ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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Mr. エメトさん、ごめんなさい…………!
やっちまいましたぁぁぁぁぁぁぁ!



異形なる天使 ⅩⅡ

《ユルサヌ………ミトメヌ…………。キサマラアクマゴトキワレラガ、ケシテクレル。ワレラヨンダイテンシハヒトツトナリテキサマラヲメッシヨウ》

 

黒い、どこまでも黒一色の瞳。

憎悪と怒り。

どす黒い感情が渦巻く瞳は俺と鋼弥を捉えていた。

 

この底冷えするような感覚………!

最後の最後でとんでもねぇやつが出てきやがった!

 

しかも、こいつから感じられる気は…………。

 

「ラファエル、ウリエル、ガブリエル、そしてミカエル。四人の天使が融合したのか! なんてしぶとい………いや、執念か? 千年王国建設に対する執念。それを阻む俺達への怒りがこいつらが一つになった理由………か?」

 

鋼弥が驚愕すると共に考察を述べる。

 

執念…………。

確かにそうかもしれない。

 

こいつらの千年王国とやらへの執念は異常だ。

自分達の神を信仰する者達を迎え入れて、それ以外を始末するという狂気としか思えない国の建設。

唯一神が滅んでも自分たちが代わりに執行するという性質の悪い考えもそうだけど、ここまでくるとその神を無視して暴走しているとしか思えない。

 

狂気の塊、その全てが俺達へと向けられる。

 

《オォォォォォォォォォォォォッ!!!!!》

 

四大天使の融合体から凄まじいオーラが吹き荒れる!

あまりの圧力に吹き飛ばされそうになる!

 

俺と鋼弥は何とかして踏ん張るが、後ろにいた機械天使達は耐えきれず、吹き飛ばされていった!

 

ドルキーが叫ぶ。

 

「あの野郎、敵味方関係なしか!」

 

「おそらく、彼らに仇なす敵………私達を排除するためには手段を選ばないということでしょう! しかし、この力はあまりに禍々しい………!」

 

フィーナさんもこの圧力に耐えながら、叫んだ。

 

咆哮が止み、嵐が止まると目の前の異形は禍々しいどす黒いオーラをたぎらせていた。

 

軋むような音を出しながら、背中に生えた四本の腕が動き出す。

それぞれの手に闇が集まり、それは槍となった。

俺達の身長を遥かに越える長大な剛槍だ。

 

筋肉の繊維のようなものが剥き出しの腕で異形の天使は剛槍をくるくると軽々しく回す。

それだけで地面が抉れ、壁にヒビが入った。

 

異形の天使が不気味な声を発する。

 

《ワレハメルカバー。カミノセンシャトナリテ、ナンジラヲハイジョスル。―――――ワレラニアダナスモノ、ホロブベシ》

 

異形の天使―――――神の戦車、メルカバーとやらが腰を屈める。

 

その瞬間、奴の姿が消えた!

 

「ぐはっ!」

 

後ろから悲鳴が聞こえる。

 

振り替えるとドルキーが壁に叩きつけられていた!

 

なんだ今のスピードは!?

全く見えなかった!

 

メルカバーがドルキーの首を掴み、その手に力を入れ始める!

あの野郎、そのまま首を折る気か!

 

「そのバカを離しやがれぇぇぇぇっ!」

 

望紅さんが拳に炎を纏ってメルカバーを殴り付ける!

 

彼女の全力、食らえば大抵の奴は吹き飛ぶ程の威力なのは見て分かる。

 

しかし、メルカバーは何事も無かったかのように、まるで虫でも見るかのような目で望紅さんに視線を移す。

 

《ゲセンナモノメ、ワレニフレルナ》

 

「っ! ………ガッ!」

 

メルカバーはドルキーの体を振り回して、望紅さんに叩きつける!

二人は宙でもつれ合いながら、反対側の壁に激突した!

 

二人は崩れるようにその場に倒れ伏してしまう!

 

一撃かよ………!

 

「ちぃっ! とんだ化け物が出てきたもんだぜ! あー、クソッ! ファーブニルとの契約切らなきゃ良かったぜ!」

 

アザゼル先生が空に無数の光の槍を展開する。

堕天使総督の全力の攻撃が動きを止めるメルカバーへと降り注ぐ!

 

周囲ごと破壊する体規模な光の攻撃!

 

普通ならこれで消し飛ぶが…………。

 

「総攻撃だ! 俺だけじゃ倒しきれん!」

 

先生の声に応じて、全員が攻撃を仕掛ける。

 

滅びの魔力、雷光、魔法のフルバースト、飛ぶ斬戟、気弾がメルカバーへと襲い掛かる。

 

「ドラゴンの力を解放するわ!」

 

カナンさんがそう叫ぶと、彼女の体から強いドラゴンのオーラが噴き出した!

もしやとは思ってたけど、カナンさんはドラゴンの力を宿していたのか!

 

カナンさんら息を大きく吸うと、口を開き―――――

 

「ドラゴンブレスッ!」

 

青白い炎が吐き出された!

吐き出された炎は未だ総攻撃に曝されるメルカバーに直撃する!

地面が大きく抉れ、メルカバーの背後にあった壁が難なく破壊された!

 

全員の攻撃が止み、残ったのは破壊された壁の瓦礫と、巨大なクレーター。

もうもうと煙が立ち込めて、奴の姿は確認できない。

 

しかし―――――

 

「っ! 皆、後ろに飛べ! 来るぞ!」

 

俺がそう叫んだと同時にそれは起きた。

 

広間の床を囲むように巨大な火柱がいくつも立ち上がった。

そして、破壊された天井の方では触れれば切り裂かれるような吹雪が吹き荒れていた。

 

灼熱の地と極寒の空が俺達を包み込む!

 

「あいつ、あの天使共の能力の全てを持っているのか!」

 

「気を付けてください! ガブリエルの能力には―――――」

 

リオさんが警戒するように呼び掛けるが、それは間に合わない。

 

メルカバーの握る槍から螺旋状のものが出現する。

目を凝らすとそれは一つ一つが黒い文字で出来ていた。

 

そう、あれはガブリエルの能力の一つ。

 

あれに触れれば――――――。

 

「受難告知か! あれに触れたら即先頭不能になる! 絶対に触れるな!」

 

「なにそれ!? どういうことよ!?」

 

「あれに触れたら最後、体を蝕む呪いが発動する! 解除するには術者を倒すしかない! しかし、今のあいつは…………!」

 

鋼弥が険しい表情でアリスに説明する。

 

ガブリエルは何とか倒すことが出来た。

しかし、四大天使の融合体であるメルカバーはそのガブリエルよりも遥かに強い。

 

今、この場で受難告知を食らってしまうとそのメンバーを守りながら戦わないといけない。

メルカバー相手にそれは辛すぎる!

 

皆が黒い文字から逃れようと後退するが、炎の壁に阻まれ、上に飛ぼうとすれば極寒の空に退路を絶たれてしまう。

 

そして、ついに黒い文字に捕まる者が出てしまった。

 

―――――アリスが膝を着いた。

 

「な、に………これ………!? 体が………!」

 

手が震え、次第に全身がガクガクと小刻みに震え始める。

顔色も悪くなり、槍でも落としてしまった。

 

そんなアリスの元にメルカバーが歩み寄る。

 

《マズハオマエダ》

 

極太の槍を振り上げ、切っ先を倒れるアリスへと向ける!

 

させるかよ…………!

 

「てめぇの相手は俺だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

フラフラの体で天武の鎧を纏うと同時に領域(ゾーン)に突入!

俺の視界から色が消える!

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』

 

『Ignition Booster!!!!』

 

全身のブースターからオーラが爆発し、今出せる最高の加速を生み出した。

 

全身が悲鳴をあげるのを無視して、俺はアリスを庇う形でメルカバーの前に立った――――――。

 

「い、イッセー………?」

 

「お………う、無事か…………?」

 

消え入りそうな声でアリスに返す。

 

血塗れのアリス。

でも、それはアリスの血じゃない。

 

俺の血だ。

 

メルカバーの槍は鎧を砕き、俺の腹を深々と貫いていた。

 

槍が引き抜かれると、夥しい量の血が吹き出した。

 

「ゴブッ………」

 

力なく倒れてしまう俺。

 

そんな俺にメルカバーは容赦なくトドメをさそうと動き出す。

 

《キエロ、ケガレタアクマリュウ》

 

メルカバーが槍を振り下ろす。

 

しかし、俺を再び貫くことは無かった。

 

「イッセーくんはやらせないよ!」

 

「ここから先は僕達が引き受けましょう!」

 

木場とタオくんが槍を弾き、高速で仕掛けていく。

それに珠樹さん、アルスさん、フィーナさんと前衛組が続いた。

 

前衛メンバーがメルカバーの意識を俺から離している隙に鋼弥が俺とアリスを回収。

後方のアーシアの元まで運んでくれた。

 

「アーシア、こいつの回復を頼む。アリスの方は呪いが続く限り回復は見込めない。だから、ここで休ませておく」

 

「はい!」

 

鋼弥の指示でアーシアが俺を即座に回復させてくれる。

 

俺の傷が塞がったことを見届けた鋼弥は木場達と交戦するメルカバーに視線を戻す。

 

「さて、奴とどう戦うか………。この炎の壁がある限り、後退は出来ない。かといって、このまま戦うには厳しい相手。ここまでの化け物が出てくるとはな…………!」

 

自身も体力を回復させながら、有効な手を探しだす鋼弥。

 

今のままでは真正面から戦うのは辛い。

アザゼル先生もいるが、それでも厳しいだろう。

 

リアスが必殺技を放つ準備をしているが………。

この戦闘の中、あれを滅しきる程の力を溜めようと思うとリアスの限界を越えた力が必要になる。

仮に撃てたとしても、そこで倒せなければ、その後が厳しくなるか………。

 

「ここはもう一度、アルトリアを………いや、他の仲魔の力で…………」

 

鋼弥がメルカバーを睨みながら、戦況を変えるために思考を張り巡らす。

 

鋼弥がどれほどの仲魔と契約をしているか知らないから、何とも言えないところだが…………。

 

―――――仲魔?

 

待てよ…………もしかしたら…………。

 

「アーシア、俺と鋼弥の体力を出来る限り回復させてくれ。出来るか?」

 

「やってみます! 鋼弥さんもこちらへ来てください」

 

「こちらのアーシアは体力回復魔で出来るのか?」

 

「ほんの僅かですが、可能です」

 

アーシアはアスト・アーデに渡った影響なのか、傷だけでなく、僅かになら体力も回復出来るようになった。

あれからも修行を続け、回復能力を高めているアーシアなら、ある程度はいけるはず………。

 

アーシアの回復を受けながら、鋼弥は俺に訊いてくる。

 

「イッセー、何か思い付いたのか?」

 

「ああ。ほとんど賭けに近い。下手すりゃ、即アウトだけどな」

 

俺は深く息を吐く。

 

そして――――――。

 

「鋼弥、俺と契約しろ」

 

「なっ!?」

 

よほど予想外の返事だったのか、鋼弥は目を見開き、絶句する。

 

しかし、直ぐに冷静な表情となって聞き返してきた。

 

「本気か? 仮に契約しても奴を倒せる程には…………」

 

「分かってる。俺がしたいのは少し違う。まぁ、調整はなんとか俺がしてみるし、鋼弥も気を扱えるだろ? それを利用してだな―――――」

 

俺は思い付いたことをそのまま話した。

 

正直、馬鹿な提案だと思う。

失敗したらアウトだと思うし、仮に成功してもその後でどうなるか分からない。

 

それでも―――――。

 

一通り説明し終えたところで、鋼弥はふむと顎に手をやり、考え込む。

 

そして、

 

「了解した。馬鹿みたいな提案、成功する可能性も低い…………が、面白い。乗ってやるよ」

 

俺達は互いに笑みを浮かべた。

 

――――――さぁ、反撃の始まりだ。

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

《ソノテイド、ワレニツウジルトオモッタカ?》

 

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」

 

竜巻のごとき吹き荒れる灼熱が僕達を焦がしていく。

 

アザゼル先生や平行世界組といった強力な力を持ったメンバーでさえ、四大天使の融合体、メルカバーには手も足も出ない。

 

メルカバーの背中から生える四本の腕、それぞれに巨大な槍が握られている。

その槍の一本一本に四大天使の能力が付与されていて、灼熱の炎、絶対零度の冷気、触れるもの全てを焦がす雷、何物をも切り裂く風の刃が僕達を苦しめていた。

 

攻撃を防いだとしても、余波だけでこちらを傷つけてくる。

 

闇の獣と化したギャスパーくんが停止させようとしても、直ぐに停止を解き、無数の闇の獣が食らいつこうともものともしない。

 

圧倒的な破壊力、堅牢すぎる防御力が確実に僕達を追い詰めていた。

 

「ハァァッ!」

 

残像を残しながら、僕はメルカバーへと斬りかかる。

 

しかし、僕の振るった聖魔剣をメルカバーは人差し指と中指だけで受け止めていた!

 

《カルイナ》

 

槍が振るわれ、僕の脇腹を貫いていく。

 

イッセーくんの鎧を容易に破壊したんだ。

防御力が乏しい僕には必殺となる一撃。

 

僕は剣を落とし、その場に崩れ落ちた。

 

 

その時だった―――――――。

 

 

赤い光と銀色の光がこの一帯を照らしたのは。

神々しい輝きを放つ、その中心にはイッセーくんと鋼弥くんが立っていて、二人は拳を合わせていた。

 

「用意は良いな、イッセー!」

 

「ああ、いつでもいけるぜ!」

 

「神の戦車とやらよ! 随分好き勝手にやってくれたな!」

 

「滅ぶのはおまえだ! 俺達がおまえを滅ぼす!」

 

二人の放つ輝きが強さを増す。

二つの光は徐々に重なり、色を混ぜていく。

 

そして、目が眩むほどの光が弾けた!

 

「この光………! あの二人は何をしようってんだ!?」

 

アザゼル先生の言葉はこの場に立つ皆の代弁だった。

 

この状況下で彼らは一体なにを…………?

様々な疑問が僕達の中で渦巻いていた。

 

光が止み、一つの影がメルカバーの前に降り立つ―――――。

 

 

『よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

 

 

現れたのは一人の青年だった。

 

赤いメッシュが入った腰まである長い銀髪。

全身には何かの紋様。

両手には赤い龍の籠手。

 

その青年の顔は誰かに似ていて…………。

それも見覚えのある――――――。

 

メルカバーが口を開く。

 

《ナニモノダ?》

 

相変わらず不気味な声。

 

しかし、明らかな変化があった。

自分の前に降り立った青年の力の異質さを感じ取ってのことなのか、僅かにだけど、声に緊張があるように感じられた。

 

赤いメッシュの入った銀髪の青年は不敵に笑む。

 

『おまえが一人にはなったから、こっちも一人になってやったのさ。俺は赤き勇者でも、銀のハンターでもない。俺は――――――おまえを滅ぼす者だ』

 

 

赤と銀のオーラが世界を照らす―――――――。

 

 

『――――さぁ、決着をつけようぜ』

 

 




次回でラストとなります!(多分!)

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