ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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時系列は本編、ファニーエンジェル編の一話と二話の間です。

本編がシリアスなので、たまにはイチャイチャさせないと…………!


ほろ酔いアリスさん

ある日の夜。

 

悪魔の仕事、契約活動中の俺は事務所で一人、眷属の帰りを待っていた。

上級悪魔、それも眷属を持つ者ともなれば、ただ契約を取ってくるだけでなく、眷属の帰りを待つのも仕事の内だ。

 

ちなみに、俺は既に契約を終え、対価もきっちり貰ってきている。

ふっふっふっ、転生したての頃とは比べ物にならない契約までの鮮やかさ!

俺も成長したもんだぜ!

 

一人自分の成長にほくそ笑んでいると、事務所内に魔法陣が現れる。

転移魔法陣………。

どうやら、無事に契約を終えてきたみたいだな。

 

転移の光と共に現れたのはアリス。

 

「よっ、おかえり。随分遅かったな」

 

俺がそう声をかけると、アリスはふらふらした足取りで俺の方へと歩み寄ってきて…………そのまま飛び付いてきた!

 

「つーかーれーたー! もう今日は働きたくないぃぃぃ!」

 

おいおいおい!

帰還早々ダメ発言だよ!

こいつ、元王女だろ!?

 

………あ、こういうところは再会してから変わってないか。

うん、これが平常だわ。

 

などと勝手に納得している俺にアリスは頬擦りしながら言ってくる。

 

「もう猫探しの依頼は受けない! ぜーったいぜーったい受けない! 見つけたと思えば逃げるし、追い付いたと思えば、塀の間に入っていくし! 捕まえたと思えば引っ掻いてくるし! もうヤダァ!」

 

あー………。

 

よく見ると所々に掠り傷があるな。

服も汚れちゃってるし。

 

おそらく、その猫は相当質が悪い猫だったんだろう。

体を動かす依頼でアリスが苦戦するのは珍しいからな。

なるほど、激戦だったようだ。

 

うん、これは同情の余地ありだな。

 

俺は苦笑しながら、アリスの頭を優しく撫でた。

 

「よしよし、お疲れさん。契約は取れたか?」

 

「もちろん取ったわよ。あそこまで好き勝手に暴れられたら意地でも捕まえたくなったし」

 

「そ、そうか………」

 

「はい、これ。契約の対価」

 

アリスが差し出してきたのは一つの箱だった。

 

箱を開けてみると、そこには―――――。

 

「おおっ、美味そうだな」

 

箱に詰められていたのはハムとベーコンの詰め合わせ。

見るからに高級そうなものだった。

 

「知り合いからのお裾分けの品だって。かなり高いらしいわ」

 

「お裾分けを貰ってきたのね………」

 

お裾分けを対価って…………。

ま、まぁ、それで価値が変わる訳じゃないし、美味そうなことには変わりない。

対価として、ありがたく受け取っておこう。

 

俺が詰め合わせの箱をデスクに置いたところで、アリスは事務所を見渡す。

誰もいないことを確認したところで、アリスは訊いてくる。

 

「美羽ちゃんとレイヴェルさんは?」

 

「あの二人は先に帰らせたよ。眠そうだったし」

 

美羽とレイヴェルは大分前に契約を終えて帰ってきたんだが…………アリスを待っている間に眠くなったらしい。

二人とも盛大にあくびしていたもんで、先に帰ってもらうことにした。

 

時刻は既に夜の十二時を回っている。

眠くなるのも当然だろう。

 

「私が最後なわけね………」

 

「まぁ、二人は猫探しじゃなかったからな」

 

「イッセー………もう、猫探しはイヤ」

 

「………今度から俺が行くよ、猫探し」

 

猫探し…………小猫ちゃんに頼む方が一番良いのかな?

何となくだけどそんな気がする。

 

とにかく、猫探しはアリスに向いてないわ。

 

 

ぐぅぅぅぅぅぅぅ…………

 

 

アリスの腹の虫が鳴った。

それも盛大に。

 

途端、アリスは顔を真っ赤にして慌てながら叫ぶ。

 

「ち、違うから! こ、これはそういうのじゃないから! う、うん! 幻聴よ、幻聴!」

 

いやいや………幻聴ってのはおかしいからね?

俺もアリスも聞こえているのに幻聴はないからね?

 

そうかそうか、アリスさんはお腹が減ったのか。

 

俺はアリスの頭を撫でながら微笑む。

 

「とりあえず風呂にでも入ってこいよ。泥だらけだし、綺麗にしてきなって。その間に夜食でも作ってやるからよ」

 

「え………良いの?」

 

「あんまりレベル高いやつは期待するなよ? 簡単なものくらいならぱぱっと作ってやるからさ」

 

「う、うん………ありがと、イッセー」

 

モジモジしながら、そう返してくるアリス。

 

うん、可愛い。

なんというか、ギュッてしたくなるな!

よし、後でギュッてしよう!

 

アリスは浴室のある『休憩室』へと入っていく。

 

それを見送ったところで、俺は顎に手をやり考え込む。

 

さて…………何を作ろうか。

まぁ、俺が作れるやつって言ったら限られてくるけど。

美羽やリアスみたいに料理が上手いわけでもないし。

 

ネットで検索して、それらしいものでも探してくるかね?

 

夜食のメニューを思案していると、『休憩室』の扉が少しだけ開いた。

何事かとそちらに視線を向けるとアリスが半分だけ顔を出していて―――――。

 

「一緒に…………入る?」

 

この時、俺は猛烈に葛藤した。

 

 

 

 

結局、俺は入らなかった。

 

何故ならば、アリスが美味しいと言ってくれる夜食を作らなければならないからだ!

あんな可愛く誘ってくる嫁だぞ!?

満足する一品を作ってあげたいじゃないか!

 

俺は己の欲望を見事に抑え込み、キッチンに立った!

冷蔵庫の中を探り、この事務所にある食材をかき集めた!

 

そうやって完成したのが―――――。

 

「お待ちどうさま。―――――特製夜食BLTサンドだ」

 

バスローブを纏ったアリスの前に置いた皿の上に並ぶサンドイッチ。

 

作り方は簡単。

 

まずはトマトをスライスし、レタスをカット。

アリスが契約の対価として貰ってきた厚切りベーコンをフライパンで表面がカリカリになるまで炙る。

 

次に食パンをトーストし、表面に焼き目がつくまで火を通す。

バターを塗ったパンにレタスを置き、マヨネーズとケチャップ、粒ありマスタードで作った特製ソースを塗る。

その上にトマトと炙ったベーコンを乗せ、黒胡椒を振り掛けてサンドだ。

 

出来立てで、ベーコンの芳ばしい香りが食欲をそそるぜ!

 

やべっ………作った俺が腹減ってきた。

 

風呂上がりで、ほんのりと頬が赤いアリスはこのサンドイッチの出来映えに感嘆の声を漏らす。

 

「すごい………美味しそう…………。あんた、やっぱり料理出来るんじゃない」

 

「簡単だぞ? しかも、レシピはネットで調べただけだしな。そんでもって、仕上げが―――――」

 

俺は取り出したグラスをサンドイッチの乗った皿の横に置く。

 

そして―――――。

 

「これ、俺が今日対価で貰ってきたワインな」

 

そう、これが本当の仕上げ。

 

ちょうど今日の依頼の報酬がこのワインだったんだ。

俺も飲めないことはないけど、そこまでガッツリ飲むわけではないので、誰かに譲ろうか考えてたんだが…………。

 

注がれるワインにアリスは目をキラキラ輝かせていた。

 

「わぁ………。これ、本当に良いの? 私、飲んで良いの?」

 

「まぁ、眷属内で飲めるのって実年齢的に俺とおまえだけだしな。アリスは酒好きだろ?」

 

「うんうん」

 

「明日が平日ならどうかと思ったんだけど、幸いにも土曜日。学校も休みだ。なら、たまにはハメ外しても良いだろう?」

 

俺がそう言うとアリスは今度は笑顔で抱きついてきた。

それはそれは幸せそうな笑顔で、物凄くテンション高めに言った。

 

「イッセー大好き! 愛してる!」

 

「それは酒が飲めるからだろ?」

 

「それもある!」

 

「………正直者だな………。ま、冷めないうちに召し上がれ」

 

「はーい!」

 

アリスはサンドイッチを手に取り、頬張る。

もぐもぐと口を動かし、飲み込んだ後、グラスに入ったワインをぐいっと飲み干した。

 

「ぷはぁ! 美味しいっ! やっぱり仕事の後の一杯って最高よねっ! サンドイッチも美味しいわ!」

 

「そっか、そりゃ良かった」

 

うんうん、ネットで検索してぱぱっと作った夜食だったけど、満足してくれて何よりだ。

 

アリスは相当腹が減っていたのか、ペロリとサンドイッチを平らげてしまう。

 

「あー、もう! 至福!」

 

そして、次から次へとワインをグラスに注いでいくのだが…………。

 

 

 

 

 

それから数分後。

 

 

「えへへへへ…………いっしぇー、もっとぉ………もっとギュッってしてぇ♡」

 

ソファに寝転がったまま、俺の腰に抱きついてくるアリス。

幸せそうな表情だが、明らかに呂律が回っていない。

 

そう、アリスはべろんべろんに酔っていた。

 

ワイン一本飲み干したアリスは冷蔵庫を漁り、奥にあった酒(アリス専用)を何本も開けてしまっていたのだ!

 

その酒とはアザゼル先生が商売のために作った試作品。

どうやら、グリゴリの方で酒造事業に手を出そうと言う話になったらしく、そのサンプルをアリスが受け取っていた。

で、今まではちびちび飲んでいたんだが…………。

 

俺は目の前の惨状に顔を青くする。

 

…………こいつ、一人で十本以上飲みやがったのか!?

 

俺がちょっと席を外している間にこれだぞ!?

一体、どんなペースで飲んだんだ!?

 

床に転がる空き瓶の数々!

数えるだけで頭が痛くなりそうだよ!

 

確かにハメを外しても良いって言ったけどさ…………。

 

「いっしぇー、いっしぇー………いっしぇーのからだはぁ、とってもあったかぁい。もっと、ずぅっとこうしていたぁい♡」

 

どんだけハメ外してるの、この娘は!?

ハメ外し過ぎて、大切な何かが吹っ飛んでませんか!?

 

床を転がる空き瓶を見る度に頭痛がしてくるよ!

 

俺は額を抑えて深くため息を吐いた。

 

………どうすりゃいいんだよ?

 

今、俺が感じていることは二つ。

アリスを止められなかった自分への不甲斐なさとアリスのハメの外し方の異常さ。

 

恐らく俺は悪くない。

でも、何故だか自分を責めてしまう。

 

俺が、ちょっとトイレに行ったばかりに…………!

 

ほんの数分だよ?

まさかまさか、そんな短時間でそんなに飲むとは思わないじゃん?

ここまでべろんべろんなるとは思わないじゃん?

 

「うふ、うふふふ♪ ふにゃぁお♪」

 

何が可笑しくて笑っているのか。

なぜに猫の鳴き真似をしているのだろうか。

 

俺にはサッパリ理解できん。

 

俺は………間違っていたのだろうか?

仕事を終えてきた眷属に「明日は休みだしちょっとくらいハメを外しても良いよ」と言ったことは間違いだったのだろうか?

 

誰か、俺に教えてくれよ…………。

 

でも、唯一の救いがここにはある。

 

「いっしぇー? わらひといっしょはイヤ? わらひのこときらい?」

 

潤んだ瞳でそう訊いてくるアリス。

そう、唯一の救いとはアリスの酔い方は可愛いということ。

 

多分、ため息を吐く俺を見て不安になったんだろうな。

だから、そんなことを聞いてきたのだと思う。

 

嫌い?

そんな訳あるか。

 

確かにここまでべろんべろんになったことには、色々と思うところがある。

 

だが!

今のアリスは…………アリだ!

そう思う自分がいることは否定できん!

 

俺は涙目のアリスを撫でながら微笑む。

 

「そんなことないよ。俺はアリスが大好きだ」

 

そう言うとアリスは、

 

「えへへへへ…………。いっしぇー、らいすき♡」

 

くっ…………!

なんてスマイルをしてくれる!

 

思わずギュッてしてしまうじゃないか!

こんなの怒るに怒れないよ!

俺には無理だ!

 

アリスは少し体をふらつかせながらも、上体を起こす。

 

スルッと肩を滑り落ちていくバスローブ。

現れるのは白く美しいアリスの裸体。

 

何度も見てきたはずなのに、何故かゴクリと喉を鳴らしてしまう!

目が離せない!

 

アリスはふらふらしながらも、俺の首に手を回してくる。

 

アリスのおっぱいが!

アリスのおっぱいに顔が埋まるぅぅぅぅ!

 

このスベスベした肌!

成長し、程よい弾力を持ち始めたおっぱい!

 

これは………この展開は―――――。

 

「いっしぇー、わたひね? いっしぇーとこのまま――――ふぇ」

 

そこまで言ったところで、アリスの全身から力が抜けていった。

ソファから転げ落ちそうになったので、俺は咄嗟に受け止めるが…………。

 

「スー………スー…………」

 

どうやら限界が来てしまったらしい。

穏やかな寝息と共に熟睡してしまっていた。

 

ただ、熟睡した状態でも俺の手はしっかり握っていてだな…………。

 

俺はついつい微笑んでしまう。

 

「やれやれ………手間のかかるお嫁さんなことで」

 

俺は完全に寝てしまったアリスを抱き抱えると『休憩室』に運び、ベッドに寝かせる。

風邪をひかないようにシーツを被せてあげる。

 

ふと顔を見てみると、寝顔までどこかニヤけているようで、それを見ているだけで全てが許せそうな気がした。

 

「ま、いっか」

 

俺はアリスの頭を撫でた後、彼女のおでこにキスをした。

 

「おやすみ、アリス。また明日な?」

 

それだけ言って、俺は部屋を出る。

起こさないように静かにドアを閉めて。

 

「さて、後片付けとしますかね」

 

この後、俺は食器と床に転がった空き瓶を片付けるのだった。

 

 


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