ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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今回はちょっと長めです。


異形なる天使 Ⅷ

白い繭に侵入した俺達。

 

繭の中も白いものだと思っていたけど、内部に入る壁は金色に輝いていて、至るところに八角形が描かれている。

 

「えらく神々しいわね………」

 

アリスが辺りを見渡しながらそう呟く。

 

アリスの言うようにこの金色に輝く壁からは聖なる力に似た波動を感じる。

 

………これが自分達の神を信じる者だけを自らの手に置こうとする殺戮の天使共が作った『方舟の繭』、か。

 

この輝きは神々しいと感じると共に傲慢にも思えるな。

まぁ、そういう背景を知っているからだけど。

 

「先に進もうぜ。この先に奴らがいるんだろうからな」

 

ドルキーが長い廊下の先にある大きな扉を睨みながら言った。

 

あの扉の向こうから妙な波動を感じる。

間違いなく、奴らがあそこにいる。

 

俺達は互いに頷きあうと、金の壁に囲まれた長い廊下を進んでいく。

 

幸いにも罠などはなく、無事に扉の前に辿り着いた訳だが………。

 

鋼弥は扉に手を置くと、こちらに視線を送ってくる。

 

「―――――開けるぞ」

 

「ああ」

 

 

ゴゴゴゴッ………

 

 

重厚な扉がゆっくりと開かれる。

 

扉の先にあったのは廊下と同じく、金色の壁に囲まれた大きな広間だった。

一番奥には奴らの神と思われる白い像が悠然と立っていて俺達を見下ろしている。

それ以外は特に何があるというわけでもなく、ただただ広い空間があるだけだ。

 

俺達が広間に入り、奴らの気配を探し始めた――――その時。

 

《現れたようですね》

 

女性の声が聞こえたと思うと―――――凍てつく吹雪がこの広い空間に吹き荒れた!

冷たい突風が俺達を襲う!

 

「現れやがったな………!」

 

「そのようですね………! 皆さん、気を付けてください!」

 

ドルキーとタオくんが腕で顔を守りながら皆に注意を呼び掛ける。

 

「任せて!」

 

美羽が咄嗟にドーム状の障壁を展開。

障壁は俺達を覆うように展開されていて、とてつもない冷気から俺達を守った。

 

未だ吹き荒れる冷たい突風。

視界が雪で何も見えない!

 

少しすると、冷気の突風も治まり、視界が開けてくる。

 

すると、先程までなかった一つの影が見えてきた。

 

「姿を見せましたね。あれは―――――」

 

フィーナさんが剣を引き抜き、鎧を纏う。

 

俺達の眼前にいたのは昨日襲ってきた人形のクリーチャーと似た存在だった。

黄土色の肌に右腕が剣、左手が盾………なのだが、盾は大きな女性の顔をしており、緑色の瞳が不気味にこちらを睨んでいた。

 

盾にある口が開く。

 

《我が名は大天使ガブリエル。同朋であるウリエルとラファエルを相手にしたようですね》

 

………。

 

………。

 

………はっ!?

 

「えーと、あのさ………あいつ、今………ガブリエルって言った?」

 

俺が問うと珠樹さんが頷く。

 

「ええ。昨日、イッセー達を襲ったのがウリエルとラファエル。そして目の前にいるのが四大天使唯一の女性天使ガブリエル」

 

俺はその解説を聞いて―――――膝を地に落とした。

 

ウソ………だろ?

 

え、あれがガブリエルさんなの………?

あんなクリーチャーが?

 

いや………四大天使って言うからいるのは分かってたよ?

 

でもね………。

 

「うっそぉぉぉぉぉぉん! ガブリエルさんといえば、超美人で、おっとりしてて、おっぱいだってあんなに大きくて! もうちょっと何とかなっただろ!?」

 

「あの、イッセーさん………。昨日も言いましたが、あれはあなた方が知っている四大天使とは違う………」

 

「タオくん! そんなのは分かっているんだ! 分かってはいるんだ! でもね、この間ガブリエルさんに会ったばっかりだから、その分ショックがでかいんだよぉぉぉぉぉぉ!」

 

俺は叫びと共に床を何度も殴り付ける!

 

あのおっぱいは!?

あのおっとりした雰囲気は!?

天界一の美女の面影すらないじゃん!

 

あんなの認めないぞ!

性格悪い上に容姿すらクリーチャーなガブリエルさんなんて認めないぞ!

 

アザゼル先生が項垂れる俺の肩にそっと手を置く。

 

「………イッセー。今回ばかりはおまえの気持ちも分かるぜ。ガブリエルのおっぱいはなぁ………俺も天界にいた頃、何度も何度も触りたいと思っては翼を点滅させていてな」

 

「うぅ………分かります! 分かりますよ、その気持ち! 俺だって、会議の席でガブリエルさんのおっぱいばかり見てましたもん!」

 

俺が天使だったら即堕天してるね!

断言できる!

 

先生は俺に同情の目を向けながら息を吐く。

 

「確かに天界一の美女、至上のお乳と称されたガブリエルが………別物とはいえ、あんな姿で現れたらショックだよな。俺もおまえも実際にガブリエルに会ってる分、ダメージでかすぎるぜ」

 

「先生! 俺、この繭ごとあいつらぶっ飛ばします! 天界一のおっぱいは俺が守ります!」

 

「その意気だ! スケベ心を燃やせ! 怒りを力に変えろ! おまえなら至上のお乳を守れる!」

 

「はい!」

 

涙を流して抱き合う師弟!

 

ああ、そうさ!

あんなのはガブリエルさんだなんて認めない!

 

俺は………俺は至上のお乳を守って見せる!

 

「「あんた達いつまでやってんのよっ!」」

 

「「グボァッ!!」」

 

アリスと珠樹さんのダブルパンチが俺と先生に炸裂した!

 

吹っ飛ばされた俺と先生は壁に頭がめり込んでしまう!

 

「「ちょ………誰か! 誰か抜いて! 頭抜けねぇ!」」

 

重なる俺と先生の声!

 

壁にめり込んでしまい、見えないが………どうやら、先生も抜けないでいるらしい!

結構深くめりこんでいるぞ!

 

ふんぬぬぬぬぬぬぬ………あ、ヤベ………マジで抜けね………。

 

だ、誰か!

マジでヘルプ!

ヘルプミー!

 

じたばたもがいていると、後ろから誰かが引張ってくれた。

 

木場とタオくんだった。

二人とも苦笑しながら何とも言えない表情になっている。

 

タオくんが木場に言う。

 

「………大変………ですね」

 

「ハハハ………いつもツッコミが大変なんだ」

 

「最近、おまえツッコミしてなくないか?」

 

「吸血鬼の町でしたよ!? イッセーくんがいなかったから、僕がツッコミ役だったんだよ!?」

 

おおう………木場が珍しく激しい返しをしてくるな。

 

そういや、あの時は途中まで別行動だったからな。

それまでは木場がツッコミをしてくれていたのか。

 

いやー、すまんすまん。

 

………っと、馬鹿やってる間にウリエルとラファエルの野郎も現れてやがる。

 

向こうも殺気ムンムンでやり合う気満々だな。

 

先生が首をコキコキ鳴らしながら奴らに問う。

 

「おまえさん達は自分達の神を信仰する者を拉致るつもりらしいが………それをして何の意味がある? それで自分達の国を作って意味があると思うのか?」

 

《ええ。これは神を信じる者たちが乗り込む方舟。選ばれた民を乗せてこの世界にケガレに満ち溢れている者たちを滅ぼす。そして、千年王国が生まれるのです。――――全ては穢れのない世界を創るため》

 

「やれやれ………どうにも面倒な奴らが来ちまったようだ………。ゾロアスターだったか、こいつらの封印を解いたのは。そっちの世界もクソッタレな奴らが多いようで」

 

先生は深く息を吐くと光の槍を手元に作り出す。

 

鋼弥が一歩前に出た。

 

「殺戮の天使よ。その翼を折らせてもらう」

 

その言葉に俺達は各自の得物を構える。

俺も禁手となって鎧を纏った。

 

異形の天使達の殺気が一気に膨れ上がる!

 

《我らに逆らう悪魔どもに裁きを下さん!》

 

 

 

 

 

[美羽 side]

 

 

 

相手は平行世界から四人の天使のうち、三人。

 

残る一人―――――ミカエルが姿を見せないのが気になるけど………。

どこかで見ているのだろうか?

 

そんな疑問を抱きつつもボク達は三手に別れた。

 

ウリエルと対峙するのはボクとゼノヴィアさん、イリナさん、珠樹さん、彗華さん、ドルキーさん、ギャスパーくん、そしてアザゼル先生。

 

人数では圧倒的にこちらが有利。

だけど、相手もかなりの強敵。

油断なんて出来ない。

 

すると、ウリエルは口を開く。

 

《ここでは狭い。まずは場所を変えさせてもらう》

 

「なに?」

 

アザゼル先生が眉を潜めた。

 

 

その時――――――。

 

 

床が強い光を放った!

ウリエルとボク達の足元に巨大な魔法陣が展開される!

 

「これは………転移魔法陣!」

 

「ちぃっ! おまえら、気を付けろ! 飛ばされるぞ!」

 

床が放つ目映い光から目を守りながら、注意するボク達。

 

光がボク達を包み込んだ―――――。

 

 

 

 

光が止み、ボク達が目を開くと先程いた広間と似たような場所に立っていた。

 

違うのは広間の奥にあった天使達の神と思われる像がないぐらい。

 

そして、ボク達と向かい合うように立つのは異形の天使の一人、ウリエル。

 

ウリエルは口に咥えていた槍を引き抜く。

 

《来るがよい。このウリエル、負けはせん》

 

体から激しい雷を放ち、周囲が焼け焦がしていく。

 

その雷は少し離れたところにいるボク達の元にまで届いている。

彗華さんがボク達の前に立って障壁を張ってくれた。

 

「くっ………。体から漏れ出す雷だけでこの威力………! 皆さん、気を付けてください! それから、ウリエルには雷に対する耐性があります! 雷属性の攻撃は効きません!」

 

ウリエルに対して雷属性の攻撃が効かないのは先日、アリスさんの白雷と朱乃さんの雷光が効かなかったことから把握している。

それに、今朝の作戦会議でも四大天使がそれぞれ持っている耐性についても説明は受けたからね。

 

だから、ウリエルと対峙しているボク達の中には雷をメイン攻撃とした人はいない。

 

彗華さんが雷を防いでいる時、床を蹴って壁を猛スピードで駆けていく人がいた。

 

「はっ! お望み通り行ってやるぜ!」

 

魔法で風を身に纏ったドルキーさんが、ウリエルに急接近していく!

 

速い!

風を纏うその姿はまさに竜巻!

荒れ狂う風はウリエルの雷を弾いていく!

 

《まずは貴様からだ。――――神の雷を受けるがいい》

 

「いくら強力だろうが、当たらなきゃ意味はねぇ!」

 

ウリエルから放たれる強大な雷をドルキーさんは全てかわしていく!

 

ウリエルの懐に潜り込んだドルキーさんは腕に竜巻を纏い―――――

 

「ゼロ距離だぜ! 大乱鬼流!」

 

超至近距離から暴風を放った!

まともに受けたウリエルの姿が見えなくなるほど濃密で強大な風の塊!

 

珠樹さんが叫ぶ。

 

「皆、ドルキーが奴の動きを封じている今よ! 一斉攻撃を!」

 

その声を合図にボク達は一斉に仕掛ける。

 

ボクと彗華さんは魔法、珠樹さんは剣を振るって風の斬戟を飛ばしていく!

 

「大天使ウリエルさまの名を貶める輩め!

断罪してくれる!」

 

「ええ! 主があなた達の行いを認めるはずないもの! アーメンよ!」

 

ゼノヴィアさんがデュランダルによる聖なる波動を放つと同時にイリナさんと光力で生み出した槍を次々に投げていった!

 

やっぱり、信仰心の強い二人からすると、あの天使達は許せないよね!

ボクも許せないもん!

 

「おらよっと! 四大天使をボコれる滅多にないチャンスだ! 俺も参加させてもらうぜ! ミカエルじゃないのが残念だけどな!」

 

アザゼル先生も強力な光の槍を投擲してくれているけど………完全にストレス発散してるよね。

 

ミカエルさんと何かあったのかな………?

後でレイナさんに聞いてみよう………。

 

全員の一斉攻撃がウリエルを包む。

 

しかし―――――。

 

《ヌゥゥゥゥッ!》

 

バンッと弾ける音と共にボク達の攻撃が全て弾かれてしまった。

 

傷は負っているようだけど、ほとんどダメージを受けていない………。

なんて頑丈な………!

 

珠樹さんが駆けていく。

 

「ドルキー! 私達が前衛よ! 彗華は援護して!」

 

「おうよ!」

 

「了解です!」

 

応じるドルキーさんと彗華さん。

 

それに続くかのようにゼノヴィアさんとイリナさんもウリエル目掛けて突貫していく。

 

「イリナ! 私達も行くぞ!」

 

「ええ!」

 

《僕も続きます!》

 

珠樹さんとドルキーさん、そしてゼノヴィアさんとイリナさんが接近戦を仕掛けていった。

 

ギャスパーくんも闇の獣を生み出してウリエルに攻撃を仕掛けていく!

 

四人とも高速で動き、ウリエルを翻弄していく。

 

「おらおらぁ! 俺のスピードに手も足も出ないってか!」

 

「神の雷はそんなものなのかしら!」

 

ドルキーさんの手裏剣、珠樹さんの高速の剣戟。

それらがウリエルの槍を弾いて、その軌道をずらす。

 

そこに間髪入れずにゼノヴィアさんとイリナさんが続く!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「やぁぁぁぁぁぁ!」

 

デュランダルと量産型聖魔剣の連続攻撃がウリエルの肉体を捉えた!

 

《ヌゥ! 調子に乗るなよ、悪魔共ッ!》

 

ウリエルは強い。

数で押しているはずのボク達の攻撃を受けながらも、こちらにもダメージを与えている。

後衛のボク達は大したダメージを受けていないけど、前衛のメンバーは所々に切り傷や火傷を負っている。

 

それでも、前衛の連携攻撃が、ボク達の支援攻撃がウリエルの攻撃リズムを崩しているのが分かる!

 

ウリエルがゼノヴィアさんと珠樹さんの渾身の一撃で微かに後ろに下がった―――――。

 

彗華さんが叫ぶ。

 

「美羽さん!」

 

「うん! いくよ、彗華さん!」

 

ボクは彗華さんの前に立つと魔法陣を展開。

それに合わせるように彗華さんは弓を構える。

 

彗華さんは魔法よりも小太刀や弓矢を使った戦闘が得意らしく、その中でも特に得意なのは矢を使った攻撃。

 

今朝、少しだけ話をして、試しに合わせてみたぐらいしかしてないけど………。

 

彗華さんが矢をセットして弓を引く。

すると、矢の先端が炎に包まれていった。

 

「いきます!」

 

彗華さんが矢を放つ。

放たれた矢はボクが展開した魔法陣を通過し―――――巨大な火の鳥となった。

紅色の炎の鳥だ。

 

紅色の鳥はウリエル目掛けて飛翔する。

 

そして――――――

 

巨大な火の鳥はウリエルを包み込み、火だるまにした。

 

彗華さんが言う。

 

「『(ほむら)』。放たれた矢は火の鳥と化して当たった相手を燃やします。今回は美羽さんの魔法を借りて強化しました。名付けるなら――――『大紅焔(だいくれないのほむら)』と言ったところでしょうか」

 

ボクと彗華さんの合わせ技。

イグニスさんほどの火力なんて出ないけど、当たればかなりのダメージを与えるはず。

 

未だ燃え続ける深紅の炎を眺めるボク達は警戒しながら、その様子を見る。

 

これで結構なダメージが与えられたと思うけど………。

 

皆がウリエルを取り囲み、出方を伺っていた。

 

 

その時―――――。

 

 

ドッゴォォォォォォォォン!!

 

 

轟音と共にこの空間が激しく揺れる!

 

床に巨大なクレーターが生まれて、すさまじいエネルギー波がボク達を吹き飛ばした!

吹き飛ばされたボク達全員が壁に叩きつられる!

 

叩きつけられた衝撃に、体に激痛が走った!

 

「くぅっ………。いったい………何が………?」

 

ボクは痛みを堪えながらも衝撃波が起こった場所に視線をやる。

 

そこには今までの攻撃でダメージを負ったウリエル。

 

だけど、あの体を包んでいた炎は消えていて………その代わりに槍を持っていない手に何かが握られていた。

 

あれは………?

 

珠樹さんが目を見開く。

 

「あれは………!」

 

「あれが何か知っているの?」

 

ボクが問うと彗華さんが答えてくれた。

 

「あれは地獄の門の(かんぬき)です。………私も文献でしか見たことがありませんが………間違いありません………!」

 

「それってどういうものなの?」

 

「ウリエルは………地獄の門の閂を折り、地上に投げつけて黄泉の国の門を開き、全ての魂を審判の席に座らせる役割を担う………と言われています。つまり――――」

 

「ようするに世界の終末に使う門の閂をぶん投げたってわけか。無茶苦茶しやがるな、あの野郎………!」

 

アザゼル先生も舌打ちしていた。

 

確かに無茶苦茶だ。

そんな物を呼び出すなんて………!

 

膝をつくボク達を見渡しながらウリエルは低い声音で言う。

 

《我にここまでの傷を与えたことだけは誉めてやろう。だが、これで終わりだ。悪しき者共よ………裁きを受けるがいい!》

 

ウリエルが極大の光を頭上に集めていく。

その質量は今までウリエルが放ってきたどの雷よりも、濃密で強大。

 

それほどの力をウリエルがチャージしていた。

 

 

だけど―――――

 

 

ボクは立ち上がり、叫んだ。

 

「ボクはずっとお兄ちゃんの側にいたい! こんな所で負けるわけにはいかないよ!」

 

「うおっ!? こっちのイッセーがシスコンかと思ったら、妹の方もブラコンじゃねぇか!」

 

「ドルキー、今さら何言ってるのよ? あの義兄妹、いくところまでいってるからね?」

 

「そうですよ、ドルキーさん! 良いじゃないですか! 愛がありますよ!」

 

「珠樹も彗華も感覚おかしくなってないか!? あの義兄妹に侵食されてるだろ!?」

 

ドルキーさん達が何か言ってるけど、そんなのは無視!

 

ボクはここで終わるわけにはいかないよ!

 

ゼノヴィアさんとイリナさんが立ち上がる。

 

「ああ、そうだな! 私もイッセーと子作りするまでは死ねん!」

 

「私もよ! あ、でも私、そういうことしたら堕ちるんですけど………」

 

「なーに、心配するな。その時はグリゴリに来いよ。VIP待遇で迎えてやるぜ。イッセーとも子作りできるしな。一石二鳥だろ」

 

「いやぁぁぁぁ! 堕天使の親玉が誘惑してくるぅぅぅぅぅ! ミカエルさまぁぁぁぁぁ!」

 

あ、アザゼル先生の勧誘にイリナさんが翼を点滅させてる………。

あと、一つツッコミを入れるなら、()親玉だよね。

 

とりあえず、あの雷を放たれる前に倒さないと。

 

ボクはドルキーさんに話しかける。

 

「ねぇ、ドルキーさん」

 

「ん? なんだ?」

 

「ちょっとお願いがあるんだけど―――――」

 

ボクは思い付いた作戦をドルキーさんに伝える。

 

最初はふむふむと頷きながら聞いてくれていたドルキーさんは、話を聞き終えるとニヤリと笑んだ。

 

 

 

 

バチッ………ハチチチチッ………。

 

 

ウリエルの雷が膨れ上がる。

 

触れてもいないというのに、あの雷の塊が持つ熱量で床や壁が焦げていく。

こっちにも肌を刺すような熱が伝わってくるほどだ。

 

ドルキーさんが言う。

 

「うっし! 作戦は決まりだ! 頼むぜ、おまえら!」

 

「了解………って、あんたも結構重要な役割なんだから、しくじらないでよね?」

 

「しくじるかよ。さては信用してないな、おまえ」

 

「あんたって、ここぞというときに心配かけるし………」

 

「まぁ………そういうところ、ありますよね………」

 

「二人とも酷ぇ!」

 

珠樹さんと彗華さんの言葉にガックリと肩を落とすドルキーさん。

 

この人達も仲良しだよね。

 

「おまえらも大概だよな………来るぞ」

 

アザゼル先生がウリエルを睨みながら構える。

 

ウリエルの方はいつでも雷を撃てる体勢に入っている。

当たれば確実にやられる。

あれはウリエルの大技だろう。

 

だけど――――――大技を放つ瞬間は必ず隙が出来る。

 

《愚かな者共に裁きの雷を………!》

 

ウリエルが槍を振り下ろす!

 

その瞬間を狙って、両サイドからゼノヴィアさんとイリナさん、珠樹さんが突撃した!

 

《我の動きを止める気か! そうはさせぬ!》

 

二人の攻撃を難なく弾き飛ばすウリエル。

 

そこにアザゼル先生の光の槍が襲う!

 

ウリエルが同じように弾き飛ばそうとするが―――――。

 

光の槍は途中で細かく分散し、無数の光の矢となった。

その全てがウリエルに突き刺さる!

 

「悪いな。この手の芸は俺の得意分野なんでな」

 

《小賢しい真似を………!》

 

ウリエルが煩わしそうに言うが………。

 

「まだですよ―――――『烈矢』ッ!」

 

彗華さんが矢を放った。

放たれた矢は音速を超え、ソニックブームを巻き起こしながら突き進む。

 

そして―――――ウリエルの額を捉える。

 

《………っ! おのれぇッ!》

 

ウリエルが怒りの籠った瞳を彗華さんに向けた。

完全に意識を彗華さんに持っていかれている。

 

 

 

――――――この時を待っていた。

 

 

 

「この近距離なら頑丈な君でも貫ける」

 

《貴様………いつの間に………!?》

 

ウリエルが初めて驚愕の声を漏らした。

 

なぜなら――――ボクが立っているのはウリエルの背後。

その背中に手を当てていたからだ。

 

どうやら、ボクの接近に気づけなかったらしい。

 

ボクがウリエルの背後を取れた理由。

それは、ボクの後ろに立っている人のお陰なんだ。

 

「俺の持ち味はスピード。誰よりも速く、どこまでも速く、だ。まぁ、そのスピードで運送係を任されるとは思わなかったけどな」

 

ドルキーさんがボクの肩に手を置いて苦笑していた。

 

そう、今の連携攻撃でウリエルが怯んだ隙にボクはドルキーさんにウリエルの背後まで運んでもらったんだ。

 

彼のスピードなら、ウリエルの背後を………それもすぐ側にまで運んでくれると思ったから。

 

そして、それは成功。

 

こうしてウリエルの背中に手を当てられるほどの場所にボクはいる。

 

「あとは任せるぜ、イッセーの妹さんよ」

 

ドルキーさんの言葉に頷くと、ボクは幾重にも魔法陣を展開。

七色の光を収束させる。

 

ボクの放てる最高の一撃。

この一撃に全身全霊を籠めよう。

 

《き、貴様ァッ!》

 

「君達の好きにはさせないよ! スターダスト・ブレイカァァァァァァァッ!!」

 

七色の光が放たれ―――――ウリエルの体を貫いた。

 

巨体にポッカリと空く穴。

空いた穴を中心にひび割れていく。

 

ひびから赤い光が漏れだしていて………。

 

《ぐ、おお……。遠ざかる……我らの千年王国が……。ケガレし悪魔どものせいで……千年王国がケガレてゆく……》

 

体が崩壊していく中でウリエルが途切れ途切れの声を漏らす。

 

ボクはウリエルに真正面から言った。

 

「君達の言う千年王国はどこまでも縛られた国。そんな場所じゃ誰も幸せになんてなれないよ」

 

ウリエルはそのまま塵となって消えていった―――――。

 

 

[美羽 side out]




ウリエル撃破!


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