ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
「まぁ、こいつのコードネームについては置いておいてだ」
「いや、先生………ゴリラ13って………」
「イサオ、話を続けてくれ」
あ、無視された。
俺をスルーしたゴリラ13ことイサオさんは相変わらずウホウホ言いながら、今回の事件についての報告を続けていく。
「ウホッウホホッ(訳:とまぁ、ここまでが君達も認識しているところだろう)」
リアスが問う。
「単刀直入に問うわ。犯人は分かっているの?」
「ウホ(訳:ああ。私の調べで犯人に目星はつけてある)」
「ほう、もう犯人が割れているとはな。流石だ」
イサオさんの言葉にアザゼル先生が感嘆の声を漏らす。
しかし、イサオさんは眉間にシワを寄せて厳しい表情を浮かべていた。
イサオさんは暫しの間、無言を貫いた後、俺達を見渡して言った。
「ウホホ(訳:犯人は分かっている。だが、厄介な連中でな………)」
連中?
つまり、単独ではなく集団ということだろうか?
だが、被害にあっている三大勢力の関係者の数を見れば、確かに単独とは考えにくい。
被害者………五十三名。
そう、これだけの人数が顔面にスパーキングされているんだ。
潜入から襲撃、撤退まで数名で協力しなければ、これだけの襲撃を成功させることは難しいだろう。
イサオさんがアザゼル先生に言う。
「ウホッウホホホ(訳:アザゼルさん、奴らだよ。あの危険な集団がついに動き出したのさ)」
「―――――っ! まさか………!」
目を見開くアザゼル先生。
見れば、拳を強く握りしめ、体を強張らせていた。
リアスがアザゼル先生に問う。
「一体、誰なの? あなたがそこまで反応するなんて………」
「かつて、各勢力が争っていた時代。当時、各勢力に人員を派遣していた傭兵集団がいたのさ」
「傭兵集団?」
「そいつらは一人一人が強力な力を持っていてな。どの種族もその集団に人員の派遣を要請していた。だが………」
アザゼル先生の言おうとしたことを先読みしたのか、アリスがその続きを口にした。
「見境いなく兵を派遣するような連中なんて危険すぎる。だから、各勢力はその集団と手を切った………と言ったところかしら?」
「そうだ。更に言えば、そいつらが戦場に出ると、その後始末が厄介でな。そういう背景もあって、それぞれの勢力はその集団と距離を置くことにしたのさ」
木場が問う。
「では、今回の事件にその集団が関わっていると?」
「そうらしいな。なぁ、イサオ」
先生に言葉を投げられたイサオさんは強く頷く。
「ウホ(訳:そう、奴らは各勢力から危険視されていた。奴らの名は―――――)」
そして、その集団の名を告げた。
「ウホホ(訳:過激武闘ゴリラ組織『
どこからツッコミを入れてやろうか。
でも、まぁ、あれだな。
とりあえず―――――。
「結局、ゴリラじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「結局、ゴリラじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「結局、ゴリラじゃないのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺は叫んだ!
美羽も叫んだ!
アリスも叫んだ!
トリプルツッコミだった!
なんだよ、過激武闘ゴリラ組織って!?
意味分かんねーよ!
『過激武闘組織』なら良しとしよう。
まだ意味が分かる。
危険な集団なんだなと認識できる。
でもね、ゴリラ組織はどう受け止めたら良いのか皆目検討もつかねーんだよ!
どうすれば良いの!?
俺はどうすれば良いのか、誰か教えてくれぇい!
ロスヴァイセさんが顎に手を当てて言う。
「聞いたことがあります。かつて、あらゆる勢力から危険視されていたゴリラの集団がいたと。ただの作り話だと思っていましたが、まさか本当に実在していたなんて驚きです」
イリナとゼノヴィアが続く。
「私も少しだけなら聞いたことがあるわ」
「ああ。噂程度ならね」
ギャスパーも、
「僕がまだ吸血鬼の世界にいた時も耳にしました」
レイヴェルも、
「私もお父様から聞かされたことがあります。まさか、本当に………」
うん、ちょっと待って。
なにこの神妙な空気。
俺が間違ってるの?
ツッコミを入れちゃダメだったの?
皆、俺と美羽、アリスのツッコミをスルーしてるんだけど………俺達がいけないの?
いけない子達だったの?
誰か一人くらい俺達に共感してくれても良いと思うんだけど。
すると、俺の神器の中から声が聞こえてきて、
『あぁぁぁん! イグニスお姉様、もっと縛ってくださぁぁぁぁい!』
『うふふ♪ ここが良いのかしら? そ・れ・と・も――――』
『ふぁぁぁんっ♡』
おまえはこの空気の中でなにをしてるんだ、駄女神ぃぃぃぃぃぃぃ!
『ちょっとしたSMプレイ』
なんでだよ!?
なんでこのタイミング!?
『いや、ゴリラゴリラの流れでいきなりのSMは予想外かなーって』
予想外過ぎるわ!
流れ全く関係ないもの!
共通してるのは俺にツッコませるってところだけ!
『えっ、ツッコみたいの? 私がツッコもうと思ってたのに。それじゃあ、私は後ろ、イッセーは前で――――』
それ、別の意味だろうがぁぁぁぁぁぁぁ!
なに人のツッコミを勝手にR18的な意味に変えてくれてんの!?
俺も人のこと言えないけど、おまえはホンットにエロ女神だな!
『フッフッフッ、それは誉め言葉ね。私のエロパワーを見せてあげるわ!』
『あぁんっ! イグニスお姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』
駄目だ!
分かっていたけど、俺にはこの駄女神は止められない!
存在そのものがR18指定の女神とか他にいるだろうか!
いや、いない!
つーか、歴代の先輩で遊ばないで!
余計におかしくなるでしょうが!
イサオさんが言う。
「ウホウホ(訳:ゴリラは基本的に穏やかな種族だ。だから、その組織に所属したゴリラはゴリラの中でも異端中の異端ということになる。戦闘ゴリラ民族。簡単に言えば戦闘狂の集団さ)」
「いや、戦闘ゴリラ民族ってなんですか………。一応聞きますけど、そのゴリラ達が参戦した戦場はどんな感じになっていたんですか?」
俺の問いにアザゼル先生が深く息を吐きながら、
「奴らにやられた者は全員、顔面スパーキングさ。無事に帰ってきた者のほとんどがゴリラ恐怖症になってな。ゴリラを見るだけで体が震えてしまうようになってしまった」
「ウホッ(訳:そのため、俺も施設を歩くときには出来る限り、ゴリラ恐怖症の人と会わないように気を付けているんだ)」
………ゴリラ、半端ねぇ。
それしか出てこないよ…………。
ま、まぁ、とにかくだ。
今回の犯人グループは割れている。
となれば、後は敵の居場所と規模、それから―――――。
「
リアスがイサオさんに問う。
これまで息を潜めていた集団がここに来て動き始めた理由。
三大勢力の関係者を次々に襲撃したのはなぜか。
そこには必ず何らかの目的があるはずなんだ。
「ウホッウホホホ(訳:確証はないが、おおよその検討はついている。連中が動き始めた理由、それは―――――)」
イサオさんがウホウホ言いながら、語ろうとした時だった。
彼の耳元に通信用の魔法陣が展開された。
「ウホッ(訳:失礼。部下からの報告だ)」
「部下………いたんだ」
「一応ね。数名の堕天使が彼の下で働いているの。もちろん、ゴリラ語も話せるわ」
ゴリラ語が話せる堕天使が何人もいるのか。
俺は堕天使組織の将来に不安を感じてならないよ。
それで良いのか、グリゴリ!
少し話した後、イサオさんは通信を切って俺達の方に視線を戻した。
「ウホ(訳:すまないが、会議はここまでだ。―――――連中の居場所が判明した)」
▽
イサオさんの部下からの連絡を受け、俺達が転移したのは南太平洋に浮かぶ数百の島からなる国―――――ソロモン諸島。
その内の小さな無人島。
島は正にジャングルといった感じで、緑がこれでもかと生い茂っている。
………が、いくつもの気配を感じるな。
メンバーは俺達オカルト研究部の面々とアザゼル先生、イサオさん。
それから―――――。
「なるほど、島の奥から強い力を感じるな」
ジャングルの奥を見つめて、そう呟くのはヴァーリ。
そう、ヴァーリチームも今回の作戦に参加しているのだ。
アザゼル先生が言う。
「相手は過激武闘ゴリラ集団。念のため、ヴァーリも呼ばせてもらった」
ゴリラ相手に二天龍揃えちゃったよ、この人。
つーか、ヴァーリの奴も良く来たよな!
やっぱり、この世界のゴリラってそれだけの存在なの?
バトルマニアのヴァーリが喜んで来る程の存在なの?
黒歌がうんざりした顔で言う。
「私は嫌だって言ったんだけどねー」
「そうなのか?」
「だって、相手はあのゴリラ集団よ?」
「ゴメン、俺の認識不足なんだけど………そんな当然そうな顔で言われても困る」
「赤龍帝ちんはゴリラとやり合ったことないのかにゃ?」
「ない。そもそも動物園でしか見たことねーよ」
「そっか。それじゃあ、しょうがないにゃん。………健闘を祈るわ」
「ちょっと黒歌さん? なにその顔? なに可哀想な顔で俺のこと見てるの? やめてくんない、その顔。反応に困るから」
すると、美猴もまた心底嫌そうな表情で言った。
「マジで帰りてぇ………。だって、ゴリラだぜぃ? マジで帰りてぇよ」
「うん、その反応もう良いから。とりあえず、おまえ達が嫌そうにしてる理由を教えてくれよ」
「聞いてるだろ? 奴ら、自分のウ○コを投げつけて来るんだぜ?」
「ま、まぁ、そうらしいけど………」
確かに顔面スパーキングは嫌だけど、魔法で防げるだろ?
避けることも出来るだろうし。
バラキエルさんは不意討ちでやられたみたいだけど、連携とれば、その辺りは何とか出来そうな気がするんだが………。
美猴がやれやれと言う。
「悪いことは言わねぇ。油断はしない方がいいぜぃ? 赤龍帝が知ってるゴリラとは別物………別ゴリラだからねぃ」
「お、おう」
美猴と黒歌がここまで言うってことは、俺の想像以上に裏の世界のゴリラはヤバいのか?
いや、グリゴリ幹部にスパーキングしてる時点で実力者なのは間違いないのだろうけど………。
二人から感じられるのはもっとこう………別の感情で………。
そんなやり取りをしながら、俺達はジャングルの中へと進んでいく。
周囲を警戒しながら、移動していくのだが………。
「全く襲撃がないというのも不気味ね」
リアスが辺りを見渡しながらそう呟いた。
移動し始めてから十分程。
ここまで敵襲もなければ、罠もない。
あったのはバナナの皮くらいだ。
ヴァーリが言う。
「この辺りの島はバナナの種類が多く、約百種類のバナナがあるらしい。あの組織がここを根城にしたのはそういう理由からだろう」
本能に任せただけじゃん!
ただ本能に任せてバナナが多い島を選んだだけじゃん!
つーか、おまえの口からそんな考察は聞きたくなかったよ!
そんなツッコミをしながら、更に進むこと数分。
俺達が辿り着いたのはジャングルのど真ん中。
そこには巨大な石造りの建造物があった。
全体はピラミッドのような形をしており、正面には頂上へと繋がる階段がある。
階段の上へと視線を送ると、そこには一つの影が見えた。
「なんだ、あいつは………ッ!?」
その者から感じられる凄まじい圧力。
並の使い手じゃないのは明らかだ。
その者は魔王が身に付けるような装飾が施された衣装を身に纏っており、手には長い杖を持っていた。
そして―――――ゴリラだった。
イサオさんが言う。
「ウホッ(訳:奴が現
その名は――――――
「ウホホ(訳:魔教皇ビチグソ丸だ)」
イグニス「私はイッセーのバナナを―――――」
イッセー「ストーップ! それ以上は言わせねぇよ!?」