ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
時系列的にはデュランダル編の始めの方です。
「おっす、ギャスパー。早いな」
一日の授業が終わり、放課後。
部室の扉を開けると部屋にはギャスパーがソファに座ってクッキーを食べていた。
「はい、イッセー先輩。僕達のクラス、ホームルームがすぐに終わったんです。美羽先輩達と一緒じゃないんですか?」
「美羽は職員室にプリント届けてから来るってよ。アリスとレイナはトイレだ。教会トリオはゼノヴィアの選挙に向けて準備してるよ」
「生徒会選挙も近いですからね。ゼノヴィア先輩、頑張ってます。僕も何かお手伝いできれば良いのですが………」
「今のところは特に何も言ってこないし、見てる限りじゃ順調みたいだ。俺達の出番はないだろ。ま、もし、ゼノヴィアが俺達の助けが必要になったら、その時は全力でサポートしてやればいい。今は見守ってやろうぜ」
「そうですね………。はい! 僕なんかで力になれるのなら、全力でお手伝いしようと思いますぅ!」
「おう!」
ゼノヴィアの話で互いに笑顔で頷き合う俺とギャスパー。
と、ここで一つ、疑問が生まれてきた。
「そう言えば、小猫ちゃんとレイヴェルは?」
そう、ギャスパーと同じクラスの二人の姿が部室に見えない。
美羽達みたいに何か用事かね?
ギャスパーが言う。
「二人は今日、日直なので、黒板消したり、クラスで回収したプリント運んだりしてます。多分、もうすぐ来ると思いますよ?」
そういや、今朝、二人は早めに出てたな。
小猫ちゃんとレイヴェルが日直………なんとなくだけど、凄く微笑ましい光景が浮かんでくるぞ。
後輩二人の仲良しな姿を想像していると、ギャスパーがテーブルに置かれていた物を指差して訊いてきた。
「あれ………? こんなの、この部室にありましたっけ?」
「ん?」
ギャスパーの視線の先には掌サイズの丸い物体。
青色で………何かのボタンか?
クイズ番組とかでよく使われているような、ボタンのような物体が部室のテーブルの上に置かれていた。
なんだこりゃ?
こんなの部室にあったかな?
少なくとも昨日の部活時には無かったと思うが………。
ギャスパーが興味津々といった感じで、
「お、押してみますか? 何が起きるか気になりますぅ」
「やめてくんない? そういうフラグ立てるようなこと言うのやめてくんない? つーか、何か起きるの確定かよ」
「そ、そういう訳じゃないですけど、こういうのが置かれているとつい押したくなるじゃないですか」
「分からなくはないが………押すなら自分で押してくれ。何か嫌な予感がしてきた」
「い、イッセー先輩こそ、そういうこと言うのやめてくださいよぅ」
だって、ギャスパーがフラグ立てるようなこと言うんだもの。
こういうのって、押した奴になにか不幸なことが起きる的なあれだろ。
バラエティなら、上からタライが落ちてくるとかだろ。
ギャスパーはボタンに指を伸ばし、意を決したように言う。
「そ、それじゃあ、押します………」
ゴクリと唾を呑み込み、ギャスパーの指がボタンを押す。
すると―――――。
ボタンから強い輝きが放たれ、部室の中を照らしていった!
光が強すぎて目が開けられねぇ!
「な、なんだぁ!?」
光は益々強くなっていく。
ボタンを押してから十秒ほど経って、ようやく光が収まった。
目を開けると―――――何も変わっていなかった。
部屋の様子にも変化がない。
何かが落ちてくるようなこともないし、ボタンを押したギャスパーにも変化はない。
いつも通りの男の娘だ。
え…………光っただけ?
派手な演出だった割には何も変化がなかったので呆気に取られる俺。
「え………い、イッセー先輩、ですか?」
ギャスパーが目を見開き、何かに驚きながら俺に訊いてくる。
イッセー先輩ですかって、俺は俺だぞ?
いつも通りのイッセー先輩だぞ?
そう返そうとしたその時、俺は気づいた。
………服がダボダボだった。
明らかに大きい。
大きすぎる。
制服の袖から手が出ないほど、サイズが大きい。
制服の袖を手前に引っ張って、手を出すと――――小さくなっていた。
「ぎゃすぱー………こ、こりぇって………」
ギャスパーの名前を呼んでみると、声が高いし、舌が回ってない!
ま、まさか、これは…………これは―――――。
「ちっちゃっくなってりゅぅぅぅぅぅぅ!?」
舌の回っていない俺の悲鳴が部室にこだました!
鏡を見ると一歳くらいのサイズに縮んだ俺!
俺、幼児になってる!
何でだ!?
女体化の次は幼児化ですか!?
つーか、押したのギャスパーなのに、なんで俺!?
ここはギャスパーが幼児化するところだろう!?
このボタン…………間違いない!
「あじゃじぇるちぇんちぇーのしぇいか! あのあくまめぇぇぇぇぇぇ!」
「あ、アザゼル先生は堕天使ですよ…………?」
「れいせーなつっこみいりゃねーよ!」
あの人、ろくな発明しねぇぇぇぇぇぇ!
性転換銃の出番が最近増えたからって、なんで幼児化ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
その時、部室の扉が開かれる。
入ってきたのは諸悪の根源、悪意の塊、ラスボス先生、未婚元総督!
アザゼル先生は俺を見るなり、爆笑していた!
「ぶはははは! ち、ちっちぇー! イッセー、おま、随分可愛くなったじゃねーか! ぶふっ!」
「ふじゃけんな! このみきょんもとょてーときゅ!」
「い、言えてねー! 悪口言ったつもりだろうが、言えてねーよ! ぶはははは!」
「こ、こにょぉぉぉ!」
俺はソファから飛び降りると、拳を構えて突貫する!
これは殴ってもいい!
殴っても許させるはずだ!
しかし、一歩を踏み出そうとしたところで、ダボダボになったシャツを踏んでしまい、俺はその場に顔から転んでしまう!
鼻を床にぶつけた俺は涙目で、
「………いちゃい………ぅぇ」
すっごく痛い。
なに、この懐かしい感覚………無駄に懐かしいよ、これ。
そして、そんな俺を見て、再び爆笑するアザゼル先生!
く、くそったれがぁぁぁぁぁぁぁぁ!
お、追い付け、俺!
ここで怒りに任せて動けば、傷つくのは俺だ。
冷静になって、今の事態を整理する必要がある。
ギャスパーがアザゼル先生に訊く。
「こ、これはいったい何の装置なんですか?」
「よくぞ聞いてくれたぜ、ギャスパー。こいつはな、イッセーだけを若返らせる装置。半径一メートル以内にいるイッセーを幼児化させる装置なんだよ」
はぁっ!?
俺を若返らせる装置ぃ!?
アザゼル先生は装置を指で挟みながら言う。
「元々は押した相手を若返らせるお遊び道具だったんだが、ちょいと俺に依頼があってな。イッセーを幼児化させる装置が欲しいってさ」
「い、いったい、だりぇが?」
「そいつはな―――――」
俺の問いにアザゼル先生がその名を言おうとしたのと、部室の扉が開かれたのは同時だった。
入ってきたのは美羽を先頭に、アリス、レイナ、リアス、朱乃、小猫ちゃん、レイヴェル、木場。
選挙活動に向けて準備してる教会トリオを除いたオカ研メンバーだった。
アザゼル先生がニヤリと笑う。
「おっ、ちょうど良いところに来たな。イッセー、依頼者の登場だぞ?」
アザゼル先生の視線が向けられているのは―――――美羽!
美羽が依頼者だと!?
美羽と幼児化した俺の視線が合う。
すると―――――。
「いやぁぁぁぁぁん! 赤ちゃんお兄ちゃん、かーわーいーいー!」
俺を抱えあげて、抱き締めてくる!
まるで幼い子供が子犬を抱っこするみたいに扱ってくる!
「わぁぁぁぁ、フワフワのプニプニだぁぁぁぁ。むふふふふ、くぅぅぅぅぅぅ!」
悶えてるよ!
悶えすぎて、テンションがおかしいことになってるよ、美羽ちゃん!
俺への頬擦りが止まらないよ!
アザゼル先生が美羽に言う。
「どうだ、美羽。完璧だろう?」
「うん! ありがとう、アザゼル先生! 完璧だよ! ボク、お兄ちゃんの昔の写真を見たときからこうしてみたかったんだ! 何度かお兄ちゃんを赤ちゃんにする術式を考えてたんだけど、失敗したら大変だから、出来なくて…………」
そーだったの!?
俺の昔の写真って…………見たのかなり昔だよね!?
何年も前からそんなこと考えてたの!?
って、さりげにとんでもないカミングアウトされたよ!
俺を小さくする術式とかも考案してたの!?
美羽から明かされる事実に驚く俺のもとにアリスが寄ってくる。
アリスの目はどこかキラキラしていて、口許は緩みに緩んでいた。
「こ、これが赤ちゃんイッセー………! か、可愛い………! 美羽ちゃん、私も抱っこしていい?」
「うん、いいよ!」
などと言って、俺をアリスへと手渡す美羽!
完全に子犬扱いじゃん!
ペットショップとかで良くある流れだよね!
幼児化した俺を抱き締めるアリス。
美羽のように声に出してはいないが、明らかにいつもと雰囲気が違っていて…………
「ほ、ほんとだ、フワフワしてる………。も、もし、私達に子供が出来たら、こんな感じなのかな………?」
そんなことを呟いて、俺の頭を撫で、胸に押し当ててくる………!
アリスのおっぱいがいつも以上より大きく感じられて………!
「わ、私もイッセーを抱かせて!」
「私も抱っこしたいですわ!」
「私も! 私もしたい!」
「小さいイッセー先輩………!」
「こ、ここここれが、あのイッセー様! な、なんて………わ、私もお願いしますわ!」
リアス、朱乃、レイナ、小猫ちゃん、レイヴェルのテンションもおかしなことにぃぃぃぃぃ!
皆、ぬいぐるみでも取り合うかのように、俺を奪い合っていくぅぅぅぅぅ!
リアスが俺を腕に抱える。
「ああ…………やっぱり、良いわね…………。最高っ! なんなのかしら、この気持ち………」
リアスの手から朱乃へと移される。
「うふふふ。きっと、これが母性というものなのですわ」
朱乃から小猫ちゃんへ。
「………可愛いです………」
小猫ちゃんからレイヴェルへ。
「な、なんてことでしょうか…………ここまでの破壊力………! あり得ませんわ、あり得ませんわ………あり得ないくらい可愛すぎますわ!」
そして、レイヴェルからレイナへと。
「ふわぁぁぁ………イッセーくんが………! ねぇ、イッセーくん、『お母さん』って言ってみて! もしくは『ママ』でも可!」
お母さん!?
ママ!?
こ、この状況でそれをしてしまえば、色々とマズいと思うんですけど!?
どっちを言えば正解なんだ!?
つーか、言わなきゃダメ!?
俺は…………俺は―――――。
「ま………まま………?」
その瞬間、レイナの中で何かが弾けたのだろう。
レイナは制服に手をかけ、ボタンを外し始めた!
「レイナ様!? 何を!?」
「今なら出る気がする!」
「出るって何が!?」
レイナちゃんも出すつもりなの!?
そもそも出るの!?
リアスとアリスが同時に叫ぶ!
「「それなら私が! だって、出るもん!」」
ちょ、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!?
二人とも落ち着こう!
ここには木場やギャスパー、アザゼル先生もいるんだよ!?
しかし―――――そちらを見ると、俺を除いた野郎三人の姿は既になく、ちょうど部室の扉がガチャリと閉まる音がした。
に、逃げやがった…………。
元凶(この場合、美羽かも知れないが、アザゼル先生が元凶ってことにしておく)とツッコミ要員二人、逃げやがった。
今の俺にはまともにツッコミすることも出来ないんだぞ!?
幼児化した俺の前にさらけ出されるリアスとアリスのおっぱい!
相変わらず素晴らしい大きさのリアスのおっぱいと、美しく成長したアリスのおっぱいが目の前にぃぃぃぃ!
なんということだ………普段、見ているのに、今の視点からだと、より凄いことに………!
別世界じゃないか!
この姿で見るおっぱいの迫力に推されていると、部室に青い魔法陣が展開される。
魔法陣が光った後、部室に現れたのは青髪のお姉さん、ティアだ。
ティアは俺達を見渡すと言う。
「暇だから寄ったのだが………これは何の騒ぎだ?」
遊びに来たティアが部室の騒ぎように首を傾げている。
すると、レイナに抱き抱えられている俺とティアの目があった。
ティアが訊いてくる。
「おい、その赤ん坊は………誰の子だ?」
「「「私の子供よ!」」」
おぃぃぃぃぃぃ!
なに嘘ついてるの、この娘達はぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「うむ………そうか、もう生んだのか」
そこで納得しないで!
なに、うんうん頷いてるの!?
普通に考えて早すぎるだろ!
この状況を打破するため、俺は舌の回らない言葉でティアに言った。
それは藁にもすがる想いで、ティア姉なら俺をこの状況から救いだしてくれると信じてのことだった。
「ちあ! おれだ! いっちぇーだ!」
「………うん? い、イッセー………だと?」
片眉を上げるティア。
美羽がティアにことの次第を伝える。
「アザゼル先生が作った発明品でお兄ちゃんは赤ちゃんに戻ったんだよ。すっごく可愛いでしょ?」
「ちなみに、誰がアザゼルに頼んだ?」
「ボクだよ? 昔のお兄ちゃんを抱っこして、スリスリしたかったんだ」
ティアの問いに自身を指差して答える美羽。
笑顔で答える美羽にティアは深くため息を吐いて、こちらに歩み寄ってくる。
やっぱり、呆れるよね。
だって、そんな願いのために俺をこんな目に合わせるなんて信じられないよね。
うん、待ってた。
ようやくまともな反応を見せてくれる人がいた。
流石は頼れるお姉さん――――――。
「でかしたぞ、美羽!」
そう言うなり、ティアはレイナから俺を奪い抱き上げたぁぁぁぁぁ!?
「やーん! イッセー、かーわーいーいー!」
ティア姉ぇぇぇぇぇぇぇ!?
違う!
俺が求めているのはこんな反応じゃないよ!
「やーん」って、さっきの美羽と同じ反応じゃねーか!
ティア姉ってそんな言葉使う人だったの!?
「あぁぁぁぁ………良いな、これは………。この胸に収まるサイズ感、この柔らかさ………たまらんな。はぁ、はぁ」
ちょ、ティア姉、息が荒くなってるんですけど………。
今気づいたけど、美羽達も呼吸が荒くなっていて、なんか目が怖い。
もう、どうしたら良いんだよ。
どうすれば、この状況から抜け出せるんだよ。
どうすれば、俺は元に戻れるんだよ。
あのボタンはあの未婚元総督が持って行ってしまったし、俺は上手く動けないし。
………う、打つ手がねぇ。
どこから持って来たのだろう。
美羽が赤ん坊が着るような服を何着も持って来て、机の上に広げた。
俺は嫌な予感しかしなかった。
「み………う………?」
「お母さんに頼んで、借りて来たんだ。お母さん、全部大切に保管してたんだよ?」
そ、そんな昔の服を保管してたっていうのか………。
なんてこった、こんなの次の展開が丸分かりじゃん。
だって、女体化した時に経験したもの。
だって、女性陣の目があの時と同じ………いや、あの時以上に危険なんだもの。
「さぁ、お着換えの時間だよ!」
美羽の号令のもと、俺は女性陣の着せ替え人形にさせられ、撮影会まで開かれた。
更に、アザゼル先生から情報を聞きつけた教会トリオが参戦し、俺は一日中………そう、食事も、風呂も、寝る時も赤ん坊姿で過ごす羽目になったのだった。
▽
後日、元の姿に戻った俺はアザゼル先生に文句を言いに行った。
「あんたのせいでなぁ! 俺はひたすら遊ばれたんだぞ!?」
「まぁ、良いじゃねぇか。美羽達も満足したんだ。美羽達の幸せはおまえの幸せだろ?」
「ちょっと違うねぇ! 俺、ひたすら赤ちゃんだったもの! 赤ちゃん扱いだったもの! 地味に辛かったよ!」
「おっと、一つ言い忘れていた。あの装置は若返らせる年齢を設定できてな。―――――おねショタプレイなんてものが出来るぜ?」
「それ、美羽達に言いました?」
「言った。というか、美羽の要望」
「………」
美羽、おまえ………。