ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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VSミカエル!


異形なる天使 ⅩⅠ

「大天使ミカエル。―――――異形の天使共の親玉だ」

 

鋼弥の言葉に緊張が高まった。

 

目の前にいる異形。

あれが俺達が倒してきた天使の親玉。

四大天使を束ねる者。

 

「あれが向こうミカエルさんね………。俺が知ってる人とは大違いだ。こっちのは美青年だってのに」

 

「何度も言ってるが別物だぞ、あれ」

 

「分かってるって。名前だけ同じで全くの別人。見た目も性格も全然違うし。つーか、同一人物って言われた方が信じられねぇよ」

 

「だろうな」

 

そんな会話を交わしながら俺と鋼弥はミカエルを見据える。

 

炎を纏う異形の天使。

 

かなりの熱量があるのか、離れているのに焼けてしまいそうだ。

鎧を纏っていても肌にチリチリきやがる。

 

鋼弥が言う。

 

「大天使ミカエル。おまえの翼、折らせてもらうぞ」

 

《貴様らだけで、このミカエルを倒せると? 舐めてくれるな、悪魔よ。他の天使達と同じようにいくと思うな》

 

ミカエルのオーラが膨れ上がり、火の粉が辺りに舞う。

 

確かに親玉だけあって、纏うオーラも放つプレッシャーも半端じゃない。

明らかに相対した他の三人の天使よりも強い。

 

《汝らにも見せてやろう。かつて悪魔たちが天から地獄へと堕ちるその光景を》

 

ゴウッと熱風が広がり、辺りが炎で赤くなる。

 

すると――――――。

 

 

ズンッ! ゴゴゴゴゴゴ…………!

 

 

床が大きく揺れ、地響きのような音が広間に響き渡った!

 

何事かと辺りを見渡すと、広間の壁が移動し始めていた。

装飾の施された白く壁が奥へと進み、広間のスペースが広くなっていく。

最終的に二倍………いや、それ以上の広さとなった。

 

そして、異変は更に起こる。

 

移動した壁からヌゥッと何かがすり抜けてくるかのように現れる。

頭から胴体、足とその姿を露にしたそれは異様な雰囲気を持つ天使だった。

その数は無数とも言えるほどで、あっという間に広大な広間を埋めつくし、俺達を囲む。

 

天使と判別できたのは背中に白い翼があったからだ。

それ以外では、人の形をしているものの、まるでロボットのような姿をしている。

鋼色の顔に鋼色の四肢。

中には腕が四本ある者も。

それぞれが槍や剣、弓を手にしていて、濃密な殺気を俺達へと向けていた。

 

一言で言うなら、機械天使って感じだな。

 

リオさんが目元を険しくする。

 

「まずいですね。完全に囲まれました」

 

「一体一体は大したことなさそうだが………数が厄介だぞ、こいつは」

 

「しかも、ミカエルが控えている。流石にこれは厳しいぞ」

 

望紅さん、アルスさんが得物を構え、頬に冷や汗を伝わせた。

 

その時だった―――――。

 

 

ドッガァァァァァァァァン!

 

 

いきなり、広間の巨大な扉が爆砕した!

粉々になった欠片がこちらにまで飛んでくる!

 

「な、なんだぁ!?」

 

全員が驚愕に包まれる中、もうもうとする煙の向こうに複数の影が見えた。

 

突風が吹き、煙をかき消す。

 

そして、現れたのは―――――。

 

「おいおいおい! 派手すぎるだろ! ちったぁ、加減しろよ!」

 

「良いじゃない別に。どーせ、敵地のど真ん中なんだし、この方が意表を突けるでしょ?」

 

「いやー………流石にこれはやり過ぎかと」

 

現れたのは強制転移で別の場所へと飛ばされていた美羽達だった!

 

つーか、今のアリスの仕業かよ!

吸血鬼の時もそうだったけど、本当に豪快だよね!

ゼノヴィアか、おまえは!

 

「むっ、再会早々にその言い方は酷いぞ。私はもっと派手にやるさ」

 

「再会早々に人の心読まないでくれる!? つーか、派手になるんかい!」

 

「パワーで切り開くのが私だからな」

 

ダメだ!

やっぱり、脳筋だよこいつ!

分かってたけども!

 

珠樹さんがこちらに手を振る。

 

「やっほー、鋼弥。そっちは無事?」

 

「敵に囲まれて危機的な状況ではあるが、何とか無事だ。そっちも何とかなったらしいな」

 

「まぁね。………それにしても、えらく多いわね。増えた?」

 

「ああ。ミカエルが現れたと思えば、兵士共が続けざまに出てきたのさ。早速で悪いが働いてもらうからな? この数は俺たちだけじゃ、きついからな」

 

「りょーかいっと」

 

応じる珠樹さんは剣を引き抜き、周囲の機械天使に向けた。

俺達を囲んでいた機械天使の意識も後ろの美羽達にも向く。

ちょうど二つに分断された形だ。

 

《我らに刃を向けるというならば……幾らでもかかってくるがよい。幾憶の刃が迫ろうとも、我が尽く返り討ちにしてくれようぞ》

 

ミカエルの言葉に機械天使の軍勢が動き出し、俺達へと迫り来る。

波のように押し寄せる大軍は怒号のような叫びと、武器を掲げ進撃してきた。

いくら広間が広大な空間と化していても、これだけの数に押し寄せられれば狭く感じる。

 

この大軍を前にして、鋼弥は、

 

「イッセー、やれるな?」

 

「あったりまえだろうが!」

 

俺達は互いに笑みを浮かべ――――――

 

「「やれるもんならやってみろよォォォォォォォ!!」」

 

赤と銀のオーラを纏って、嵐のように駆けていく!

 

俺は鎧を天武に変えて、全出力を正面の敵に向けた!

一転突破だ!

他の敵は皆が何とかしてくれる!

だったら、俺は皆に背中を任せて突き進む!

 

「ミカエル! てめぇらの企み! ここで、俺達が断ち切る! 俺が! 俺達が破壊する!」

 

「その通りだ!」

 

俺は前面の機械天使共を天武のパワーで凪ぎ払い、鋼弥は跳躍して、空高く飛び上がる。

 

すると、鋼弥の体に変化が訪れる。

 

「俺も全力でいかせてもらう」

 

―――――銀のオーラが更に膨れ上がる。

 

銀色の髪がざわめいたと思うと、腰よりも下の位置まで髪が伸びた。

更には体中に何かの紋様らしきものが浮かび上がる。

 

「オーバードライブ。俺の切り札その一だ。まだ不安定だからあまり使いたくなかったけどな」

 

俺と鋼弥―――――赤き龍と銀の修羅がミカエルの前に立つ。

 

後ろでは美羽やアリス、リオさん達が機械天使の軍勢と戦っている。

轟く轟音と絶叫。

数で圧倒してくる機械天使共を仲間達は互いの背中を預けて、押し返していた。

 

そんじゃ、俺達もいきましょうかね!

 

俺と鋼弥は猛スピードでミカエルへと突っ込む。

俺達が得意とするのは肉弾戦。

超至近距離で己の拳を叩き込む!

 

「「まずは一発!」」

 

左右から挟み込むようにミカエルへと浴びせる拳。

 

それをミカエルは周囲に漂わせる蛇を動かして受け止めてしまう。

拳、蹴りを幾度も放つが堅牢な蛇の守りがミカエルを守りきる。

 

恐ろしく硬い蛇だ。

しかも、反応が速く、こっちの攻撃を難なく防いできやがる!

 

刹那、俺と鋼弥の頭上に無数の光剣が出現した!

 

《天軍の剣》

 

降り注ぐ、光の雨!

 

横に飛んで直撃は避けるが、光剣が床に刺さった瞬間に弾け、その爆発に俺達は巻き込まれてしまう!

 

衝撃だけでこの威力かよ………!

 

舌打ちする俺だが、ミカエルの追撃がやって来る。

 

《神の業火》

 

ミカエルの炎が放たれ――――――地から幾つものの炎柱が巻き起こる!

灼熱の炎が辺り一帯を地獄へ変えた!

 

「あんのやろ、無茶苦茶しやがる!」

 

「奴は自分達の敵になる者には容赦ないからな。おまけに手段は問わない。………だからこそ、ここで倒す!」

 

俺はミカエルの攻撃を避けながら、辺りを見渡す。

 

床にはさっきの炎に巻き込まれた機械天使の残骸が転がっていた。

これでかなりの数が減った………と思ったら、また壁から出てきやがる。

 

どうやら、この戦いが終わるまで無限に出てくるらしいな。

そして、終わらせるにはミカエルを倒す必要があるか。

 

「ああ、もう! ウザい!」

 

「全くね!」

 

機械天使の軍勢と戦いながら舌打ちするのはアリスと珠樹さん。

二人とも槍と剣を振るって機械天使を次から次へと斬り倒しているが、無限とも思える数に参っていた。

 

他のメンバーも同様だ。

 

「ったくよ、こちとらミカエルボコりにきたんだぜ? 雑魚に用はねぇっての」

 

アザゼル先生が手を上にかざすと上空に光の槍が無数に展開され、先程のミカエルの攻撃のように機械天使へと降り注ぐ。

一本一本に濃密な光力が籠められていて、突き刺さった機械天使達はその一撃で消えていく。

 

流石は元堕天使総督。

前線は退いてもその腕は鈍ってない。

 

しかし、だ。

この圧倒的な物量。

しかも、限られた空間で攻められるのは辛いものがある。

 

「早いとこ決着をつけねぇとな!」

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』

 

倍加の音声が鳴り響く!

 

手元に濃縮した赤い弾を作り出し――――――

 

「鋼弥ァ! 受け取れぇぇぇぇぇ!」

 

弾を殴り付けた!

放たれた赤い弾は光の軌跡を描いて鋼弥へとぶち当たる!

 

『Transfer!!』

 

譲渡の音声が鳴り、鋼弥のオーラが一気に膨れ上がる!

 

「これなら、いけるか!」

 

飛び出す鋼弥。

俺もそれに合わせるように前に出る。

 

《それしきの力で図に乗るな》

 

「それしきの力かどうか、確かめてみるか?」

 

繰り出される鋼弥の回し蹴り。

その蹴りは譲渡によって爆発的に高められた気が練り込まれていて、ミカエルの防御を崩しにかかる。

 

堅牢な守りを見せていた蛇が苦悶の声をあげた。

 

そこへ、飛び込むのは俺だ。

 

鋼弥の重い一撃で怯んだ隙に懐に入り込む!

蛇の内側、それはミカエルの防御の下!

 

がら空きの顔面に赤いオーラを乗せた一撃をぶちかます!

 

「ぜぇぇぇぇぇあっ!」

 

赤い一撃がミカエルの顔面にめり込み、そのまま吹き飛ばす!

 

そこからは俺と鋼弥のコンビネーション!

互いの格闘技術を合わせて攻撃を放つ!

 

天武による拳が、オーバードライブの蹴りがミカエルを確実に追い詰める!

俺と鋼弥の全力がミカエルに大きなダメージを追わせていく!

 

《くっ! 悪魔が、我を傷つけるなど!》

 

ミカエルの目が妖しい輝きを放つと、俺と鋼弥の周囲に巨大な火柱が巻き起こる!

 

完全に囲まれたか!

 

すぐに脱出しようとしたが、ミカエルの方が僅かに早い!

 

《たかだか、二匹の悪魔が我を倒そうなど…………身の程を知れ!》

 

凄まじい熱波が俺達を襲う!

灼熱の炎が刃となって、切り刻んできた!

 

「ガァァァァァァ!」

 

獣ような悲鳴をあげる俺達。

 

俺は鎧を砕かれ、生身に少なくないダメージを負う。

鋼弥も体の表面を焼かれ、かなりの火傷を負ってしまった。

 

「イッセーさん! 鋼弥さん!」

 

後方からアーシアが回復のオーラを送ってくれる。

淡い緑色の輝きが俺達の傷を癒してくれた。

 

アーシアの回復を受け、すぐに立ち上がる俺達。

 

傷が癒えても、俺達の表情は厳しいものになっていた。

 

「アーシアも皆の回復でかなりの消耗をしてる」

 

「ああ。それにミカエルの一撃は一発一発が強力だ。こちらには回復の手段があるとはいえ、喰らえばかなりの消耗をする」

 

ミカエルもかなりのダメージを負ってはいるが、まだまだ健在。

 

見ると、ミカエルの周囲に火の玉が漂い始めていた。

おそらく、先程のラッシュを受けて、接近戦を警戒しているのだろう。

俺達を近づけさせないつもりだ。

 

すると、

 

「イッセー………。ミカエルの隙を作ることはできるか?」

 

鋼弥がそう訊いてきた。

 

「………それは一人で、か?」

 

「ああ」

 

「中々に難しいな………。だけど、手がない訳じゃない。ただし、こいつは連発できないぞ? やるなら一発勝負だ」

 

あれを使えば、初見の奴なら大抵の場合で驚愕し、隙を生む。

しかし、それを使えば俺にはほとんど後がない。

 

まぁ、最近の修行で改善しつつはあるけどさ。

 

俺の答えに鋼弥はニッと笑みを浮かべた。

 

「十分だ。こっちもこれ以上、時間をかけるつもりはない。――――――一撃で決める」

 

一撃、か。

 

鋼弥のこの笑みは相当な自信があるからだろう。

だったら、俺はそれまで粘りますかね。

 

「そんじゃ、頼んだぜ!」

 

「おう!」

 

俺は全身のブースターからオーラを噴出させてミカエルとの距離を一気に詰める!

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!』

 

倍加した力を手元に集め―――――

 

「アグニッ!」

 

極大の光の奔流を放つ!

ミカエルは炎の壁で防ぎきるが、俺はもう一発アグニを放ち、炎の壁を崩しにかかる!

 

《貴様………ッ!》

 

「どうしたぁ! 懐ががら空きだぜ! はぁぁぁぁぁっ!」

 

鋭い連撃を撃ち込む!

天武のパワーをフルに発揮して、ミカエルの肉体を破壊する!

 

「アスカロン!」

 

『Blade!!』

 

籠手からアスカロンの刃が現れる。

俺はアスカロンに赤いオーラを乗せて――――――ミカエルの蛇を絶ち斬った。

 

周囲への影響を考えない、下手すれば仲間を巻き込むかもしれない嵐のような戦い方。

 

だけど…………!

 

籠手のブースターが大きく展開。

灼熱の炎が巻き起こる!

 

「シャイニング・バンカァァァァァァァ!」

 

『Pile Period!!』

 

ミカエルの顔を掴んだ俺の手が爆発し、ミカエルの体が炎が包み込む!

 

しかし―――――

 

『我に………貴様ごときの炎など………通じぬ!』

 

肉体に深刻なダメージを負いながらも、まだ向かってきやがる!

 

シャイニング・バンカーをくらってこのダメージか!

どれだけ頑丈なんだ!?

 

いや………もしかしたら、他の三体のように何か………そう、炎に対しての耐性があるのかもしれない。

その耐性のおかげで今のを乗り切ったと考えるべきか。

 

『ヌゥゥゥゥッ! 悪魔龍ごとき、我が炎で燃やし尽くしてくれるわ!』

 

俺を囲むように極大の炎の塊がいくつも現れる。

とんでもない熱量だ。

鎧を纏っていても、直撃を受ければ燃やされそうだ。

 

『消え去るがいい!』

 

炎の塊が一斉に襲いかかる――――――その瞬間。

 

俺は天翼(アイオス)に鎧を変えた。

同時に肉体が赤い粒子と化す。

 

―――――量子化だ。

 

《なっ………に!?》

 

目を見開き、驚愕するミカエル。

 

それが最大の隙となる。

 

「十分だ、イッセー。これでこちらもとっておきを出せる」

 

鋼弥が叫んだ瞬間、鋼弥の足元に召喚の陣が描かれる。

魔法陣から光………聖なる力が溢れ出しているけど、不思議と痛みを感じない。

溢れ出す光は光の柱となって、鋼弥の体を包み込む。

 

そして―――――――

 

「アルトリア・ペンドラゴン!」

 

その名を呼んだ瞬間、光の柱が砕け散った。

 

現れたのは――――――。

 

青いドレスに白銀の甲冑を纏った、雄々しき金髪碧眼の女性剣士だ。

右手に剣、左手には槍を握っている。

 

ん………?

んんんんんんんんんん?

 

鋼弥が………女の子になったぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

「鋼弥さんが女の子になってますぅ!」

 

アーシアの驚く声!

平行世界組以外のメンバーは目が飛び出るくらい驚いていた!

 

だって、鋼弥が女の子になってんだもん!

 

ドルキーが機械天使を殴り飛ばしながら言う。

 

「あれが、鋼弥の能力だ。契約を結んだ仲魔の姿になる『業魔化身(デモニアックチューナー)』だ。しっかし、また新しい仲魔と契約結んだのかよ! すげーな、おい!」

 

そう言うドルキーはどこかハイテンションだ。

 

鋼弥――――――金髪碧眼の女性騎士は光輝く剣をミカエルへと向ける。

 

『大天使ミカエル。終わりにしましょう。あなた方の言う千年王国など誰も求めていません』

 

剣の輝きが増し、この空間を満たすほど光が放たれる。

光の柱、聖なる力の塊だ。

 

触れれば消しとなれそうなほどの光の濃度。

 

それが全てミカエルに向けられていた。

 

《ぬぅ! 千年王国を否定するかぁぁぁぁぁぁ!》

 

ミカエルが空へ飛びあがると、巨大な炎の塊が出現した!

直径は二十メートルはある。

あまりに大きい炎の塊が俺と鋼弥………いや、あの規模で放たれれば、この広間にいる全員が危ないな。

 

「鋼弥………? えっとなんて呼んだらいい?」

 

『アルトリアで良いですよ』

 

「そっか。…………最大出力でいくぜ」

 

『ええ。―――――終わらせましょう』

 

俺と女性――――――アルトリアは互いに頷くと眩い光と紅蓮のオーラを放ち始める。

 

俺はギリギリの体力でアスカロンを構えると、展開したフェザービットをアスカロンの刀身と合体させる。

完成するのは刀身が二メートルほどの大剣だ。

 

あくまで疑似だ。

本家はこんなところでは撃てないからな。

 

アスカロンにイグニスの力を流し込んで、ビットで制御…………いける!

 

俺とアルトリアは剣を空にいるミカエルに向ける。

 

そして―――――

 

《エクスカリバァァァァァァァァァッ!》

 

「疑似ロンギヌス・ライザァァァァァァァァァ!」

 

眩い光は天井をぶち抜き、空を覆う。

ミカエルは炎の塊ごと、極大の光に呑み込まれた――――。

 

 

 

 

「はっ…はっ…はっ………ふぅ」

 

両膝に手をついて息荒げる俺。

 

『大丈夫ですか?』

 

「あ、あんまり大丈夫じゃないかも………」

 

かなりの力を使ったからなぁ。

立っているのがやっとってところだ。

 

アルトリアの体が輝くと、その形を変える。

光が止むとそこにいたのは元の鋼弥だった。

 

「こっちも限界だ………。オーバードライブにさっきのだしな」

 

鋼弥もなんとか立ってはいるが、無理をしているのは明らかだ。

二人ともフラフラだな。

 

視線を後ろにやると、今もなお、機械天使達との戦いは続いていた。

数は減っているようであまり変わっていない。

 

「もしかして、この繭を潰さない限り続くとか?」

 

「可能性はあるな。少し回復したら俺達も参戦しよう。今のままだと足手まといにしかならない」

 

鋼弥がそう言った時だった。

 

空から何かが落ちてきた。

血を撒き散らし、蠢く何か。

 

――――ミカエルだ。

 

《お、おお……おおおおお……。まさか、我ら四大天使が滅ぶというのか………。忌々しき……悪魔どもに……》

 

全身にヒビが入り、赤い光が漏れていた。

 

ガブリエルの時と同じだ。

ミカエルも最期の時を迎えようとしている。

 

「あんたらの救済なんか、この世界にも鋼弥たちの世界にも必要ない」

 

「おまえも唯一神に与えられた使命から解放される。永久の眠りにつけ」

 

俺達の言葉を聞いてなのか、急速にミカエルの崩壊が進む。

 

これで終わりだ。

後は繭を破壊して――――――。

 

俺達の思考が次へと移りだした、その時だった。

 

《ヌゥゥゥゥ…………ワレラガマケル………? アリエヌ、ミトメヌ………ワレラハカミノタメニ………ウ………オォォォォォォォォォォォォォォォォッ!》

 

崩壊し、既に塵と化していたミカエルがこの世の者とは思えぬ絶叫をあげた!

 

もう力なんて残っていないはずなのに、叫びだけでこの圧力………!

 

「ミカエル! てめぇ、この期に及んで何をする気だ!?」

 

後方のアザゼル先生がミカエルに問う。

 

すると、俺達の前方――――――ミカエルがいた場所に赤い塊が浮かび上がった。

ドクンッドクンッと脈打つそれは心臓のようにも見える。

 

脈打つ心臓を中心に外部から赤い粒子が集まり、胴体、足、腕、そして頭を形成する。

 

それは………人の形をしていた。

身長は二メートルほどで、人としてはやや大きいが、あるべき場所にあるべきものがある。

しかし、人と呼ぶにはあまりにおぞましく、体の表面は筋肉の繊維のようなものが剥き出しだ。

 

頭部から翼が生え、背中、肩からも翼が生える。

メキメキと軋むような音が聞こえたと思うと、背中から腕が四本現れた。

シルエットとしては腕が六本あることから阿修羅に近い。

 

黒一色の瞳から血のようなものが流れ、頬にあたる場所に赤い筋が出来た。

 

漆黒の瞳が俺達に向けられる。

 

《ユルサヌ………ミトメヌ…………。キサマラアクマゴトキワレラガ、ケシテクレル。ワレラヨンダイテンシハヒトツトナリテキサマラヲメッシヨウ》

 

異形の天使達の狂気が動き出した――――――。




というわけで、ミカエル戦でした!

ラストはMr.エメトさんのストーリーと変えてます。
こちらで勝手にやっちゃいました!

次回はイッセーと鋼弥が…………(Mr. エメトさん、ごめんなさい! かーなーりーやらかします!)

多分、次回がラストになると思います~

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