ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

5 / 37
異形なる天使 Ⅴ

俺達はお互いのことを説明しあった。

 

俺がかつてアスト・アーデという異世界に飛ばされたこと。

戦場に立ち、前線で戦ってきたこと。

魔王シリウスを倒し、娘である美羽を託されたこと。

他にも美羽と同じ異世界人たるアリスを連れて帰ってきたことも。

 

鋼弥達も自分達の世界について色々と教えてくれた。

 

その世界には魔界という世界があり、俺達が知っている冥界や天界と互いに連絡を取り合っていることや、鋼弥達がそこの住人であること。

 

で、向こうの俺の様子も教えてくれたんだけど………。

 

「アッハハハハハハハ!! イッセー! おまえ、どこの世界でもぶれないな! まさか、平行世界のイッセーも乳をつついて覚醒しているとはな!」

 

自身の膝を叩きまくって爆笑するアザゼル先生。

 

どうやら、平行世界の俺はリアスのおっぱいをつついて禁手に至ったらしい。

そして、向こうでも俺はおっぱいドラゴンと呼ばれ、リアスはスイッチ姫として活躍しているとか。

 

うーん、なんというか………『俺』って感じだよね。

 

リアスのおっぱいで覚醒していたとは………。

 

ふと横を見るとリアスが恥ずかしそうに頬を赤くしながらも、ガッツポーズを取っている。

 

で、俺の後ろでは、

 

「あんたって………はぁ………」

 

アリスが額に手を当てて呆れていた。

ゴメンね、おっぱい野郎で!

 

それからと、鋼弥は教えてくれる。

 

「こっちのイッセーは乳語翻訳(パイリンガル)という女性の胸の声を聞く技を開発してな。ある意味、女性に対しては無双できるようになっている」

 

「なっ!? マジでか!? そっちの俺、そんな素晴らしい技を開発してるの!?」

 

「素晴らしいかはともかく、相手の思考が読めるという点では優れた技だ。まぁ、レーティングゲームでは使用禁止になってしまったよ、当然ながら」

 

「相手の思考が読めるなんて、作戦丸分かりだしな」

 

「いや、単純に女性プレイヤーが戦ってくれなくなるからだが」

 

「あー………そっちか」

 

ガクリと肩を落とす俺。

 

アザゼル先生やリアス、ソーナは「まぁ、当然だな」と頷いているが………。

 

しかし、おっぱいの声を聞く技か………向こうの俺は天才か!?

俺も作っちゃおうかな、乳語翻訳ッ!

 

おっぱいとお喋りしてみたい!

 

先生がコホンと咳払いする。

 

「とりあえず、お互いのことを知れたところで、本題に入ろうか。涼刀鋼弥、おまえさん達は報告にあった天使共を捕縛、もしくは消滅させるためにこの世界に来た。そういう認識で良いんだな?」

 

「そうだ。俺達は魔界より正式な依頼を受け、この世界に来ている。こちらの世界に逃げ込んだ天使は四人。ミカエル、ラファエル、ウリエル、ガブリエル。殺戮の四大天使だ」

 

鋼弥の言葉に反応したのはイリナ。

 

「そんなの信じられないわ………。ミカエルさまやラファエルさま達があんな………」

 

「気持ちは分かるが、あれは君が仕えている天使長ミカエル――――四大熾天使とは全くの別人と考えてくれて構わない。いや、むしろそう考えるべきだ」

 

アザゼル先生が問う。

 

「殺戮の四大天使と言ったが、それは報告にあった姿と関係しているのか? どう考えても天使には思えんが………」

 

先生の言う通りだ。

ミカエルさんも他の熾天使の人達も全員、慈悲深くて悪魔である俺にも普通に接してくれる。

 

駒王協定が結ばれてからは天界は十分すぎるバックアップをしてくれているしな。

 

鋼弥は息を吐く。

 

「あの姿には天使という存在がどういうものか関連している。それは天使は悪魔や異教徒に対しては冷たく、時には粛正するときもあるからだ」

 

リオさんがそれに続く。

 

「私達の世界では大天使ガブリエルは魔王ベリアルにより堕落させられたソドムとゴモラの町を焼き尽すという行為をとりました。それだけではなく、他にも異教徒や悪魔に対して残虐な仕打ちを行いました。このような行為が続けばあらゆる種族を滅ぼしかねない、そう判断した鋼弥のお父さんとその仲間、他の大天使たちは殺戮の四大天使を封印したのです」

 

「ちょっと待ってくれ。封印された奴らがこの世界に現れたということは、その封印が解かれたということだろう?」

 

「ええ、イッセーさんの言う通りです。こちらでも大体の目星はついています。―――――ゾロアスター」

 

「ゾロアスター?」

 

「ゾロアスターとは原初の悪神アンリ・マンユを筆頭にした神話勢力。彼らが私達の勢力を分断するために彼らの封印を解き、この世界に向かわせたと私達は考えています」

 

「俺達の世界では『禍の団』とゾロアスターが組んでてな。冥界も結構な被害を受けちまった」

 

ドルキーも鼻をかきながらそう続けた。

 

違う世界でも『禍の団』は好き勝手に暴れてやがるのか。

しかも、ゾロアスターなんて勢力もそこに加担している………。

 

俺は息を深く吐いて呟く。

 

「厄介なことになってるんだな」

 

「こっちでも似たようなもんだろ。異世界の悪神と前魔王ルシファーの息子が組んで暴れているって言うじゃないか。しかも悪神の下僕とやらもとんでもない能力を持っているとか」

 

「まぁ、そうなんだよね」

 

俺達は盛大にため息を吐いた。

ついでに胃が盛大に痛くなった。

 

だって、ベルの能力とかチートだもん。

 

………と、今はその殺戮の四大天使の話だった。

 

アリスが話を戻すように問いかける。

 

「それで、あの四大天使の目的ってなんなの?」

 

アリスの問いにアルスさんが両目を瞑ったまま答える。

 

「『千年王国』の建設。神を信じる者たちを迎え入れて、それ以外を始末するというものだ。だが、唯一神―――――いわゆる聖書の神が滅んでも自分たちが代わりに執行するという性質の悪い考となった」

 

性質悪すぎるだろ………。

あまりにも勝手で強引すぎる。

その考えじゃ、俺達悪魔だけでなく一般の人間にも手を出すんじゃないのか?

 

「我々は彼らを相手取らなければなりません。ですが、我々だけでもあの天使を相手にして敵うかどうか………」

 

「鋼弥が不意を突いたけど、対して傷を付ける事はできなかったわね……」

 

フィーナさんと(ゆかり)さんがそう言う。

 

リアスの後ろに立っている木場もそれに続く。

 

「こちらも制限しなければいけなかったとはいえ、苦戦を強いられてしまったからね。なによりイッセーくんの一撃を受けても倒れないあの頑強さ。それにあの攻撃力………」

 

「君たちが来てくれていなければ危なかっただろうね」

 

ゼノヴィアも木場の意見に頷いた。

 

すると、タオくんがずいっと顔を前に出してくる。

 

「そこでこれはお願いなんだけど………僕達と共に戦ってほしいんだ。君たちほどの実力者が共闘してくれるならとても心強い」

 

「願ってもない提案だ。こっちもお願いしようと思っていたところだからな」

 

俺の言葉に鋼弥が反応する。

 

「それでは―――――」

 

「ああ、魔界のハンターの力、俺達に貸してくれ」

 

「それはこちらの台詞だな。異世界で勇者と呼ばれたその力、頼りにさせてもらうよ」

 

俺と鋼弥は互いに笑みを浮かべて、握手を交わした。

 

俺が見たところ、鋼弥達は全員が相当な実力者。

猛者の集まりだ。

 

彼らが手を貸してくれるというのなら、こっちも心強い。

 

先生が楽しそうにククッと笑う。

 

「俺達もリゼヴィム達『クリフォト』の対策で人手不足だ。おまえらの力はかなりありがたい。………しかし、こんな時になんだが、面白いことになったな。平行世界のハンター達の力、興味をそそられるぜ。おまけに敵は四大天使ときたもんだ。形や姿は違うが、四大天使をボコれるこんなチャンスは無い。この機会にこれまでのうっぷんを晴らさせてもらうとするか」

 

「うっぷん晴らすために戦うんですか!?」

 

「それも一つの理由だな。ミカエルの野郎には色々やられたからな………。クッソ、思い出しただけでムカついてきた。よーし、平行世界の天使共をボコボコにしてやるぜ!」

 

うわー………先生、かなり張り切ってるな………。

一体、ミカエルさんとの間に何があったんだろう?

 

ドルキーが掌に拳をぶつけて立ち上がる。

 

「よしっ! そうと決まれば、さっさと見つけて討伐するか!」

 

しかし、隣に座るアルスさんが冷静に告げる。

 

「待て、そもそもあいつらがどこにいるのか解るのか?」

 

「あー……そういえば……」

 

「少しは落ち着いて、考えろよな。単細胞」

 

「あっ!? 誰が単細胞だ! ペチャパイ!」

 

「ペチャ……!? んだと、この風バカ!」

 

あーあー………ドルキーと望紅(もこう)さんがケンカ始めちゃったよ………。

 

まぁ、ペチャパイは禁句だよね………。

 

ただ、それを言ってしまうと、うちにもキレるやつがいてだな―――――。

 

「ねぇ………ドルキーって言ったかしら? 私の前でその言葉を使うなんていい度胸じゃない………フフフ」

 

 

バチッ バチチチチッ

 

 

ほらぁ!

アリスが白雷をまき散らし始めたよ!

 

ものすごく迫力のある笑みでドルキーに迫って行く!

 

「えっ、ちょっと………ちょ、待って! なんであんたがキレてんだよ!?」

 

「うるさーい! 私の前でその言葉を使った奴は全員丸焦げにしてやるぅぅぅぅぅっ!」

 

「よっし! 私も参加だぁ! ドルキー、テメー、覚悟しやがれ!」

 

「おいおいおいおい! 二人がかりはなしだろ!?」

 

「………いえ、三人です。今のは私も許せません」

 

おおっ!?

小猫ちゃんも参加ですか!?

 

小猫ちゃん………いや、小猫さまもお怒りのようだ!

 

「なぁ、ドルキー」

 

「………覚悟は」

 

「いいわね?」

 

望紅さん、小猫ちゃん、アリスが凄まじいオーラと共にドルキーを追い詰めていく!

 

 

そして―――――

 

 

「ギャァァァァァァァァッ!!」

 

ドルキーの断末魔が部室に響き渡った。

拳の雨が赤く染まっていく。

 

安らかに眠ってくれ、ドルキー。

超短い間だったけど良い奴だったよ。

 

「いや、死んでねーし!」

 

「なんで、初対面の奴が俺の心読んでんだぁぁぁぁぁぁ!」

 

そんなに分かりやすいか!?

リアス達もそうだったけど、俺の心の内ってそんなに分かりやすいのか!?

 

「まぁ、そうですね」

 

「うん、わかりやすいわ」

 

「えっと………はい」

 

「そうね」

 

「フフフ、可愛いですね」

 

「………わかりやすい」

 

「なんというか………そうね」

 

リオさん、珠樹(たまき)さん、彗花(すいか)さん、リーザさん、フィーナさん、(ゆかり)さん、カナンさん、向こうの女性陣がそう続いていく!

 

そーですか!

分かりやすいですか!

俺はどうすりゃ良いんだよ!

 

お面でも被れってか!?

 

「それでも難しいんじゃないか?」

 

「鋼弥ァ! さり気に人の心を読むない!」

 

「まぁ、それはおいて置こう」

 

「置くなよ! 俺にとっては結構重要な問題だからね!?」

 

「まずは泊まるところを探さないとな」

 

「スルーされた!? ひでぇ!」

 

はぁ………向こうの俺もこんな扱いなんだろうか?

 

それで、鋼弥達の泊まるところなんだけど………。

 

俺は鋼弥達に提案する。

 

「家に来るか?」

 

「そう言ってくれるのはありがたいけど、良いのか? こちらは結構な人数だぞ?」

 

「それは問題ないよ。今はオカ研女子部員全員が家に住んでるけど部屋は余ってるからな」

 

「………いったい、どれだけ大きい家なんだ?」

 

「んー………とりあえず、この場にいるメンバー全員が余裕で暮らせるほどには大きいかな。夏にリアス………グレモリー家が改築してくれてさ」

 

「………流石はグレモリー家と言ったところか」

 

鋼弥も呆気に取られているようだ。

多分、実際に見たら開いた口が塞がらないんじゃないかな?

 

それで、鋼弥達が家に来るとなると夕食の用意を母さんにお願いする必要があってだな。

 

俺が携帯を取り出して母さんに連絡を取ろうとすると、美羽が言ってきた。

 

「もうお母さんには連絡しといたよ。急だったから、少し遅くなるかもしれないけど何とか用意できそうって」

 

「そっか。サンキュー、美羽」

 

「本当に仲の良い兄妹だな」

 

俺と美羽のやり取りに鋼弥はフッと微笑んだ。

 

 

 

 

その日の夜。

 

家に泊まることになった鋼弥一行だったが、家に着いた途端、口をポカンと開けて絶句していた。

まぁ、こんな普通の住宅街に大豪邸が建っていたら普通にそうなるよね。

 

夕食を済ませリビングで一息ついていると、鋼弥が紅茶に口を着けながらボソリと呟いた。

 

「………朱乃もここに住んでいるのか」

 

朱乃………?

あ、そういえば部室で時々、朱乃の方を見てたっけ。

 

ここで俺の思考はとある可能性に行きつく。

 

もしかして―――――。

 

「なんとなく思ったんだけどさ、そっちの世界では朱乃と恋人同士だったりする?」

 

「へぇ、流石に鋭いね。そうだ、俺と朱乃は想いを伝えあった仲だ」

 

やっぱりな。

朱乃を見る目がどことなくそれっぽかったというか、愛おしい者を見る目だったからね。

 

しかし、鋼弥は苦笑を浮かべる。

 

「この世界に来て、ここの朱乃はどうしているかと思ったけど、幸せそうだ。それはイッセー、君がいるからだろう?」

 

「俺か? 俺はそんな大したことはしてないよ」

 

「そう思っているのは君だけだろう。僅かな間だけど、君たちを見ていてよく分かった。皆、君のことを心から信頼している。この世界の朱乃もそうだ」

 

うーむ、会って間もない人にそう言われると照れるというかなんと言うか。

というより、鋼弥の洞察力も大したもんだな。

 

鋼弥は微笑みながら言う。

 

「この世界の朱乃は俺が知っている朱乃とは違う。それでも、朱乃のことよろしく頼むよ」

 

「任された。そっちも朱乃のこと、大切にしろよ?」

 

「そのつもりさ」

 

俺達は互いに笑みを浮かべ、拳を合わせた。

 

鋼弥も男だよね。

こりゃあ、他の女性陣も惚れてるかも。

 

ただ、鋼弥って一途そうだから、そこが問題かもしれない………他の女性陣にとって。

 

 

 

 

鋼弥と色々話した後、着替えを持って風呂場へ。

 

傍にはいつものように美羽とアリスもいる。

 

アリスが訊いてくる。

 

「楽しそうにしていたけど、鋼弥と何を話していたの?」

 

「んー………、向こうでの生活とか色々。あと、男同士の約束ってやつ?」

 

「はぁ?」

 

首を傾げるアリス。

 

まぁ、アリスには分からないよね。

女の子だし。

 

美羽が微笑みながら言う。

 

「鋼弥くんとお兄ちゃんって結構気が合ったりする? なんとなく似てるし」

 

「さぁ? それはどうかな」

 

鋼弥のやつ、おっぱいの話題について来れないし!

男ならおっぱいの一つくらい語れるようであってほしかった!

 

唯一の不満を抱きながら、俺達は大浴場に到着。

服を脱いで風呂に入る準備完了!

 

んふふ~♪

今日も美羽とアリスに背中を流してもらうんだ!

 

やっぱり女の子に背中を流してもらえるのは最高だよね!

 

などとご機嫌になりながら、風呂場への扉を開ける。

 

 

すると―――――。

 

 

「「「えっ…………!?」」」

 

風呂場にはリアス達―――――だけでなく、リオさん達、平行世界組の女性陣達が!

 

おおおおおおおおおお!

 

こ、これはなんと絶景な!

 

リオさんのおっぱい、大きいし、いい形してる!

フィーナさんの全裸はどこか神々しい!

他の女性陣も中々のお体をお持ちだ!

 

これは………これは素晴らしい!

 

脳内保存脳内保存!

眼前の光景を目に焼き付ける俺!

 

しかし、次の瞬間―――――

 

 

「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ! イッセーさんのエッチィィィィィ!!!!!」」」」

 

「ギャァァァァァァァァァ!!」

 

俺は強烈な風の魔法で宙を舞った―――――。

 

 

 

~そのころの鋼弥~

 

 

「ん? イッセーは一緒じゃないのか?」

 

「イッセーならさっき風呂に行くと言っていたよ」

 

「………さっき、リオ達が風呂に行ったんだが………」

 

「えっ?」

 

鋼弥とドルキーの耳に悲鳴が聞こえてきたのは、この直後のことだった。

 

 

~そのころの鋼弥、終~

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。