言峰士郎の聖杯戦争   作:麻婆アーメン

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女難の悪霊A 「女性の命令は…絶対…」ゲッシュー

女難の悪霊B 「時間を稼ぐのは構わんが…全員侍らせても構わんのだろう?」

女難の悪霊C 「その子宮、貰い受けr


似たもの同士

教会の真ん中、祭壇の前で召喚陣に向かい詠唱する。

先日の1件以来、凛にはおろか、カレン、桜、そして愛しのパパ上にまで厳しく叱られることになってしまった。

魔力が足りないようなら宝石に転換した魔力を補充してあげるから、と半ば無理矢理サーヴァント召喚の儀を行わされている。

なお、今回の召喚に触媒は使用しない。

 

綺礼によると、その場合最も相性の良い…言い換えれば、似たもの同士の英霊が召喚されることになるらしい。

下手にパチモン聖遺物を掴まされてハズレサーヴァントを引くよりは、余程そちらの方が効率的だということのようだ。

まあ、えらく他人事のように語ってはみたが、本心を言えば少しワクワクしていた。

なにせ敵対するならともかく、英霊が自分の味方となるのだ。

これほど心強いことは無い。

あわよくば、歴戦の騎士に稽古をつけてもらったり、大魔術師に魔術の開発を手伝ってもらったりしてもらえたら…

そんな淡い期待を胸に抱きながら、詠唱は最後の一節に差し掛かる。

 

「誓いを此処に。

 

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

控えめな爆音と共に、キィィンという耳鳴り。

目の前の存在とのパスの繋がりを、確かに感じた。

 

 

 

これが…俺のサーヴァント…

 

 

 

恐る恐る目を開き、その存在を確かめる

 

「私はジャンヌ・ダルク!召喚に応じ、此度はランサーとして参上しました!我が父と精霊の皆に誓って、あなたをお守り致します!」

 

現れたのは、金髪に蒼瞳の少女。

いや、というかもう幼女である。

っていうか真名即刻遠坂にばらしやがった…

 

(これが俺に相性のいい、似たもの同士のサーヴァントだって言うのか聖杯さんよ!!)

 

「……」

 

「まあ、可愛らしい」

 

オロオロする桜、そして何も言えずにいる凛と士郎の代わりに、カレンが皮肉げに呟く。

 

柱に寄りかかって見ていた父親は…こっちの方を見て重畳…などと呟いていらっしゃる…この人…いや、通常運転だった。

 

「あ、あれ…あの、マスター…?」

 

周りに沢山人がいることに驚いたのか、パスの繋がっている士郎に駆け寄り、袖を掴みながら、士郎の影に隠れるようにして教会内の面々を見渡す。

 

「……チェンジで…」

 

「マスター!?」

 

硝子の幻想を打ち破られた士郎に、慈悲を持つ余裕などなかったのだったーー

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「皆様、改めてよろしくお願いします!」

 

「よく挨拶が出来ましたね、駄犬の割にはなかなかどうして優秀なようです」

 

「なんだか言葉に棘がある気がしますが、えへへ、ありがとうございます、お姉様!」

 

カレンの膝に乗り、撫でられて嬉しそうにするランサー。まあうん、正直可愛い。可愛いさ…

カレンの言葉にいつものキレはなく、どこか顔が緩んでいる。案外子供好きなのかもしれない。

桜も持ち前の世話焼きを発揮し、みかんを剥いては食べさせてやっている。

 

「いや、そうじゃないだろ!」

 

「なんですか、突然大声を出すのはやめなさいといつも言っているでしょう、この早漏」

 

「そ、早漏…なんですね、先輩」カァァ

 

「そういうこと言うのやめろっていつも言ってるだろカレン!桜も違うから!!ってそうじゃなくて!」

 

カレンの膝に座り、マグカップで紅茶を飲む

少女を指さして疑問をぶちまけた

 

「こいつ、俺のサーヴァントなんだよな?!」

 

「はい、そうですよマスター!不肖ジャンヌ・ダルク!この身に変えても貴方をお守り致します!」

 

そう、ジャンヌ・ダルク。

フランスの英雄であり、オルレアンの聖処女。遠く離れたこの日本でも、まず知らない人はいないだろう。

 

が、目の前の彼女はどう見ても小学生…大目に見ても中学生というのが限界だ。

 

「でも不思議ね。ジャンヌ・ダルクが神の啓示を初めて聞いたのは17歳でしょ?どう見てもアンタそれ以下なのにサーヴァントとして召喚されるなんて」

 

みかんを頬張りながら、遠坂が士郎の疑問を代弁してくれた。

 

「はい、それについては私も驚いています。ですが記憶や能力はバッチリなので安心してください!」

 

えへん!と胸を張るジャンヌ。

記憶はともかく、精神面も退行してそうだ…

先が思いやられることこの上ない。

 

「……ふむ。何かしら召喚陣にミスがあった可能性があるな……しかしそうすると、君は自分の最期を知っているのかね?」

 

ずっとだんまりだった綺礼がようやく口を開く。

その目は真剣そのものだ。

 

「はい、記憶しています。」

 

周りの視線を機敏に感じ取り、少し遠慮がちに答えるジャンヌ。

 

「そう…なのか…それは…」

 

「でも!私には一切の後悔も恨みもありません!…というより、もう済んでしまった事なのでどうしようもありませんからね!」

 

ハキハキと、迷いなく笑顔で答える目の前の彼女は、誰の目にも可憐に、そして歪に映ることだろう。

だが、彼だけは、それを当然だと感じた。

 

「…ジャンヌ、でいいか?」

 

「はい!マスター!なんでしょう!」

 

「今後のためにもお前の能力を見ておきたい。庭に散歩にでも行こう」

 

「了解しました!行ってきますね、お姉様!」

 

「えぇ。…士郎。私の駄犬を傷物にしたらその左腕ごと切り取ります。覚悟しておきなさい」

 

「はいはい、全く気をつけて、くらい普通に言えばいいのに」

 

「?今のはそういう意味なのですか?」

 

子首をかしげて尋ねるジャンヌ。

 

その頭をポンポンと撫でながら士郎が答えた。

 

「あぁ、カレンは素直になれない病気にかかってるんだ」

 

「……士郎?」

 

ゴゴゴ…と尋常ではないオーラを揺らめかせながら威嚇するカレンに笑いかけ、ジャンヌの手を引いて裏口へ向かう。

 

「ははっ、冗談だよカレン。行ってきます」

 

「行ってきまーす!」

 

「……はい」

 

「へぇ、案外可愛いところあるじゃない」

 

「む…なんですか、この年増ツインテール」

 

「なぁにぃ!?」

 

「ね、姉さん、落ち着いてください…ッ!」

 

臨戦態勢に入る凛を止めようと立ち上がろうとした桜が、急にお腹を抱いてよろめく。

 

「さ、桜!?アンタまだ体が…!」

 

桜の体を支え、心配する凛。

 

「だ、大丈夫です。少し傷が傷んだだけですから…」

 

そう言ってニコリと笑ってみせる桜に、凛は何も言えなくなってしまう。

 

「全く。あれだけ魔力食っておきながら痛みを残すなんて、士郎は医者にはなれませんね」

 

「…いえ、蟲が残っていたらこんなものじゃすみませんでしたから…」

 

ニコリと儚げに笑う桜の笑顔を見て、凛はあの悪夢の後の出来事を思い出していた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「士郎…!無事よね…!」

 

慎二を見逃した後、最悪の想像を苦悶の表情で押しつぶして走る。

 

だって相手はサーヴァント。人の身を遥かに凌駕した英霊なのだ。

 

魔術師はサーヴァントには勝てない。

 

それは暗黙のルールであり、それが破綻するならば今までの聖杯戦争で培われてきた魔術師が後方支援、サーヴァントが前衛という常識が大きく覆ることとなる。

 

しかし、どうしてだろう

 

(アイツなら…なんとかしちゃうような気がするのよね)

 

確かな信頼と実績。言峰印の倉庫100人乗っても大丈…

 

「?!?あ、アアアンタ何してんのよー!!」

 

凛は見た。意識が朦朧とする桜の頭を抱き、に舌を絡ませるフレンチじゃない方のキスをする聖職者の息子の姿を

 

「…ぷはっ、遠坂!いい所に!」

 

「……せん…ぱぁい……♡」トロン

 

「えっ、え、な、なななんでアンタこっち来るのよ!?」

 

「情けないがライダーとの戦闘で使いすぎたせいで桜の治療のための魔力が足りそうにない。悪いけどお前の魔力を少しもらうぞ!」

 

「えっ、それってどうい…んっ!?」

 

後の遠坂凛はこの時のことをこう語る。

 

「魔力供給は舌を絡ませる必要なくね…?」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「……」カァァ

 

「どうしてくれるのです、またそこの純情乙女(笑)(かっこわらい)が人間ストーブになってしまったではありませんか。あぁ、暑いったらありゃしませんわ」

 

「それもこれもアンタ達の教育のせいでしょうが!放っていたらその先までやる勢いだったわよ!?あの馬鹿!」

 

「その先?はて、何のことかカレンちゃんマジ検討がつかないので具体的に教えて欲しいですね、せ、ん、ぱ、い?」

 

「〜〜〜!!」カァァァッ

 

「なっ、なななな何言ってんの!?い、言えるわけないでしょうが!」カァァ

 

「ほう、ダブルプレーとは。なかなか成長したなカレンよ」

 

「ダニ神父に褒められてもすこぶる不愉快なだけなのですが。まあともかくです。お二人共、あの雄犬に悪気はおろか、その気すらないのであまり責めないでやって下さい」

 

「…?どういうこと?」

 

「…は?」

 

「ちょ、桜、顔!顔!」

 

「いえ、家の教育の賜物とでも言いますか、アレはもう国宝級なので。」

 

「うむ。私はあのような義子に恵まれて非常に果報者だよ。アレが真実を知る時が今から楽しみで仕方ない」

 

「…?一体どういう…」

 

理解が飲み込めず、桜の空いた口を凛が閉じて上げると、バタン、と裏口の方からドアの音がした。

 

「誰か魔力よこせぇぇぇ!!!」

 

「いい所に帰ってきたようですね。犬の帰省本能というのは本当に立派なものです」

 

「い、いやどう聞いても只事じゃないんだけど…」

 

「おいっ!なんで誰も返事を……ってなんだ?何かあったのか?」

 

「いや、大したことじゃないさ息子よ。それより、背中のそれは放っておいて大丈夫なのか?」

 

「うぅ、ます…たー…」ガクッ

 

見るとジャンヌの頭には大きな腫れが出来ていた。

他は健康体そのもののようなので別に焦るようなことでもなさそうなのだが

 

「あ!?す、すまんジャンヌ!頼む遠坂!治療に必要な分が足りないんだ!魔力をくれ!」

 

よほど心配になる怪我の仕方でもしたのだろうか。

あの殺気を放つ人間がこの焦りようである。

 

「え、えぇ……今宝石…むぐっ!?」

 

「!?!せ、先輩…私というものがありながら……」ゴゴゴ

 

「……約束です、士郎…左腕を差し出しなさい…」

 

周りの殺気にも気付かないほど魔力を熱心に求める士郎(と満更でもなさそうな凛の)姿に、さすがの2人も矛を収めた。

 

「んっ…れろっ…っ……んん………ぷはっ……あっ、あんたねぇ!そんないきなり…!」カァァ

 

「よし…!今治してやるぞジャン…って…ど、どうしたんですか皆さん…??」

 

「「「問答無用!!」」」ゴゴゴ

 

ようやく終わったのを確認して立ち上がった2人と、羞恥に顔を染める凛のただならぬオーラに今更気付いた士郎。

だがもう既に全てが遅すぎた。

 

「なんでさーーーー!!」

 

「ま、ます…たぁ…」ガクッ

 

「かくして、此度の聖杯戦争、早くも2組目の脱落者が…」

 

「勝手にしめんなクソ神父!……ったくほら士郎、早くその子治してやりなさい?その後はたーくさん聞かなきゃならない事があるんだから」ニコォ

 

「なんだっていうんだ…投影開始…」ボロ

 

乙女3人の女子力(物理)を一身に受けたものの、自身の体を顧みずジャンヌの体に解析、そして簡単な治癒魔術をかけていく。

思ったほどではなかったため、これなら何とかなりそうだ、と息を吐いた。

 

「……ほんっとに魔術師としてはダメダメなのね」

 

「うるさいな。こうして治癒魔術の初歩が使えるだけでもかなりの進歩なんだぞ。よし、もう大丈夫だジャンヌ。」

 

「ふぅ…ありがとうございますますたー!ちょっとしたたんこぶくらいだったので別に放っておいてくれても大丈夫だったのですが…」

 

「いや、俺が怪我させたんだ。責任は果たさなきゃならない。」

 

「無駄が多すぎて使う魔力も尋常ではないその治癒魔術で責任とは、偉くなったものですね、駄犬。」

 

「くっ…というかよく考えたら遠坂か父さんにやってもらうべきだったな。魔力が思ったより余っちまった」

 

「そうよ!アンタほんとに何考えてんの!?」

 

「な、なんだよ遠坂、俺また何か悪いことでもしたか?!勝手に魔力貰ったのは謝るが!」

 

先程の、そして桜の魔力を供給した時に食らったゼロ距離ガンド(極大)がトラウマになりつつあるようで、腹を抑えて大きくビクリと肩を揺らす士郎。

が、凛はお構い無しと言った様子で襟元を掴み、士郎の頭を大きくガクンガクンと頭を揺らす。

 

「1度ならず…2度までも…っ!!乙女のファーストキスをなんだと思ってんのよこの変態っ!」

 

2度目はファーストキスじゃなくね?

桜、カレンが口を開こうとしたが、喉元まで出かけたそのツッコミをなんとかしまい込む。

赤髪の唐変木は当然の如くつっこもうとしたが、マスターの命の危険を察知したジャンヌの啓示スキルが発動。

士郎の口を抑えることで彼の命を救う。

 

が、全てを救うにはその手は幼すぎた。

 

「ふむ。しかし君のファーストキスは我が師…つまるところ君のお父上だったと記憶しているが?」

 

ニヤニヤを隠しもせず止めを指しにかかる兄弟子…いや、兄悪魔がそこにはいた。

 

「どうせ寝てるときにでしょ!ノーカンよノーカン!」

 

「いや、…ンン…オトウサマ、ケッコーン(裏声)…などと言いながら嬉しそうに接吻を」

 

「あぁぁああぁああ!?!!」

 

「あっ!それ私も覚えてます。確かその後…コホン、コレデニンシンシチャッタヨ!セキニントッテネ!(裏声)…と」

 

こらえ切れなかった桜の爆撃。

 

遠坂は…

 

「うあああぁあぁあああああぁ!?!!」

 

ご覧の有様である。

 

「いや哀れなり遠坂凛。

参 子に魔術刻印も継がせることなくなくその命を散らしたのだった…」

 

「って勝手に殺すなぁ!!」

 

恥ずかしさのあまり頭を抱えて蹲る凛を見て、周りは微笑ましい空気に包まれる。

そう、このコンビ以外は

 

「ますたー、今のどこらへんが恥ずかしがる場面なんでしょうか」

 

「そうだぞ遠坂、チューだけならまだしも、結婚してないのに子供が来てくれるわけないじゃないか」

 

「「…?」」

 

つい先刻の恥ずかしさも忘れ、状況が飲み込めず開いた口が塞がらない桜と凛。

カレンに目で訴えると、一口お茶を飲んでから息を吐き、嬉嬉として士郎に問いを投げかける

 

「駄犬、子供の作り方は覚えていますね?そちらの無知な乙女達に教えて差し上げなさい。」

 

「なんだ、そんなことも知らなかったのか遠坂」

 

「ふふ、今の私が言うのもなんですが…凛さん達はまだまだお子様ですねぇ…」

 

「ね、ねぇ桜まさか…」

 

「うふふ…まさか姉さん…いや、そんな…」

 

「お、ジャンヌも知ってるのか?偉いじゃないか」

 

そう言いながら頭を撫でられ、嬉しそうにするジャンヌ。

 

「えへへ♪じゃあますたー、せーので言いましょう!」

 

「あぁ、いいぞ…せーの」

 

「「結婚したらコウノトリさんに運ばれてくる!」」

 

その日、時代と距離を越えた国宝コンビのハイタッチが、沈黙の教会にいつまでもこだましたのだった。

 




凛「で、結局どういう事なのよアレ」ヒソヒソ

桜「一体どう育てたらあんな先輩に…」ヒソヒソ

綺礼「士郎は10年前に一度記憶を失っている。しかもその後は教会で育ち、すぐさまそこのビッチのために戦闘に明け暮れる日々。あぁいうことに関して疎くなるのも仕方ないと言えるだろう……というかそこが実に…」

カレン「マジきもいです。ダニ神父。今すぐミシンに口先突っ込んで来てください」

凛「でもカレンが傍にいてあれって…ん?でもキスが異様にうま…かったのは…」フシュゥゥ

桜「……」カァァ


カレン「あぁ、そのことですか。魔力供給の仕方ならみっちり教えこみましたからね。」


「「「き、貴様ァ!!」」」


桜 凛 「「…えっ?」」



ーーーーーーーーー




ジャンヌ・ダルク・リリィ


筋力 C
耐久 D
俊敏 A
魔力 B
幸運 A++
宝具 A


我が神はここにありて(リュミノジテ・エテル)

ランク A

紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)

ランク C(発現前) / EX(発現後)


基本ステータスはジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ(…長い…)
宝具のみジャンヌ・ダルクだとお考えください。

容姿はジャンヌ・ダルク・オル…の髪、瞳の変更バージョンということで何卒

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