ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
前衛は俺、アリス、木場、ゼノヴィア、イリナ、そして闇の獣と化したギャスパー!
機動力があり、突撃できるメンバーだ。
まさか、あのギャスパーが前衛になる日が来るとはな!
日に日に男が上がってきているとは言え、少し前まで、ギャスパーはサポート向けの能力だった。
それが今では―――――
《僕が行きます!》
勇ましく突っ込んでいく!
巨大な拳を振りかぶってラファエルに殴りかかった!
ギャスパーは覚醒してから、格闘戦をもこなすようになったんだ!
俺も模擬戦で何度か手合わせしたが、あの状態のギャスパーから繰り出される拳は重く、生身で受けるのは中々に厳しいものだった。
しかも、戦闘スタイルがどことなく、俺に似ていてだな………。
うーん、後輩の成長って嬉しいよね!
しかし、そんなギャスパーの拳をラファエルは軽々と受け止めていた!
《この程度の攻撃、我には効かぬ》
《この………っ!》
ギャスパーは負けじと拳や蹴りを放ち、影から闇の獣を作り出していく。
生み出された闇の獣がラファエルに噛みついていくが、ラファエルはものともせず、全てを振り払ってしまう!
「僕達も続くよ!」
「いくぞ、イリナ!」
「ええ、ゼノヴィア! アーメンよ!」
木場、ゼノヴィア、イリナの剣士組もそれぞれの得物を手に、ラファエルに斬りかかる。
高速で迫り、剣を振り下ろしていくが、ラファエルは手に持つ鎌槍で次々に捌いていく!
あいつ、あの三人の剣戟を余裕で凌いでいやがる!
俺も加勢に行きたいところだが………。
《汝らの相手は我だ、穢れし悪魔よ》
俺とアリスの前にはウリエルが立ちはだかる!
銃のような手をこちらに向け、そこに黄金のオーラをチャージして―――――ぶっ放してきやがった!
飛来してくる雷の砲弾!
デカい!
初手からとんでもない一撃を使ってきやがる!
「こんなもんで!」
俺は拳にオーラを集め、殴り付ける!
拮抗する雷の砲弾と赤い拳!
二つの力の衝突が周囲に影響を与えていく!
地面にはクレーターができ、木々が激しく揺れた!
こんな強力なもんを結界を張っているとはいえ、町中で撃ち出すなんてよ!
こいつ、加減をしらねぇ!
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』
「この野郎ぉぉぉぉぉぉ!」
倍増した力を拳に乗せて、雷の砲弾を打ち砕く!
それと同時に俺とアリスは前に飛び出していく!
「アリス!」
「ええ! こんな気持ち悪い奴ら、さっさっと片付けるわよ!」
ウリエルに接近し、超近距離戦に持ち込む俺とアリス!
《神に仕えし我に刃を向けるか、不遜な………!》
「知るかボケェ! おまえらが仕掛けてきたんだろうが!」
「全くだわ! あんたの方こそ『不遜』って文字を辞書で調べて来なさいよ! この偽天使!」
繰り広げられる格闘戦。
赤い拳と白雷を纏う鋭い槍の連撃がウリエルを攻め立てる!
俺が攻撃を受ければ、アリスがその隙をつき、アリスが防御に回れば俺が懐に入る。
戦場で磨かれてきた俺とアリスのコンビネーション。
吸血鬼の町でクロウ・クルワッハを相手取った時にもこのコンビネーションは活きていた。
まぁ、クロウ・クルワッハに大したダメージを与えることは出来なかったけど。
《果てよ、悪魔》
「誰がッ!」
ウリエルが振り下ろした腕を俺は両手をクロスさせて受け止める!
重い………っ!
体の芯にまで響く………!
こいつのパワーもかなりのものだ!
「後ろががら空きよ!」
瞬時にアリスが背後に回りこむ!
槍の穂先に白雷を集中させてウリエルを貫こうとするが―――――。
ウリエルは口に咥えていた槍を握り、アリスの槍を受け止めてしまう!
《ヌゥゥゥンッ!》
強引に振り払われ、俺達は吹き飛ばされてしまった!
なんつーバカ力!
だけど、驚いている暇なんてなかった。
着地したところに雷撃ってきてるしな!
しかも、かなりの出力!
受ければ丸焦げ確定だぞ!?
慌てて回避しようとするが、向けられた雷が俺に届くことはなかった。
俺の前面に障壁が張られ、雷を弾いたからだ。
「お兄ちゃん、防御は任せて!」
「全力で援護しますわ!」
美羽とレイヴェルが後方から援護してくれている。
心強いぜ!
俺は後ろの二人に親指を立てると、フェザービットを展開。
俺の隣で構えるアリスが呟く。
「………おかしいわね」
「何が?」
「………槍が当たる瞬間、私の雷撃が消されているのよ。まるで霧散させられているみたいに。最後まで攻撃が通らない」
「っ! そいつはまさか―――――」
今の言葉が事実ならウリエルには………。
後衛組の朱乃が叫んだ。
「これならどうでしょう!」
指先を天に向け、その先端に黄金の魔力を集中させる。
バチバチとスパークが飛び交い―――――その指をウリエルに向けた!
「雷光よッ!」
放たれる雷光の龍!
黄金の輝きを放つ龍はウリエルを眼前に捉えると、そのまま巻き付き―――――霧散した。
「なっ………!?」
この結果に朱乃も目を見開き動揺していた。
アリスの白雷が消され、朱乃の雷光も効かない………。
ウリエルが言う。
《愚かな。我に電撃は通用せん。たとえどのような攻撃であろうとな》
その言葉に俺は舌打ちする。
威力関係なしに『雷』という属性そのものが効かないということか………。
つまり、アリスと朱乃の雷による攻撃は無意味。
ここはメンバーを切り換えるか………。
しかし、ラファエルと戦っている木場達の方もリアス達後衛、中衛組のサポートがあるにも関わらず、苦戦を強いられているようだ。
この状況では、そう簡単に切り換えることが出来そうにない。
イグニスを使うか?
いや、流石にこの場では使えない。
というより、町中で使える力じゃない。
イグニスの力なら消し飛ばせるだろうけど、町もろとも消え去る。
『ロンギヌス・ライザー使っちゃう?』
人の話聞いてた!?
町消す気か!?
『下手すれば日本が消えちゃうかも☆』
おいいいいいいい!?
さらっと物騒なこと言わないで!
冗談に聞こえないから!
本当に消えちゃいそうで怖いよ!
うん、絶対使わない!
ロンギヌス・ライザーだけは絶対に使わない!
「木場、ギャスパー、イリナ! 三人ともさがれ!」
ゼノヴィアが後ろに下がり、叫ぶ!
デュランダルを高く振り上げ、聖なるオーラをチャージしていた。
あいつ、ここでデュランダル砲を放つ気か!
こんな町中でそんな………!
だけど、俺はそれを止めなかった。
いくらパワー思考の強いゼノヴィアでもそんな強力な攻撃を町中でするのは無茶苦茶だってことは理解しているはずだ。
それでも、そう行動したのは、それくらいしないとラファエルにダメージを与えられないと判断したのだろう。
この一帯は美羽によって強力な結界が張られている。
イグニスを使わない限りは問題ないだろう。
ならば―――――
「ドライグ! フェザービット、全基シールドモードだ! この一体を覆え!」
『承知!』
両翼から八基のビットが飛び出していき、先端から赤いオーラを放つ。
それぞれのビットの先端が繋がり、美羽の結界に沿ってクリアーレッドの障壁が展開される。
この一帯に美羽と俺で二重の障壁が張られることになる。
俺はアリスと共に後退。
右手に気を溜めていく!
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』
「ゼノヴィアッ! 俺と合わせろ!」
「ウリエルさまとラファエルさまの名を語った罪! 私達の友人を侮辱した罪! 断罪してくれる!」
俺の赤いオーラとゼノヴィアの聖なるオーラが合わさり、強大な力となって膨れ上がる!
そして―――――
「「消し飛べぇぇぇぇぇぇッ!」」
極大の赤い閃光と聖なるオーラの砲撃が奴らを覆った―――――。
▽
プスプスと焼ける音と共に砂塵が舞う。
公園にあった噴水や木々は軽く消し飛んでしまっていた。
地面は大きく抉れ、元の公園の姿はここにはない。
美羽が息を吐きながら言う。
「二人とも………やり過ぎだよ………。二人の攻撃で結界が壊れちゃったよ?」
俺のアグニとゼノヴィアのデュランダル砲の破壊力は美羽が張った結界の上限を越えたらしい。
何とか抑え込んでくれたせいで、結界の外には影響はなかったものの、今ので完全に砕けてしまった。
美羽は再度、魔法陣を展開して人払いの結界を張り直す。
「これで一般人に見られる心配はないけど、もう少し考えて攻撃してね? あんなの何回もされたら、ボクの結界でももたないよ?」
「す、すまん………一応、セーブはしたんだけどね」
「しかし、並の攻撃では攻撃では奴らは倒せない。多少無理をしてでもダメージを与えるしかなかったんだ」
俺の謝罪に続き、ゼノヴィアがそう答える。
ゼノヴィアの言うことも正しいんだよね。
ウリエルとラファエルを倒すには少々強引な攻撃をするしかなかったのは間違いない。
あのまま続いていれば、誰かがやられていた可能性もある。
一応、美羽の結界強度も考えて攻撃したんだけど………。
その時だった。
《………我らに傷を負わせたか》
ゴウッと突風が吹き、舞っていた砂塵を吹き飛ばす。
雷鳴の轟く音と共に現れたのは――――――
《だが、所詮は悪魔。我らを倒すほどではない》
ほとんど無傷のウリエルとラファエルだった。
おいおい、マジかよ………。
結界のことも考えてセーブしたとはいえ、かなりの威力はあったはずだぞ!?
目の前の光景に俺達は驚くしかない。
ウリエルが腕を槍を振り上げる。
槍の先端には目映いほどの光が集まっていて―――――危険な輝きを放っていた。
これはマズい!
「美羽! 結界を張り直せ!」
俺の指示に美羽が再度、この一帯を覆う結界を展開する。
それと同時に―――――
《神より授かりし、真の雷を見せよう――――『神の雷光』ッ!》
恐ろしい質量の雷が落ちてくる!
凄まじいスピードで!
過去に体験したことがないほどの規模で!
天から地に向けて………俺達目掛けて降ってくる!
これをまともに受けたら………!
咄嗟に俺はフェザービットを再度展開!
俺達の真上にクリアーレッドの障壁を二重に張った!
天から降ってくる巨大な雷と二重に張られた障壁が衝突する!
「こ、の………っ!」
ドライグ!
出力を全部、障壁に回せ!
『無理をするな! このままでは押しきられるぞ!』
ここでこんなもん落とされたら、町にも被害がいくだろうが!
この町には松田や元浜、桐生、学園の奴ら、父さんや母さんもいるんだ!
引けるわけがねぇ!
なんとしてでもここで防ぎきる!
リアスが皆に指示を送る。
「皆、奴らを狙って! 動きの止まっている今を狙うのよ!」
ウリエルの方に視線を向けると確かに動きが止まっていた。
力をこの雷に使っているからだろう。
動きの止まっている今なら攻撃は容易。
リアスの指示に皆が一斉に攻撃を仕掛ける。
しかし、それはラファエルによって全て弾かれてしまう。
《流石は悪魔。卑怯なことをする》
「君達だけには言われたくないよっ!」
美羽が結界の維持に精一杯になりながらも叫んだ。
あいつら、マジで自分勝手なやつらだな!
こんな町中で仕掛けてくるような奴らが卑怯とかよく言えたな!
やっぱりあいつら天使じゃねぇ!
ただの鬼畜、化け物じゃねぇか!
ウリエルが不気味な笑みと共に告げる。
《さぁ、裁きの雷に呑まれよ》
その瞬間、雷の出力が膨れ上がり―――――天翼の障壁が突破された。
▽
「ゲホッゲホッ………痛ってぇ………!」
落ちてきた極大の雷。
ギリギリでアグニをぶつけたから、僅かに相殺できたけど、完全に防ぎきることは出来なかった。
ウリエルの雷は俺達を呑み込み、決して浅くは無いダメージを与えた。
俺はウリエルの雷を受けたことにより、鎧は砕け散った。
更に右腕はダメージが深く、肌が焼けただれ変色している。
皆を見れば、ボロボロの状態で地に伏せていた。
今の衝撃で美羽が張った結界も消えてしまっている。
「ゼノヴィアさんっ! しっかりしてください! ゼノヴィアさんっ!」
必至に呼びかけるアーシアの声。
雷が当たる直前にゼノヴィアが庇ったことでアーシアは無事だったみたいだが………ゼノヴィアは深い傷を受けてしまったようだ。
制服が大きく破れ、背中は火傷を負っている。
アーシアは淡い緑色のオーラを広範囲に広げ、全員の治療を開始する。
アーシアの卓越した治癒能力で傷は直ぐに塞がっていくが………。
《生きているか。しぶといものだ。だが―――――》
いつの間にか近づいて来ていたラファエルは鎌槍を振りかぶる。
その視線の先には倒れ伏す美羽の姿。
アーシアの回復を受けているとはいえ、すぐに立ち上がれず、その場から動けないでいる。
そんな美羽にラファエルは鎌槍を逆手に持ち替えて、突き刺す構えをする。
《終わりだ、悪魔よ。光栄に思うがよい。我が手で裁きを受けられることを―――――》
ラファエルが鎌槍を振り下ろす―――――。
ふざけんな………!
やらせるか………!
やらせてたまるか………!
そいつは………そいつは俺の………!
「やらせるかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!」
天武の鎧を纏う。
拳に全てを消し飛ばせる程の紅蓮の炎を纏う―――――その時だった。
《ゴォ……!?》
横合いから来た何かによって、ラファエルが大きく吹き飛ばされた。
三回バウンドした後、既に瓦礫と化した公衆トイレに突っ込んでいった。
突然のことに呆気にとられる俺達。
な、なんだ………?
一体、誰が………?
美羽の前に立ったのは見たこともない青年だった。
短い銀髪が特徴的な青年。
「……間一髪、と、言ったところだな」
その青年は黒いマントをはためかせながら、笑みを浮かべた――――――。
ついに鋼弥登場!
次話から本格コラボです!