私の名前はラベンダー   作:エレナマズ

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第十三話 新たな出会いと全国大会

 黒森峰との練習試合に惨敗した数日後、聖グロリアーナでは何事もなかったように戦車道の授業が行われていた。

 一見いつも通りに見える授業風景。しかし、よく見れば一年生はどの生徒も目の色を変えて訓練に打ちこんでいるのがわかる。聖グロリアーナの戦車道は試合の勝敗を度外視しているが、あまりに一方的な敗戦を喫したことで一年生も思うところがあったのだろう。

 そんな一年生の中にみほ達の姿はなかった。三人はアッサムの罰を執行している最中であり、戦車道の授業には参加していないのだ。

 

 みほ達が今いるところは校舎内に設置された茶道室。

 三人は着物に着替えて畳の上で正座し、普段とは違う厳粛な空気の中で行われているお茶会にのぞんでいた。

 

「お点前ちょうだい致します」

 

 みほは畳に両手をつき、亭主役の三年生と亭主を補助する半東役の二年生に深くお辞儀をした。畳の上には抹茶が入った茶碗が置かれており、教えられた手順通りに抹茶を飲んでいく。

 飲み終わったあと飲み口を指先で軽くぬぐい、みほは茶碗を自分の正面に置いた。もちろん指先を懐紙で拭くのも忘れてはいない。

 

 次に行うのは茶碗の拝見だ。みほは畳に両手のひらをついて上から茶碗を見たあと、両手で茶碗を持ち裏を含めた全体を見回す。

 拝見を終えて茶碗を畳の上に置くと、最後にもう一回茶碗全体を見回し、みほは茶碗の正面を亭主側へと向ける。

 

 それを見た半東役の二年生が茶碗を下げにやってきた。

 半東役の二年生は、みほの前で畳に手をつき深々とお辞儀をする。みほもそれに合わせてお辞儀をし、半東役の二年生が茶碗を下げたところで亭主役の三年生から声がかかった。

 

「合格です。さすがは西住流のお嬢様ですわね。畑違いの茶道でも上達が早いわ」

「ありがとうございます」

「よろしかったら、このまま茶道の道に進みませんか? 歓迎いたしますわよ」

「いえいえ、私なんて全然ですよ。それに私には戦車道がありますから」

「そうでしたわね。残念ですけど、あなたを勧誘するのはやめておきますわ」

 

 亭主役の三年生はみほをべたぼめしたあと、ローズヒップへと視線を向けた。

 

「ローズヒップさんもラベンダーさんをお手本にして、今日こそは成功させてくださいね」

「お任せですわ。わたくし、今日は自信ありでございます」

「期待していますよ。また抹茶を一気に飲むようなことがあれば、容赦なくここから叩き出しますので覚悟しておいてくださいね」

「き、肝に銘じておきますわ」

 

 亭主役の三年生の鋭い眼光を目にしたローズヒップは冷や汗をかいている。茶道の茶会は、戦車道のお茶会よりも作法に厳しいのだ。

 

 

 

 戦車道の授業はまだ行われているが、茶道の授業を終えたみほ達は一足先に帰宅していた。

 アッサムの罰を受けている間、三人は戦車道の授業に参加するのを禁じられているからだ。

 

「茶道はお堅苦しくて大変でしたわ。ずっと正座をしているのはわたくしの性に合いませんの」

「そんなこと言ってるからあの先輩に目をつけられるんだ。ローズヒップのせいで、私まですごいプレッシャーをかけられたんだぞ」

「でも、無事に茶道が終わってよかったね。明日からは華道か……」

 

 茶道と華道の授業への短期参加。これがアッサムから与えられた罰だ。

 アッサムはみほ達に足りない淑やかさを鍛えるために、茶道と華道の代表に自ら掛け合い三人の参加を実現させたのである。

 

「またお着物を着て正座でございますか?」

「そこは同じだけど、華道は茶道より大変だぞ。なにしろ美的センスが問われるからな」

「私、華道のほうは自信ないよ……。美術とか苦手だし」

 

 みほの唯一の苦手科目は美術。とくに苦手なのは絵を書くことで、みほが書いた絵を見て正解を答えられる人はまずいない。

 

「華道のほうがおもしろそうですの。自分の色を出せるのはわたくし向きですわ」

「頼むから今度は目をつけられないでくれよ」

「華道が終われば戦車道に戻れるから、みんなで協力してがんばろうね」

「クルセイダーに乗れるまで、あともうひと踏ん張りでございますわね。明日も張り切っていきますわよー!」

 

 大きな声で気合を入れるローズヒップ。淑やかとはとても呼べない行為だが、ローズヒップは正座でおとなしくしているよりこっちのほうが似合っていた。

 

 

 

 次の日から始まった華道の授業。意外にもみほの生けた花は好評を博した。

 生け花は知識や技術だけでなく、感性や自由な発想も重要である。子供のころ、型にとらわれない自由な作戦を考えていたみほにとって、自分の好きに生けられる生け花は相性がよかったのだ。

 ローズヒップとルクリリもとくに問題は起こさなかったので、華道の授業は順調そのもの。この分なら戦車道に復帰できる日もそう遠くはないだろう。

 

 そんなある日のこと。みほ達は華道の代表から、近々開かれる生け花の展示会へ見学におもむく話を伝えられる。

 

「五十鈴流の展示会ですか?」

「はい。開催場所は茨城県の大洗町ですわ。華道を履修している生徒は全員参加する予定ですので、あなたがたもぜひ参加してくださいね」 

「また大洗ですの。これで二回目でございますわ」

「私達は大洗と縁があるみたいですわね。ラベンダー、今度はボコミュージアムはなしの方向でお願いしますわよ」

「わ、わかってるよ。いくら私でも同じ失敗を二度はしないもん」

 

 みほもルクリリと同じように、大洗とは奇妙な巡り合わせを感じていた。

 みほが第一志望校に選んだのは大洗女子学園で、故障したクルセイダーが運ばれたのが大洗の整備工場。その整備工場で愛里寿と出会い、友達になれた場所が大洗のボコミュージアム。そして、今度は大洗で行われる生け花の展示会。

 

 みほの人生に度々登場するようになった大洗という不思議な場所。後にみほは大洗とさらに深く関わることになるのだが、このときのみほはそれを知る由もなかった。

 

 

 

 聖グロリアーナ女学院の学園艦が大洗港に着くと、港には別の学園艦の姿があった。

 聖グロリアーナ女学院の学園艦よりも小さいその学園艦には、艦首に洗の一文字をベースにした校章が描かれている。この大洗港を母港にしている大洗女子学園の学園艦だ。

 

「大洗女子学園の学園艦が来てるね」

「ラベンダーの第一志望だった学校ですわね」

「補給に来たんだろ。ここは大洗女子学園の母港なんだし」

 

 学園艦にはそれぞれ母港がある。母港には長期の休みや物資の補充の際に帰港するのが一般的で、聖グロリアーナ女学院の学園艦も母港である横浜港によく立ち寄っていた。

 

 大洗港に降り立ったみほ達は、華道を履修している生徒と一緒にさっそく展示会へと向かった。

 展示会の会場はアクアワールド茨城県大洗水族館。大洗港からそれほど離れていない距離にあるので、会場への移動は実にスムーズだ。

 

 展示会へ到着したあとは自由行動である。

 みほ達は他の生徒にならって、のんびりと生け花の鑑賞を楽しむことにした。会場には様々な作品が飾られており、三人は生け花の感想をそれぞれ言い合いながら会場を歩いていく。

 そのとき、みほはある作品の前で足を止めた。作品の作者を示すプレートには、五十鈴華という名前が書かれている。

 

「五十鈴華さんって五十鈴流の家元の子で私達と同い年なんだよね?」

「うん。パンフレットには大洗女子学園に通う一年生だって書いてあったな」

「大洗の学園艦が入港していたのを考えると、こちらに来ているのかもしれないですわね」

 

 同い年の少女の作品に興味を持ったみほ達は、じっくり鑑賞することにした。

 生け花の良し悪しがわかるほど華道を習っていない三人であったが、目の前の作品が自分達とはレベルが違うぐらいはわかる。花の色使いやバランスもしっかり整えられており、どこを見ても悪い点は見当たらない。

 さすがは家元の子の作品だなと、みほは素直に感心していた。

 

「すごくきれいだね。私の作品と違って基本がしっかりしてるよ」

「確かにいい作品だと思うのでございますが、わたくしはもっと明るい色が多いほうが好みですわ。この作品は少しインパクトに欠ける感じがしますの」

「ローズヒップの作品は派手だからな。あれと比べたら、どんな作品も印象が薄くなると思うぞ。まあ、私もちょっと個性が弱いなとは感じたけど」

「あの、少しよろしいでしょうか?」

 

 みほ達が色々と作品の感想を言い合っていると、後ろから声をかけられた。

 三人が声のしたほうに振り向くと、そこにいたのは着物姿の黒髪の少女。少女からは淑やかで柔和な雰囲気が感じられ、みほ達よりもお嬢様然としている。

 

「あなたは?」

「私は五十鈴華と申します。みなさんが見ていらっしゃった作品は、私が生けさせてもらいました」

 

 みほの問いかけに少女が答えた瞬間、ローズヒップとルクリリは気まずい顔になった。よりによって作者の目の前で、作品を悪く言ってしまったのだから無理もない。

 

「あ、あのっ! 私達、生け花のことはあまりよくわからなくて……気を悪くされたんなら謝ります」

「私は怒ってなんていませんよ。素直な感想をいただけるのはありがたいことですから。それに、個性が足りないのは私も薄々感じていましたので……」

 

 華は憂いを帯びた表情で自分の作品を見つめている。

 みほはなんと言うべきか迷ったが、みほが声をかけるより先に華のほうが話しかけてきた。

 

「みなさんは聖グロリアーナ女学院の生徒さんですよね。やっぱり華道を履修なさっているのですか?」

「わたくし達が履修しているのは戦車道ですわ」

「戦車道……。あの、もしよろしければ、どのような活動をなさっているのか教えてもらえませんか? 大洗女子学園には戦車道がないものですから」

「別にかまいませんわよ。では最初に、私達がよく乗っている戦車であるマチルダの話を……」

「ちょっと待ったーですわ! ここはクルセイダーの話をするべきでございますわ」

 

 ローズヒップが横槍を入れてきたことで、ルクリリの表情が少しムッとしたものに変わった。

 

「マチルダは聖グロリアーナの主力戦車ですのよ。攻守のバランスがとれてるマチルダのほうが、戦車道を知らないかたにも説明しやすいはずですわ」

「何も知らないからこそ、まずは興味をもってもらうのが重要でございますわ。鈍足で地味なマチルダより、快速のクルセイダーのほうが華やかですの」

「マチルダだ!」

「クルセイダーですわ!」

「あわわっ、二人ともこんなところで喧嘩しちゃダメだよ。茶道と華道で学んだことを忘れないで」

 

 言い争いを始めたローズヒップとルクリリをみほは懸命になだめる。他校の生徒の前で恥を晒してしまっては、今までの苦労が水の泡だ。

 

「……そうだな。せっかく淑やかさを学んだのに、それを台無しにするわけにはいかない。ごめんな、ローズヒップ」

「わたくしのほうこそムキになりすぎましたわ。マチルダを悪く言ってごめんなさいですわ、ルクリリ」

 

 みほの思いが通じたのか、ローズヒップとルクリリはすぐに仲直りをしてくれた。茶道と華道は二人にいい影響をもたらしているようである。

 その様子を見たみほがほっと胸を撫で下ろしていると、話を中断されてしまった華が不思議そうな顔で声をかけてきた。 

 

「あの……」

「あ、話の腰を折っちゃってごめんなさい」

「いえ、それは別にいいんですが、どうしてハーブティーや紅茶の名前で呼び合っているんですか?」

「私達はニックネームで呼び合うのが決まりなんです。私のニックネームはフレーバーティーのラベンダーですよ」

 

 その後、みほは聖グロリアーナの伝統や戦車道のことを華に説明した。みほは幼いころから戦車道を学んでいるので、戦車道をわかりやすく魅力的に説明するのは難しいことではない。

 みほの説明は好評だったようで、華は次々に質問を投げかけてきた。どうやら、華は戦車道にかなり興味を持ったようである。

 

「戦車道は楽しそうでいいですね。私にもできるでしょうか?」

「戦車道は女の子なら誰でも学べるので問題はないですけど、五十鈴さんには華道があるんじゃないですか?」

「私、最近自分の華道に迷いが生まれてしまって……。何か別の新しいことに挑戦したいと思っていたんです。華道とまったく違う戦車道は、私が思い描いていたイメージにぴったりなんです」

 

 みほには華の気持ちが少しだけ理解できた。みほも聖グロリアーナに入学するまでは、戦車道で悩んでいた時期があったからだ。

 ただし、みほと華では悩みの質は異なる。華が自分の華道に悩んでいるのに対し、みほは自分の戦車道の在り方自体に悩みはなかった。

 みほが進むべき道は西住流。幼少時に志した西住流を極めるという思いは、今もみほの心の中に残っている。

 

「だけど、大洗は戦車道が廃止になっていますわよね。どうなさるおつもりなんですの?」 

「そんなの簡単でございます。五十鈴さんが聖グロリアーナに転校してくればいいんですわ」

「それはいくらなんでも無茶だよ。五十鈴さんにも都合があるだろうし……」

「大洗で戦車道が復活してくれるのが一番いいんですけど、そううまくはいきませんよね」

 

 四人で何かいい案がないかと考えこんでいると、後ろから華の名を呼ぶ明るい声が聞こえてきた。

 全員で振り返ってみると、そこには大洗女子学園の制服を着た生徒が立っている。ふわっとした茶色の髪が特徴的な優しそうな顔の少女だ。

 

「華ー、来たよー。あれ? 華のお友達?」

「五十鈴さんとはさっき知り合ったんです。私の名前はラベンダーって言います」

「えっ! もしかして外人さんなの? えーと、ハウアーユー?」

「沙織さん、違いますよ。ラベンダーさんはどう見ても日本人じゃないですか。彼女達はニックネームを名乗る決まりがあるんです」

「やだもー! それを早く言ってよ!」

 

 華に沙織と呼ばれた少女は赤くなった顔に両手を添え、イヤイヤをするように首を振っていた。お淑やかな華とは違い、かなり感情表現が豊かな少女のようだ。

 

 少女の名は武部沙織といい、華とは親友の間柄であるとのことだった。

 四人が戦車道について話していたのを告げると、沙織は微妙そうな表情を浮かべている。沙織はあまり戦車道に興味はないらしい。

 

「華がやりたいっていうのを否定はしないけど、私はパスかなー。戦車道は今どきの女子高生っぽくないし」

「そんなことはありませんわ。聖グロリアーナでは戦車道は人気の選択科目ですわよ」   

「戦車道はなんと言っても乙女のたしなみでございますからね。女として磨きをかけたいなら、戦車道一択ですわ」

 

 ルクリリとローズヒップの話を聞いた沙織は表情を変えた。

 

「……戦車道って女子力上がる? モテる?」

「うーん、上がるんじゃないでしょうか? 私のお姉ちゃんも戦車道をやってるんですけど、男の人からもよくファンレターをもらってましたから」

「やっぱり私もやる!」

 

 先ほどまでのやる気のなさはどこへいったのか、沙織はすっかりやる気満々の様子だ。沙織の中では、モテるかモテないかが重要なウェイトを占めているようである。 

 

「沙織さん、水を差すようで申し訳ないんですが、大洗は戦車道が廃止になっているんです」

「そうなの? なら、生徒会に掛け合って戦車道復活させようよ」

「生徒会とのコネもないのにどうやって掛け合うんですか?」

「それはその……。ラベンダーさん、何かいい案はない?」

「ふえっ!? えーと、最初は動かせる戦車を探すことから始めたほうがいいと思います。ひょっとしたら、昔使っていた戦車がまだ残っているかもしれないですよ」

 

 大洗は戦車道が盛んだった時期があるので、戦車が残っていても不思議はない。もちろん、それは可能性の話であり現実的に考えると望みは薄いだろう。

 みほとしては苦しまぎれの提案だったのだが、沙織はすでに戦車を探す気になっているようだ。

 

「華、明日から戦車探そう。私の友達に頭の良い子がいるから、その子にも一緒に探してもらえるように頼んでみる」

「わかりました。みんなで戦車を見つけて、生徒会に戦車道の復活をお願いしましょう」

「よーし、目指せ女子力アップ!」

 

 拳を真上に突き上げ、大きな声でそう宣言する沙織。

 明るく元気な沙織はどこかローズヒップと似ているところがあり、みほにとっては好印象の人物であった。伝統を持つ流派の生まれという共通点がある華に対しても、みほはいい印象を抱いている。

 もし大洗女子学園に入学していたら、この二人と友達になる未来もありえたのかもしれない。みほはそんなことを考えながら、戦車探しの計画を練っている沙織と華の姿を見つめていた。

 

 

 

 聖グロリアーナ女学院の学園艦は大洗港を出港し、穏やかな海を悠々と航行中。

 今日は土曜日であり学校は休み。にもかかわらず、みほ達は学校の演習場に集合していた。その場には太陽に照らされてきらめく、クルセイダーとマチルダⅡの姿もある。

 

「今日はよく晴れた絶好のクルセイダー日和ですわ。久しぶりに飛ばしますわよー!」

「私達は練習量が不足してるからな。この連休で遅れを取り戻すぞ」

「うん。武部さんと五十鈴さんも全国大会を見に来るって言ってたし、活躍できるようにがんばろうね」

 

 もうすぐ戦車道全国大会の季節がやってくるが、勝利は二の次の聖グロリアーナは学校が休みの土日と祝日は訓練をしない。戦車道は部活ではなく授業だからだ。

 みほ達は茶道と華道に参加していたことで生じた練習不足を解消するために、アールグレイから休日訓練の許可を取ったのである。

 

「あのワニ女を今度こそぎゃふんと言わせてやりたいしな。ラベンダー、どっちから乗るんだ?」

「最初はクルセイダーかな? 逸見さんに負けたときの反省を活かして、動きの質と砲撃の精度をもっと上げたいから」

「今度は絶ッ対に勝ってみせますわ! ラベンダー、遠慮はいらないのでガンガン指示を出してくださいまし。目標にするのは愛里寿さんのクロムウェルでございますわ」

「愛里寿ちゃんのクロムウェル……」

 

 西住流のみほには愛里寿のような芸当はできない。あれは島田流を学んできた天才の愛里寿だからこそできた神業なのだ。

 それでも、みほは愛里寿の技に挑戦することを決めた。黒森峰は無策で勝てる相手ではないのは、練習試合で思い知らされている。簡単に真似できないのは百も承知だが、試してみる価値は十分にあった。 

 

「見よう見まねだけど、愛里寿ちゃんのクロムウェルが見せた動きをやってみよう。かなり激しくなると思うけど、二人とも大丈夫?」

「どんと来いですわ!」

「ワニ女に勝てるならなんだってやるぞ!」

 

 ローズヒップとルクリリの元気な返事にうなずき、クルセイダーを静かに見据えるみほ。

 目は真剣そのものであり、中学最後の全国大会の姿をどこか彷彿とさせる。みほがこのような姿を見せたのは、聖グロリアーナに入学して初めてのことだった。

 この日から、全国大会へ向けた三人の休日返上の特訓が始まったのである。  


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