Fate/Grand order 人理の火、火継の薪   作:haruhime

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立夏君が体験したケルト+不死式時間圧縮(物理)戦闘訓練をどうぞ。

不死者ってさ、疲れててもエスト一杯で疲れと眠気抜けそうじゃない?(偏見)

独自設定爆発してるので注意。

あとケルト描写有り、現代人には早いかもしれないので注意して下しあ。


Interlude ―楽しい戦闘訓練(ケルト式)―

召喚ルームでの一件にへこみつつ、俺はステータス調整を行った後、クーフーリンに仮想訓練室に連れ込まれた。

 

その時のシャナロットの表情に地味にダメージを受けつつ、訓練に向けて思いをはせる。

 

これから始まるケルト式訓練とは、おれはどうなってしまうのだろうか。

 

強くなれるといいのだが。

 

訓練室中央に、完全装備で立つ。火継の薪から受け取ったらしい指輪をはめる。

 

死んでも壊れることで、なかったことにできる指輪らしい。

 

どういうことだ。

 

傍らには、二槍を携えたクーフーリンが立っていた。

 

「おし、んじゃあまずは、獣人共を蹴散らしてもらおうか。」

 

彼の言葉と同時に、忌まわしい記憶がよみがえる。

 

目の前には、あのフランスの深い森が再現されていた。

 

感じてしまう。

 

森に潜む悪意を。

 

あの時と同じだ。

 

俺を仮の獲物だと思っている獣共が、近くに潜んでいる。

 

腰の剣を抜剣し、盾を構える。

 

どこだ、どこからくる。

 

「そうそう、獣人の数は不明。状況によって変えるからな。」

 

耐久組手か。

 

かすかな殺気。

 

近い。

 

木肌がこすれる音。

 

上か!

 

盾を頭上に。

 

大重量がかかる。

 

盾に斧刃が潜り込んでくる。

 

その金属の煌きが、盾に入った切れ込みから僅かに覗いていた。

 

刃が抜ける。

 

盾に乗っていた獣人は、しなやかな身のこなしで俺から距離をとる。

 

幸い、今俺がいるあたりは少し開けている。

 

直剣を振り回しても、木に食い込んだりはしないだろう。

 

今はまだ、一対一。

 

落ち着いて処理しないと、この後さらにきつくなるだろう状況に対応できない。

 

ジワリ、と相手が間合いを詰める。

 

膂力も瞬発力も相手が上。

 

こちらは盾がある分、防御という点ではアドバンテージがあるが、それも容易くひっくり返されかねない。

 

リーチはこちらの方が、こぶし一つ分は長い。

 

この差を生かせるかどうかだろう。

 

こちらも、わずかに間合いを詰める。

 

互いの武器の先端が触れる寸前、敵が動いた。

 

真っ向からの重撃。

 

まさか、一歩踏み込んでの、両手振り落としをかけてくるとは。

 

予想の外側の行動に、ほんの一瞬反応が遅れる。

 

この時点で、直剣や盾によるパリィは間に合わない。

 

盾を起点に、斧刃をかすらせる。

 

決して引っ掛かりを掴ませないように角度を変え、受け流す。

 

渾身の一撃を流された獣人は、致命的なスキをさらしていた。

 

たとえ身体能力に優れていようと、こちらはこの流れに乗れるように準備している

 

盾を構え、攻撃を流しながら、引き付けた直剣を、相手ののどに叩き込む。

 

獣人の背骨、その軟骨の位置は把握している。

 

喉と動脈、神経を断ち切る軌道で突き込んだ直剣。

 

強靭な毛皮と筋肉をものともせず、生物にとって重要な部位を切り裂いた。

 

神経を切断され、脱力した体に足をかけ、直剣を引き抜く。

 

この作業が、何気に大きなスキになるため、やる際には注意しないといけない。

 

特に頑丈な骨と筋肉にかみ込まれてしまうと、そう簡単には抜けなくなってしまう。

 

実際、フランスではそれで直剣なしで戦う羽目になったこともある。

 

周辺に気を配っていたが、今回そういう襲撃はないらしい。

 

「よっご苦労さん。筋は悪くねぇんじゃねぇか?」

 

クーフーリンが背後に現れる。

 

声をかけられるまで全く分からなかった。

 

「んじゃ、次に行こうか。肩慣らしにはなっただろ?」

 

彼は言葉と共に姿を消し、代わりに周囲の木々から獣人が現れた。

 

まさかこいつらの接近をごまかすために話しかけてきたのか!

 

「顔が引きつってるぜ?ま、その通りだがな。」

 

獣人たちは、その手に握る武器を掲げ、雄たけびを上げた。

 

それに呼応するように、周囲の森からも雄たけびが上がる。

 

何匹いるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

時々やってくるクーフーリンが、火継の薪から受け取ってくる緑花草や黄昏草で腹を満たし、これまた空になると汲んでくるエスト瓶で怪我と肉体的疲労を癒しながら行われる耐久組手は、まだ続いている。

 

すでに時間感覚は失われている。

 

補給タイム以外は常に敵に囲まれている状況であり、スタミナがどうとか言える環境ではない。

 

百か?千か?

 

どれだけの獣人を屠っただろうか。

 

なんか途中から色違いのやけに強いのとか、ヤギの角を持つ魔法弾ぶっぱなしてくる筋肉達磨とか、下半身蛇女とか、森の中で突撃(チャージ)かましてくる半人半馬とか、全身岩の妙に固いやつが出てきたけど、それも含めてすべて切り潰している。

 

一部獣人じゃないだろ。

 

もう、戦闘については何も考えられない。

 

なぜかって、今傾けた俺の顔の横を通り過ぎた緑の閃光みたいに、完全な不意打ちで外野が手を出してくるからだ。

 

それもクーフーリンの投げ槍とか火継の薪の弓矢とかだぞ。

 

考えてたら当たる。

 

直感だけで戦闘している状態だ。

 

今、俺の体は現状最も適した動きをしているだろう。

 

同じ剣を振る動作一つとっても、蓄積する疲労は格段に落ち、速度も威力も上がっている。

 

回避動作でも、薄皮一枚切らせないぎりぎりを見極めることができるようになってきた。

 

余計なことを考えず、力の流れに任せた動きをすることで、最も高いパフォーマンスを発揮する。

 

剣が奏でる空気を割く音に、力みがないのが証拠だ。

 

非常にいい感じである。

 

大ぶりの一撃を誘発して躱し、下がってきたヤギ角の首を刎ね堕とすと、周囲の敵が途切れる。

 

補給タイムかな?

 

「よっ、ご苦労さん。」

 

投げ渡されたエスト瓶を飲み、緑花草と黄昏草を詰め込む。

 

青臭く苦みの強い草を飲み下した。

 

しばらくすると、体を力が満たしていくのがわかる。

 

「第一段階は終了だ。」 

 

クーフーリンの背後に、黒い粒子がわだかまる。

 

現れたのは、冬木のアサシン。

 

喉に突き立つダークを認識した時には、もう遅かった。

 

塗られた毒が回り、持とうとしていたエスト瓶が手から滑り落ちる。

 

「おいおい、第二段階はもう始まってるんだぜ?」

 

赤い槍の一閃で、アサシンは黒い霧となって消滅する。

 

落としたエスト瓶を拾い上げ、中身を傷口に零す。

 

ダークは自然に排出され、呼吸が戻った。

 

「立て。」

 

立ち上がると、エスト瓶を戻され、彼は再び森に消えた。

 

「それじゃ、改めてスタートだ。」

 

背後から迫るダークを盾で防ぐ。

 

その瞬間、右側面に殺気。

 

盾を前に出した勢いのまま、左側に大きく飛びすさり、背後に直剣で横なぎを振るう。

 

相手は危なげなく横なぎをかわし、ダークを構えた。

 

これから、連戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

十や二十では足りない程度に死にかけ、そのたびにクーフーリンに救われるサイクルを繰り返し、冬木のアサシンの討伐に成功した。

 

その直後に出現した冬木のランサーに、リーチを生かして瞬殺されたが。

 

盾を弾かれ、内臓を零す経験は貴重だが二度としたくない。

 

彼を四苦八苦して倒し、数多くのシャドウサーヴァントを戦い抜いた。

 

何度死にかけたかは数えたくない。

 

最後に、真名開放と防御的魔力放出なしの冬木のセイバーを相打ちに近い形で討伐した。

 

盾と両腕の骨と筋肉と肋骨でエクスカリバーを一瞬固定し、喉元と一突き。

 

綺麗に決まり、背骨を断ち切った代償に、こっちは真横に切断されたが。

 

ぎりぎり命の火が消える寸前にくっつけられて、女神の祝福をぶっかけられることで生き永らえた。

 

人間、皮一枚でもくっついていれば、下半身なくても数秒はいけることを知ってしまった。

 

知りたくなかった。

 

「はは、いくら宝具並みの防具と命のストックがあるとはいえ、よく思いきれたな。」

 

血塗れでクーフーリンが笑っている。

 

「命の捨て所がわかった?いい感じにケルトに染まってきたな。」

 

「なら、最終段階だ。」

 

彼が、二槍を振るう。

 

光が煌いたことしかわからない。

 

ふいに視界が落ちる。

 

手足の感覚がない。

 

地面の感触、倒れた?

 

付け根に激痛が走る。

 

顔をあげ、彼を見た。

 

「あん?マスターの手足、その付け根の大事なところをもらい受けただけだ。」

 

「とっとと回復して続きだ。」

 

「最終段階は、盾無しで俺の槍を三撃。見切って見せろ。」

 

―――それができりゃ、並みの英霊から一分は稼げる。

 

そう言いながら、彼は俺にエスト瓶をひっくり返した。

 

何度繰り返すことになるのだろうか。

 

これで、強くなれるのか。

 

「あ?強くなれるに決まってんだろ。大英雄たる俺の槍を三発見切れる奴が、まともな人間なものか。」

 

それもそうか。

 

「どうだ、やる気が出たか?」

 

「応!!!!!」

 

「は!いい返事だ。ならその意気込み、示してみろ!」

 

濃密な殺気。深紅の瞳が見据えるのは、俺の心臓。そのすぐ脇。

 

豪速で振り込まれる突き。心臓狙いの一撃を、剣の腹で阻む。

 

「甘ぇ!」

 

直剣をすり抜けた槍は、強い捻りを加え、俺の胸に突き立つ。

 

心臓と肺を傷つけないように撃ち込まれた一撃は、痛みと恐怖で、俺の動きを完全に阻害する。

 

「どうだ、心が冷えたか。」

 

今心臓が物理的に冷たいです。

 

槍が抜かれる。

 

傷口の開放と心拍数の増大と共に、出血量が跳ね上がる。

 

ただ、それでもさっきまでのように大血管を傷つけられていないためか、さほどでもない。

 

またエスト瓶をひっくり返す。

 

空になってしまった。

 

「空か、無いととヤバいしちょっともらってくるわ。」

 

クーフーリンがからの瓶を持って、どこかに去っていく。

 

彼が帰ってきたら、本格的に始まるわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数えるのを最初からあきらめるほどに突き刺され、回復した。

 

一撃を防いでも次の一撃を防げず、致命傷にならない点だけを狙っているとわかっていても防げない。

 

そんなことを繰り返しながら、構えを変え、動きを変え、重心を変えていく。

 

盾がないのだから、構えを変えなくてはいけない。

 

防ぐのではなく、躱すことを重点に置かなければいけない。

 

左右のバランスが変わるのだから、重心の位置も違うのだ。

 

自分の関節の可動域や、筋肉の配分。そういったものを考え、最適化していく。

 

防ぐべき場所が減り、攻撃を誘うことを覚え、生き残るために不要な部分を切り捨てる。

 

無数の試行の果て、経戦能力を維持したまま、彼の槍を三撃防ぐことに成功した。

 

その後も継続して突きの三撃、払いの三撃、織り交ぜた三撃を防げるまで行い、今回の修行の終わりを告げられた。

 

「ご苦労さん、途中から熱くなっちまってな。命のやり取りになってたけど、落ち着いたか?」

 

そういえば、今回のこれは火を鎮めるためのものだった。

 

あれだけ死にかけたのに、火は静まってる。

 

どういうことだ?

 

「わからん。血に酔わなくなる程度に戦いを乗り越えたともいえる。」

 

わからないのか。

 

「俺や叔父貴なら結局女抱いて解決するしな。」

 

ケルトの英雄ならそうだろうね。

 

「とりあえず解決したってことで、いいじゃねぇか。」

 

思い悩んでいたのがあほらしくなる結論だ。けど、スッキリしたのも事実だし、何とも言えん。

 

流石に疲れた。そろそろ自室で寝たい。

 

「ま、人間四日間戦うと何も考えられなくなるよな。わかるわかる。」

 

四日間!

 

「あ、気づいてなかったのか。ま、ケルトならよくあることだから気にすんな。」

 

ケルトなら仕方ないか。

 

仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってる天井だ。」

 

気が付くと自室のベッドに横たわっていた。

 

睡眠に適した薄明かりがともった自室に、懐かしさすら感じる。

 

というより、久しぶりに寝たのでは?

 

エストにより、肉体の疲れや眠気が焼き払われるうえに、太陽が動かないために時間の感覚が消失していた。

 

まさか四日間も不眠で戦っていたとは。

 

我ながら信じられん。

 

「起きたみたいだね。」

 

この声は!

 

「ドクター?」

 

「そうだよ、最近扱いがひどいドクターロマンさ。」

 

評価については残念でもないし当然。普段の行動が擁護できない。

 

「本当に容赦ないな。」

 

―――それはさておき。

 

彼は、先の訓練中のバイタル変化などについて説明をしてくれた。

 

曰く。

 

何度も死にかけた割に、君のバイタルはそれほど揺れなかった。

 

エストを飲むたびにあらゆる感情がフラットになるのを観測した。

 

そのたびに魔力が増えてるから、扱いには気を付けて。

 

筋力値がDランク位まで向上しているみたい。

 

仮想体のはずなのに、ごく微量のソウルの移動を観測している。

 

あと、怪我が瞬間的に治るのは、データ的に気持ち悪いのでなるべく怪我しないで。

 

「それと、訓練中に次の特異点を観測した。明日には送り出せると思うから、準備しておいてくれ。」

 

「後、体調が悪くなったら、僕に連絡を。それじゃ、お休み。」

 

そう言って、彼は俺の部屋から出ていった。

 

最後の一つだけ不要な情報だが、色々考えさせられる。

 

確認してみると、膨大な数の”ソウルの残滓”というソウルを取得していた。

 

まとめて使用すれば、結構いい量のソウルが手に入りそうだった。

 

そういえば、筋力値に全ぶりしたわけだけれども、装備を火継の薪に相談していなかった。

 

今回の訓練で、ウッドシールドが抜かれる事故が多発していたので、せめて金属製が盾が欲しい。

 

寝る前に、彼に相談しよう。

 

火継の薪の部屋に、向かうことにした。

 




もっとケルトを!(狂気)


ケルトとは何か考える

獣欲(闘争、性欲)だと気づく

やっぱり体は闘争を求めていることに気づく

それを抑えるために、フロム作品をプレイする

フロム作品の売り上げが上がる

AC6が発売される。

こうなれ(願望

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