ファイアーエムブレムif ~Darkside~【本編完結】 作:コッコ
カムイ達とラクスは幻影兵の番人を倒し、扉の前に立った。
その扉は何か異様な気配を放ちながら閉じられている。
「すごーい!とうとう最上階だね!この扉の向こうに、虹の賢者がいるのかな?」
「いや、まだ油断は禁物だよ。扉の向こうから・・・妙な気を感じる」
はしゃぐエリーゼに、タクミは扉の異様な気配を感じたのか警戒を促す。
「み、妙な気ですか?分かりました。慎重に行きましょう」
「そうね。まだ仕掛けがあるかもしれないもの。気を付けて・・・カムイ」
心配する仲間達に見守られながらカムイは扉を開け放った。
眩しい光が最上階を包み込み、光が消えた時にはそこは、虹の賢者をよく知るあの老人の家だった。
「・・・えッ!?ここは・・・」
「ふぉっふぉっふぉ・・・よく帰ってきたのう、お前さん達」
「えぇッ!?貴方は・・・さっきのおじいさん!?ど、どうしてここに!?だって、ここは、塔の・・・!」
老人が現れると同時に、カムイは驚きの声を挙げた。
「あぁ。この場所は・・・塔の最上階と繋がっていたのじゃよ」
老人は愉快そうに笑っていると、呆れる様な声でラクスが老人に話す。
「もう、正体を明かしても良いでしょ・・・虹の賢者殿?」
「えぇッ!?」
「ふぉっふぉっふぉ。やはり気づいておったか」
老人はそう言うと、眩しい光を出して姿を替えた。
その姿はまさしく虹の賢者だった。
「久しぶりじゃのう。ラクス」
「お久しぶりです。虹の賢者殿」
「えっと・・・二人は知り合いなのですか?」
まるで親しい友人同士の会話にカムイは戸惑いながらも聞く。
「えぇ・・・昔、ガロン様に無理矢理、登らさた時に・・・」
「ふぉっふぉっふぉ。あの時、力を求める理由を聞いたら無理矢理やらされたからと言いおってつい、笑ってしもうたのう」
「・・・勘弁してください」
虹の賢者が笑いながらそう言うと、ラクスは頭を抱える。
「それって・・・ラクスさんは虹の賢者の力を得ているのですか?」
「そうじゃ・・・其奴は本当に無欲な奴でのう。力も知恵もいらないから下に帰してくれと言った。じゃが、もうラクスは力を身に付けてしまっておったのであの時は本当に困ってしまったわい」
「もう、良いですか・・・?話を続けてください」
虹の賢者の話が長くなるのを感じ取ったラクスは、呆れるつつも虹の賢者に話の続きを促す。
「おう、そうじゃったな。では、あらためて・・・試練を乗り越え、よく辿り着いた。ラクスを抜いてお前さん達こそ五番目の勇者じゃ。聞きたい事があるんじゃろ?さぁ、何でも言うてみい」
「・・・はい。貴方に聞きたいのは竜の居場所です。私はどうしても竜に会いたいのです。私は竜に会って・・・この戦争終わらせる方法を聞きたい。白夜と暗夜の無益な戦争を終わらせる為なら・・・何でもします!」
カムイは思った通りに虹の賢者に言うと、虹の賢者は静かに言葉を返す。
「ほぅ・・・戦争を終わらせる、か。・・・成る程。では、竜の居場所を教えてやろう。その前に・・・その夜刀神をかしてごらん」
「あ・・・はい。どうぞ」
虹の賢者にカムイは夜刀神を渡すと、虹の賢者は何かを唱え始めた。
「・・・___________我は神刀を鍛えし者、禁忌を犯せし者、伍色を紡ぎし者・・・我が名に応えよ、炎の紋章よ_____」
虹の賢者がそう唱え終わると、夜刀神が激しい光を出し、部屋を包む。
夜刀神は光と共に姿を変え、新たな姿となった。
「これで・・・お前さんの刀は力を得たはずじゃ」
「ありがとうございます・・・!」
「もしかして・・・これがフウガ様が言っていた炎の紋章ですか?」
「・・・いんや、違う。炎の紋章を完成させるには・・・五つの神器が・・・揃わればならん。・・・その時こそ、炎の紋章は・・・伝説の・・・ファイアーエムブレムとなる・・・」
「ファイアーエムブレム・・・」
虹の賢者が言う、ファイアーエムブレム。
神器と言う事は、タクミを除いてリョウマ、マークス、レオンがいなければならない。
ラクスはこの三人がカムイの元に来るのかと、ラクスは気になったが今は考えない事にした。
「あぁ・・・それを得なければ・・・お前さん達は、強大な敵には勝てんだろう・・・だが、案ずるな。自分の信じる道を・・・まっすぐに進めば・・・神器は・・・揃うはず・・・っ、うっ・・・」
「賢者様ッ!?」
虹の賢者はいきなり倒れ、カムイは虹の賢者を抱き抱える。
ラクスも慌てて虹の賢者に駆け寄る。
「サクラさん、祓串はありますか!?」
「は、はいっ!」
「エリーゼさんも、杖で回復をお願いします!」
「・・・頑張るね!」
「死ぬなじじぃ!お前はこんな事で死ぬような奴じゃないだろ!?」
カムイはサクラ、エリーゼに回復を指示し、ラクスは必死に虹の賢者に叫ぶ。
「・・・ふぉっふぉっふぉ・・・口が悪いのが・・・直ったと・・・思ったのじゃがのう・・・」
「しっかりしろ!口が悪いのは元からだと、知っているだろ!」
ラクスは叫び、サクラとエリーゼが回復させようと来た時、虹の賢者はやんわりと断った。
「やめておけ・・・わしはもく・・・寿命じゃよ・・・」
「え・・・?」
「それに・・・人の魔法は・・・わしには効かん・・・」
「人の魔法・・・?」
カムイが人と言う単語に、疑問に思った瞬間、カムイは何かに気づいたかの様に声を挙げた。
「!!・・・貴方は、もしかして・・・」
「・・・あぁ。このわしが、お前さんの探していた竜じゃ・・・」
「遥か昔・・・十二の竜はみな野心にあふれ・・・世界の覇権を巡って争った・・・わしは夜刀神や神器を創り・・・竜の戦いに人間達も巻き込んでしまった。その罪滅ぼしができるまでは・・・死にきれんかったのじゃ・・・」
「そんな・・・」
カムイは悲痛な表徐で虹の賢者を見つめる。
「お前さんの夜刀神には・・・わしの・・・最後の力を込めておいた・・・カムイよ。その・・・夜刀神で・・・自分の道を・・・切り開く・・・のじゃ・・・それと、ラクス・・・お前は・・・もう、一人ではない・・・仲間を信じ・・・共に・・・歩むのじゃ・・・・・・」
「・・・賢者様・・・・・・」
「・・・・・・じじぃ・・・」
虹の賢者が息を確認したカムイとラクスは、悲痛な表情で立ち上がった。
微笑みを浮かべながら眠る虹の賢者を見てラクスは兜の下で涙を浮かべる。
「・・・ありがとうございます、賢者様。いえ、古の時代から生きた・・・偉大なる竜よ。貴方の想いは、貴方の力は・・・決して無駄にはしません。・・・さぁ皆さん、無限渓谷へ戻りましょう。白夜と暗夜の空が入れ替わる日は、もうすぐです」
カムイはそう言うと、仲間と共に部屋から出ていく。
ラクスは暫く、部屋に止まって虹の賢者を見つめていたが、すぐに仲間を追う様に出ていくのだった。