最初に言っておく。
この話の中心になる人はヒロインではない!
「はぁぁ…。今週は櫻田くんとお話し出来なかったなぁ…。もう少しでいいから話したいな」
ある日のこと、茜を振り切った俺が昼ご飯を人気が少ないベストプレイスで食べている時のことだ。ひとりの女生徒が陰鬱な表情でやってきて座ったかと思えば、話し始めた。え、独り言だよね?というか、俺のこと見えてないの?ついに俺の存在感が、目の前にいても見えなくなるという状態に達したのか?なにそれ怖い。
その後もその女生徒は独り言を言っている。
これは話しかけたほうがいいのか…?俺はなにを試されてるんだ。
このままでは、俺がプライバシーを侵害したとかで警察のお世話になってしまうかもしれない。仕方ない、話しかけてみよう。
「あにょ…」
ビックゥ!!
ああ、クソ!噛んだわ!そして、女生徒がいつからいたの?みたいな驚愕を顔に貼り付けているわ。あ、この人先輩か。奏たちと同じ学年だな。
「いい、いつからそこに⁉︎」
ええー。やっぱり気づかれてなかったのん?
「いや、最初からいたんすけど…」
「ええ!ご、ごめんね!ちょっと悩んでて気付けなかったの!無視してたわけじゃないよ⁉︎」
アワアワと手を振っている先輩。ちょっとほんわかした。
「いや、別にいいですよ。気付かれないとかそういうのは慣れてますし」
「!私も!みんなからは陰が薄いってよく言われる…」
「…名前間違えられたりとかですか」
「そうなの!私、小学生の頃この辺に住んでたんだけどね、親が転勤族で四年生の時に引っ越しちゃったんだ。それで、高校に入る時に戻ってきたんだけど、小学生の同級生はあんまり覚えてくれてなかったんだよね…」
「俺は中学の頃とかに休み時間寝てたら次の授業が移動教室だったみたいで起きたら誰もいなかったことあります」
「さ、流石に私はそこまでではなかったけど…」
俺の渾身の自虐ネタは引かせたようだ。
「私、あなたといいお友達になれそうな気がするよ!」
「陰が薄い仲間ですか」
なにその傷の舐め合いの関係は。虚しくね?
「まあまあ、私は2年の佐藤 花です。あなたの名前は?」
…どうしよう。これでも俺って王族なんだけど。いや、テレビも嬉々として出てないけど。それでも少しはテレビに出たこともあるんですけど…。あ、ちょっと自分の影の薄さに涙が…。
「ええ!なんで、泣きそうになってるの⁉︎私変なこと言ったかな⁉︎」
「いえ、久しぶりに自分の影の薄さにを実感しただけなんでお気になさらず…」
「この会話の中にそんなこと実感するよう話し合ったかなぁ⁉︎」
知らないって時に残酷だよね。
名前か…どうしようか。さっきこの人櫻田くんって言ってるんだよな。おおかた修のことだろう。まあ、気付いてないみたいだしいっか。
「…1年の比企谷 八です。ヨロシクオネガイシマス」
「なぜカタコト…?よろしくね、比企谷くん!」
こうしてとある日の春に影の薄い同盟ができたのであった。
〜☆〜
そして、幾ばくかの日が経ち、今日も昼休みにベストプレイスで会合が行われていた。
「比企谷くん!今日は朝から櫻田くんと話せたよ!牛乳かけられちゃったけど今日は一日絶好調だよ!」
「はあ、良かったですね。というか、そんな理由でジャージ着てたんすね。櫻田先輩は特殊な趣味を持ってるんですね」
会合というより佐藤先輩から自分の兄についての報告をただ聴き続けるという、なにこれ?拷問?という惚気である。兄弟だと言っておけば良かったなって…。
「えへへ…。嬉しいなぁ」
朝から牛乳ぶっかけられてここまで幸せそうな顔できるのか(ドン引き)。ちょっとマトモじゃない。好きすぎるだろ…。かれこれ毎週の木曜日の昼休みはペストプレイスに先輩がやってきて、惚気を聞かされている。うーん、ここまで修が好きというオーラを出してるのになぜ気付かないんだ?不思議でならん。こんなの見てわかるだろ?
あ、ちなみに先輩が修を好きになったきっかけは、ほとんどの人が名前を覚えてない中、修だけが覚えていてくれたからだそうだ。やだ、ちょろい…。かくいう俺もそんなことになったら告白して振られているだろう。あれ、俺もちょろかった…?
「先輩…。そんなに好きなら告白でもしたらいいんじゃないですかね」
「うぅ…それが出来たらいいんだけど…。櫻田くんの好きな子のタイプとか知りたいし…。あ!私が聞くのは恥ずかしいから、比企谷くんが友達経由で聞くのは…。ご、ごめんね。そういうわけじゃなくて!」
なんで謝られてるんですかね?なんですか。お前に聞くような友人はいないだろってことですかそうですか。その通りですけどね!謝罪のほうが傷つくわい。
「なめないでもらいたいもんですね。俺だってやろうと思えばそのくらい出来ます。やろうと思わないだけで」
「それは大丈夫なの…?」
「で、仮にタイプが分かったとして先輩はどうするんですか?」
「え、どうするって?それは、櫻田くんの好きなタイプになれるよう努力を…」
「好きな人のために自分を誤魔化すんですか?それで好きになってくれた人は本当に先輩を見てるって言えるんですか?それなら、素の自分を好きになってもらえるよう頑張ったらいいんじゃないですか。仮にそんな自分を誤魔化してする恋愛なんて欺瞞では」
「……」
あ、ちょっと言い過ぎか…?先輩が黙ってしまった。
「…こんな俺とも関わってくれる先輩はいい人です。なので、そんな先輩は今のままでいけばいいと思います」
「……こんな私で大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ。少なくとも俺だったらこんなに優しくされたら勘違いして告白してフラれちゃってますね」
「くすっ。フラれちゃうんだ」
「そりゃ、先輩には思い人がいますからね。当たり前でしょう」
「うん!そうだね!」
「いやそんな笑顔で言い切ることはないのでは?地味に傷つくわ…」
「ご、ごめんね。でも、比企谷くんの話で自信がついたよ!ありのままの私を好きになってもらえるように頑張るね!」
「…はい。頑張ってください、先輩」
笑顔になった先輩は、きっとありのままの自分で向かい合えるだろう。あの朴念仁に好きになってもらえるように頑張って欲しいもんだ。
「あ、でもでも、やっぱり好きなタイプは気になるからなんとか聞けないかな?ほら、好きなタイプに一致してたら自信がさらに持てるし」
えぇー。いい感じの終わりでしたやん…。
〜櫻田家 in 岬&遥の部屋〜
「というわけで、修の好きな女子のタイプを教えてくれ」
「急にどうしたの兄さん?風邪?ついに頭おかしくなった?」
とりあえず、岬がいないうちに聞いておこうと遥の元へやって来たらこの洗礼である。
「風邪ではないから安心しろ。それより、ついにってどういうことだ。ついにって」
まるで頭がおかしくなるのが決まってたみたいな言い方するのやめてくれませんかねぇ?
「んん゛!で?どうしたの急に?兄さんがそんなこと気にするなんて明日は天変地異でも起こるのかな。普段そんなことに興味ないのに」
「うっせ。知り合いから頼まれたんだよ」
「えっ?兄さんに知り合いとかいたの?」
しばいてやろうかこのガキ。
「俺だって知り合いぐらいいるわ。鮎ヶ瀬とか、会長とか、……」
「それ全部姉さんたち繋がりの人だよね…。それと同じクラスとかなのに友達でもないんだ…」
うっさいわ。自分で言ってて思ったよ…。それと、同じクラスの奴だったら全員友達なの?んなわけないわ。
「で、どうなんだ?」
「いや待って、そもそもなんで僕に聞くの?本人に聞けばいいじゃないか」
「んなの修が面倒だからだに決まってるだろ」
「兄さんってかなり修兄さんに遠慮ないよね…。…メンドくささで言ったら兄さんの方が上だと思うけど」
聞かなかったことにしてやろう。俺、そんなに面倒い?そんなわけないよね?
「まあ、そんな理由だ。ほら、遥の能力でチャチャっと数値化してくれよ」
「僕にもだいぶ遠慮ないね!いや、なんでやる前提なのさ。別にやらないからね」
「はあ〜、遥は兄のささやかな願いも聞いてくれないのか…。まあ、遥の能力にもわからないものはあるもんな…。人の心までわからないもんな〜」
「ぐ…。いいだろう!やってやるよ!」
こんな挑発に乗るとはお兄さんちょっと心配だよ?そんなちょろいと奏になんかやられるよ?
「ちょっと待ってて」
少し離れて様子を見る。少し目を瞑ったかと思えば、小さめのノートに何かを書いた。
「だいたいこんな感じかな」
素朴・・・30%
優しい・・・10%
笑顔・・・20%
胸がでかい・・・40%
二度見した。遥をみる。遥は首を振った。
おおう、マジか。まあ、男なら仕方ないよね。
「まあ、だいたいだし、ただの予想みたいなものだからあんまり気にしなくていいんじゃないかな」
すげぇ。自分の能力にかなりの自信を持っている遥はすらフォローに回るレベルって…。嘘だと言ってよ…。なんとも言えない空気になりながらも俺はこの部屋を出たのだった。
〜修&輝の部屋〜
「というわけで、修。お前の好きな女子のタイプを教えろ」
「いきなりどうした⁉︎」
ま、本人確認が1番早いよね。さっきの結果じゃモヤモヤしてるし。あのままでは先輩に伝えられたものじゃない。
「どうした、八幡。お前がそんなこと聞くなんて、明日は槍でも降ってくるのか?」
「うっせ。俺だって別に興味なんかないわ。調子のんな」
「えぇー?ならなんで聞いてきてるんだよ⁉︎」
「…色々あるんだよ」
「ほーほー」
なにニヤニヤしてんだ。処すぞ。
なんか気恥ずかしくなって顔を背ける。すると、ドアの向こうに気配があった。ま、誰でもいいか。
「で、どうなの?」
「好きなタイプかぁ…。ちょっと考えるわ」
割と真面目に考えてくれてるのか。意外だわ。
「なに、意外みたいな顔をしてるんだ」
「え、なに?心読めんの?怖いわ」
「それはそっちの専売特許だろう。顔に出てるんだよ。ま、それに珍しく弟が頼ってきてくれてるんだ。少しくらいは真面目にやろうと思っただけだよ」
そこまで読みやすい…?
「で、タイプだな。そうだなぁ。素朴な感じの人が好きかな?あと、優しくて笑顔が可愛い人かな」
あと胸。クッソ!さっきの結果がチラつくわ!なんか、パッと聞いた感じ、先輩とだいぶ被ってる気がするな。というか、一致してるな。まあ、似たような人がいるかもだし、まさかね?
「俺が話したんだし、八幡も話せよ」
「ええー。俺を専業主夫として養ってくれる人。はい、この話終了」
「待て待て。俺が恥ずかしい思いをして本音で話したのに。性格とかの話だよ」
…まぁ、ワザワザ教えてもらった訳だし、俺も考えたほうがいいか…?
うーん?考えてもピンと来ないな。
「出てこない?それなら、兄妹の中ならどうだ?」
「栞だな」
「おおう。その即答は流石の兄でも引くぞ」
はあ?栞の天使さを馬鹿にしてんの?いいよ?喧嘩なら買うよ?
「じゃ、聞くもん聞けたし戻るわ」
「おーう。俺のこと気になってる女子がいるんだったらそのうち紹介してくれよ」
「爆ぜろ」
「なぜ急に⁉︎」
あんないい人から好かれてんのに気付かないやつは爆ぜてオッケーです。とりあえず、佐藤先輩にメールしておくか。あ、メアドは同盟が出来た時に登録した。というか、された。
『櫻田先輩のタイプわかりました。
素朴で笑顔が可愛い人だそうです。頑張ってください』
…流石に胸のことはねぇ?いや、割と先輩は大き…ゴホンゴホン。
送信するとすぐに返信がきた。
『ありがとー╰(*´︶`*)╯♡私、頑張るね!ᕦ(ò_óˇ)ᕤあと、明日もいつもの場所集合ね!\( ˆoˆ )/』
頑張って欲しいものだ。そして、惚気を減らして欲しい。いや、増えるのか?
「さて、そろそろ寝るか〜」
「そうね。その前にお話があります」
「俺はありません」
「こい」
「はい…」
その日は深夜になるまで兄妹だは結婚できないと延々と説明されたのだった…。おのれ、ブラコンめ!知ってるわ!
〜☆〜
side Sato
初めまして、私は佐藤花と言います!私は今、昼休みになった瞬間駆け出していました。それは、昨日来たメールの真実を確かめるため。
『櫻田先輩のタイプわかりました。
素朴で笑顔が可愛い人だそうです。頑張ってください』
ちょっと素っ気ないけど、優しい後輩くんだよね!分かりづらいだけで。
彼、比企谷くんと出会ったのは2年生になって幾ばくか過ぎたころ。その当時の私は、私のことを覚えていてくれた櫻田くんと話すのにかなり必死だったような気がする。それで、その日は午前中も話すことができていなくて校舎裏にある人があまり来ないところで落ち込んでいた。
『あにょ…』
人が居るとは思わなかった私は突然声を掛けられてすごくビックリしてしまった。人が居たの⁉︎その声を掛けてきた人物が比企谷くんだったのだ。帰宅部の私は後輩と関わることもないので先輩と呼ばれるのが少し嬉しかった。それから、空気が薄い者同士で同盟なんてものをその場の勢いで組んでしまい、比企谷くんは迷惑がるかな、と思っていた。けれど、彼は毎週木曜日は出会った場所で私の話を聞いてくれたのだ。私が話して、彼が呆れながら話を聞いてアドバイスをくれる。そんな時間が好きになっていた。それはそれとして、比企谷くんってどこかで見たことがあるような気がするんだけど…。どこかですれ違ったりしたのかな!
そして、昨日櫻田くんのタイプを教えて欲しいという私の願いに彼は嫌そうな顔をしながらも、夜には教えてくれた。私が優しいね、というと彼は、そんなことはない。俺のためだ。なんて言いそうだけど、間違いなく彼は優しいよね。
そんな彼からのメールの内容が、櫻田くんのタイプが素朴、笑顔が可愛い人、私は当てはまるのだろうか。比企谷くんからの意見が聞きたくて今日も呼び出してしまった。昨日のお説教を受けて、好みのタイプになろうとするわけじゃないけど、気になるものは気になるのだ。
気になるといえば、昨日のお説教の時、彼の顔が一瞬辛そうなものになっていた。彼が何か抱えて居るのなら、お友達として私は力になりたい。だけど、きっと助けを求めることはないのだろう。だから、私は彼の味方でいようと思う。先輩として、友達として。
Side out
———————
Side H
さて、今日も呼び出されてしまった。あ、別に校舎裏でカツアゲとかじゃないよ?佐藤先輩からである。おおかた、修のタイプに自分があってるかどうか聞きたいんだろうな〜。と思いながら、いつものベストプレイスに向かう。
なんか、いつのまにか、木曜日は先輩とご飯食べることが日常になってしまったな。以前までの俺だったら、ベストプレイスに人が来た時点で、別の場所を探していただろう。不思議なもんだ。
と考えつつも、ベストプレイスに着くといつもは俺が先にいるのだが、今日は先輩がやって来ていた。こちらに振り返ってくる先輩の目はめっちゃワクワクが隠せていなかった。どんだけ楽しみだったの…。
「待ってたよ!比企谷くん!」
「はい、お待たせしました。で、どうしました?」
「うん!比企谷くんから見てどうかな?私?」
「どうとは?」
「分かってるくせに…」
「いやちょっと何言ってるかわからないです」
「櫻田くんのタイプに合ってるかなって話!」
「えーと、素朴で笑顔が可愛い人でしたっけ?」
あと胸がデカイ。
それを踏まえて先輩をみる。うーん。時折、修の話をしている時の笑顔は問題ない。で、素朴か。素朴が何を指しているのかは分からんが、ほかの今時のJKと比較するとかなり、地味…げふん、素朴な感じではないだろうか?そして、胸もある。問題ないな。
「どうかな?」
こっちをジッと見ながら聞いてくる。
それだけ聞くとカップルの会話みたいだから少し気恥ずかしさがあるんですけど…。
「まあ、かなりタイプ合ってるんじゃないですか?」
「ほんと?やった!」
目を逸らしながら答えると跳ね上がるが如く喜んでいた。
「あ、でもよく櫻田くんのタイプとか分かったね。比企谷くん聞ける人いたんだね」
悪意とかない分余計に刺さるよね…。
「え、あ、ち、違うの!そういうことじゃなくてね!」
「いえ、いいんです。間違いではないので。とりあえず屋上に行って来ます」
「屋上で何する気⁉︎ほんとごめん!」
「来世は鳥になりたい…」
「ごめんってばー!」
〜☆〜
放課後である。いつもの俺なら、茜に引っ張られるように帰るのだが、今日は何故か生徒会の雑務をやらされている。あれ?おかしくねー?僕、生徒会役員じゃないよー?
「ありがとー。助かりました。持つべきものは、頼りになる弟ですね」
「いや、おかしくね?なんで俺が手伝うことになってる?生徒会じゃないんですけど?」
「まあ、いいじゃない。帰りにあなたが好きなコーヒー買ってあげますから」
「…しゃあないな」
「ええ!それでいいんですか⁉︎」
「いいんですよ、会長。お互いwin-winですから」
〜30分後〜
「…ん。とりあえず終わったから帰るわ」
「助かました。では、帰りに買っていきますね」
「おう。待ってるわ」
「ありがとうございました。助かっちゃいました」
「いえ、ではこれで。お疲れ様です」
さて、帰るかと、高機能目覚まし時計ことスマホを見ると佐藤先輩から20分前くらいにメールが来てる。なになに…?
『櫻田くんが髪が赤めで高めのツインテの女の子と歩いてるよ⁉︎』
ふむ…。え、これ茜じゃないの?輝たちが買い物に行った時に、修から高めのツインテを要求された茜じゃないの?いや、ほかにも同じ人がいるかもだからわからんけど…。
どう返信したらいいだろうか、と悩んでいると続けてメールが。
『今どこにいる?私を迎えに来て(T ^ T)』
先の話題の茜からだった。あれ、修と帰ってなかった?疑問に思いつつも茜に連絡を入れその場所まで迎えに行く。向かった先には、路地の裏で顔出したり、引っ込めたりしている茜が。
「あ!来たー!待ってたよ〜!」
涙目になりながらこちらに文字通り飛んできた。ちょっ、くっつくのはやめて!
「なんで、1人なんだよ。修はどうした?置いていかれたのか?」
「いや、それが…」
茜から話を聞くと、修と2人で帰ってる途中に後ろから追跡されていることに気付き、特定するために路地に誘い出したそうだ。そして、来たのが、佐藤先輩。そして、なんやかんやあり、先輩は告白。修は素直に嬉しい。が、告白に応えるのは選挙が終わるのを待って欲しい、と。それに佐藤先輩は待つとのことで、修に先輩を送らせるために茜は離脱し、今に至ると。
えっ?なにそれ、すごい展開早くない?いや、望ましい展開ではあるんだけどなんか早い。とりあえず、佐藤先輩おめでとうございます!
まぁ、それはさておき帰ろう。茜が抱きしめている腕がそろそろ感覚なくなって来た。
〜☆〜
『勢いで告白しちゃったよ!(//∇//)でも、一応オーケーが貰えました(((o(*゚▽゚*)o)))♡
その夜、佐藤先輩からメールが来た。この文面だけみるとパワーがあるな。
『おめでとうございます。』
さて、これで先輩は木曜日に来ることはないだろう。なにせ、修との交際は間違いないだろうしな。俺と先輩の関係も終わりだろう。
〜翌週〜
「あ!比企谷くん待ってたよ〜!今日は来ないかと思っちゃった」
何故か先輩がいた。
「いや、先輩こそなんでいるんすか」
「あれ?来ちゃダメだった?」
「いや、だってしゅ…櫻田先輩と一応とはいえ付き合うことになったんですよね?」
「?保留されちゃったけどね…」
「なら、ここで会わないほうがいいんじゃ…。ほら、櫻田先輩にも悪いですし」
俺と会う必要もないはずでは?という言葉は続かなかった。
「むう…。君はあれかな?私が櫻田くんと付き合うために今まで付き合わせたと思ってるのかな?」
「現にそうなのでは…?」
「はぁぁぁぁ〜〜〜〜」
なんかすごいでかいため息つかれた。
「そんなわけないでしょ!私は君とお友達として、話したくて来てたんだから!」
「はい?」
「はい?じゃないよ!私と君は先輩、後輩という間柄だけど友達でしょ?」
「いや、なんか同盟とか言ってませんでした?」
「……そういう揚げ足は取らなくていいの!私は比企谷くんのこと、友達と思ってたんだけど。…君はイヤ?」
急にしおらしくなるのやめてほしい。これやられたら、俺が悪いみたいになるじゃないか。ソースは俺。光とか栞にやられたら確実に罪悪感抱く。
「……イヤ、じゃないですけど…。先輩はいいんですか?俺、これでもだいぶ面倒くさいと思いますけど」
「本当にね…」
呆れた顔をされてしまった。
「いい?別に同情だとか、惰性とかではないの。ただ、私が君と友達になりたい」
そんな真摯な目を向けられるのは慣れていない。でも、手を伸ばしてみようと思った。
「…俺で、よければ」
「うん!じゃあ、これで君と私は友達だね!これからもよろしく。比企谷くん♩」
「はぁ…。あ、友達料金はいくらですか?」
「そんなものないよ⁉︎君は友達をなんだと思ってるの⁉︎」
俺に友人が出来るのは間違っている?
ーオマケー
「あ、八くんがメールしてるのなんて珍しいね〜」
「そうか?いや、そうだな。俺も珍しいと思ってる」
「へ〜誰?」
「友達」
「…!」
「え、なんでそんな驚いた顔してんの?俺にだって友人くらいいるからな」
「これはみんなに報告だー!」
「わざわざする必要なくない?なに、俺そんなに友人とかいないと思われてる?あと、話を聞いて」
その後、家族から『大丈夫?お金取られてない?』『何かあったら私にいうんだよ⁉︎』『で、友達料金はいくらに払うの?』とか涙が出るお言葉を頂戴したのだった。
最後にも言っておく。
ヒロインじゃないよ!