ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
「それじゃあ、私の自己紹介を始めようかしら」
そう言うとイグニスはビシッとポーズを決めて高らかに名乗りをあげた。
「我が名はイグニス! アスト・アーデの女神にして、エロを極めし者! おっぱいドラゴン関連商品の開発に携わる者!」
「いや、もう少しまともな自己紹介してくれませんかね!?」
「女の子のおっぱいを揉み揉みする者! そして、女の子を美味しくいただく者!」
「まだ続いてたの!? つーか、おまえの欲望語っただけじゃねーか!」
女の子のおっぱいを揉み揉みして、美味しくいただくって………美羽達に手を出してないよね!?
食べられてないよね、俺のお嫁さん達!?
なんだ、その顔は!?
この駄女神怖いんですけど!
俺は目元を抑えながら、こちらの世界のオカ研メンバーにイグニスの紹介をする。
「………というわけで、こいつはイグニス。今言ったように異世界アスト・アーデの女神で、今は俺が持つ剣『イグニス』として一緒に生活してる」
リアスが困惑顔で訊いてくる。
「………彼女の名乗りにあった他の内容が気になるのだけど」
「………すいません、そこはそっとしておいてください。そこについて話始めるととんでもないことが起きそうな気がして………」
「そ、そう。なら、聞かなかったことにしておくわ」
「………ありがとう」
深く息を吐く俺。
ここに来るまでにもう心身共にボロボロなのに、駄女神の登場で色々限界なんですけど。
人を紹介するだけで、こんなに疲れるのって普通はないと思うんだ。
疲れ果てたというオーラが体から滲み出ていたのだろう、他のメンバーから労りの声がかけられてきた。
「えっと………お疲れ様です、ハタチさん! 事情はよく分かりましたよ!」
「そ、そうだわ! あなたはもう十分すぎるほど頑張ったわよ、ハタチさん!」
「状況的に仕方がなかったとは言え、申し訳なかったな、ハタチさん」
アーシア、イリナ、ゼノヴィア………!
「ハタチさん! すいませんでしたぁ!」
「変質者なんて言ってしまって申し訳ありませんでした、ハタチさん」
ギャスパー、木場………!
「うふふ、手荒になってごめんなさいね、ハタチさん」
「………下着泥棒と疑ってすいませんでした、ハタチさん」
朱乃、小猫ちゃん………!
「俺とそっくりで皆を騙しにきたのかなって思ってしまったんですけど………事情も知らずにすいませんでした、ハタチさん」
こちらの世界の俺もそう言って頭を下げてきた。
皆の申し訳ないと想う気持ちはよく伝わった。
あの状況なら仕方がないと俺だって思うさ。
それに自分と同じ顔の奴がいたのなら混乱もしてしまうだろう。
でもね、一つだけいいかな?
「俺の呼び方、『ハタチさん』で決定なの!? 呼ばれる度に心が折れそうになるんですけど!」
呼ぶ度にハタチハタチって………嫌がらせ以外のなにものでもないんですけど!
人の心をぶち壊してそんなに楽しいのか、おまえら!
呼び方について抗議する俺にイグニスがやれやれといった表情で言う。
「仕方ないじゃない。皆で話し合って決めた結果なんだから」
「そこに俺の意見は含まれてないよね!?」
「だって、皆が呼ぶんだし、皆が決めた方が良いでしょ? それに、こっちの世界にもイッセーがいる以上、呼びやすい名前かつ似た呼び名じゃない方が良いでしょう?」
「それは分かるけど、少しは俺の意見を取り入れてくれても良いじゃん! 完全にスルーしてただろが! つーか、挙がった候補も酷すぎるだろ!?」
こちらの世界での俺の呼び方を決める際、皆の案をホワイトボードに挙げて、多数決で決めていた。
案はいくつもあったのだが―――――その内容はあまりに酷すぎた。
1. 『パンツネーター』
2. 『コカンノルド・パンツェネガー』
3. 『変態仮面』
4. 『パンツヘッド』
5.『赤きパンツの帝王(略:赤パン
6. 『パンツ100%』
7. 『安心しないでください、はいてませんよ』
8. 『フルフロンタル』
9. 『見せてもらおうか、新しいパンツの性能とやらを』
10.『はかなければ、どうということはない!』
11.『ハタチ』
「テメェら、人の呼び方考える気、全くねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どいつもこいつもパンツばっかじゃねぇか!
なんだ、このパンツへの執着は!?
木場が言う。
「最初の印象かなって………」
「あーそうだね! 最初の印象ならパンツor全裸だもんな! それにしても引っ張られ過ぎだろ!? 誰だ2番考えたやつ! 偉い人から怒られるぞ!」
「それは私だ」
「ゼノヴィアだったんかいぃぃぃぃぃぃ!」
「アザゼル先生の後に続いたつもりだったんだが、ダメだったのか?」
ダメだよ!
思いっきりアウトだよ!
おまえから、こんな呼び名が考えられるとは思いませんでした!
消せ!
俺達が偉い人から消される前に消せ!
「7番と9番と10番に関しては完全にセリフだよね!? 呼び名じゃないよね!? なに6番と8番から続けようとしてるの!?」
「あ、8番は僕ですぅ」
「ギャスパーかよ!」
「オシャレかなって………」
「オシャレというかパクりなんだが!? つーか、オシャレに言ったとしても結局全裸じゃん! 俺、スッポンポンじゃん! それから、10番! どうということあるよ! 致命的だよ!」
「あ、それ私だわ」
「イリナ!? おまえもホンット、エロ天使だな!」
「酷いんですけど!? というか、『も』ってどいういうこと!?」
そのまんまの意味だよ!
胸に手を当てて自分に聞いてみろい!
激しいツッコミで息を乱した俺は頭を抱えた。
どうしてこうなった?
なんで、俺はこんなにも連続でツッコミをする羽目になった?
駄女神の影響か?
駄女神によって、この世界のシリアスは全て破壊されたんじゃあるまいな?
あり得そうで怖いんだが………。
とにかくだ!
「もう少しマシな名前考えてくんない!?」
バンッと机を叩いて言う俺に、皆は腕を組んで「うーん」と唸り始めた。
確かにこの候補の中では『ハタチ』が一番マシだろう
だけどね、呼ばれると泣きそうになるんだ。
さっきも、こっちの俺に二十歳で高校二年生であることに引かれたところだったしな。
頼むから、俺の心を傷つけず、まともな呼び名を………!
リアスが言う。
「でも、第一印象が強すぎるのよね。パンツ100%ではダメかしら?」
そこをなんとか乗りきってくれ………!
つーか、それを考えたのリアスだったのね!
イグニスが言う。
「何かに名前をつける時って、願いを籠めてつけることが多いわよね………。そうだわ! 『パンツ』にしましょう!」
「なにも進歩してないんですけど!?」
より純度の高いパンツになっただけなんですけど!
おまえはその名にどんな願いを籠めたんだ!
「脱ぎたてのパンツを掴みたい、パンツを脱がせたい、剥ぎ取りたい………そんな願いよ」
「それ、願いじゃなくて欲望!」
「仕方がないわね。それじゃあ、こんなのはどうかしら」
キュッキュッとホワイトボードの上にマーカーを走らせていくイグニス。
そこには―――――
パンツパンツ洗濯済みのアーシアのパンツはお花の香りを全裸イッセーが被ってパンツネーターコカンノルド=パンツェネガーアイルビーバック変態仮面とパンツヘッドは安心しないでくださいはいてませんよフルフロンタルは全裸の意見せてもらおうか新しいパンツの性能はかなければどうということはないけど掴みたい脱がせたい剥ぎ取りたいそれがこの人パンツ丸(ハタチ)
「長ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇよッッッ!」
俺は天を仰ぐようにツッコミを叫ぶ!
過去最も長いツッコミだった!
そんな俺をイグニスが嗜める。
「もう、ツッコミが長すぎるわ。文字数稼ぎと思われたらどうするの?」
「おまえには言われたくねぇよ! どんだけ長い名前考えてんだ!? 寿限無みたいになってんだろうが!」
「皆の願いを籠めてみたの」
「願い最後しか籠ってないだろ!? つーか、パンツばっかりだし! しかも、ハタチもそのまま入ってるし!」
「イッセーの特徴だすなら必須かなって」
「そこを特徴として捉えないでもらえますかね!?」
そもそもこんなくそ長い呼び名覚えられるか!
奇跡的に覚えられたとしても、どれだけ時間かかると思ってんだ!
文字数稼ぎどころの話じゃなくなるからね!?
すると、小猫ちゃんが言ってきた。
「落ち着いてください、『パンツパンツ洗濯済みのアーシアのパンツはお花の香りを全裸イッセーが被ってパンツネーターコカンノルド=パンツェネガーアイルビーバック変態仮面とパンツヘッドは安心しないでくださいはいてませんよフルフロンタルは全裸の意見せてもらおうか新しいパンツの性能はかなければどうということはないけど掴みたい脱がせたい剥ぎ取りたいそれがこの人パンツ丸(ハタチ)』さん」
「この数分の間に完全暗記しただと!?」
マジでか、小猫ちゃん!
よく覚えられたな!?
木場も続く。
「アハハ………まぁ、なんとかだけどね? 『パンツパンツ洗濯済みのアーシアのパンツはお花の香りを全裸イッセーが被ってパンツネーターコカンノルド=パンツェネガーアイルビーバック変態仮面とパンツヘッドは安心しないでくださいはいてませんよフルフロンタルは全裸の意見せてもらおうか新しいパンツの性能はかなければどうということはないけど掴みたい脱がせたい剥ぎ取りたいそれがこの人パンツ丸(ハタチ)』さん」
「なんでおまえまで完璧に暗記してんだぁぁぁぁぁぁ!?」
ツッコめ!
こっちの世界の木場はダメだ!
ツッコミがなっちゃいない!
俺の世界の木場なら凄まじい数のツッコミを入れてるはずだよ!
ツッコミに息を切らす俺。
そんな俺の肩にこちらの世界の俺が苦笑しながら言ってきた。
「そんなに頑張らなくてもいけますって。えーと……パンツパンツアーシアの………パンツハタチさん!」
「言えてねーよ! ほとんど出だしで転んでんじゃねぇか! 見栄張らなくていいんだよ、こんなところで!」
「すいません、イケメンに負けたくなくて………!」
「いや、パンツ連呼した時点でイケメンもくそもないからね!?」
どこで見栄を張ろうとしてんの、こっちの俺は!?
いや、顔で負けてる以上、他で勝ちたいのは分かるけども!
そこは共感できるけども!
あぁ………もう疲れた。
もうどうでも良くなってきた。
「もう………『ハタチさん』で良いです」
全てを諦めた俺はこの世界の皆+駄女神に敗北した。
「あ、あの………すいません」
ここでこちらの世界のロセが手を挙げた。
そういえば、さっきから何も発言してなかったな。
俺の呼び方を考えるときもロセだけ案を出してないし、完全に上の空って感じだったしな。
ロセは言葉を詰まらせながらも、俺に聞いてきた。
「さ、さっき、そちらのイッセー君とリアスさんがその………しちゃった時の話なんですけど。………わ、私の名前があったのは………気のせいでしょうか?」
あ………イグニスのやつ、その辺りも包み隠さず話してたな。
その時からロセが硬直していたような………。
それを聞いたイグニスがどういう意味か、ロセにブイサインを送る。
「ウフフ、私達の世界のロスヴァイセちゃんも既に大人の仲間入りよ♪ というか、かなりエッチな先生になっちゃったかも」
フリーズするロセ。
そして―――――。
「えええええええええええええええええええっ!?」
暫くの間、ロセはパニックに陥った。