Fate/Grand order 人理の火、火継の薪 作:haruhime
現地サーヴァントのような何かとして出現した主人公。
-追記-
もう一度警告しておく。
原作設定なんてどこかに放り投げてる作品です。
原作に思い入れのある人がマジ切れしかねない、ガバ設定とオリキャラ、オリ設定の嵐が吹き荒れます。
この文面を見て何らかの気配を感じた人は、直ちにマイページのブロック作品にこいつを叩き込んで、存在を忘れて下さい。
核地雷を踏んでやろう、みたいなモノ好きだけどうぞ。
崩壊した街の中。煉獄となり、劫火に焙られたがれきの上に、一つの人影が現れた。
焼け焦げ煤けた皮鎧に赤いフード付きマントを羽織った男だった。
あちらこちらにへこみのある鍔広の鉄帽と皮の襟で顔を隠していた。その右手に血塗られ赤錆びた大剣を、手甲をつけた左手に鉤爪のような凶悪な短剣を持っている。凶悪な武器を手に、脱力すら感じさせる姿。
吹き付ける熱風に焙られながら、男は立ち尽くしていた。
どれだけの時間がたっただろうか。それは男にはわからなかったが、動く者のいないはずの周囲に奇妙なものが現れていた。
肉と皮を持たない、ぼろ布をまとったうごめく骨人。その細く白い手に、刃こぼれし、折れた直剣や短槍、朽ちた短弓を持ち、生きるものへの怨嗟を零しながら骨の擦れる音を上げて男に向かっていく。
剣や槍を振りかざし、みすぼらしい戦列を組みながら。さながら白い濁流のように押し寄せていく。
まるで理性も戦略も無いように見える集団であるが、その実崩れた陣形をなしていた。後列でキリキリと音を立て引かれた数十の短弓から、雨のように矢が放たれる。
赤錆びた矢じりを持つ矢群が唸りをあげて男に奔る。その速さは肉の身を持たない骨人が放ったものとは思えない速度だった。
男は、そこで初めて迫る脅威に気付いたように見えた。
飛来する矢を見据え、獣のように動き出す。地面に大剣をこすりながら、四つ足で駆ける獣のように男は駆け抜ける。
面を抑えるように降り注ぐ矢の雨は、蛇行する男の身に触れることはなかった。
男はわずか数歩で矢陣を抜け、囲み嬲ろうとするみすぼらしい戦列に一撃を加える。
最前列から突き込まれる槍襖を右逆袈裟に振り上げた大剣の一振りで切り飛ばし、その勢いで身をひねりながら跳躍。
前転気味に前列を飛び越え、その手の短剣で着地点の後列の弓兵を切りつぶした。
頭蓋骨から脊椎を切り開かれ崩れ落ちる弓兵には目もくれず、右翼に飛び込む男。密集隊形に飛び込み、すれ違いざまに短剣で首を落とし大剣で両断していく。
密集していた弓兵は、その大剣の一振りで二騎三騎とばらばらに散らされた。男はその隙間に体をねじ込むように突っ込み、刃の暴風で陣に付けた傷口を広げた。
内側に入り込んだ敵を磨り潰そうと、前後左右から骨人が迫る。味方にあたることすら恐れぬ骨人たちの剣や槍をかわしつつ右翼の端まで駆け抜けた男は、今度は前衛に向かい、陣形表面を皮をむくように削ぎ落す。
獣のごとき、理なき動き。しかしその力強い一撃は、骨人のあらゆる抵抗を無意味に落としていく。刃こぼれした剣を槍を盾にしても骨ごと砕かれ、矢は躱されるか別の骨人を盾にして防がれる。この場にいる骨人の技能や力では、暴威をふるう男を止めることはできなかった。
長いようで短い時間周囲に響いていた鉄や木、そして骨が砕ける音は、接触からそれほどの時間を待たずに聞こえなくなった。
火が燃え盛る音以外聞こえない静粛の場、骨と木と鉄の山の上に、男は一人佇んでいた。最初にこの場に現れた時のように、何の感慨もなく周囲に視線をやることもなく、ただその場にあった。
どれだけの時間がたったのだろうか。
立ちすくんでいた男は異音を聞いた。
この煉獄で動く者がいる証を。
かすかに聞こえる剣撃と人の声。理性ある人の声。男が久しく聞いていなかった、懐かしい響き。胸の奥がざわめいたのを、男は感じた。
男は衝動に押され、その音に惹かれて駆けていく。積みあがったがれきを踏み砕き、林立する鉄骨を足場に、立ちふさがる劫火を振り払い、道を阻む愚かモノを切り飛ばし、意味ある音にならない声をあげながら。
助けを求める声を聴きながら、摩耗した記憶が叫ぶ。
悍ましい不安と不明な後悔を胸に、次こそは救ってみせると。
名も知れぬモノをこそ救うのだと。
認めない、認めない、認めない!
火継の果てがこんな定めだと!
我らの献身は何だったのか!
彼らの犠牲は何だったのか!
薪の王たちの望みは、こんな果てではないはずだ!
人理の焼失など、許すものか!
千里を見通す盲神の愚行を正さねばならぬ!
己を不死と、不滅と騙る愚者に、火の真理を馳走せよ!
彼奴等の計画をこそ、焼き尽くさねばならぬ!
征かれよ我らの主よ!
最初の火継にして最後の火継たる貴方こそが!
此度の旅路を征かれるにふさわしい!