ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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時系列は本編十四章、吸血鬼編を終えた後です。


番外編集
龍神さまと出かけよう


吸血鬼の町から帰ってきた、その数日後の休日。

 

喉が渇いた俺はリビングへ向かうと、テーブルの上に雑誌を広げているオーフィスを見つけた。

いつもながら表情の乏しい顔…………ではなく、何やら真剣な顔つきで目の前の雑誌と向き合っている。

 

少し覗いてみると、『スイーツ特集』という文字が見えた。

 

なるほど、確かにオーフィスは美味しいものに目がない。

美味しそうなものを見つけると「我もほしい」と言ってせがんでくることも多々ある。

 

そんなオーフィスが目を凝らしているということは、そのお眼鏡にかなうスイーツが載っていたのだろう。

 

「オーフィス、何か良いものでもあったのか?」

 

俺が訊ねるとオーフィスはコクりと頷く。

 

オーフィスは雑誌に掲載されているとある写真を指差して言った。

 

「我、これ食べたい」

 

―――――バナナフラペチーノDX(デラックス)

 

バナナを三本丸ごと使用した極上の一品…………と書かれていた。

 

そういや、オーフィスのお気に入りはバナナだっけか。

いつも美味そうに食ってるもんな。

 

そうかそうか、バナナ三本丸ごとってところに惹かれたのか。

 

「バナナは至高のおやつ。我、そう思う」

 

おぉっ!?

バナナが元龍神さまに認められちゃったよ!

 

そんなにか!?

そんなにバナナが好きなのか!?

 

なんだか、バナナが手の届かないところに行ってしまったような気分だよ!

バナナってそこまで凄かったっけ!?

 

ま、まぁ、オーフィスが食べたいって言うなら買いに行ってやるか。

 

雑誌によると期間限定品とのことだし、結構人気もあるみたいだ。

早めに買いにいかないと売り切れになってしまう。

 

俺は冷えたお茶を飲みながらオーフィスに言う。

 

「そんじゃ、買ってきてやるよ。一つで良いんだよな?」

 

基本的にオーフィスを外に連れ出すことは出来ない。

三大勢力の拠点であるこの町、それを覆う結界の中なら自由に動いても良いとの許可は得ているけど、それでもあまり出歩かない方が良いだろう。

 

オーフィスはここにはいないことになっているからな。

知っているのは駒王町に住む俺達悪魔、アザゼル先生にサーゼクスさん達四大魔王、ミカエルさん達セラフぐらいだ。

 

そういうわけで、俺が買いに行こうとするとオーフィスは、

 

「我も行く」

 

そう言って椅子から降りた。

 

「オーフィスも行くのか?」

 

「我、買い物もしてみたい」

 

「買い物?」

 

俺が聞き返すとオーフィスはコクりと一度だけ頷いた。

 

買い物かぁ。

 

美羽やアーシアが買い物から帰ってきたとき、興味深そうにしていたのを何度か見たことがある。

ビニール袋の中を覗いては商品について二人に訊いていたな。

 

オーフィスは家に住むようになってからは色々なものに興味を持つようになった。

そこで『買い物』という行為にも興味を持ったのだと思う。

 

でも、これは良い機会なんじゃないかな。

 

実際にお金を払って買い物をするという行為はオーフィスにとって人の生活を知る良い経験になると思う。

 

買い物をするなら、町のショッピングモールが良いだろう。

あそこなら結界の内側で外出ができる範囲内だし、色々揃ってる。

 

そんなことを思っていると、リビングに入ってくる影が一つ。

 

「イッセーさん? オーフィスさん? 何をしているのですか?」

 

入室したアーシアがこちらを見て首を傾げていた。

 

うん、メンバーはこれでいっか。

 

 

 

 

兵藤家の玄関にて。

 

そこに三人の隊員が集まっていた。

 

その名も『オーフィスとお出掛け隊』。

隊員はメインのオーフィスに加え、俺とアーシア。

 

俺は二人を前にして言う。

 

「よぅし! 今日の予定はバナナフラペチーノDX(デラックス)を食すこととオーフィスの買い物だ! アーシア隊員、準備はいいか!」

 

「はい! オーフィスさんがバナナフペラ(・・)チーノDX(ダブルエックス)が食べられるように頑張りますぅ!」

 

「アーシア、違う。我が食べたいのはバナナフラペチーノDX(デラックス)

 

「はぅ! さっそく間違えてしまうなんて!」

 

さっそくオーフィスに間違いを指摘されるアーシア。

 

いや、アーシアよ。

フラペチーノはともかくデラックスを間違えるのは…………。

ダブルエックスって…………。

確かにDXってデラックスでもダブルエックスでもいけるけどさ。

 

ともかく、こういうわけで俺達はオーフィスにバナナフラペチーノDX(デラックス)を味わってもらうことと、オーフィスの買い物を目的として町に出た。

 

第一目標はバナナフラペチーノDX(デラックス)だ。

 

これは期間限定品なうえ、人気が高い。

オーフィスに食べてもらうには早急に店に行く必要があるだろう。

幸い、この町にはバナナフラペチーノDX(デラックス)を取り扱っている店が複数ある。

 

「一つの店で売り切れになっていても、別の店に行けば置いてあるだろう。全てのバナナフラペチーノDXが売り切れるなど…………天文学的確率に等しい!」

 

多分、きっと、恐らく、そうだと良いな…………というのは心の中で思っておこう。

 

オーフィスが雑誌を見ながら言う。

 

「我、店の中で食べてみたい」

 

そう、今回はお持ち帰りではなく、店の中で食べてみたいというのもオーフィスの希望だったりする。

 

ちなみに、今日のオーフィスはお出掛け用の服装。

ピンク色の上着がオーフィスの幼い容姿と相まって可愛らしい。

 

普段のゴスロリは…………可愛いけど胸のバッテンがね…………。

あれはお出掛けようとしてはどうかと思う俺は間違ってない…………はず。

 

俺はオーフィスに確認する。

 

「オーフィス、お金は持ったか?」

 

「お金、ここにある。イッセーにもらった財布の中に入れた」

 

そう言ってオーフィスは下げているポシェットの中から財布を取り出した。

 

財布の中には母さんから渡されたお小遣い。

今日は買い物も体験してみるということで、オーフィスが実際にお金を払うことになっている。

 

十分だと思うけど、足りなかった場合は俺が出す。

そのためのお金も持ってきているさ。

 

俺は一度頷く。

 

「よし。それじゃあ、出撃するぞ!」

 

「はい!」

 

「おー」

 

ちょっとテンション高めに外出する俺達だった。

 

 

 

 

「ない、だと…………!?」

 

俺達は早くも出鼻を挫かれていた。

オーフィスご所望のバナナフラペチーノDX(デラックス)が無かったからだ。

これが一軒目、二軒目ならまだ良い。

 

三軒目でも売り切れているとは…………!

 

オーフィスが首を傾げる。

 

「ここにもない?」

 

表情の変化が分かりにくいオーフィスですらガッカリという落ち込みムードが漂う中、店員さんが申し訳なさそうに言う。

 

「申し訳ありません…………。当店では先程売り切れたばかりでして…………」

 

店員のお姉さんがチラッととある方向を見る。

 

そこにいたのは見覚えのある黒髪の少女。

 

「レイナかよ! マジか!」

 

そう!

なんと、この店で最後にバナナフラペチーノDX(デラックス)を注文していたのはレイナだった!

 

ノートパソコンのキーボードを高速で打ち込みながら、何やら資料を作っている様子!

その傍らには少し大きめのコップ。

 

中身はもちろん――――――。

 

「バナナフラペチーノDX(デラックス)…………。我、先を越された」

 

オーフィスがボソリと呟いた。

 

まさか身内に先を越されていたとは…………。

 

こちらに気づいたレイナが目を見開く。

 

「イッセーくん? それにアーシアとオーフィスじゃない。…………なんでここに?」

 

「いや…………その、オーフィスの希望でさ」

 

「我、バナナフラペチーノDX(デラックス)を飲みにきた。でも、売り切れてた」

 

「あ…………」

 

オーフィスの言葉に固まるレイナ。

自分が買ったのがラストだったんだから、何とも言えない気持ちになるよね。

 

ま、まぁ、オーフィスも悪気があって言った訳じゃないってところは分かってると思うけど…………。

 

何とも言えない空気が漂う中、アーシアが話題を変えるためにレイナに訊いた。

 

「それで、レイナさんはお仕事ですか?」

 

「え、ええ。今度、会議で使う資料を作っているよよ。家の中でしても良いんだけど、たまにはこういう店でするのも悪くないかなって」

 

ディスプレイを覗き込むと文字がたくさん並べられ、棒グラフやら円グラフが幾つも添付されていた。

ページ数は十数ページにも及ぶ。

 

これを一人で作ったのか…………。

前にうちの仕事手伝ってもらったけど、早いのなんの。

レイナのお陰で冥界に提出するレポートが予定より早く終わったんだよね。

 

レイナって本当にこういうの強いな。

 

ただ…………気になるのが表示されているタイトル。

 

 

『アザゼル前総督の無駄使いに関するレポート』

 

 

レイナがニコニコ顔で言う。

 

「今度ね、あの人の無駄使いを幹部の人達に暴露するの~。うふ、ふふふ…………シェムハザさまに怒られれば良いのよ」

 

病んでる!?

病んでないですか、レイナさん!

 

笑顔が怖い!

 

「この前ね、変なロボットを作っているのを見かけたの。そしたらね、グリゴリの資金を無断で使っていたのよねぇ。なんでも『ロボットは男の夢!』なんだって~。人型から飛行機に変形するんだって~」

 

あの人、またロボットか!

しかも、無断!?

 

確かにロボットは男の夢、というところには共感できる。

俺もプラモデル作ってるし、その手のものは好きだ。

 

つーか、変形するのかよ…………。

 

それはあれかな?

シールドが機首になるやつかな?

 

ま、まぁ、とにかく先生…………しっかり怒られてくれ。

 

 

 

~そのころのアザゼル~

 

 

「よし! 変形は上手くいったぜ! サハリエル、そろそろ本格的に飛ばしてみようぜ!」

 

「待つのだ、アザゼル。飛行テストをする前に組み込んでみたい装置があるのだ。これを見てほしいのだ」

 

「これは…………ふむ、微小なコンピュータチップを金属フレームに分子レベルで鋳込んでいるのか」

 

「そうなのだ。それをコックピット周辺に組み込めば機体自体のレスポンスを飛躍的に向上させることができるのだ」

 

「なるほど…………よぅし! 取り敢えず組み込んでみっか! アストナージ…………じゃなくて、サハリエル! 直ぐに取りかかるぜ!」

 

「ふっふっふっ、これが上手くいけば、全身に組み込んでみたいのだ。きっと、すごいことになるのだ」

 

二人の堕天使は今日もロボットを作るのだった――――。

 

 

~そのころのアザゼル、終~

 

 

「とりあえずそう言うわけなの」

 

「大変だな」

 

「まぁ、仕方ないわ。…………イッセーくん」

 

「ん?」

 

「あとで…………甘えさせて! もう私限界なの! あのおっさん、テキトーすぎるの! もうヤダァ!」

 

おおぅ!

レイナが抱きついてきたよ!

 

そうか、限界なのか…………!

 

アザゼル先生、レイナに苦労かけすぎだろう!

 

つーか、おっさん呼ばわりしたよ!?

一応、上司だよね!?

 

とりあえず俺はレイナを撫でる!

俺なんかでレイナの疲れが取れるのなら存分に甘えてくれ!

 

 

 

 

その後、レイナと合流して四人となった俺達は別の店へと向かった。

 

三軒目からちょっと距離があるが、それでも俺達は歩いた。

 

オーフィスの願いを叶えるために――――――。

 

そして、俺達は四軒目に到着。

 

レジの前に立ったオーフィスが店員さんに訊ねる。

 

「我、バナナフラペチーノDX(デラックス)ほしい」

 

「一つでよろしいですか?」

 

おおっ!

見つかった!

 

家を出てから三時間半!

 

ようやく、オーフィスが求めた至高の一品バナナフラペチーノDX(デラックス)がここに!

 

アーシアが目元を潤ませて言う。

 

「よかったです! 本当によかったですっ!」

 

本来なら泣くような場面じゃない。

それはわかっている!

それでも!

二時間半も歩いてようやく見つけたんだ!

 

店員さんがオーフィスに言う。

 

「一点で七百五十円になります」

 

高っ!

一杯でそんなにするのか!?

えぇい、バナナ三本丸ごと使用しているのは伊達じゃないということか!

 

「これで良い?」

 

オーフィスが財布から小銭を取りだし、店員さんに渡す。

 

店員さんは数えると、頷いた。

 

「はい。ちょうどですね。ありがとうございました」

 

こうして、オーフィスは初めて商品を買うことが出来た。

 

しかし、そこまで高いのなら逆に俺も飲んでみたい気がする…………。

俺もそれを注文してみる。

 

すると――――――。

 

「申し訳ありません。先程のもので最後となりまして…………」

 

マジですか!?

どれだけ人気なんだ、バナナフラペチーノDX(デラックス)

この町の人間はそんなにバナナが好きなのか!?

 

長いこと住んでるけど聞いたことないや!

 

その結果、俺はコーヒー、アーシアはカフェラテ、レイナは抹茶ミルクを注文することになった。

 

 

 

 

席につく俺達。

 

オーフィスは早速、ストローをさして念願のものを飲んでいた。

口の中でしっかり味わい、ゴクンと飲み込む。

 

「バナナフラペチーノDX(デラックス)、コクがあって深い味わい。我、そう思う」

 

食レポか!

 

ま、まぁ、満足してくれているようだ。

表情もどこか喜んでいるように見えるし。

 

ともかく、これにて第一目標は達成だ。

想像していたより時間かかったけど…………。

 

ちょっと休憩したら第二目標といきますか。

 

俺はオーフィスに訊いてみた。

 

「なぁ、オーフィス。この後の買い物なんだけど、結局何買うんだ?」

 

すると、

 

「パンツ。我、パンツ買ってみたい」

 

パ、パンツかぁ…………。

まぁ、確かに今のオーフィスは女の子だし、必要だよな。

 

「アーシア達が、色々な下着買ってた。それでイッセーを誘惑する、らしい。この間、レイナは透け透けのパンツ履いてた」

 

「ぶふぅぅぅぅ!」

 

「はわわわわ! オーフィスさん、言わないでくださぃぃぃぃ!」

 

噴き出すレイナ、オーフィスの口を塞ぐアーシア!

 

何てこった!

そんなところまで皆の影響を受けていたのか!?

 

た、確かに、リアス達も透け透けの下着つけてるし、最近のアーシアだって大胆になってきている!

レイナの新しい下着も見た!

とってもエッチだった!

 

まさか、そこを真似するつもりなのか!?

 

すると、オーフィスはコップを置いて「もうひとつある」と続けた。

 

「我、皆に何かお礼したい」

 

「お礼?」

 

俺が聞き返すとオーフィスはコクリと頷く。

 

「我、皆に世話になってる。だから、何かお礼したい」

 

…………っ!

 

オーフィス…………おまえ…………。

そんなことを考えていたのか…………。

 

純粋なオーフィスだからこそかもしれない。

 

俺は…………俺達は…………。

 

「「「グスンッ…………」」」

 

三人揃って号泣した。

 

ちくしょう!

不意打ち過ぎるぞ!

 

感動するじゃないか!

 

アーシアが立ち上がる。

 

「イッセーさん!」

 

「ああ、分かってる!」

 

「私も付き合うわ!」

 

「「「えいえいおー!」」」

 

拳を上げる俺、アーシア、レイナ!

 

オーフィスは首を傾げて不思議そうにしている。

 

 

その時だった―――――。

 

 

「あのぅ…………お客様。他のお客様のご迷惑になりますので…………」

 

「「「ご、ごめんなさい」」」

 


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