ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 特別編   作:ヴァルナル

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Mr.エメトさんの『ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~』とのコラボです!

初コラボなのでドキドキです!

それではどうぞ!



異形なる天使篇 (コラボ作)
異形なる天使 Ⅰ


[三人称 side]

 

 

大地は赤く、雲は紫色。

ここは悪魔たちが住む世界。

 

しかし、そこは一誠達が知っている『冥界』とは違う世界だ。

 

サーゼクス・ルシファー達四大魔王が治めているわけでもなければ、特撮番組『おっぱいドラゴン』が流行っているわけでもない。

 

 

―――――『魔界』

 

 

この世界はそう呼ばれている。

 

一誠達の世界から見れば異世界に当たるだろう。

 

地球よりも広大な大陸。

そこに多種多様な悪魔や妖魔が住み、様々な地域、国が存在する。

 

 

―凍える冷気の国。

 

 

―狩猟と闘技場の国。

 

 

―砂漠と荒野の国。

 

 

―風と森林の国。

 

 

―火山と温泉の国。

 

 

―そして、貴族が住む魔界中央の国。

 

 

多種多様な気候風土を持つ国々。

 

事件は魔界の貴族が住まう魔界中央国から始まる。

 

「天界で厳重に封印されていたあの者たちが………?」

 

驚愕の声をあげたのは一人の青年だった。

 

特徴的な短い銀髪。

顔立ちはよく、転校すれば間違いなく女子から質問責めにあうだろう。

黒いマントを羽織っており、黒いパーカーとジーンズを着ている。

 

青年の名は涼刀鋼弥。

 

ハンターであり、悪魔と人間のハーフ。

ハンターはこの魔界に住まう悪魔が問題を起こした場合、依頼を受け討伐する職業であり、危険が付きまとうもの。

 

数多くの依頼をこなしてきた鋼弥は魔界では名うてのハンターとなっていた。

 

そんな鋼弥が声に出すほど、深刻な事態が起きていた。

 

『ええ、かの者たちは何者かの手によって封印が破壊されて、別の世界へと逃げ込まれたようです』

 

現れたのは大天使サリエル。

死神の様な風貌だが、霊魂の看守を任されている天使であり魔界のハンターとの交渉役を任されている者。

 

もちろん、一誠達の世界にいる熾天使(セラフ)の一人、サリエルとは別人である。

 

「このまま放置しておくことはできない………俺達に依頼を?」

 

『ええ、こちらはゾロアスターの動きもあるので、そう簡単に動くわけにはいかないのです。そこで、力があり、動くことの出来るあなた達に白羽の矢が立ったということなのです。申し訳ありません。本来なら我々の役目なのですが………』

 

「問題ない。………報酬はいただくがな」

 

鋼弥は頷き、了承する。

 

 

この事件が異世界帰りの赤龍帝と銀色の半人半魔のハンターを引き合わせる――――――。

 

 

[三人称 side out]

 

 

 

 

吸血鬼の町での一件が終わり、テロ対策チーム『D×D』が結成されて数日。

 

今のところリゼヴィム率いる『クリフォト』にこれといった動きはない。

 

吸血鬼の町での騒ぎが嘘のように思えるほど、この町は平和で静かだ。

 

そんなある日の放課後、オカルト研究部の部室にて。

 

「………平行世界、ですか?」

 

俺は朱乃がいれてくれた紅茶に口をつけながら、そう聞き返す。

 

アザゼル先生は頷いた。

 

「そうだ。この世界とは異なる世界のことなんだが、アスト・アーデのような異世界とはまた違う世界のことだ」

 

「アスト・アーデとは違う………? それは他にも別の世界があるって感じなんですかね?」

 

「いや、ちょっと違うな」

 

先生は首を横に振るとホワイトボードに絵を描いていく。

大きな円が二つあって、それぞれの円に小さな円がいくつか描かれている。

 

大きな円の片側の小さな円に矢印が書かれた。

 

「こいつが今の俺達の世界だ。で、この隣にある小さな円がアスト・アーデとしよう。他の円はもしかしたらあるかもしれない他の異世界だ。俺達の世界を含めたこれらの世界を大きく包んだ円が一つの大きな世界を指す」

 

俺の隣に座っていた美羽がクッキーを食べながら訊く。

 

「それじゃあ、もう一つの方はなんなの?」

 

その問いに先生はもう片方の大きな円を指差しながら答えた。

 

「こっちの円が俺が今唱えた平行世界ってやつだ。この中のにも俺達の世界と似ているようで違う世界が存在するのさ」

 

う、うーん………?

ま、全く分からん………。

 

異世界であるアスト・アーデと俺達の世界が一つの世界の中にあって、それがもう一つ存在するということだろうか?

 

俺も美羽もちんぷんかんぷんといった表情で、頭に疑問符を浮かべまくっていた。

 

その様子に先生は苦笑する。

 

「ま、簡単に言えば平行世界ってのは『if』の世界だ。例えばイッセーが赤龍帝ではなく白龍皇である世界、美羽がイッセーの妹ではない世界、そういう『例えば』の世界、あらゆる可能性が考えられる世界のことさ」

 

あー………そう言われたら何となく分かったかも。

 

俺が白龍皇ね。

そうなるとアルビオンと組むことになっているわけで………。

その時、俺達は上手くやれるだろうか?

 

ドライグだからこそここまでこれた気もするしなぁ。

 

ドライグが言う。

 

『ちょっと待て、アザゼル。ということは俺が乳龍帝と呼ばれていない世界もあるかもしれないということか?』

 

「多分な」

 

『くっ………俺はそっちの世界に行きたいぞぉぉぉぉぉ!』

 

うぉい!

俺がおまえに感謝しているときにそういうこと言うの止めてくんない!?

 

そんなに嫌か!

嫌なのか!

 

ゴメン、謝るから許して!

 

つーか、アルビオンと一緒に克服したんじゃなかったのかよ!?

 

『それはそうなんだが………そういう世界があるかもしれないと聞かされるとな………』

 

ま、まぁ、そうかもしれないけど………。

 

乳龍帝と呼ばれていない世界の俺ってどんなのだろう?

おっぱいが好きじゃないとか?

 

そんな俺は想像できん!

俺はおっぱいがあってこそだからな!

 

などと一人頷いていると、その隣では―――――

 

「お兄ちゃんの妹じゃないボク………っ! そんなの絶対に嫌だよ! ボクはお兄ちゃんと一緒がいい!」

 

美羽が涙目で泣きついてきたよ!

 

んもー!

うちの美羽ちゃんは可愛いな、ちくしょう!

 

「俺も美羽が妹じゃない世界とか嫌だ!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「美羽!」

 

ガシッと抱き合う俺と美羽!

 

俺、この世界で生きてて良かった!

心からそう思える!

 

そんな俺達義兄妹の微笑ましい光景に先生は苦笑する。

 

「この仲良し義兄妹め、人前でイチャイチャしやがってよ。まぁ、俺が言ったのはあくまで可能性………例えばの話だ。実際にあるとは限らん」

 

部長の席で資料を読んでいたリアスが眼鏡を外して息を吐いた。

 

何かに集中したい時には眼鏡をかけるらしいが、久しぶりに見たな。

眼鏡をかけたリアスってすごい知的な感じがするよね。

 

リアスは資料を引き出しに仕舞うと話に入ってくる。

 

「平行世界………。色々な自分が想像できて面白そうな話だけれど、なぜそんな話を?」

 

確かにそうだよな。

アザゼル先生、いきなり平行世界の話をし始めたし。

 

「こいつは異世界――――アスト・アーデの存在を知ってからずっと考えていたことでな。俺達が知らなかった世界がこの世に存在していたんだ。もしかしたら、俺達の世界と似ているようで違う、そういう『if』の世界が存在していてもおかしくはない。でだ、先日のリゼヴィムの一件もあって、異世界についてもう一度考えるついでに思い出したのさ」  

 

違う自分がいる世界。

確かに面白そうで興味深い話ではあるな。

 

先生は楽しげに笑む。

 

「ま、今のところ何の根拠もない想像の話だ。だが、想像するだけでも面白いだろ? 世界は広い。長く生きてきた俺でも知らないことが山ほどある。研究職としちゃ、たまらなく楽しい話だ。やっぱり未知の存在ってのは興味がそそられるよな」

 

「ですが、それで職務を放り出すのはやめてくださいね? シェムハザさまも大変お怒りですので」

 

「おい、レイナーレ! 人が楽しんでいるところにリアルな話を持ってくるのやめろ! つーか、俺、総督じゃねーし! もう自由だし! 誰にも俺を縛ることなんて出来ない!」

 

「もー! そんなんだからいつまでたっても結婚出来ないんですよ! バカ元総督!」

 

「んだとぉ!? イッセーとやったからって調子に乗るなよ!? いつになったら寿退社するんだよ!」

 

「な、ななななな何言ってるんですかぁぁぁ! アザゼルさまのバカぁぁぁぁぁぁ!」

 

「痛ぇっ! ちょ、やめ、本の角で殴るのやめろ! マジ痛いって! イッセー! 見てないで助けろよ!」

 

あーあ………レイナちゃんの顔が真っ赤になっちゃった。

近くにあった分厚い辞書で先生の頭を………。

 

つーか、そんなに大声で『やった』とか言わないでくれます!?

 

女性陣からの視線が!

鋭い視線が集まってきてるから!

怖いよ!

 

うん、これは先生が先生が悪い!

とりあえず、いっぱい殴られてください!

 

しかし、あの時のレイナちゃんは………可愛いかったなぁ。

いや、いつも可愛いけど。

 

いつもの賑やかな空気が部室に流れている時だった。

 

先生の耳元に通信用の小型魔法陣が展開された。

 

「ちょ、ちょっと待て! ストップ! ストップだ!」

 

先生は辞書を振り下ろす格好となっているレイナを慌てて止めると、魔法陣から聞こえる声に耳を傾ける。

 

最初は頷きを返していたが次第に表情が険しくなっていく。

 

「………それは確かなことか?」

 

先生が魔法陣を通して確認を取るが、返ってきた返事に眉を潜めた。

 

それから暫しの問答を繰り返した後、先生は「わかった」と言って通信を切った。

 

先生の真剣な顔にリアスが問う。

 

「どうかしたの?」

 

「………何者かがこの町に侵入した。そして、見失ったそうだ」

 

「見失った?」

 

この町は三大勢力の重要拠点だけあって、町を覆うように結界が張ってあり、俺達以外の冥界・天界スタッフも常駐している。

 

しかも、ユーグリットがはぐれ魔法使いを連れて町に潜入してきた後は結界も強化されて、誰かが侵入した場合、すぐに分かるようになっている。

 

その際、町のスタッフがすぐに駆けつけるようになっているのだが………。

 

俺は先生に問う。

 

「見失ったっていうのは、侵入してきた奴が町の外に出たというわけではないんですよね?」

 

「ああ。町への侵入を確認した後、直ぐに反応が消えたそうだ。スタッフが確認地点に向かったそうだが、それらしい姿は見えなかったらしい」

 

「………まさか、クリフォトの連中が?」

 

ユーグリットの時のように、またこの町に何かを仕掛ける気か?

 

もしくはアセムのやつが仕掛けてきたとか?

 

先生は首を横に振る。

 

「それは分からん。ただ、分かっていることは悪魔でも天使でも堕天使でもない。ドラゴンのものではない力を計測したそうだ」

 

「………全く未知の力を確認した、という認識で良いのかしら?」

 

リアスがそう訊くと先生は頷く。

 

全く未知の力………そうなるとアセム達一行が侵入してきたと考えるのが普通だが………。

 

先生は俺達を見渡すと言う。

 

「とりあえず、何かがこの町に入り込んだのは間違いない。おまえら、十分に警戒しておけよ? リアスはソーナにも連絡しておいてくれ」

 

「分かったわ」

 

この時、妙な胸騒ぎが俺達の中に生まれていた。


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