ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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今回も最終決戦後の後日談です。
暫くは本編の後日談が続くと思います。


グレモリーの卒業式

三月―――――。

学生にとっては色々と節目となる季節だ。

特に最高学年の学生には。

 

「いつもより早いんだな」

 

早朝、目が覚めた俺は彼女にそう声をかけた。

彼女―――――リアスは俺よりも早く起きていて、既に制服に袖を通している。

 

ちなみにだが、昨日はリアスと朱乃の二人と一緒に寝ることになった。

その理由はというとだ………。

 

リアスは微笑んで言う。

 

「ええ。今日が最後だもの」

 

今日この日、駒王学園で卒業式が執り行われる。

リアスと朱乃は高等部を卒業し、大学部へと旅立つんだ。

リアスが高校生活でこの制服を着るのも最後になる。

 

「朱乃は?」

 

「もう着替えているわ。彼女も、ね?」

 

ウインクするリアス。

 

そっか、朱乃の方も準備できているのか。

二人とも、あの学園には思い入れが強い。

だからこそ………最後だからこそ二人は―――――。

 

そんなことを思っていると、

 

「イッセーも来る?」

 

と、リアスが誘ってきた。

 

「良いの?」

 

「こうして制服を着るのも、あなたと登校するのも最後になるもの。私はあなたに側にいてほしいの。………ダメ?」

 

まるで、何かをねだるような、そんな甘えた声音で言ってくるリアス!

なんというか、その………美羽に抱くような感情が………!

 

サーゼクスさん!

やっぱり、あなたの妹さんは最高に可愛いです!

これはデレデレしちゃいますよね!

シスコンにもなりますよね!

俺があなたの立場だったら、間違いなくリアス―――――リーアたんを愛でる!

 

おっと、いかんいかん。

ここはシスコンを発揮するところじゃない。

 

「じゃあ、一緒に行こうか。リアス」

 

「ええ、ありがとう。イッセー」

 

 

 

 

手早く制服に着替えた俺はリアスと朱乃の三人で玄関を出る。

早朝のせいか、人通りは少ない。

いるのは朝が早い社会人か朝練がある学生くらいだ。

今のところ駒王学園の生徒は見かけない。

 

「ちょっと、朱乃。今は私の時間のはずでしょう?」

 

「いいえ、リアス。もうそろそろ交代してほしいですわ。私だって、イッセー君と腕を組んで歩きたいの」

 

などと言いながら、俺の左腕を取り合うリアスと朱乃。

 

右腕があれば、二人が左右の腕に絡んでくるのだが………。

大体のパターンで言えば、朱乃が俺の腕に絡まり、リアスが対抗して逆側の腕に絡まるというものだった。

それが、右腕を失ったことで完全な取り合いになってしまい………。

 

一応、二人はそれぞれの時間を決めていたらしく、リアスが俺の腕から離れ、今度は朱乃が腕を絡めてくる。

 

「うふふ、イッセー君と一緒に登校ですわ♪」

 

本当に嬉しそうに言う朱乃。

俺とくっついていると、いつもの大人びた表情から素の少女へと戻っていく。

リアスの方はというと、俺の制服の裾を掴んで後ろからついて来るという、なんとも可愛らしい仕草を………というか、プクッて頬を膨らませてる!

二人とも俺といる時には、こういう表情を見せてくれるんだよね。

それが嬉しかったりするんだけど。

 

しかし、こうして歩いていると、こういう風に二人と登校することが無くなってしまうんだなと思ってしまう。

もう少しで、この光景が見られなくなる………そう思うと寂しい気持ちも出てくるもんだ。

 

まだ誰も来ていない駒王学園………と思われたが、校門で見知った二人が清掃をしていた。

 

「あら、リアス、朱乃、イッセーくん。ごきげんよう」

 

そう挨拶をくれたのはソーナ。

なんと、ソーナと真羅元副会長が校門の前を箒で掃いていた。

まさか、リアスや朱乃よりも早く登校している人がいるとは………。

 

ソーナが言う。

 

「どうにも目覚めが早かったものですから。家でやることもないですし、ちょっと早めに来て掃除をしようと思ったのです。そうしたら椿姫も来ていて………」

 

「はい、私も今日に限って早く起きてしまって………」

 

卒業生四人とも朝早く起きてしまったことか。

それを知ると、リアス、朱乃、ソーナ、真羅元副会長がおかしそうに噴き出していた。

 

 

 

 

ソーナ達と別れた俺達三人が向かったのは旧校舎―――――オカ研の部室だった。

 

部室の中はいつもと変わらない。

部長、副部長が代わり、リアス達はあまり顔を出さなくなったが、この部屋は二人がいた頃と同じように使っている。

今の部長はアーシアだ。

でも、ここはリアス達が作り出した部室なのだから。

 

「お茶、淹れますわね」

 

朱乃がいつものようにお湯を沸かし始める。

そして、リアスは部長の椅子に座った。

 

この光景も久しく見ていないな………。

こうして見ていると、やはりリアスの方が様になっている。

アーシアもまだまだ部長としては足りないってことかな?

でも、いつかアーシアがその席に合う部長になる日も来るのだろう。

 

リアスは少しの間、目を閉じると、懐かしそうに話始めた。

 

「………祐斗達が来るまでは二人きりだったわね、朱乃」

 

「ええ、学園に掛け合って、どうにか部としての体を守ってもらいましたが………どう考えても部員が足りませんでしたわ」

 

クスクスとおかしそうに笑う朱乃。

 

オカルト研究部。

ここはリアスと朱乃が二人で立ち上げた部だ。

確かに部としては部員が圧倒的に足りていないな。

でも、自分の達の正体を鑑みれば、やたらに部員を募集するわけにもいかない。

 

リアスが言う。

 

「私達が二年生になって、新入部員が入ってきた。それが祐斗。あの子、下級生ってことで必要以上に私達に気をつかってくれていたわ」

 

「誰よりも先に来て、部室の掃除をしてくれましたわね。三人しか使っていなかったのに、旧校舎全体を綺麗にしてくれましたわ。きっと、祐斗君は私達に旧校舎を気持ちよく使ってもらいたいがために一生懸命だったんでしょうね」

 

木場ならそうするんだろうな。

あいつは誰よりも真面目で、誰よりもリアスと朱乃のことを………って、こいつは俺の口からは言わない方が良いな。

なぁ、木場?

 

「三年生になったら、小猫とギャスパーが新入部員として入ってきた。その後にイッセー、あなたが来た」

 

リアスと俺の目が合うと、俺達は互いに微笑みあった。

 

「イッセーが来て、美羽が来て。アーシア、ゼノヴィア、レイナ、イリナ、アリスさん、レイヴェル。顧問の先生にはアザゼルとロスヴァイセまで。一気に増えちゃったわね」

 

「うふふ、これでもう人数が足りなくて部としてどうなんだ、とは言われませんわね」

 

そういや、そんな話を聞いたことが………。

でも、確かに俺が入部してから、ここも部員が増えていった。

 

リアスと朱乃はこの部室が誕生してから今に至るまでの全てを知っている。

だから、余計に寂しくなるのだろう。

今も二人は愛しそうに、寂しそうに部室のあらゆるところに目を配らせていた。

俺は二人に声はかけず、ただ二人を見守っていた―――――。

 

「フフフ、悪魔の仕事でまだここを使うし、明日も来るのにね。でも………学生としてここに放課後、顔を出せないことが、たまらなく寂しく感じるわ」

 

「三年間、短いように思えましたわね、リアス」

 

「悪魔の生からしたら、三年なんて一瞬だもの。でも―――――」

 

「「楽しかった」」

 

二人は、同じ感想をそう漏らした。

 

この後、美羽達も来て、リアスと朱乃を含めた最後の部活動をすることに。

部活動といっても、普段のようにお茶しながら話すだけだったが、それでも二人は―――――最高の笑顔を見せてくれていた。

 

 

 

 

卒業式が始まる。

在校生、保護者の盛大な拍手のもと、卒業生が体育館に入場する。

保護者の席では紅色の髪の紳士―――――リアスのお父さんであるジオティクスさんがデジカメ片手に撮影していた!

その隣には相変わらずリアスのお姉さんにしかみえない、ヴェネラナさんの姿が!

 

更にその隣には紅髪のお兄さん―――――サーゼクスさんが号泣しながら、こちらもカメラを回していた!

もう始まる前から泣いてたよね!

でも、その気持ちは分かる!

同じ兄だもの!

サーゼクスさんの隣にはグレイフィアさんとミリキャスもいて、一家総出でリアスの卒業式に参加しているようだった。

号泣するサーゼクスさんにグレイフィアさんは深く息を吐いていた。

ちなみに従兄弟としてサイラオーグさんも保護者席にいたりする。

 

他の場所へと視線を移すとバラキエルさんが鼻水を垂らしながら号泣していた!

当然ながら、こちらもデジカメで撮影している!

朱乃が体育館に入った瞬間から滝のような涙を流しててだな………それを見た朱乃は顔を赤くしていた。

教員席に座るアザゼル先生もバラキエルさんの親バカに苦笑を浮かべるしかないようだ。

 

そうして式は始まり、国家斉唱、校歌斉唱と続き、卒業証書授与が終わった。

在校生送辞として、生徒会長に就任したゼノヴィアが壇上に上がり、送辞を読んでいった。

 

『卒業生答辞。代表、支取蒼那さん』

 

「はい」

 

卒業式答辞として、ソーナが呼ばれ壇上に上がる。

ソーナが立ったところで、保護者席では――――――。

 

「ソ、ソーナちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

はい、もちろんいますとも。

妹大好きお姉さん、セラフォルーさんもね!

静かな式だけあって、今の叫びも悪魔だからこそ聞き取れる程、小さな声だったが………うん、大号泣してる。

 

実は式が始まる直前、俺はサーゼクスさん達保護者の方々と話していて―――――。

 

 

 

 

それは式が始まる前。

教室からの移動で体育館に行く途中のことだった。

 

「やぁ、イッセー君」

 

ふいに声をかけられ、振り向くと―――――なんと、サーゼクスさんが立っていた!

しかも、その場にはグレイフィアさんやセラフォルーさんもいる!

 

な、なんだなんだ?

ああして、集まってるということは俺に用があるってことなんだろうけど………四大魔王のうち、二人もいるってことは何か大事があったのか?

流石に今の俺じゃ力になれそうにないんだけど………。

そんなことを考えつつ、俺はサーゼクスさんのいる場所へと駆け寄る。

 

サーゼクスさんが言う。

 

「あの戦い以降、話す機会がなくてね。心配していたんだが、元気そうでなによりだよ」

 

「ありがとうございます。まぁ、今はこんな感じで万全とは言えないですけど、元気にやってます」

 

苦笑して言う俺。

 

実は右腕を失った以外にも、俺の体は色々なところでガタが来ている。

まず、戦える力がかなり失われた。

それも禁手を長く維持できない程に。

あの戦いで消滅の危機に瀕した俺は、今もギリギリのところでその存在を保てている状態だ。

体力、生命力共に万全には程遠く、変革者の力を使えば肉体、特に精神がもたずに死ぬだろう。

禁手だって、長時間使おうとすれば、数日寝込むくらいはするだろう。

あの戦いの後遺症で、一時は龍神クラスをも超えた俺の力は大幅に弱体化したことになる。

 

今は仙術や冥界、各勢力の医療技術による治療で少しずつ回復しているが、今の技術では全快するのに何十年、下手すれば百年かかるかもしれないと言われている。

この事は俺の周りでも認識されていることだ。

 

俺の言葉を聞いたサーゼクスさんは申し訳なさそうに言った。

 

「すまない、イッセー君。我々がもっと動けていれば、君は………」

 

謝罪の言葉を述べようとするサーゼクスさんに、俺は手でそれを遮った。

 

「気にしないで下さい、サーゼクスさん。これに関しては仕方がないです。それに………今の結果に後悔はないんです。誰一人欠けずに戻ってこられた。俺自身も皆も、こうして日常にいる。それだけで今は満足しています」

 

本来であれば、俺は消えて、この場にはいなかった。

それを繋いでくれたのが皆だ。

サーゼクスさんやグレイフィアさん、セラフォルーさんだって、俺に生命力を分けてくれた。

 

俺はサーゼクスさん達を見渡して言う。

 

「俺が今、こうして生きているのもサーゼクスさん達のお陰でもあります。本当にありがとうございました」

 

頭を下げる俺。

すると―――――サーゼクスさん達も揃って、頭を下げてきた。

セラフォルーさんが言う。

 

「お礼を言うのは私達の方よ、赤龍帝君………いいえ、イッセー君。本来なら、私達もこの場にはいないわ。今頃、私とサーゼクスちゃんは隔離結界の中でトライヘキサと戦っているはずだったもの」

 

「世界のためとはいえ、私達の行動により悲しむ者もいただろう。それに、私達も愛する者と長きに渡り離れることになっていた。どんな強者でもそれは辛いことだ。しかし、君がそうなるはずの我々を救ってくれたのだ」

 

サーゼクスさんの言葉にグレイフィアさんが頷いた。

 

「イッセーさん。あなたのお陰で、私もミリキャスもサーゼクスと離れずにすみました。あなたがいなければ、私達は今頃………。だから、今は一人の人間として言わせてください。本当にありがとうございました」

 

そう言って、再び頭を深く下げるグレイフィアさん。

 

………もし、あのまま隔離結界が発動して、トライヘキサと共に結界の中へ入ってしまっていたら。

サーゼクスさんもセラフォルーさんも妹の卒業式に顔を出すことは出来なかっただろう。

グレイフィアさんは夫であるサーゼクスさんと離れ離れになっていただろう。

 

それを想うと、俺はイグニス―――――エクセリアの力を使って良かったのだと改めて思うことができる。

俺の選択は、俺の出した答えは間違っていなかった。

 

今、こうして三人の言葉を聞いただけで、胸がいっぱいになる。

だが―――――。

 

俺は込み上げてきたものを抑え込み、サーゼクスさん達に言った。

 

「サーゼクスさん、セラフォルーさん。これで終わりじゃありません。俺達にはまだ未来があります」

 

戦いは終わった。

でも、それで終わりじゃないんだ。

まだ先、これから先の未来がある。

俺達がやるべきことは多い。

 

サーゼクスさんが言う。

 

「分かっているよ、イッセー君。今後は各勢力とより良好で密な関係を築けるよう動いていくつもりだ。もちろん、まだまだ懸念されることは多い。だが、必ず成し遂げてみせよう」

 

「私達は魔王だもの。それくらいはやってみせないとね☆」

 

 

 

 

式を終えた三年生。

笑い合う者、泣き合う者、抱き合う者、一緒に写真を撮る者と色々だ。

その中でリアスと朱乃が卒業証書の入った丸筒を持って、校門を潜っていく。

彼女達を待つのは俺達オカ研メンバーだ。

彼女達と合流した俺達は他の生徒達の目が触れないところまで移動する。

 

さーて………本題はここからだ。

実は少し前に木場達から相談を受けていた。

俺は三人の背中を押し、リアスの前に向かわせる。

 

「木場、小猫ちゃん、ギャスパー。この三人からリアスに伝えたいことがあるそうだ。な、三人とも?」

 

「伝えたいこと?」

 

頭に疑問符を浮かべるリアス。

木場、小猫ちゃん、ギャスパーはリアスの前に立つが、緊張の面持ちになっていた。

俺は三人の頭を軽くポンポンと撫でた後、後ろに下がり様子を見守ることにする。

 

「え、えと………あ、あの………卒業おめでとうございます」

 

「おめでとうございます」

 

「おめでとうございます!」

 

木場がここまで赤面して、声を上ずらせているのは珍しい。

まぁ、理由を聞けば同然なんだが………。

 

聞きたいこと、伝えたいことってのは、タイミングってものがある。

多分、三人にとって、今この時こそが最大のチャンスになるはずだ。

 

「ええ、ありがとう。祐斗、小猫、ギャスパー」

 

ニッコリと微笑むリアス。

木場はもじもじしながらも言葉を続けていく。

 

「そ、それで………卒業されて………もう駒王学園高等部の、オカ研の部長も引退されましたし………」

 

うん、木場よ。

ガッチガチじゃないか。

 

珍しい木場達の姿にリアスはおかしそうに笑った。

 

「もう、どうしたの? いつものあなた達らしくないわ。何を言いたいか、ハッキリ口にしないと―――――」

 

そう言いかけるリアスの言葉を遮るように木場達がそれを口にしていく。

 

 

 

「―――――リアス姉さん」

 

「リ、リアス姉さま」

 

「リ、リ、リアス、お姉、お姉ちゃん!」

 

 

 

リアス『部長』でもリアス『先輩』とも違う呼び方。

とうのリアスはそう呼ばれた瞬間、驚き、そのまま固まってしまっていた。

全く予想していなかったのだろう。

 

木場が言う。

 

「部長とお呼びするより、そちらの方が合っていると思いまして………」

 

そう、これが受けた相談の内容だった。

リアスと朱乃の卒業が間近に迫り、木場達からリアスの呼び方について相談を受けたのだ。

木場達から相談を受けた俺は三人にこう伝えた。

 

―――――伝えたいことがあるなら、声にして伝えた方が良い。それがおまえ達が心の底からそうしたいことなら、なおさらだ。

 

他の皆も同様に「絶対にやれ!」と背中を押した。

その結果、三人は勇気を持ってリアスに伝えたんだ。

 

リアスは―――――。

 

「………」

 

無言で涙を溢れさせて、顔を両手で覆ってしまった。

突然の変わりように木場達は慌てる。

 

「あ、あの、変でしたか!? 失礼でしたか!?」

 

「す、すいません!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

謝る三人だったが、リアスは首を横に振った。

リアスは涙を指で拭うが、それでも止まらない。

 

「そうではないの………。嬉しくて………。全く、あな達ったら反則よ。こんなに感動することを言われるなんて思ってもみなかったわ」

 

リアスはずっと呼ばれたかったはずなんだ。

リアスは眷属を家族のように思っていた。

木場達を弟、妹のように見ていたんだから。

 

リアスは一端、落ち着いた後、イタズラな笑みで木場達に言った。

 

「もう一度呼びなさい」

 

「「「え?」」」

 

突然の言葉に呆気に取られる三人。

リアスは耳を木場達に傾けて、もう一度言う。

 

「あら? もう呼んでくれないの?」

 

そう言われた三人は顔を赤くして、

 

「………リアス姉さん」

 

「………リアス姉さま」

 

「………お、お姉ちゃん」

 

「うふふ、これは嬉しいものね」

 

超ご機嫌モードとなったリアスはその場でステップを踏むほどだった。

本当に嬉しいのだろう。

 

これを見ていた朱乃がからかうように言った。

 

「あらあら、私もお姉ちゃんって呼ばれてみたいですわ」

 

「朱乃さんのことも姉だと思っていますが………『朱乃さん』呼びがどうにも公私でカッチリしてしまったというか………」

 

「い、いずれ、お呼びします! 今回はリアスお姉ちゃん呼びの心の準備だけで、精一杯でしたぁ!」

 

ギャスパーのその一言のあと、皆が爆笑。

その中でもリアスは『リアスお姉ちゃん』と呼ばれたことに喜んでいて、ギャスパーを抱き締めていた。

 

そういや、この光景………どっかで見覚えがあるんだよな………。

 

すると、俺の隣に立っていた美羽が呟いた。

 

「今のリアスさん、ボクが初めて『お兄ちゃん』って呼んだ時のお兄ちゃんと同じだ」

 

「え?」

 

美羽の発言に固まるリアス。

 

そう、今のリアスはあの時の俺と似ているんだよね。

俺も『お兄ちゃん』って呼ばれて号泣したし。

暫く、その余韻に浸っていたし。

 

アリスがポンっと手を叩く。

 

「なるほど。つまり、リアスさんもシスコン………この場合はブラコンも入るのかしら?」

 

「え!?」

 

アリスの発言に驚愕するリアス。

 

リアスはそれを否定したいのか、慌てて言う。

 

「ちょっと、これはそういうのとは違うでしょう!? なんでもかんでもシスコンやブラコンに繋げないでちょうだい!」

 

「でも、『お姉ちゃん』って呼ばれると嬉しいんだよね? 何か内側から込み上げてくるものがあるよね?」

 

「それはそうだけれど………」

 

―――――場が静まり返る。

朱乃は必死に口許を抑えて堪えているが………。

 

ふむ、リアスにもシスコン、ブラコンの素養がある………と。

確かに『リアスお姉ちゃん』と呼ばれた時のリアスの表情はどこか俺達と通ずるところがあった。

 

「おや、リアス。それからリアスの眷属諸君。このような場所に集まって何をしているのかな?」

 

朗らかに訊ねてきたのは偶々ここを通りかかったサーゼクスさん。

俺はサーゼクスさんを見た瞬間―――――。

 

「サーゼクスさん! 朗報です! リアスもシスコン同盟に参加です!」

 

「その話、詳しく! 詳しく聞かせてもらおうかッ!」

 

手を振る俺と猛ダッシュで駆け寄ってくるサーゼクスさん。

 

 

「もう! イッセーのバカ! お兄様のおたんこなすぅぅぅぅぅぅぅう!」

 

 

リアスの叫びが駒王学園に響いた。

そして、朱乃はたまらずに噴き出してしまっていた。


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