陰でスズカゼの死を嘆いている。

 

ラクスはスズカゼを密偵として一人の仲間として高く評価しており、惜しい存在だと考えて手厚く弔っている。

 

「馬鹿者が・・・!見つからないなら白夜領の奥だろうが探せ。何としても二人を見つけ出し連れ戻さなければ・・・分かっているな?」

 

ラクスがそう言うと密偵は慌てて部屋を出ていき、ラクスはまた書類仕事に戻った。

ラクスは二人の所在が割れないまま白夜に攻め込めば二人に危害が加わると考え、次の遠征の延期命令書を書いた。

 

「どのみち、私を蹴落とそうとする愚か者を片付けねばなるまいしな・・・」

 

ラクスはそう呟きながら、マークス派に属する政敵に対しての対抗策を考えていく。

 

_______

____

__

 

 

レーラはシノノメとの戦闘で傷ついた傷を勘違いさせ、体を不自由なく動かせる様になった。

最初は傷の痛みでまともに動けず、回りの者達に助けて貰っていた。

 

レーラは母ベルカの死が原因で白夜嫌いになった父が白夜の文化で唯一気に入っている縁側に座っていた。

傷が完治した事で遅かれ早かれ捕虜としての沙汰が下されるとレーラは思い待っていると、そこにマトイがやって来た。

 

「レーラさん。リョウマ様がお呼びです」

 

「・・・沙汰が下るの?」  

 

「・・・はい」

 

マトイはレーラの問いに答えると、レーラはうつむきながらも立ち上がった。

 

「行きましょう。処刑されようが幽閉だろうが・・・もう、人を殺す事がないならどっちでも良いです」

 

「・・・レーラさん」  

 

マトイはレーラの事を心配する。

 

マトイは数日の間だけレーラの世話をしていた。

短い日数でも、レーラの性格は分かりやすい物で、レーラは純粋でマトイと同じ努力家でとても優しい人物だとマトイは分かった。

 

その証拠に母殺しの憎い敵国の人間である筈のマトイに少しだけ笑顔を見せるのだ。

 

マトイはうつ向きながらも、レーラをリョウマのいる玉座の間へと連れていく。

 

________

_____

__

 

 

レーラはマトイと共に玉座の間の前に来ると、玉座の間の中にはリョウマと臣下のサイゾウ、軍師のユキムラを始めとする重臣達が集まっている。

 

レーラは静かに深呼吸すると、玉座の間へと入った。

 

ただならぬ重圧感に襲われながらもレーラはリョウマの前へと出た。

 

「お前が・・・レーラか?」

 

「はい」

 

リョウマの威厳のある問いにレーラは臆する事なく答えると、リョウマは感心した様な表情を見せる。

 

「お前、まだ若い筈だが中々しっかりしているな?」

 

「一々、怯えていても仕方がありません。それで?私に下される沙汰は何ですか?」

 

レーラは礼儀の無い言葉でリョウマにそう言うと、回りの重臣達から無礼等の言葉が飛び交い、リョウマが制す。

 

「そうだな・・・沙汰はとうに決めているがその前に聞きたい」

 

「何ですか?」

 

「お前は、自分の父であるラクスに不満は無いのか?」

 

「ッ!?」

 

レーラはリョウマに見透かされたかの様に図星を突かれて驚く。

レーラは動揺しつつも見透かされない様にリョウマに言い返す。

 

「何を仰っているのですか?私が父に不満を抱えていると何故、そう言うのですか?」

 

「お前は優しい人物だとカンナから聞いてな・・・もしかしたら不満があるんじゃないのかと思ってな」

 

「・・・ある訳がないです」

 

レーラは動揺をしつつもラクスの事を思い出す。

 

ラクスは復讐の為に暗夜王国の実権を取り上げ、私物化している。

だが、だからと言って私欲の為だけに政治をしておらず、国を治める存在として民の為に、国の為に、そして王族達の為に政務をこなしている。

復讐の為に戦争をすると同時に白夜さえ手に入れば国の民は飢えや暗闇の恐怖から解放されると信じての行為でもあるのだ。

 

マークス達もそれを分かっているからこそ、下手に大きな事を起こさずにおり、ラクスも暗夜王であるマークスへの忠誠を忘れた訳でもないのだ。

 

レーラは確かに何時までも争いを続けるラクスに不満を覚えるも、それが正義から来ている物だとも知っているからこそ、リョウマにこれ以上言われたくはなかった。

 

「父に不満がある訳がないんです。絶対に・・・」 

 

「何故だ?」

 

「何故、て・・・それは・・・」

 

レーラはリョウマの問いに答える事は出来ない。

父であるラクスの事は慕っているが、やはり戦争を続けるラクスに不満はある。

純粋な性格故に不満は無いと言っても、心の奥底の感情が否定してしまうのだ。

 

「・・・答える事が出来ないか。確かにラクスは優秀で、此方からもラクスの行動は把握している。しかし・・・奴は度の過ぎた争いを続けている。民を疲労させてまで争い続けるのに何が不満はないのだ?」

 

「うるさい!」

 

レーラはつい怒りに任せてそう言うと、リョウマはにがむしを噛んだかの様に歪ませる。

 

「確かに私たちは度の過ぎた争いを続けているわ・・・でも、争って奪わないと此方の民が飢えて死ぬのよ!光のあるこの国で夢物語を語ってばかりいる貴方達に暗夜の何が分かるのよ!」

 

「貴様・・・!」

 

レーラの叫びでリョウマの側に控えていたサイゾウが前に出ようとした時、リョウマが制す。

 

「待て」

 

「しかし!」

 

「・・・確かに俺達は暗夜について何も知らないし、ただ敵としか見ていなかった。故に深い対立と憎しみを引き起こしてしまい大事な兄妹を亡くしてしまった」

 

リョウマの言葉にレーラは少しだけ落ち着きを取り戻す。

 

「大事な兄妹であるカムイだけでなく、白夜や暗夜の愛する者たちまで亡くした・・・もう、これ以上の争いを続けてお前達、次の世代が大事な者を亡くす様な事をさせたくない。お前の母親の様にな・・・」

 

リョウマは目を瞑りながら母親であるミコトを思い出す。

カムイに似た性格をしていたミコトは誰もが慕う女王であったが、何者かの魔の手によって亡くなった。

 

リョウマは母親を亡くしたレーラと自分を重ねて見たのだ。

母親を奪った深い憎しみを宿して敵を殺すその姿を。

 

「私は・・・」

 

「・・・これ以上はもう良い。お前に沙汰を下す。お前は・・・暗夜王子カンナと同じく幽閉。以上だ」

 

リョウマはそう言うと、レーラは呆然とした。

レーラの頭の中ではどうしても幽閉と言う言葉が信じられず、敵として処刑されるつもりでこの場に望んだのにだ。

 

暗夜騎士として不名誉な幽閉を下されたレーラはリョウマに向かって叫ぶ。

 

「待ってください!何故、幽閉なのですか!私に生き恥を晒せというのですか!!!」

 

レーラは騎士として生き恥を晒す事は絶対に避けたかった。

生き恥を晒した不名誉がラクスに伝われば自分は捨てられてしまう。

そうレーラの頭の中でその言葉が支配して必死にリョウマに懇願しようとした。

 

「馬鹿者!!!」

 

リョウマは必死に処刑を求めるレーラの一喝すると、リョウマは怒鳴る。

 

「先程言ったばかりだろ!大事な者を亡くす事はさせたくないないと!お前にはまだ帰りを待っている者達がいるのに死のうとする気か!!!」

 

リョウマの言葉にレーラは自分の主君であるジークベルトや弟の様なカンナ、友達のゾフィーとエポニーヌにオフェリア達を思い出す。

そして、最後に父であるラクスを思い出すと涙を流して崩れる。

 

「私は・・・私は・・・!」

 

「・・・お前が死ぬ事はない。死ぬ事が誇りと思うなら、大事な者達を思いだして留まれ。死ぬ事はお前の事を思っていてくれる者を悲しませるだけだからな」

 

レーラはリョウマの言葉を聞いて完全に負けてしまった。

騎士の誇りなど忘れて泣き声を挙げた。

今まで抱え続けた苦しみや久納をレーラは泣いて吐き出していく。

 

_________

______

___

 

 

その頃、暗夜王国では暗夜王国の王女である一人のレディとして認められる程に成長したエリーゼが歩いていた。

だが、エリーゼの顔は昔の様などんな屈強をも跳ね返す程の笑顔は無く、無表情でしかなかった。

 

エリーゼがこんな風になってしまったのはカムイの死が大きくか関わっているが、大きな原因は臣下であるハロルドとその妻であるエルフィが共に一人息子を残して戦死してしまった事だった。

カムイや二人が死んでからエリーゼは笑う事を忘れてしまったかの様に笑う事がなくなり、無邪気なその姿を見せる事は無くなってしまった。

 

「・・・はぁ」

 

エリーゼは軽く溜め息をついた時、ラクスの部屋の前を通り掛かった。

エリーゼは何時もの感じで通りすぎようとしていた時、ラクスの部屋から誰かと話す様な声が聞こえた。

 

「そうですか。___はご健在ですか」

 

「誰と話してるのかしら?」

 

エリーゼは人格こそ変わってしまっているが、中身は変わらずで、好奇心から聞き耳を立てた時、ラクスの声が聞こえる。

 

「まさか二人が囚われるとは夢にも思いませんでした。それで?今は二人を助ける必要はないと言うのですか?・・・まぁ、ハイドラがそう言うのなら」

 

「(ハイドラ・・・!?)」

 

エリーゼはかつて暗夜王国を治めていた父ガロンが信仰していたハイドラの名を聞いて驚愕した。

エリーゼ自身はその時に産まれてはいないが、ガロンがハイドラを信仰し始めてから暗夜が可笑しくなったと言う事は聞いていた。

そんな暗夜王国とガロンを狂わしたハイドラをラクスが口にするとは夢にも思わなかった。

 

「まぁ、貴方との契約は守りますよ。復讐がなされるのなら・・・白夜を血染めにしてしまっても構いません。それよりも問題なのは・・・ベルカを甦らせてくれるのかと、言うと事です」

 

ベルカを蘇らせると聞いたエリーゼは更に困惑していると、ラクスは続けた。

 

「貴方が何を成そうとしているのかは知りません。またベルカとレーラで平穏に暮らせるのなら・・・白夜の民なんてどうでも良い。復讐する国の民なんて・・・ただの生け贄でしかない」

 

ラクスはそう言い終わると狂った様に笑いだし、エリーゼは聞き耳を止めてマークスの元に向かおうとした時、ラクスの声が冷たく響く。

 

「さて、こんな所で聞き耳を立てている王女様。中に入ってはどうですかな?」

 

「ッ!?」

 

ラクスの冷たく響く声にエリーゼはどうするべきか迷った。

下手に入れば口封じとして暗殺される可能性がある。

ラクスは暗殺者の顔もあり、暗殺なんてお手の物で、殺されてそのまま闇に葬られる可能性がある。

 

エリーゼはその可能性が過った時、迷う事なく走った。

入らなかった可能性など考えず、ただ走った。

 

そんな中、ラクスは執務室で呑気にコーヒーを口にして微笑んでいた。

 

「相変わらず廊下を走ってしまうのですね・・・何も心配しなくとも口封じなどしないのに・・・」

 

ラクスはまるでエリーゼの考えを読んでいたかの様に狂気的に微笑んだ。

 

時代の闇は深くなっていくばかり・・・

 

一人の希望を失ったこの世界で残された物達はどう行動するのかは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"まだ、分からない"




何か無理矢理終わらせた様な感じになってしまいました。

更に名前だけだったり未登場だったりとガタガタですね・・・

次はうまく書ける様に努力します

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。