八幡の能力がでます。
追記
八幡の能力名忘れてたので修正しました。
「疲れた〜」
朝のHR(という名の拷問)も終わり、隣の席の茜が机に突っ伏していた。こっちの方が疲れたわ。心労的にも肉体的にも。
「なんであんなにカメラばかりなの〜?」
「安全のためだからしかないでしょ?いい加減なれたら?」
「む〜。そうなんだけど〜。選挙のためにも使われるなんて嫌だとしか言えないよ…」
さて、今朝話した監視カメラのほかの使い道の1つとして、今茜が言った選挙活動に使われるという役割がある。
選挙活動といっても政治家のような一般市民の人から選ぶというわけではなく、櫻田家の兄弟にしか適応されないものなのだ。
そう、それは次期国王決定選挙である。
おいおい父さんよ、貴方まだまだ働けるでしょう?とか心の底から思わないでもないが、事の始まりは俺と茜が高校入学を控えた春休みから始まった—————。
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〜四月〜
「国王選挙をやるぞ〜」
『はい?』
俺と茜の高校の入学式を来週に控えた櫻田家では、家族会議が行われていた。ちなみに、今の父さんの言葉が第一声である。軽くね?
『ええええ〜〜〜〜〜〜!』
「ははっ。お前達は仲が良いな。良い事だ」
「そうね。総一郎さん」
バカップルやってる場合か⁉︎
いや待って!色々聞きたいことがありすぎて、渋滞してるんだけど!
「なんで今?茜と八幡が高校に入学を控えている状態よ?」
「ああ。言い方が悪かったな。国王選挙の投票を行うのは、3年後の八幡と茜が卒業する時期だ。そのころには、みんなも大きくなっているし、王政を任せられるだろう」
「じゃあ、3年間なにするの?」
「みんなには選挙活動をして貰おうと思う。演説をしたり、挨拶回りをしても構わない。力を尽くしてほしい」
ええ…。やる気でないな。そもそも、だ。俺は参加して良いものなのだろうか?めんど臭いし、辞退を…
「ちなみに、辞退などは受け付けられないからよろしくな」
父さんがこっちガン見してくる。読まれてますやん…。
「辞退は認めないが、誰かのサポートに回ったりするのはありだ。投票して欲しくない場合は選挙活動をせずに、いつも通りに過ごせばいいからね」
なら、俺には一切票なんか入らないだろうな〜。やったぜ!いつも通りに過ごすしかないですね、これは。
「それでだ、一週間後にテレビ撮影するからよろしく」
…え?テレビ?
その日、櫻田家では大声が響き渡ったとか…
〜一週間後〜
『さて、始まりました。《今週の櫻田家》。今日は、特番でお送りしたいと思います』
選挙やるよ宣言から一週間後の今日、櫻田兄妹が勢ぞろいし、1つのビルの前に並ばさせられていた。
父さんが選挙活動の開始を宣言した日からテレビのニュース番組などで《今週の櫻田家》とかいうコーナーが出来ていた。監視カメラを通して、王族の日常を垣間みようというコンセプトのコーナーらしい。プライバシー仕事して!
『本日は王族であり、特殊能力をお持ちになっている櫻田兄妹の皆さんのことを知ってもらうことを目的としたレクリエーションとなっております』
『さて、気になるレクリエーションの内容は……【ダンディ君を救え!】です。ルールを説明いたします。屋上に置かれたダンディ君人形を回収し、皆さんの名前が書かれたカゴへ入れてください。回収した人形の数の分だけ得点となります』
おい、誰だこんな面倒な企画考えたやつ!巫山戯んなよ!出て来いや!
『では、今回の企画を提供して頂いた現国王である櫻田総一郎様より、ご挨拶です』
『やあ、皆んな元気かい?今回のイベントは皆のことを知ってもらうために、企画したものだ。頑張ってほしい』
父上殿でしたかー!生意気言ってすいませんでした!しかし、やはり面倒なものは面倒である。これは、サボるしかないな、うん。
『得点が低いものには罰ゲームとして、王宮のトイレ掃除してもらうからそのつもりで。では、健闘を祈ってるよ』
ちょっ!罰ゲーム⁉︎しかも王宮のトイレ掃除とかどんだけあるんだよ…。これは否応にも最下位を避けなくてはいけなくなってしまったではないか…!
『制限時間は20分です!皆様、準備はよろしいですか?では、【ダンディ君を救え!】開始です!』
「僕はこのビルを登ります!」
まず、最初に動き出したのは輝だった。やる気が満ちてるな〜。
輝はビルへと近づくと、壁を掴み登り始める。
『おおっと!まず動き出したのは四男である輝様です!輝様の能力は肉体強化〈リミットオーバー〉。大人顔負けの力を発揮できます』
いや、知ってもらうためとは言え、ビルの壁登るとか危ないことするなよ!落ちたらどうすんだ!俺は気が気でなくなっていると、輝 が 手 を 滑 ら せ た。まずいっ!
「修っ!」
「あいよっ!」
名前を呼ぶとわかっていたのか、修はその場から消え、落ちかけている輝のすぐ側に現れ、輝とともに消える。
はあ…。心臓に悪いわ…。マジで。
隣に現れた修と輝を見て安堵の息が漏れた。
『ただいま、ハプニングがありましたが、長男の修様によって大事には至っていないようです。修様の能力は瞬間移動〈トランスポーター〉自分と触れているものを瞬時に移動することができます』
ズビシっ!
ポカンとしている輝に軽いチョップをいれる。驚いた顔で見てくる輝に俺は視線を合わせるためにかがんだ。
「輝、お前がその能力で栞や母さんを守ろうとしてくれているのはわかる。だが、能力を過信し過ぎると今みたいに危険な目にあうことがあるんだ。お前が危険な目に合うと俺たち家族全員が心配する。お前は、家族を悲しませたいか?」
「いえ、、、そんなことはありません」
「なら、今みたいな危険なことはあまりしないで欲しい。母さんも言ってたがお前の能力は周りの大事な人が危ない目にあった時のために使うんだ。でも、いざという時に使えないと仕方がないから、その能力を使う時には細心の注意を払って使うんだ。お前が誤って人を傷つけないために」
「はい!兄上!僕は守るために力をつけます!」
「おう。お前なら出来るよ」
輝の頭を撫でる。今からそんなに焦る必要はない。お前は立派になれるんだから。という思いをこめて撫でておく。
『グスッ…。次男八幡様のありがたいお言葉でした…』
ん?今なんか言ってた?撫でることに集中してて聞いてなかったんだけど。
「次は私が行くねー!この木でいいかな」
光が手を挙げ、街路樹の方へと近づく。やり過ぎそうな予感だな。
光が木へと登り、能力を行使する。するとでかくなるわでかくなるわ。なんということでしょう!ただの街路樹がビルよりも高くなってしまったではありませんか!
『五女光様の能力は、生命操作〈ゴッドハンド〉。生物の成長を一時的に変化することができます。ですが、これは…?』
「うわ〜ん!高くし過ぎたぁ!」
すまない…妹よ。兄は助けにいけないのだ。許せ。これで、最下位はなくなったな(ゲス顔)。
「よくよく考えると自分で取りに行くとか面倒ですよね」
そんな言葉を発したのは猫かぶり中の奏姉さんである。それすごい同感なんだけど。
奏の周りに光(妹ではない)が現れ、形を成して行く。うわっ!目が!目が〜!大佐ごっこは置いといて、光が収まり現れたものはドローンであった。スゲー。
「お願いしますね」
奏姉さんの命令でドローンが四機飛び立って行く。声で動くとかハイテクだな。
『次女奏様は物質生成〈ヘブンズゲート〉。生物から空想ありとあらゆるものを生成することができます。便利ですね〜』
便利なのだが、デメリットは知らないのだろうな。知ってたら便利とか言えないし。
「ねえ、かなちゃん。今のはおいくらほど…?」
「そうね。一台10万円くらいかしら?安いものね」
そう。生成したものの値段分奏姉さんの口座からその額が減るのだ。金を持ってないと出来ないわ〜。ちなみに、姉さんは株やらFXやら色々やってるらしい。お小遣いが欲しいです、お姉さま!代わりに俺の分も1つ取ってきてくれないだろうか。
「やらないわよ」
いつのまにか奏姉さんはこちらを呆れた顔で見ていた。なぜバレた?
「貴方の顔はわかりやすいのよ。可愛い弟のためならやっても構わないのだけど、それは貴方のためにならないからやらないのよ?わかって?」
なんか俺がめっちゃ聞き分けの悪い奴みたいになってるんだが…。あと、自分の株を上げたな。実の姉ながらやりおるわ!
というか、このゲームって修とかめっちゃ楽だな。一瞬でいけるし、ビルを登る必要もないしな。あ、登るで思い出したが輝は中から行くことにしたようだ。
「よ〜し!私もそろそろ行くよ!よろしく!私達!」
『四女で三男の遙様と双子の岬様の能力は感情分裂〈オールフォーワン〉。最大7人の岬様の分身を生み出すことができます』
6人の岬がビルの中へと突撃していく。ん?6人?岬(本体)はそこにいるし、1人誰か分身してないのか?
「なに遙にくっ付いてるの⁉︎」
「だって…眠い…zzz」
「寝るな〜!遙も!なんで抱きつかれたままで鼻の下伸ばしてんの!」
「いや、鼻の下は伸ばしてないし…」
「ほら!行くよ!」
「うぇぇ〜眠いよ〜助けて遙〜」
ズルズルと引きずられて行く岬(分身)と岬(本体)を見送った。
遙ってムッツリそうだよね。やーい!ムッツリ〜!
「兄さん。今何か不名誉なこと思わなかった?」
「なんにも?なに?能力使った?」
「いや、こんなことには使わないよ。ただの家族としての勘」
『三男の遙様の能力は確率予知〈ロッツオブネクスト〉。あらゆる可能性の確率をパーセント形式で予知を行います』
この家族は勘のいいやつが多いぜ。
そろそろ行かなきゃダメか?最下位にならないために1つくらいは取りに行った方がいいだろうしな。
そうこう考えているうちに、遙に煽られた茜が遙を連れて飛び立っていく。ああ…、王宮のトイレの数に気付いてなかったのね。
『三女の茜様は重力制御〈グラビティコア〉を使用できます。茜様自身と触れたものの重力を操れますね』
働きたくはないから行くか、と思ったら栞が消火栓の前で困っているようだ。そこに近づくと同時に葵姉さんも来た。
「…え?職員用の通路?ごめんなさい。よくわからない」
「どうした?栞?」
「あ…。兄様、姉様。道を聞いたけどよくわからないの…」
『御兄弟のなかで最年少である六女の栞様の能力は物体会話〈ソウルメイト〉です。猫や犬といった動物から無機物まで会話することができます。可愛らしいですね』
おい、実況者!いいこと言うじゃん。あなたとはいい酒が飲めそうだ。未成年だけど…。
「なんて言ってたの?栞」
「えっと…職員用の通路、その奥のエレベーター、3階で乗り換えって」
「うん。それなら、分かるわ。ここは一度職場見学で来てるから」
「はー。さっすが葵姉さん。栞〜、やっぱり姉さんはすごいな」
「うん。姉様は、すごい」
『長女の葵様は完全学習〈インビジブルワーク〉。一度見たことは忘れません』
完全学習…ね。それって、頭がいい人なら特に違和感ないんだよなぁ。ただただ、姉さんが頭がいいと言うだけなのでは?という疑問を長年抱えているが、話すつもりはないのなら無理して聞く必要もないな。
さて、いい加減にいかないとカメラに晒され続けるという面倒なことになってしまう。行こう。と、足を出したところで服の裾にかすかな抵抗を感じた。
ん?と後ろを見てみると俺の服を掴んでいる栞の姿があった。先ほどの輝と同じように背をかがめる。
「どうした?栞?」
「兄様と一緒に行きたい…ダメ?」
グハッ!上目遣いとか俺の心にクリティカルアタックだ。可愛すぎんだろ!この子俺の妹なんだぜ!羨ましいだろ〜!絶対に嫁にはやらん!
「兄様?」
「あ、ああ。一緒に行こうぜ、栞」
頭をポンポンと撫でると、栞は目を細めて受け入れている。マジヤバ!写真に収めたいわ〜!ロリコン?いいえ、シスコンです。
「むぅ。私もいるんだけどな〜」
「姉様も撫でられたいの?」
「え?いや、そういうわけじゃ…」
「兄様、姉様も撫でてあげて」
栞の頭を撫でることに集中しすぎて、なんか話がすごい勢いで進んでいってた。え、なに?撫でるの?俺が?姉さんを?ちょっとそれは…。
「ダメなの…?」
「姉さん、こっち来て」
「ええっ!八くん⁉︎」
栞に頼まれたら断るわけにはいかないでしょう⁉︎仕方ない仕方ない。これは、お願いなのだから。許されるよね?
「姉様…。早く」
「…はい。八くん…?優しくしてね…?」
可愛すぎんだろ(2回目)!不覚にも姉にときめいたわ!心臓バックバクしてるよ!家族じゃなかったら惚れて告白して、振られるまである」
「は、八くん?う、嬉しいんだけど、恥ずかしいよ…」
そこには、顔を真っ赤にした姉さんがいた。どうやら、声が漏れていたらしい。うわぁぁーーー!殺せ!俺を殺してくれぇーー!いや、いっそ自分から死ぬ!
バシッ!
「あたっ」
痛みを感じ、そこを向くとふくれっ面と涙目になった栞がいた。誰だ!泣かしたやつは!
「兄様、死んじゃ、や」
「へっ?いや、俺は死ぬ気もないが…」
「だってさっき、『いっそ自分から死ぬ』って…」
話しているうちに栞の涙が流れて来てしまう。まさか、能力が漏れたのか?久しぶりにやっちまったな…
『ここで、二男の八幡様の紹介もしておきましょう。能力は、以心伝心〈シンクロニシティ〉半径1キロ以内の人物と交信できます。ただ、八幡様はこの能力はあまりお使いにならないようですね』
そう。俺の能力はざっくりいうとテレパシーというやつだ。制御してる時は、指定した奴と交信が出来るのだが、さっきのように心の均衡を崩すと勝手に交信してしまい、俺の考えてることが漏れたり、人の考えてることがわかってしまう。幼い頃は、制御出来ずこれのせいで苦労した結果として、若干目が腐ってしまった。
そんな俺のことより、栞をなだめないとな…。
「ごめんな、栞。変なことを言って。アレは照れ隠しというか、ごまかしというか、とにかく本当に死のうとかは考えてないから、な?」
「冗談とかでも、やだ」
「本当にすまなかった。心配してくれてありがとうな」
なでり。
お詫びの心で頭を撫でる。あーあ、気をつけなくちゃな。
「よし、行くか」
「兄様、まだ終わってない」
ん?まだ撫でられたりないって?可愛い奴だなぁ。栞が指を指しているのでそっちを見ると地べたに座り、顔が真っ赤になって、あうあう言ってるポンコツと化した葵姉さんがいた。あ、忘れてたわ…。
「なあ、栞よ…。本当にやるのか?」
「ん」
こくり、と頷く栞。やらない限り、先へ進むことはないようだよ。もう、ヤケクソだよね。俺は覚悟完了!し、葵姉さんのもとへいく。
姉さんは近づく俺に気付いたらしく、顔をあげる。顔がまだ赤いな。多分、俺の顔もだいぶ赤くなっているのだろう。ああ、黒歴史が増えていくよ…。
姉さんの頭に手を置き、撫で始める。チラッと栞の顔を伺うとまだ十分ではないらしい。顔を横に振られた。姉さんは、もうそろそろ人語を介することも出来ないレベルに突入している。もうこの時点で、黒歴史なのでぶっちぎってやる!言いたいこともあったしな。栞には聞こえない声量で語りかける。
「姉さん…。とりあえずでいいから聞いてほしい。俺には姉さんが、なにを抱えているのかはわからない」
葵の体がピクッと動く。落ち着いてきたようだ。
「それでも、俺たちは家族だ。いつかでいい。1人で抱え込まないで相談するなり、頼ってほしい。それだけ」
あ〜!顔が熱い!最後ですげー恥ずかしくなったわ!これでいいだろう、と栞の方を伺うとうんうんと頷いていた。精神の方に異常なまでのダメージを負った俺はよろよろと立ち上がる。
栞の補助を受け葵姉さんも立ち上がる。こっちもよろよろしてるよ…。
「八くん…。ありがとうね」
その笑顔を俺は一生忘れないだろう。
俺と葵姉さんの間に栞が入り、3人で手を繋いで屋上へと向かった。
ちなみに、最下位は木を成長させすぎた光と、遙のセクハラによって暴走した茜であった。俺?自分のは1つだけ取ってきて他のは栞と輝のところに入れたよ?
そして、撫でてる時からカメラのことを忘れて、バッチリと栞と葵姉さんを撫でているのが映っており、問い詰められたのはまた別のお話。
葵と栞のところが書いてて一番楽しかった…。
八幡の能力に関しては賛否両論あるかもですが温かい目で見ていただけたらと思います。