ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編 作:ヴァルナル
異世界帰りのイッセー、原作世界に行く………です!
1話 SF? ジャンル違くない?
ある日の放課後。
俺達オカルト研究部はアザゼル先生に呼び出しを受け、旧校舎の地下に作られたアザゼル先生の研究室に来ていた。
研究室を見渡しながらリアスが言う。
「アザゼル………あなた、また勝手にこんな場所を旧校舎に………」
「まぁ、固いこと言うなよ、リアス。旧校舎はオカルト研究部の管理下、そして俺はオカルト研究部の顧問だ。多少のリフォームは良いだろう?」
「職権乱用ですね………」
全く反省の気持ちが感じられないアザゼル先生の言い分に、深くため息を吐くロセ。
この研究室、実はアザゼル先生が勝手に、無断で、いつの間にか作っていたんだ。
何かを計測するであろう機器から、棚にびっしり並べられた薬品、ドライバーやドリルといった器具。
先生は多少のリフォームと言ったが………全然、多少じゃない。
大改造されてるよ、これ。
ビフォーアフターも甚だしいからね、これ。
アザゼル先生の行動力(?)に俺達が呆れていると、レイナが先生に訊いた。
「アザゼル様………ここのリフォーム代はどこから出したのでしょうか?」
ニッコリと微笑むレイナ。
でもね、滅茶苦茶迫力があるんですけど………。
背後に『ゴゴゴゴゴ………』っていうのが見えるんだけど………。
レイナの迫力に推されながらも、アザゼル先生は慌てて言った。
「お、おおお落ち着け! し、心配するな、一応は俺のポケットマネーから出してるから………って、信用してないな、その目は!?」
「信用? いつ、どこで、信用できたことがありましたか? 気づけばサボってるし、いつの間にかグリゴリの資金で変なロボット作ってるし。私の苦労、分かってくれてますよね? これ以上、好き勝手にするようでしたら、私、何するか分かりませんよ? 本当にどうなっても知りませんよ?」
虚ろな瞳で迫るレイナ!
怖いよ、怖すぎる!
何をするつもりなんだ!?
というか、病んでませんか!?
どれだけストレス溜め込んでいるんだ、レイナちゃん!?
あまりの迫力に俺の後ろでは、
「レイナ先輩、怖いですぅ!」
ギャスパーが俺の服を掴んでブルブル震えていた。
こいつ、俺を盾にしてやがる!
吸血鬼の町で見せてくれたあの勇ましさはどこに行った!?
と、ここで朱乃が前に出た。
「まぁまぁ、レイナちゃんも落ち着きましょう。もう過ぎてしまったものは仕方ありませんわ」
レイナを宥める朱乃。
自分を庇ってくれたことに感動したのか、先生は口元を抑えて、
「あ、朱乃………! おまえ、俺を庇って………! 信じていたぞ、おまえはきっと俺のこと信じて―――――」
先生がそこまで言いかけた時だった。
いつもの優しい微笑みから一転、朱乃は目を細めて、
「このことは父さまにも伝えておきます。少なくとも勝手に旧校舎を改築したことは怒られてもしかたありませんわよね?」
「朱乃ぉぉぉぉぉ! おまえもそっちかよ! つーか、バラキエルにチクるのは止めろぉぉぉぉぉ!」
………うん、やっぱり先生には厳しいな。
▽
「コホン! ま、まぁ、あれだ。この研究室のことは置いておいてだ。今日、おまえ達を呼んだのは俺の発明品を見てもらいたいからだ………って、なんだよ、その目は」
気を取り直して本題に入る先生だったが、先生の言葉に俺達は微妙な反応を見せていた。
発明品を見てほしい………か。
正直、嫌な予感しかしないんだよなぁ。
こういうパターンで見せられる発明品に良い思い出がない。
特に俺は性転換銃という黒歴史が………(女性陣は喜んでいたけど)
全然テンションの上がらない俺達に先生は舌打ちする。
「ちっ、ノリが悪い奴らだ。だが、こいつを見れば、その反応も変わるだろうぜ。なんせ、今回の発明品は超大発明、おまえ達は歴史的瞬間を見ることになるんだからな」
歴史的瞬間………?
なんだ?
俺は半目で先生に訊いた。
「また全自動卵かけご飯製造機とかじゃないでしょうね?」
「ちげーよ。まぁ、あれも大発明には違いないが」
「否定しろよ!? あれのどこが大発明!?」
「大発明だろうが。………人工神器の技術を応用して、卵の白身を取り除き、絶妙な加減の醤油を抽出する。そして、それらをホカホカのご飯へ。最高最強の卵かけご飯が誰でも気軽に作れる夢のマシーンだ」
「気軽じゃねーよ! 卵かけご飯に技術使いすぎだろ!?」
つーか、人工神器の技術をどこに使ってるんだよ!
もっと他に応用できるところがあるだろ!?
すると、俺の横で小猫ちゃんが、
「………最高最強の卵かけご飯。ゴクリ」
小猫ちゃんが卵かけご飯に興味を引かれているぅぅぅ!
涎出てるよ、小猫ちゃん!
どれだけ牽かれてるんだ!
俺のツッコミが続くなか、先生が研究室の奥にある倉庫から何かを持ってくる。
白い布に覆われているので、シルエットが何かは分からないが、大きさはかなりのものだ。
先生は布に手をかけると、
「さぁ、世紀の発明を見せてやるぜ!」
先生が布を取り除き、覆われていたものが姿を現す。
そこにあったのは―――――。
「車………?」
リアスがそう呟いた。
そう、先生が見せてくれたのは車だった。
しかし、先生が俺に作ってくれたバイクのような近未来的なフォルムではなく、最近のものよりも少し古めのデザインだ。
シルバーの車体の後方には配線剥き出しの装置が取り付けられており、ブースターらしきものもある。
この形、どっかで見たことあるんですけど。
あれだよね、これ。
あの映画で有名な奴だよね?
俺は車を指差して言った。
「先生、これ………デロ
「違う、アザリアンだ」
「どんな名前!? どう見ても、デロ
「違う。バック・トゥ・
「見たよね!? 絶対にそうだよね!?」
「しつけーな、誰もブラウン博士とか知らねーよ。ちなみにこいつはガルウィングだ」
そう言って、先生は車のドアを開く。
ドアは一般の車とは違い、縦に開いていた。
先生は車のボンネットを叩いて自慢気に言った。
「聞いて驚け、こいつはな―――――タイムマシンだ!」
「いや、もう丸分かりなんですけど。それ以外だったら逆に驚きますよ」
他のメンバーもうんうんと頷いていた。
どうやら、俺と同意見だったらしい。
しかし―――――。
リアスが少し興奮ぎみに言った。
「タイムマシン! 本当にこれがそうなの!?」
アザゼル先生が頷く。
「おうよ。ここまで形にするのに苦労したぜ。アスト・アーデに行ったときに色々と文献を見せてもらってな。古い文献の中に使えそうなものがあったのさ」
その言葉にアリスが反応した。
「えっ、そんなのあったの?」
「まぁ、かなり古いものだったしな。それに机上の空論で実際は難しいとされていたものらしい。だが、俺がこれまでに蓄えていた技術を応用すれば何とかなると思って作ってみたのさ。つまり、このタイムマシンは二つの世界の技術の合作と言っても良い」
マジか。
つまり、あの世界から帰ってからずっとタイムマシンの製作に着手していたわけね。
タイムマシンなんてものを本当に作ってしまうとは流石というべきか、何と言うべきか………。
木場が苦笑しながら言う。
「凄いんだけど………ファンタジーな存在のアザゼル先生がSFって、変な感じだよね」
「それは思った」
堕天使のアザゼル先生がタイムマシンを作る。
もう少し世界観を考えてほしいものだ。
いや、オカルト研究部的にはOKなのか?
SFってオカルトの範囲なのかは知らないけど。
小猫ちゃんが先生に問う。
「本当に動くんですか?」
すると、アザゼル先生は少し困り顔で言った。
「実はな………そこなんだよ。動くことには動く。中にロボットを乗せて試運転したところ、過去に戻り、無事に帰ってきた」
試運転をロボットでしたって………。
この人、本当に聖書に記された堕天使なんだよね?
SF出身の人じゃないんだよね?
しかし、と先生は続ける。
「だが、遡れる時間が限られているのと、一回の使用にかなりのエネルギーが必要でな。ぶっちゃけ、何度も使う予算がない」
「ぶっちゃけましたね………。遡れる時間はどれくらいなんですか?」
「大体、一週間から二週間ってところだ。今の技術ではそこが限界なのさ」
なるほど、遠い過去は無理だけど、それくらいなら遡れるってことか。
だけど、それでも凄いことだと思う。
ふむふむと感心していると、アザゼル先生がニッと笑んだ。
「おっ、イッセー。興味津々って感じだな」
「そうですね。タイムマシンって、誰もが一度は憧れるものだと思いますし。俺も小さい頃はアニメ見ながら欲しいと思ってましたよ」
「そうだろう? タイムマシンってのは男の憧れだよな? どうだ、乗ってみたいか? 今なら過去旅行がタダで出来るぜ?」
「良いんですか?」
俺が聞き返すと先生は頷いた。
「ま、正直なところ、実際に人を乗せたことが無くてな。誰かで試してデータを取りたかったというのはある」
「あ、人は乗せてないんですね」
「頼める奴がいなくてなぁ。おまえ達を呼んだのは、こいつに乗って欲しかったというのが本音だ」
「教え子を実験台にしようとしてたのかよ!」
「まーまー、落ち着けよ。一応、試運転は成功してるんだって。いわば、こいつは最終テストみたいなもんだ。危険もないし、無事に戻ってこられるって。多分」
「多分って言ったよ、この人! つーか、なに、勝手に乗せてるんですか!? え、俺確定なの!? 俺が実験台確定なの!?」
「そりゃあな。おまえ、愛しの美羽達が犠牲になっても良いのか?」
「犠牲!? 犠牲が出るの!? そんなの美羽達にやらせられるか!」
「だろ? じゃあ、おまえで決まりだ」
「いやいやいや、あんたがやれよ! この未婚オタク元総督!」
「このやろ、言いやがったな!? もうおまえで決まりだ! フハハハ! もう発動スイッチは押したぞ! もう誰にも止められん!」
悪役みたいな台詞言ってるし!
車型のタイムマシン―――――アザリアンにエンジンがかかり、振動する。
すると、目の前にあった壁が開き、長い通路が現れた。
これって―――――。
「カタパルトデッキじゃねぇか! あんた、この旧校舎をどれだけ弄くった!? というか、どこに射出されるの、これ!?」
「そうだな………遠い過去、までかな」
「そんな純粋そうな目をして語るんじゃない!」
さ、最悪だ!
このまま、訳もわからずに発車されるの、俺!?
シートベルトで椅子にくくりつけられてるし、このシートベルト外れないし!
誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!
「イッセーさん!」
心の声が通じたのかアーシアが駆け寄ってくる。
アーシアは涙目になって、アザリアンの窓から俺の手を取った。
「イッセーさん、私にはどうすることも出来ません………だから、せめてお守りを持っててください!」
「いや、アーシアちゃん。お守りよりも、ここから救いだしてほしいんだけど………って、これなに?」
アーシアが握った俺の手に、何か布のようなものが渡されていた。
お守りとか言ってたけど、なんだこれ?
怪訝に思いながら、広げてみるとそれは―――――パンツだった。
間違いない、これはアーシアのパンツだ!
「なんで、パンツ!?」
「その………ファーブニルさんが教えてくれたんです」
―――――アーシアたんのパンツ、最高のお宝。どんなものよりも価値がある絶対のお守り。これさえあれば、どんなピンチだって乗り越えられる。
「あんの変態龍王ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 俺のアーシアちゃんに何を教えてるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
確かにアーシアちゃんのパンツはお宝だ!
金髪美少女シスターのパンツなんて清すぎて、聖遺物よりも聖遺物だ!
でもね、この状況で貰っても役に立たないんですよ!
誰か教えてくれよ!
俺はアーシアちゃんのパンツをどう使えば良いんだ!
アザゼル先生が時計を見ながら言う。
「それじゃあ、発進させるぞ」
「マジで!? これで行くの!? 俺、無理矢理、乗せられてパンツ貰っただけなんですけど!?」
「イッセー………健闘を祈る」
「なんの健闘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺のツッコミが届いたのかは分からない。
それでも、アザリアンは発信した。
▽
青白い光に呑まれた俺。
見たこともない光景を見ながら進んでいくと―――――暗闇の中に放り出された。
「ゲホッゲホッ! んだよ、これ!?」
シュゥゥゥ………と辺りには煙が立ち込め、スパークが舞っている。
タイムマシンは成功したのだろうか?
過去に送り出されたらしいけど、俺は無事に過去に来ることができたのだろうか?
過去に来られたとしても、俺は戻ることが出来るのだろうか?
色々と疑問があるし、とりあえずアザゼル先生を殴りたい気持ちはある。
でもね、その前に叫んで良い?
今気づいたんだけど、俺―――――全裸だったんだ。
いつの間にか全裸で片膝立ちしてたんだよね。
「バック・トゥ・
なんで全裸!?
なんでそんな仕様にしてるの!?
俺の服、マジでどこいった!?
あと、なんで片膝立ち!?
「ん? 何か、手に―――――」
手に何か感じた俺は掌を見下ろした。
そこに握られていたのはアーシアちゃんのパンツだった。
「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんで、アーシアのパンツだけしっかり持ってきてるんだよ! 俺の服は!?」
こんなのどうしろって言うんだ!
酷過ぎる!
やりきれない気持ちとツッコミをせずにいられない俺は地面を何度も踏んでその気持ちを発散させようとする。
そこへ―――――。
「何者なの!」
暗闇に響く女性の声。
振り向けば、そこからは月明かりが差している。
そして、いくつかの影を見つけた。
見覚えのある集団とその先頭には紅髪の女性―――――。
「凄まじい波動を感知したわ。あなた、この駒王町に何の用があるのかしら? こうしてこの場所に現れた理由を聞かせてもらうわ。もし、あなたがこの町に害を成そうとするなら―――――」
紅髪の女性―――――リアス・グレモリーは凛とした表情で俺に告げた。
「グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばすわ」
………ヤバい!
色々な意味で………ヤバい!
ダダンダンダダン………ダダンダンダダン………