ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
………タイトルが浮かばなかったんです
極寒の中での戦いを何とか終わらせた俺は、平行世界と思われるこの世界のリアス達と話し合うため、場所を移すことにした。
案内されたのは駒王学園旧校舎にあるオカルト研究部部室だった。
部屋の装飾から、家具のデザインなども含め俺が見知っているものと相違ない。
どうやら、この辺りは俺がいた世界と変わらないようだな。
俺はリアスに言う。
「話を聞く気になってくれて助かったよ。あのままやりあっていたら不味かっただろうし」
「ええ。こちらとしても争わずに話し合いで解決できるなら、それに越したことはないわ」
「そうだな。ただ………その、少し質問していいか?」
「なにかしら?」
「この拘束はどーいうこと?」
俺は自身に施された拘束に目をやった。
なんで―――――全裸の上から亀甲縛り!?
「イダダダダダ! 食い込んでる! 縄が股間に食い込んでるんですけど!」
粗めの縄で縛られてるから、少し体を動かすだけで擦れて痛い!
リアスが言う。
「拘束するって言ったでしょう?」
「他にも拘束方法あるだろ!?」
「そうなのだけれど………それは縛った朱乃に言ってほしいわ」
リアスにそう言われて振り向くとニコニコ顔の朱乃が背後に立っていた!
手に握っている鞭はなんなんですか、朱乃さん!
朱乃はSのオーラを滲み出しながら微笑む。
「イッセー君の偽者かもしれませんもの。私達を油断させて………ということも考えられますわ。決して逃がさぬよう念には念を、ですわ」
「「いや、ちょっと楽しんでますよね、朱乃さん!? 完全に趣味入ってますよね、朱乃さん!?」」
俺と、この世界の俺とのツッコミが重なった!
やっぱりそう思うよね!
これ、絶対に楽しんでるよね!
だって、亀甲縛りにする意味ないもの!
他にも魔力で縛るとか色々あるじゃん!
つーか、鞭の他にも火が着いたロウソクも持ち出してるんですけど!?
俺は懇願するように叫んだ。
「せめて服くらい着させてぇぇぇぇぇぇ!」
俺の叫びにリアスは、
「ダメよ。なにか隠し持っている可能性があるもの」
ゼノヴィアもうんうんと頷いて、
「そうだな。凶悪な凶器を隠しているかもしれない。油断はしないぞ」
「この状態で隠し持てる場所があると思ってるのか、バカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉ! つーか、そこの俺とそこの木場とそこのギャスパー! ツッコめ! この光景に何も思わないのか!?」
少し離れたところにいるこの世界の俺こと兵藤一誠と木場、ギャスパーに叫ぶ。
こいつら、もっとツッコめよ!
ツッコミどころ満載だよ!?
俺が知ってる木場なら、もう十回は軽くツッコんでるよ!
二人は困り顔で言う。
「個人的にはそう思うんだけど………俺達にはどうすることも出来ないよな」
「あの状態の朱乃さんは止まらないからね」
「僕にはそんなの無理ですぅ!」
諦めたよ!
そうですか、ドSモードの朱乃は君達の手にはおえませんか!
えぇい、なんて軟弱なツッコミ精神だ!
俺が鍛え直してくれるわ!
すると、アーシアが恐る恐るこちらに歩み寄ってきた。
その手には小さなタオルが握られていて、
「あ、あの………せめてこれだけでも使ってください」
そう言って、アーシアはタオルをかけてくれた………股間に。
………なんかもう色々と泣けてくるな。
リアスが言う。
「それじゃあ、あなたの事情を話してもらおうかしら」
「えーと………この状態で話しを進めるの?」
こちらの世界の俺の問いにリアスは冷静に返す。
「イッセー。あなたの言いたいことも分かるわ。だけど、彼はテロリストかもしれない。この町の結界を潜り抜けるだけでなく、あなたの姿をしているの。ゼノヴィアの言う通り油断は禁物。どんな状態であろうとも、最も安全な方法で事情聴取を行うわ。さぁ、話してもらおうかしら。なぜ―――――アーシアの下着を持っていたのかを!」
「そこぉぉぉぉぉぉぉ!?」
ちょっと待とうか!
この流れは俺がどうして、この世界に来たのかじゃないの!?
リアスはそれはもうお怒りの様子で言ってきた。
「アーシアは妹同然の存在なの。大切なアーシアの下着を盗むなんて、あなたが何者であっても許されることではないわ!」
「そうだ! おまえが敵だろうが味方だろうが、俺の大切なアーシアのパンツを盗んだのだけは絶対に許さねぇ! 正直に白状しろ、おまえはいつ、どこでアーシアのパンツを盗んだんだ!」
おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!
こっちの俺までそっち側に回っちゃったよ!
君達、俺の目的とかそんなのそっちのけで、アーシアのパンツの方が重要事項なんだね!
まぁ、俺もアーシアのパンツを盗まれたらそうなるかもだけどさ!
………ちなみに俺が頭に被っていたアーシアのパンツは、ここに来るまでにリアス達に取り上げられ、今はアーシアが持っている。
俺はその件に関して、全力で抗議した。
「だーかーらー! そのアーシアのパンツは盗んだんじゃなくて、アーシア本人から渡されたって、さっきも言っただろ!?」
「わ、私がですか!? 私、そんなことしてません!」
「違うんだ、アーシア! アーシアじゃなくて、俺の世界のアーシアが―――――って、余計に混乱するだけじゃねぇか! まずは俺に喋らせろぉぉぉぉぉぉぉ! ちゃんと順を追って説明するから! あと、アーシアちゃん! そのパンツ返して!」
「そ、そんなに私のパンツが欲しいのですか!?」
「おまえ、アーシアになんてことを!」
「なんて人なの! アーシアのパンツにそれだけの執着を!?」
「アーシアさんのパンツは渡さないわ!」
「いや、そうじゃなくて! そのパンツ、アーシア本人に返さないとダメなんだって!」
「アーシアはここにいるだろ!?」
「いやいや、だから、そのアーシアのパンツは俺の世界の―――――」
「あなた達! パンツパンツ連呼するんじゃありません! 先生、そういうの許しませんよ!」
ロスヴァイセ先生からのお説教だった。
それから俺達は『アーシアのパンツ』という単語を連呼しながら、今回の事態における話を進めていった―――――
▽
「あなたの世界のアザゼルが作ったタイムマシンで平行世界である私達の世界に来てしまった。にわかには信じがたい話だけれど………ここは信じるしかないのかしら?」
一通りの事情を聞き終えたリアスは顎に手を当てて深く頷いた。
ああ………ようやく説明できた。
俺、頑張ったよ。
亀甲縛りされた上に今回の事情説明からアーシアのパンツ論争。
もうね、全身に縄が食い込みすぎてヤバいことになってるからね?
こっちの世界の俺がリアスに問う。
「本当に信じても良いんですか? こいつが嘘を言っているということは?」
「私達は実際に彼の持つ赤龍帝の籠手を見てしまっているもの。それもユーグリット・ルキフグスが使っていたような紛い物ではなく、赤龍帝ドライグが宿る本物をね。ドライグの魂まで複製することは不可能。ということは彼は正真正銘の赤龍帝。ということは本当に、彼は平行世界から来たイッセーになると思うのだけれど。………あぁ、頭がこんがらがってくるわね」
深く息を吐くリアス。
改めて状況を整理したけど、余計に分からなくなったって感じかな?
まぁ、いきなり平行世界から来ましたなんて言われても信じにくいか………。
すると、ここで今まで黙っていた小猫ちゃんが言った。
「私は信じても良いと思います」
「―――――っ!」
小猫ちゃんの発言に俺は目を見開いた。
小猫ちゃんが俺を庇ってくれるとは!
ゼノヴィアが小猫ちゃんに訊ねた。
「その根拠は?」
その問いに小猫ちゃんは―――――
「そのイッセー先輩、ことあるごとにリアス部長や朱乃さんの胸を見ていました。その時の目がイッセー先輩と同じでしたから」
「「「「…………」」」」
そうきたかぁ………。
確かに俺は動く度に揺れる皆のおっぱいを見ていた。
だって、そこにおっぱいがあるんだもの。
こっちの世界のドライグが訊ねてくる。
『まさか………そちらの世界でも俺は乳龍帝と呼ばれてるんじゃあるまいな?』
『………呼ばれているさ。ことあるごとに乳だの胸だのな』
静かに返すうちのドライグさん。
その瞬間、二人のドライグは全てを察したのだろう。
『『う、うぉぉぉぉぉぉん………』』
ああ、ドライグ達泣いちゃったよ。
なるほど、今の話を聞くにこっちの世界でも俺は乳龍帝おっぱいドラゴンらしいな。
と、ここでこっちの世界の俺が掴みかかってくる。
「リアスと朱乃さんのおっぱいは俺のおっぱいなんだぞ! 見るの禁止! 当然、触るのもだ!」
「仕方ないだろ!? おっぱいがなかったら俺は生きていけないんだよ! 身も心も荒れてる俺を癒してくれるのは妹かおっぱいなんだよ!」
「妹ぉ!? おまえ、妹がいるのか!?」
「いるよ! 義理だけどな! つーか、おまえ、妹いないの!?」
「いたらこんな反応しねぇよ! ちくしょう、俺も義理の妹が欲しかったよ! まさかと思うけど、『お兄ちゃん』とか呼ばれてるのか!?」
「呼ばれてるよ! 毎日な!」
「んな!? 羨ましすぎるぞ、この野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
血の涙を流して、肩を激しく揺さぶってくるこっちの俺!
ふふーんだ!
俺をこんな目に合わせた罰だ!
せいぜい羨ましがるが良いわ!
というか、地味に俺もショックだよ!
こっちの世界の俺に妹いないの!?
じゃあ、もし、俺がこの世界に生まれていたら美羽と会えていないということで………。
い、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
美羽がいない世界なんて、考えられん!
「なんで妹がいないんだよ、おまえは!」
「そんなこと俺に言われても困るんだけど!? 父さんと母さんに頼めってか!? 頼めるかそんなこと! じゃあ、逆になんで、おまえには義妹がいるんだ!」
「異世界から連れて帰った!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
目玉が飛び出そうになるほど、驚くこっちの俺。
辺りを見ると、他のメンバーまで思考を停止させて、呆然と俺を見ていた。
「異世界から、連れて帰った………? どういうことかしら?」
「かくかくしかじか、まるまるうしうし」
「なるほど………そうだったのね」
「いや、部長。今ので分かったんですか? というより、まるまるうしうしって………」
「彼は次元の渦という現象に巻き込まれて、偶然にも異世界に飛ばされたらしいわ。そこで色々あって戦っているうちに勇者と呼ばれるようになり、最後は魔王と戦い勝利。その魔王から娘を託されて、今は彼の妹になったとのことよ」
「今の説明でそこまで濃い内容が!? というか、色々と省きすぎてませんか!?」
おおっ、ついに木場がツッコミを!
やはり、こちらの世界でも木場は木場らしい!
ツッコミ要員確定だな!
リアスは続ける。
「しかも、その異世界で過ごした三年間は、元の世界では一瞬で、今は二十歳らしいわよ?」
「「「………」」」
再び止まる時間。
どうしよう、今度は皆の視線が痛いんですけど………。
こっちの俺が訊いてくる。
「あのさ、少し気になったんだけど………学年は?」
「………高二」
「………うわぁ」
「『うわぁ』ってなんだ!? んだよ、その目は!? ガチで引いてるんじゃねぇ!」
「い、いやぁ、まさか二十歳で高校生とは思わないじゃないですか。なんというか世間一般的にも………ご近所さんの目とかもありますし」
「やめろよ! 今までも色々言われてきたけど、自分に言われるのが一番傷つくんだよ!」
「ま、まぁ、俺も別の世界とは言え、自分がそんなことになってるなんて思わなくて………」
「『そんなこと』とか言うな! 戸籍上はまだ十七だからセーフなんですぅ!」
「それ、自分で言ってて悲しくなりませんか?」
「軽く消えてしまいたいくらいにはな! というか、いきなり敬語にするのはやめろ! 余計にグサッとくるから!」
なんなんだよ、もう!
なんで、俺はこんな目にあってるわけ!?
いきなりバック・トゥ・
元を辿れば、元凶はあの未婚オタク元総督。
許せん………今回のはマジで許せん。
次に会ったときは、積もりに積もったイライラと溢れに溢れ出すこの悲しみの全てをぶつけて―――――
「すまん、遅くなった。それで平行世界から来たって言うイッセーは―――――」
部屋に入ってきたアザゼル先生を見た瞬間、俺は縄を引きちぎり、
「ほわたァァァァァァ!」
「べぎらまっ!?」
飛び蹴りをくらわせた。