ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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本編は終わりましたが、特別編は続きます!

今回は最終決戦が終わった後のお話です~。


煩悩を抑え込め! 

アセムとの戦いから時は過ぎ、もう三月に入る。

 

世界の命運をかけた命懸けの戦い。

………本当に激戦だった。

黙示録の怪物トライヘキサ、邪龍筆頭格であるアポプスとアジ・ダハーカ。

そして異世界アスト・アーデの神アセム。

神々をも遥かに超える強者達との戦いは、過去にない程の規模で行われ、文字通り全世界を巻き込んでの戦いになった。

その圧倒的過ぎる戦力に各神話の神仏に神滅具所有者達、その他の神にも匹敵する強者達が手を取り合い、ようやく戦えることが出来た。

俺もその一人だ。

 

俺は………あの戦いで多くの人からの想いを受け取った。

俺は赤龍帝であり、変革者。

人々の想いを受け止め、力へ変える世界の『器』。

最終的に俺は全世界、全ての人々の想いを繋ぎ、アセムを倒すことが出来た。

そんな無茶をやったせいで、消滅しかけたが、仲間達のおかげで今は無事にいる。

 

戦いは終わり、世界は平穏を取り戻しつつあるが………俺は託されてしまった。

魔王アセムに世界の未来を。

今後、訪れるであろう絶望から二つの世界を守ってほしいと。

 

俺は奴との約束に誓い、何がなんでも守らなきゃいけない。

それが託された者として、成すべきことだと思うからな。

もちろん、不安だってある。

でも、俺は仲間達と一緒ならどこへだっていける、どんな絶望だって乗り越えられると信じてる。

俺は行くよ、皆と一緒に未来へ―――――。

 

 

 

「そうですね。とりあえず、未来に行くためにも期末テストの追試はクリアしてもらわないといけませんね」

 

坦々とした口調で言ってくるロセ。

 

今の状況を軽く説明しよう。

俺は兵藤家の一室―――――ロセの部屋にて、絶賛、期末テストの勉強中です。

なぜかって?

そんなこと決まってるじゃないか。

 

あの戦いの後、俺が気を失っている間に期末テストが終わったからだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

俺は机に突っ伏してシャウトする!

 

「んもぅ! なんでこうなったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

世界の危機を乗り越えたのに、今度は留年の危機とか勘弁してくれよ!

なんなんだよ、ちくしょう!

嫌がらせか!?

精神攻撃か!?

全科目の追試とか一種の拷問だぞ!?

正直、過去のどの戦いよりも危機的状況なんですけど!?

 

良いじゃん、追試とかしなくても!

そこは流してくれよ!

何事もなく、進級させてくれよ!

 

ロセが言う。

 

「気持ちは分からなくもないですが、こればかりは仕方ありませんね。うちの学園は進学校ですし。それに高校二年生の学年末の成績はとても重要ですよ? 大学部へ進学するつもりなら尚更です」

 

「わかってる! わかってるよ! でもね! 俺としてはどこか納得いかないんだよ! 頭では理解しても心が理解しきれないんだよ! せめて、美羽達の解答を見るのはダメですか!?」

 

そう、美羽達は期末テストを受け、既に返却されている。

流石に一人のために問題を作り直すのが面倒なのか、追試の内容は同じものが出るらしい。

それならば、美羽達のテストを見させてもらい、それを頭に叩き込めば追試はなんとかなるだろう。

だが、それでは公平性に欠けるとかで、俺は他のクラスメイトの答案を借りることを禁止されている。

その見張り役がロセだ。

 

「ダメです」

 

俺の必死の懇願をロセはバッサリ切り捨てる。

 

「本当に………?」

 

「ダメです」

 

「マジで………?」

 

「ダメです」

 

「そこをなんとか!」

 

「ダメです」

 

「ほんの少し! 先っちょだけ!」

 

「どこの先っちょですか!? ダメです!」

 

「うわぁぁぁぁん! ロセが苛めるぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「苛めてませんよ!? 人聞きの悪いこと言わないでください!」

 

「だって、目が覚めてからまだ三日だよ!? それなのに、追試が明後日とか普通に無理ゲーだろ!? 数学に現国、地理にえーっと………」

 

「仕方がないじゃないですか。そうしないと、成績つけるの間に合わないんですから。これでも、他の先生方に無理言って、延ばしてもらった方なんですよ?」 

 

それは分かってるけどさ………。

 

やはり、神は俺を見放したというのか。

まぁ、俺は悪魔だし、聖書の神はいないんだけどさ。

 

俺はグスッと涙を流して呟く。

 

「どうしよう………やっぱり、俺、留年なのかなぁ………。ギャスパー、小猫ちゃん、レイヴェルと同じ学年になるのかなぁ………」

 

留年するということは後輩である三人と同じ学年になるということ。

もし、クラスが一緒とかだったら………いや、回りに知らない後輩ばかりというのも辛い。

しかも、その後輩達は俺のことを知っている。

同然、俺に後輩達の視線が突き刺さるわけで………。

これほど精神的にくるものはあるだろうか?

 

すると、部屋のドアが少しだけ開き、

 

「………イッセー先輩と同じクラス。それはそれでありかも」

 

「も、もちろん、イッセー様が留年してもサポートいたしますわ!」

 

「イッセー先輩と同じクラス、楽しみですぅ!」

 

小猫ちゃん、レイヴェル、ギャスパーの後輩三人組が部屋を覗きながらそんなことを言ってくる!

 

「おぃぃぃぃぃぃ! なに、俺が留年するの期待しちゃってるの!? やめてよね、マジで精神的に追い詰められるから! イッセー先輩、結構ヤバいから!」

 

俺が叫ぶと同時にドアを閉め、ぴゅーっと逃げていく三人。

 

全く、あいつら………。

先輩を舐めとるな?

いや、でも、このままだとそうなる可能性は大きいわけで………。

 

ガクリと肩を落とす俺にロセが苦笑する。

 

「まぁまぁ。そんなに悲観的にならないでください。そのために私が付きっきりで教えてるわけですし」

 

そう、実はこの追試の対策として、ロセがマンツーマンで勉強を教えてくれることになっている。

言ってしまえば、専属の家庭教師みたいなものだ。

ロセの教え方は上手くて、難しい問題も理解できるよう、噛み砕いて教えてくれている。

不明な点があれば、俺に合った教え方もしてくれるので、俺でもすんなり理解することが出来た。

 

以前、ロセは教師をすることが楽しいと言っていたけど、本当にそうなんだと改めて思える。

俺に教えている時のロセはとても真剣であり、とても楽しそうだ。

 

ロセが言う。

 

「最後までやれることはやってみましょう。無事に追試を終えないと、リアスさんと朱乃さんの卒業旅行にも参加できなくなってしまいます。イッセー君がいないとあのお二人は悲しむと思います」

 

リアスと朱乃の卒業旅行。

この三月をもって、二人は駒王学園の高等部を卒業し、大学部に入学する。

これでお別れってわけじゃない。

家では毎日顔を合わせることになるしね。

でもだ………卒業旅行は二人にとって高等部最後の思い出になる。

ロセの言う通り、俺が欠けてしまうのは二人も悲しむだろう。

最後の思い出をそんな風にはしたくない。

 

俺は顔を上げて言った。

 

「そうだよな………。ロセも付き合ってくれるんだし、やれるところまで頑張ってみるよ」

 

俺がそう言うとロセは微笑んで、

 

「はい、一緒に頑張りましょう、イッセー君」

 

 

 

 

そんな訳で追試を乗り越えるべく、勉強を再開する俺だったが………。

 

「うっ………やっぱり、左手だと書きにくいな………」

 

先の戦いで俺は右手を失った。

それは以前、イグニスを使った時のように腕の中の組織がいくつか焼失したとか、そんなレベルではなく、右腕一本丸々失われている状態だ。

アザゼル先生が義手を作ってくれるそうだが、先生も戦後処理に忙しいらしく、義手が完成するまで時間がかかるという。

で、今も左手でペンを握っているわけだが………。

 

も、文字が歪む!

片手だから定規を使って真っ直ぐな線を引けない!

前に右腕が使えなくなった時は美羽にノートをとってもらっていたし、そもそもテストもなかったからな………。

流石にテスト勉強は自分で書いて覚えないとだし………うん、辛い!

 

ロセが言う。

 

「慌てなくてもいいですよ。どれだけゆっくりでも、最後まで付き合いますから」

 

「うぅ、ロセ………」

 

ロセの優しさが身にしみる!

涙が出てくるよ!

 

ロセが隣に座る。

 

「あ、ここ間違ってますね。そこは―――――」

 

と、俺の間違いを指摘してくれるのだが………ロセのおっぱいが………!

むにゅうって!

むにゅうって押し付けられる!

しかも、良い香りがしてきて、俺の鼻腔をくすぐってくる!

 

ヤバい、ロセが近すぎて色々と元気に………。

というより、家庭教師と二人きりというシチュエーションがそもそもアウトだと思うんだよね。

 

隣でロセが髪をかき揚げる仕草なんてもう………うなじが眩しい!

あと、胸元が少し開いてて、おっぱいが見えそうになってる!

わざとなんですか!?

誘ってるんですか!?

普段、そんなに胸元強調してないじゃん!

なぜに今日に限ってその服にしたの!?

 

数学やってるけど、保健体育にチェンジしたいよ!

保健体育なら自信あるから!

満点とってみせるから!

 

「いやいやいやいや………待て、そうじゃない。落ち着け、俺………」

 

今は俺の留年をかけた追試の勉強中だ。

無事に進級するために、なんの憂いもなくリアスと朱乃の卒業旅行に参加するために俺はここを乗り越えないといけないんだ。

ロセだって、俺のために自分の時間を裂いて、朝から付きっきりで教えてくれている。

 

それを保健体育が良いだと?

家庭教師プレイがしたいだと?

ふざけるのも大概にしろよ、俺。

確かに保健体育がしたい。

でもな、今は欲望を抑え込んで、この危機を―――――。

 

「イッセー君………?」

 

怪訝な表情で顔を覗き込んでくるロセ。

ロセのぷるんとした唇が綺麗で、とても柔らかそうで―――――。

 

 

ダァンッ!

 

 

俺は欲望を抑えるべく、机に頭を叩きつけた。

 

「イッセー君!?」

 

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ! 抑えろ、俺! 堪えるんだ、俺! 今はその時じゃないだろぉぅ!?」

 

「な、ななな何してるんですか!? なにを訳の分からないことを叫んでるんですか!? 血! 血が出てますよ!?」

 

「俺はぁ! 今は目の前の留年を回避する必要があるんだよ! じゃないと未来もくそもないんだよ! 一時の欲望で未来を台無しにするつもりかぁ!?」

 

「お、落ち着いてください! 口調も変になってます! 一度に詰め込みすぎたかしら!? え、もしかして私の教え方が悪かったですか!?」

 

「ロセは悪くない! 全部、俺が悪いんだ! 去れ、俺の煩悩! エロ思考! 今は引っ込んでいろぃ!」

 

そう叫んで何度も頭を机に叩きつけた。

真っ白なノートが俺の血で染まっていく―――――。

 

そんな俺をロセが羽交い締めにして止めてくる。

 

「す、ストップです! もう止めましょう! そ、そうですね、少し休憩を挟みましょう。イッセー君もまだ回復しきってないですし、一度に詰め込むのもあれですしね。休憩の後、おさらいをしましょうか」

 

こうして、荒ぶる俺はペンを置き、休憩を挟むことになった。

 

 

 

 

「ごめんな、こんなダメダメな奴で………」

 

「い、イッセー君………今日はやけにブルー入ってますね。これも生死をさまよった影響………?」

 

ロセがそんなことを考察してるが………違います。

ただただ、追試へのプレッシャーと自分の欲望との狭間で爆発しただけです。

アセムとの戦いで生死をさまよったことは全く関係ないです。

ま、まぁ、あの戦いで二週間も寝込むことになったから、関係ないわけではないけど………。

 

ふと隣に座るロセを見る。

家にいるというのに、いつものようにスーツを着ているのは、それだけ気合いを入れているということなのだろう。

でもね、今日は胸元が大きく開いている。

少し覗けばおっぱいが見えてしまう。

 

俺の視線に気づいたロセは頬を赤くしながら言う。

 

「………やっぱり、気になりますか?」

 

「そ、そりゃあ………ね?」

 

「そ、そうですか」

 

目を伏せ、少し黙りこんでしまうロセ。

すると、呟くように言った。

 

「こ、今回、イッセー君が頑張ったらご褒美をあげます」

 

「―――――ッ」

 

なん………だと?

 

一瞬、聞き間違いかと思った。

しかし、こちらを向いたロセの顔は赤く、瞳も潤んでいる。

 

―――――ご褒美。

 

このタイミングでその単語、あまりにベタだ。

だが、言い換えれば王道。

美人家庭教師からのご褒美、それは男子学生にとって憧れのワードでもあるだろう。

 

ロセは俺の左手を取ると―――――自身の胸に押し当てた。

 

「これで………頑張れますか?」

 

そんなことを今の俺にされると―――――。

 

俺はロセの肩を掴むと、床に押し倒した。

 

「ゴメン………そのご褒美、先に貰っても良いかな? そしたら、俺………もっと頑張れる気がする」

 

「………イッセー君、そんなの………ダメ、です」

 

そう言うロセの顔はこちらのすることを望んでいるようだった。

俺はロセに顔を近づけていき―――――。

 

「こ、これが本物の家庭教師プレイなのね………!」

 

「あらあら、ロスヴァイセさんだからこそですわね」

 

「職権乱用………!」

 

「やっぱり、ロスヴァイセさんはエッチだ」

 

「美羽ちゃんがそれ言うと………」

 

「わ、私達も負けていられません!」

 

「よく言ったアーシア。今度、三人で体育倉庫に連れ込んでみよう」

 

「ちょっと、ゼノヴィア! それしたら、私、堕天しちゃうんですけど!」

 

なんて言う声がドアの方から聞こえてきた!

 

皆の声を聞き、ガバッと体を起こしたロセが叫んだ。

 

「も、ももももももうちょっとだったのにぃぃぃぃぃぃ!」

 

 

 

 

この後、俺は普通に勉強することになり、追試もなんとかクリア。

留年の危機は脱することが出来た。

そう、俺は頑張ったのだ。

 

なので―――――。

 

「ご褒美………欲しいですか?」

 

追試が終わった生徒指導室で、ロセはそう訊ねてきたのだった。


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