ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
どうも、イッセーです。
突然だが、今、俺達はとあるパーティー会場に集まっている。
赤いカーペットの敷かれた床に豪華なシャンデリアが吊るされた高い天井。
会場には美味そうな料理がこれでもかと並べられている。
このパーティーに参加している人達だが、チーム『D×D』のメンバー全員の他にサーゼクスさんを含めた四大魔王に天界の熾天使、アザゼル先生を初めとしたグリゴリの幹部。
加えて、オーディンのじいさんなど、各神話の首脳陣まで来ている。
あ、オーディンのじいさんが女の人のお尻を触ってビンタをくらった。
仮にも主神だろ、あの人………。
まぁ、スケベな俺が言えたことじゃないけど。
とにかく、そんなVIPまで呼ばれているという、とんでもパーティーだということは分かってもらえただろう。
普通なら護衛が何人もいて然るべきだし、黒服の厳つい人が警備に当たっていても不思議ではないのだが………。
この場にはあいつらも来ていて―――――。
「やっほー、勇者くーん。おっひさー」
と、呑気な声と一緒に手を振ってくるアセム。
アセムは少年の姿で、いつもの白いパーカーを羽織ったまま、テーブルに並べられた料理を摘まんでいた。
こいつ、普段通りの格好じゃないか。
こいつだけだぞ、正装じゃないやつ。
俺だってキチンとしたタキシードを着てるっていうのに(グレモリー家のメイドさんに着せてもらった)。
俺は半目で言う。
「おまえ、よく平然としてられるな? ちょっと呑気過ぎじゃね?」
「そう? でもでもー、今日は僕達も招待されてるしね~。敵と言っても、今日だけは互いに争わないことになってるし~。無礼講ってやつだよ」
「うん、無礼講の使いどころ違うよね」
実はアセムの言う通り、今回のパーティーにはアセムも招待されてる。
普段は敵対関係だけど、今だけは互いに争わないことになっているんだ。
その理由は後で語るとしよう。
もし、こいつらが妙なことをすれば、その場で取り押さえることになっているのだが………
「うーん、このお肉美味し~。あ、勇者くんも食べる?」
そんなことをするようには思えないよね。
だって、アセムだもの。
俺はやれやれとため息を吐きながら問う。
「いただくよ。そういや、ヴィーカ達は?」
「ん? あー、あの子達なら、あそこで――――」
アセムが骨付き肉をかじりながらとある方向へと視線を向けた。
そこには数名の者達がいて、
「まぁ! やっぱり、白にして正解だったわ! ベルちゃん、可愛い! 最高よ!」
「おぉ! これぞ至高! やはり、ヴィーカの判断は間違っていなかった! 流石です!」
「うぉぉぉぉぉぉ! 可愛いぞ、ベル! あぁ、またコレクションが増えてしまう! だが、それで良い! ベル、もう少し斜めを向いて見てくれ!」
パシャシャシャシャシャシャシャシャ………
ヴィーカ、ヴァルス、ラズルの三人がベルの撮影会してるぅぅぅぅぅ!
純白のドレスを着たベルをいろんな角度で撮影しているぅぅぅぅぅ!
分かってた!
分かってたよ!
やっぱり、おまえ達は俺と同類だよ!
というか、ドレスアップしたベルはマジで可愛いじゃないか!
愛でるのも納得だよ!
だが、俺も負けてられねぇ!
俺だってぇぇぇぇぇぇぇ!
「美羽ぅぅぅぅぅ!」
俺は隣にいた美羽にカメラを向けて、高速でシャッターを押していく。
淡い水色のドレス。
髪をアップにして、花の髪飾りを着けた美羽。
これは偉大な我が母、兵藤咲がデザインしたもの。
流石だ、流石すぎる。
ドレスを着た美羽は綺麗で、可愛くて………!
俺は………俺はぁぁぁぁぁぁ!
「ガハッ!」
吐血した。
それはもう盛大に。
タキシード姿の木場が言う。
「いつでもブレないね、イッセー君は!」
「お、おう………もうね、最高過ぎて………」
「あはは………まぁ、お兄ちゃんにそう言ってもらえるのは嬉しいかな」
苦笑しながらも、少し頬を赤くする美羽。
んもう、そんなところも良いんだよな!
そんな俺達のところに近づいてくる一つの影。
そちらを見ると―――――。
「私も………着たよ? 似合うかな、にぃに、ねぇね」
指先をモジモジさせながら、恥ずかしそうにするディルちゃん!
こちらはディルちゃんのイメージカラーである紫を基調にしたドレスを着ている。
無愛想だった彼女も今となっては可愛らしい表情を見せてくれていて―――――
「「カハッ!」」
吐血した。
今度は俺と美羽の二人で。
「イッセー君!? というか、今度は美羽さんもなのかい!?」
「うん………ゴメンね、木場君………。でもね、ディルちゃんが可愛くて、可愛くて………! もう、感動だよ!」
「どうして、シスコンまで似てしまうのかな、この義兄妹は!?」
「「いやぁ、照れるよ」」
「誉めてないよ!?」
木場、今日も良いツッコミだな。
流石はグレモリー眷属のツッコミエース。
これからもその調子で頼んだぞ。
「アッハッハッハッハッ! いやぁ、いつ見ても君達は飽きないねぇ」
腹を抱えて爆笑するアセム。
こいつには言われたくないが………まぁ、今回はスルーしておこうか。
「全く、君の回りはいつも賑やかだな。なぁ、兵藤一誠?」
「曹操か………」
そういや、こいつも呼ばれてたか。
英雄派の首魁様も今日はタキシードでビシッと決めている。
流石に聖槍は持っていないが、佇まいに隙がないのは相変わらずだ。
「楽しんでいるか?」
俺が問いかけると曹操は肩を竦めて苦笑する。
「俺自身、この手の行事に参加する機会が無かったのでね。何とも言えないというのが本音だが………まぁ、楽しんではいると思う」
「そっか」
短く返した俺は近くのテーブルにあったグラスを手に取り、口を着けた。
「敵対している者と同じパーティーに参加するなんて、こんな機会でもないとないのでしょうね」
「そうですね。まともに考えると頭が痛くなりそうなので止めておきます。今だけは余計なことは考えず、楽しみましょう」
そう言ってくるのはリアスとソーナの幼馴染みコンビ。
彼女達に続き、他のオカ研メンバーと生徒会メンバーも集まってくる。
うんうん、女性陣は皆、美少女なもんでドレスを着ると華やかさが増すよね。
すると、我ら赤龍帝眷属の『女王』であるアリスが聞いてきた。
「ねぇ、イッセー。ここに来てからそれなりに経つけど、
「ん? 関係者全員が集まったら始まるらしいけど………」
この会場に到着してから三十分ほどが経つ。
まぁ、俺達が早めに到着したというのもあるんだが………。
不意に会場の明かりが消え、辺りが真っ暗になった。
そして、正面にあるステージにスポットが当たる。
そこにいたのは―――――。
「我が名はイグニス! エロの道を極めし女神!」
「やめんかい! いきなり、何を言ってんだ、この駄女神!」
「だって、司会だし~。ほら、掴みは大切じゃない? ほら、そこのあなた。縛ってあげるから前に出なさい」
「掴んでねーよ! 皆、引いちゃってるよ! つーか、突然SM振るのやめてあげてよ! どう反応して良いか分からねーよ!」
「そう? さっき、ガブリエルちゃんをいきなり襲って………コホン、ハントしてベッドの上に連れ込んできたけど、問題無かったわよ?」
「問題だらけじゃねーか! あと、全然言い直せてないよ!? 熾天使をハントとか何やらかしてくれてんの!? 怒られるのは俺なんだぞ!?」
「気にしない気にしない」
「気にするわ!」
「もう、あまり時間もないんだからね? それ以上ツッコミ入れるなら縛っちゃうわよ? ドライグを」
『ヤメロォォォォォォォォォ! 助けてくれ、相棒ォォォォォォォォォ!』
また、ドライグが人質にとられた!?
強制的にツッコミを終了させれただと!?
イグニスは気を取り直すと、会場を見渡して言う。
「さて、いきなりだけど、今日のメインイベントを始めましょう! ――――――『異世界帰りの赤龍帝 人気投票結果発表』ぅぅぅぅぅ!」
イグニスがそう言うとドンドンパフパフという音楽と共に巨大なスクリーンが現れる。
そう、今日のパーティーでは俺達の人気投票の結果が発表されるのだ!
敵であるアセム達が平然と参加しているのはそのためだ。
イグニスが言う。
「これは九月に行われたこの作品の人気投票アンケートを集計したものよ。なぜ、九月に締め切ったはずの結果を今頃になって発表するのかというと、思い付きでアンケートを取ってみたものの、作者がアンケートの存在を忘れてしまったからなの」
「うぉい!? 違うよ!? 違うからね!?」
やめてあげてよ!
作者だって色々忙しいんだよ!
飲みに行ったり、プラモデル作ったり、飲みに行ったり………あれ、遊んでばっかりじゃね?
い、いや、作者も真面目な時は真面目にやってるんだ。
卒論もあるし、就活もあるし………。
まぁ、作者のことはとにかくだ。
少し遅くなったとはいえ、大晦日という一年の締め括りの日に結果を発表できるということで良しとしようじゃないか。
イグニスがスクリーンを指差しながら高らかに言う。
「それでは見ていきましょう! 結果は順位と投票数をまとめて公開するわ! それでは、結果オープン!」
スクリーンにカウントが映し出される。
3、2、1と進み――――――ついに結果が公開された。
1位:12票
兵藤美羽
2位: 5票
兵藤一誠 ミルたん
3位: 3票
アセム アリス・オーディリア 坂田先生
4位: 2票
木場祐斗 ディルムッド レイナーレ ベル ラズル ヴァルス
5位: 1票
リアス・グレモリー アーシア・アルジェント ドライグ アルビオン 曹操 ライト・オーヴィル ヴィーカ イグニス モーリス・ノア 黒歌
とりあえず、ツッコミ入れて良いかな?
「俺とミルたんが同数かよぉぉぉぉぉぉぉ!?」
マジでか!
四百話以上も出てきた主人公の俺と数話しか出ていないミルたんが同数だと!?
「やったにょ! ミルたん、悪魔さんと一緒だにょ! これも魔法少女の力だにょ!」
会場の前の方で極太の腕を振り上げて歓喜するミルたん!
その声量で会場が大きく震えた!
つーか、魔法少女関係ないし!
あんた、魔法少女じゃないし!
くっ、これもミルたん故の結果か!
流石だぜ、ミルたん!
もう、ここは素直に称賛するしかないらしい!
アリスは自身の順位に嬉しそうにしていて、
「これはこれで良い感じなのかな? ラスボスと同じ順位というのは複雑だけど」
「アッハッハッ。まぁ、僕って可愛いし~」
「あんた、それ自分で言う!?」
というか、しれっと坂田先生もアリスと同じ順位なんだが………。
「うまっ! おい、志村! この肉、タッパに詰めとけ!」
会場の端で爆食いしてる坂田先生。
タッパに入れとけって………持って帰るつもりなのか!?
四位の木場が言う。
「うん、とても光栄だね。これからも精進していきたいところだよ」
無難な感想を述べるイケメン王子。
レイナもそれに続く。
「他の皆を差し置いてってところはあるけど、とても嬉しいわ」
我が妹の一人、ディルちゃんも、
「うん、私も………嬉しい」
うーむ、照れてるディルちゃんが―――――か わ ゆ い。
「ほぅ、俺達も四位か。敵側だってのにな?」
「光栄なことではないですか。ここは結果を受け止め、喜んでおきましょう」
「………うん。ベル………やった」
ラズル、ヴァルス、ベルもそれぞれ感想を述べていく。
ベルは相変わらず眠そうな顔をしているが、少し声が弾んでいるような気がするよ。
しかし、彼らの結果に異を唱える者がいた。
ヴィーカが頬に手を当てながら言う。
「私だけ五位なんだけど? 私だけ除け者?」
そう、アセムの下僕の中でヴィーカだけ五位だったのだ。
ヴァルスが言う。
「それはあなたがアリス殿に向かって、『貧乳』、『ペチャパイ』、『揺れない』など面白半分で言うからでは?」
「そんなに言ったかしら?」
「確かに彼女は貧乳なのかもしれない。ですが、身体的特徴を悪く言うのは失礼と言うものです。いくら、貧乳だからといって―――――」
「貧乳貧乳うるさぁぁぁぁぁぁい! 大きくなってるもん! これでも成長してるもん!」
あ、アリスさんが泣いた。
うん、それ以上、そのワードを言わないであげてね?
すると、俺の心の声が伝わったのかヴァルスは苦笑しながら口にチャックをしてくれた。
五位のメンバーはそれぞれ一票だが、数多くいる人物の中で選ばれたのは凄いことだと思う。
それでもだ、そんな中で一つも二つも飛び抜けている我が妹は素晴らしいとしか言いようがない。
美羽が少し困惑したように言う。
「え、えっと………本当に? ボクが一位で良いの、かな………?」
美羽は改めてスクリーンに映し出された結果を見る。
二位の俺とミルたんが五票なのに対して一位の美羽は十二票。
今回の結果の中では圧倒的とも言えた。
司会のイグニスが微笑む。
「ウフフ♪ 良いも悪いも、皆が美羽ちゃん押しなんだからしょうがないでしょう? 流石はメインヒロイン、イッセーの童貞を食べただけはあるわね♡」
「そういう問題なの!?」
あの駄女神、そういうのを公の場で言わないでくれる!?
美羽も俺も顔真っ赤だわ!
ま、まぁ、美羽が一位なのは俺も嬉しい!
というか、一位は美羽しかいないだろ!
と言うわけで――――――。
「美羽! 一位記念だ! 写真撮るぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺はゴツい一眼レフを取り出すと、レンズに美羽を捉え、シャッターを切っていく!
パシャシャシャシャシャシャシャシャシャ………
あらゆる角度、あらゆる表情を撮影する!
これが兄としての使命!
「メモリーはまだまだ余裕がある。だからさ――――――乱れ撮るぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
カメラフルスロットル。
トランザムお兄ちゃん降臨。
通常の三倍のスピードで新たな思い出を刻んでいく!
『シスコン………』
シスコンでなにが悪い!
五位のおまえには分からんのだよ、ドライグ!
『そこに五位は関係ないだろう!?』
「ない!」
こうして俺は美羽を撮りまくるのだが―――――
「それにしても、この結果ってあれだよね。シリアスブレイカー的存在がほとんどだよね」
………ん?
アセムの言葉に会場にいる全員が改めてスクリーンに視線を戻した。
そう言われたら、確かにそんな気がする。
ランクインしているメンバーって、殆どが何かしらの形でシリアスを破壊している人達のような………。
ちょっと待て。
このランキング、上に行くほどシリアスブレイカーになっているような気が………。
俺の思考がそこへ至った時、他の人達もハッとなったのか、一斉に美羽へと視線を移す。
「え………? え、えぇぇぇぇぇぇぇ!? 違うよね!? これ、そういうランキングじゃないよね!?」
皆の視線を受けて慌てる美羽。
でも、とリアスが言う。
「美羽って、何だかんだでしれっとシリアス壊してるような………」
「それに、イッセー限定とはいえ、すっごくエッチだし………」
アリスもそう続く。
二人の発言に他の皆も「あー」とどこか納得したような表情を浮かべていた。
うん、記憶を探れば、思い当たる点が多々………。
「それじゃあ、美羽ちゃんが最強のエッチなシリアスブレイカーということで決定~♪」
楽しげに言うイグニスに美羽が泣いた。
▽
それから暫くして。
「盛り上がっているところ悪いけれど、そろそろお時間なので、お開きにようと思いまーす」
ステージに立ったイグニスがパーティーの終了を告げてきた。
今回は人気投票の結果発表がメインだったけど、その後は飲んで食べて話しての、ほとんど忘年会みたいな感じになっていた。
イグニスから最強のエッチなシリアスブレイカーという不名誉な二つ名を与えられた美羽は少し涙目だったが、いっぱい甘えさせたおかげで、今は普段通りに戻ってる。
イグニスが言う。
「本編では四百話に到達し、そろそろ完結という雰囲気だけど、話はまだまだ続くわ! シリアスも壊しちゃう☆」
「なに、堂々と宣言してるの!? 壊さないよ!?」
この駄女神め!
本当にどこでもシリアルを貫くのな!
イグニスが微笑みながら続ける。
「まぁ、本編のことはおいておきましょう。今日は大晦日。最後は皆で締めましょう。さぁ、全員、ステージに上がりなさいな」
イグニスの指示のもと、全員がステージに上がる。
それを確認するとイグニスは俺にウインクして、
「それじゃあ、イッセー! 締めの言葉は任せるわ♪」
ここで俺かよ!
まぁ、主人公だからしょうがないんだけども!
何も用意してないよ!?
俺は一度咳払いする。
「えー、ここまで応援してくださった読者の方々、本当にありがとうございます。『異世界帰りの赤龍帝』ももう少しで完結となりますが、最後まで全力で走り抜きたいと思います! それでは―――――」
「「「2018年、お疲れさまでした! 来年もよろしくお願いします!」」」