櫻田家の八幡   作:璃羅

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一ヶ月に一回から二回投稿になってきている璃羅です。
卒論が辛すぎて割と期間が空いたりしてしまっています。
今後も遅れる可能性は大ですが、よろしくおねがいします!



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夏休みも終わり、だんだんと残暑が緩くなってくるころになってきた。あぁ、夏休み…元気でな、また来年会いましょう。

 

二学期が始まり、このクラスの面子も変わりなく、登校してきているようだ。真っ黒に焼けていたり、ハゲだったやつの髪の毛が増えていたり、お前一学期の時メガネとかかけてなかっただろ?というやつがいたり、高校デビューならぬ新学期デビューだろうか。というか、カツラは余りにも自虐的すぎませんか?

 

「ひさしぶり〜、は、八幡」

 

声をかけられたのでそちらを向くと鮎ヶ瀬がいた。よかった。コイツは新学期デビューとかいうことをやっていないようだ。

 

「おう」

 

「ちょっと?ひさしぶりに会うのにそれだけ?あんた、夏休み中ろくに家から出てないって聞いたわよ。…何回か誘ったのに」

 

ちょっとー?人のプライバシーを勝手に渡さないでくませんか?茜さーん。あと、最後の言葉聞こえてますよ?あいにく、難聴ではないので。だが、無視する。それが俺クオリティー。

 

「ほっとけ。俺が家から出ないのは用事がないからだ。用事がありゃ、外には出てるし。そもそもあんな暑い中、遊びに行くとか信じられんわ」

 

「あんたねぇ…」

 

おかしい。飽きられた目で見られているだと?普通、用事がなければ家とか出ないよね?折角、冷房が効いた家でダラけられるならダラけるよね?

え?普通ない?うっそー。

 

「家から出ないアンタのために来年は用事作ってあげようか…?」

 

「めんどい」

 

「あ、あんたねぇ…」

 

だってだって、なんか顔赤くするくらいには怒ってるじゃん?そっぽ向きながらいやいやそんなこと言われてもMじゃないから困るわー。

やだ、なんか落ち込んでる?俺のせいなの?そうなの?ちょっと罪悪感あるじゃない…。

 

「…………気が向いたらな」

 

「…!楽しみにしてるわ」

 

ま、どーせ来年になったら忘れてるだろ(フラグ)。そんなに嬉しそうにされると勘違いしちゃうからやめてね。

それと、新学期デビューしたハゲよ。カツラ取られてるじゃねぇか…。こっち、チラチラ見んな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

夏休みを終え、学校が始まる初日というのは始業式があるため、基本的には半ドンであろう。我らの学校も始業式が終わったら、授業もなく帰れるのだ。いつもこうしようぜ。

 

現在は、そんな始業式が行われる体育館へ行くために廊下に並ばされているのだ。こういった整列とかさせるのはクラス委員長、またの名を学級委員というが我が妹で、極度の人見知りである茜がクラス委員長をやっているのだ。

 

何故?と思う人もいるかもしれないが意外と単純なものなのだ。その理由は『知らない人じゃないから』。ある程度の知己な人だと、人見知りは発生しないらしい。その割に、近所の人には発動するけどな。茜らしいというか、何というか。

 

ちなみに、その話を聞いて奏が『じゃあ、国民全員と知り合いになればいいじゃない』といったところ、『国民全員と知り合いになんてなれるわけないじゃん。常識的に考えてよ』と煽られ、奏に青筋が浮かんでたのはここだけの話。

 

そんなクラス委員長である茜を副委員長として支えているのは複品?だっけ?なんか違う気もするな…。まあ、いいか。その粗品というやつがいるのだ。コイツはとある会の会長であるがいまはまだ語る時でないだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「来週末、全校をあげて町内清掃活動を行います」

 

全校集会では、長ったらしい校長の話が終わり、生徒会からのお知らせが生徒会長の代わりの副会長である奏によって行われている。どうやら、近日、地域貢献の一環として街中のゴミ拾いやらなんやらをするそうだ。めんどくさい…。サボろうかな…。

 

と、壇上でその話をしている奏と目が合う。能力を使わなくても何が言いたいか分かってしまった。

 

『逃げたらコロス』

 

目は口ほどに物を言うというのは本当だね!震えと寒気が止まらないや…。もう季節は冬になったのかな…?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「そういえば、生徒会長ってどういう人なんだろ?」

 

なんだ急に。朝礼も終わり、次の時間は掃除のため、教室へと戻る道を歩く俺の隣にやってきた茜がなんか言ってた。ボーッと前を見てると耳を引っ張られる。結構いたい!犯人を見るとむくれていらっしゃる。

 

「八幡に話してるんだけど」

 

「ほーん。それは知らなかったな。というか、鮎ヶ瀬と話してこいよ。俺に話しかけられても困るわ」

 

学校においていつもは隣にいる鮎ヶ瀬の姿は見えない。なにやってんのかね?

 

「花蓮のことは、いまはいいの。それより、八幡には文句があります」

 

「受け付けません」

 

「なんで花蓮を鮎ヶ瀬って呼んでるの?」

 

プレッシャーが発動した。

この重圧で能力を使ってないだと⁉︎こいつめ、一体どんな修行を積んだらこうなるんだ!そういや、名前で呼べとか言われてたっけな(二話を読もう!)

突然なにか、電波を感じたが現在俺が感じているのは圧倒的なプレッシャーである。ポケモンも伝説に挑む時はこんな風に感じるのだろうか。ちょっとこれに挑ませるのは、酷いかもしれないよ?トレーナー諸君!

 

「で、言い訳は?」

 

「いやいや、そんな早くから言い訳だなんて決めつけるなよ。そもそも、俺が本当にそんなことをしなければいけないなんて証拠ないだろ。証拠を出せ、証拠を!」

 

「で?」

 

「すいません、忘れてました!」

 

奏が切れた時以上のパワーを感じた。言い訳を繰り返していたら、死んでいたぜ…。

 

「ただい…って、なにやってんの?2人して」

 

「あ、花蓮」

 

救世主じゃ!救世主様がやってきおったぞ!軌道修正しなければ。

 

「で、なんの話だっけか?茜」

 

「むっ。そうそう、生徒会長ってあんまり見ないけどどういう人なのかなって」

 

「あ〜、確かに見ないね」

 

え、知らないのん?この学校に在籍する生徒としてそれぱどうなのよ?俺でさえ知ってるよ?奏に生徒会の荷物とか運ばさせられてるからな!あの人は病弱だからな〜。栞と輝の次くらいに心配するレベル。結構高めにいるな、おい。

 

「八幡は知ってる?」

 

花蓮が聞いてきた。どうしようか。ここで知ってるというとどんな人?という話に発展し、俺の1人の時間が減ってしまう。だが、ここで知らないふりをしたら後でこの嘘がバレた場合の未来が暗すぎる。と、いうわけで答えることにしよう。

 

「あー、いち「会長!今朝の朝礼の件ですが!」ぉぅ…」

 

人が話そうとしてるときに遮るの誰だ!声がした方へ顔を向けるとメガネをかけた我がクラスの副委員長服品?いや、福品か。が、体格のでかい男子と共にいた。

 

「あれ?3年生の武田先輩じゃない?」

 

「よー覚えてるな、お前さんは」

 

「あんたも覚える努力すれば?」

 

ふぇぇ。花蓮さんの目が冷たいよ〜。俺だってちゃんとクラスメイトの名前くらいは覚えてますよ?多分、きっと、maybe。福品?さっき覚えたからノーカンで。

 

あ、先輩とやらがこちらを具体的にいうと茜に気付いたな。

 

「ちょっと待っててください」

 

福品がこちらへとやって来たな。

 

「櫻田さん。急を要するみたいだから、ちょっと行ってくるね」

 

「あ、はいっ」

 

「さて、それじゃ行きましょうか。先輩」

 

2人は去って行ったのだった…。なんか茜が思案しているな。どうせ、なんで先輩が敬語使ってるんだろうとか、会長って言ってたよねとか考えてるんだろう。

 

面白そうなことになりそうだし、生徒会長の件は黙っていよう。そうしよう。

嫌な予感がするのは、気のせいか…?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

結果として、茜は珍しく3年の教室まで出向くことによって生徒会長と出会うことが出来たようだ。そして、葵姉さんからの情報漏洩により、俺が生徒会長のことを知ってることが発覚。折檻が決まった瞬間だった…。

 

体がボロボロになりながらも、俺はとある教室の前にやってきた。その教室の名は地学準備室。古典部があってもいいんじゃない?この学校。

 

その教室の前にはまるでこの部屋には一切通さないかのように、生徒が門番のごとく立っている。中からは、何か喧騒が聞こえてきているが、放課後であるからか特にこちらにくる生徒もいないようだ。

 

「お疲れ様です」

 

とりあえず俺は門番の先輩(ネクタイの色で判別)に声をかける。

 

「はっ、お疲れ様です!」

 

「中入らせてもらってもいいっすかね…?」

 

「構いませんが、今は会議中なので喧騒にまみれていると思われますよ」

 

地学準備室のドアに手をかける。確かに、何か言い争っている声が聞こえてくる。

 

ガラッとドアを横にスライドさせて開けると、福品と昼の先輩が何か取っ組み合ってるようだ。ドアを開けて音によって一斉に中にいる人の目線が向いてくる。ちょっと、怖いな。

 

「これは、名誉顧問!お疲れ様です!」

 

「「「お疲れ様です」」

 

この場にいる全員が挨拶をしてきた。やだ、ちょっと嬉しい。

 

「お疲れ様です。あと、敬語とか別にいいので」

 

あんまり畏まられるのは好きじゃないのだ。親が偉いだけで俺自身は別に偉いわけでもないしな。

 

「しかし、珍しいですね。名誉顧問がここにくるとは」

 

「確かに、今までFC会には出なかったのに、どうしたんですか」

 

そう、ここは櫻田茜ファンクラブ(通称FC会)という者たちの集いの場なのだ。ちなみに会長は福品で、修がNo.2として存在している。別に俺はFC会に所属しているわけではない。何故、俺が顧問なんていう胡散臭いことをしているのか。それは、ひとえにこいつらの監視である。

 

別にファンクラブを作るとかは俺に決定権ないから別に構いやしないがあまりに度が過ぎるのは許容できない。というか、近づき過ぎるのは許さん。そんな理由もありながら、この茜のファンクラブには時折、監視として見て回っている。基本的には影ながらだけどな。

 

「いや、今回の件についてどうすんのかと思ってな」

 

「ああ、今回は我々FC会は見守ることにしました。やはり、茜様の成長も見守るべきであると考えたので」

 

「そか、ならいいわ」

 

あんま茜の日常に介入するつもりなら言おうと思ったがそんなつもりもないなら別にいいか。

 

「じゃ、お騒がせしました」

 

んじゃ、帰るかな。準備室を出ると昇降口へと歩みを進める。夕焼けがリノリウムを照らし、幻想的な雰囲気を醸し出す廊下を歩く。

そういえば、忘れてたけど茜は会長に会えたのかね?とかなんとか考えてると何か遠くから音が聞こえてくる。

 

「〜〜〜〜〜!」

 

うーん。聞いたことがあるような声だな。

 

「は〜〜〜〜ま〜〜!」

 

あんまり学校で大声を出すもんではないぞ。誰だか知らんけどな。

 

「は〜〜ち〜〜ま〜〜ん!!」

 

おいおい、そろそろ反応してやれよはちまんとやら。女子が呼んでるぞ。全く、いい加減にしろよ。リア充が。

 

「八幡?」

 

ガシッと肩を掴まれる。おや?冬になったわけではないのに背筋がゾッとするぞ?こんな寒気は……今朝感じたな。姉からの圧で。つまりは、そういうことだ。後ろを振り向きたくないわ…。だって、今この瞬間も肩に置いてある手の力が強くなっててててて!!

 

「肩砕けるわ!」

 

あまりの痛みに後ろを振り向くと赤い悪魔…の他に葵姉さんとご学友の方々がいる。生徒会長もいらっしゃる。

 

「こんにちは。八幡くん」

 

「久しぶりだねー」

 

「八くんも今帰るところ?」

 

「どもっす。生徒会長は今日の体調は大丈夫ですか?」

 

「はい、風邪気味みたいですけど、今日は調子いい方ですよ?」

 

あー、栞の次くらいに癒されるわ。ちなみに、葵姉さんの友人の先輩方とは俺が奏によって生徒会の雑用をさせられてることによって面識はあるのだ。

 

ただ、時々葵姉さんは後ろめたさを感じてるのか、思いつめたような感じの顔するときあるんだよな。これでも、何年も暮らしてるしな。顔には出にくいけど、意外と葵姉さんは分かりやすい。人の顔で空気を読んできた俺にはまるっとお見通し!

 

「で、八幡?」

 

おっと、忘れてたわけじゃないよ?ただ、現実逃避したかっただけどから!そこんとこ間違わないでよね!

 

「なんだよ。そんなフグが膨れてるような顔して?お前が何に怒ってるのか俺には皆目見当もつかんぞ」

 

「なんで言わなかったの…?」

 

「あ?」

 

何に対してだ。まさかとは思うが、いとこであるということに気づいた?いや、自分で言っててないな。どーせ他のことだろう。

 

「なんで生徒会長のこと知ってるのに言わなかったの!」

 

ちょっと警戒して損した。

 

「教えてくれたら3年生の棟に行かなくてもすんだのに!」

 

「ちょ、ま、肩掴んでふるな。酔うわ!」

 

グワングワン揺れるから気持ち悪さがマッハである。おえっ。

 

「理由を話さないと繰り返すよ…?」

 

ああ、嫌な予感というのは当たるものだなぁと苦笑いの先輩方に囲まれて俺は考えることをやめたのだった…。

 

———————————

 

『それでは、本日の清掃頑張りましょう!』

 

という、久しぶりに生徒の前に出た卯月先輩の一言によってぞろぞろと俺たちは、清掃を開始した。

 

俺らのクラスは川の中の清掃である。マジかー。

 

「茜ー?大丈夫なの?」

 

「あはは…。大丈夫だよ。そう、大丈夫大丈夫」

 

どうやらうちの妹は大丈夫ではなさそうです。町内の人から見られたりしており、もう自己暗示のレベルにまで至っているな。それでも、掃除の手は緩めないんだから真面目だよな。

 

さて、それはそれとして話さなければいけない奴がいたようだ。そいつの後ろから近づくステルス能力を舐めるなよ。

 

「よう」

 

「こ、いや、櫻田くん⁉︎どうしました?」

 

慌てた様子でそいつは手に持っているものを後ろに隠す。もう分かってるんだが。

 

「いや、な。茜が恥ずかしながらも頑張っているというのに、その姿を見てニヤニヤしてる奴がいるんだが、それってどうしたらいいと思う?」

 

そいつ——もう面倒いや。福品から汗がダラダラと出てきている。

 

「しかも、それをカメラになんて収めてちゃあな。ちょっと兄としてお話をしたいんだよ」

 

「そ、そそそそうなんですか!そそそんな人も居るんですね!」

 

「そのカメラ壊すかデータ消すかどっちがいい?」

 

「すっいませんでしたーー!」

 

この後、茜に気付かれることなく福品が持っていたビデオカメラのデータは消去しこの清掃は終わりを迎えたのだった……。

 

こうして、FC会には兄を怒らせないという新たな会則が出来たとかなんとか。

 

 

ーおまけー

 

ゴミを出しに行った際

 

「あ〜、づがれ゛だ」

 

「お疲れ様です。八幡くん。ふふっ。随分お疲れみたいですね」

 

「意外と腰とかにきますしね…。卯月先輩は体調大丈夫なんすか?」

 

「はい!今日は珍しく体調が絶好調なんです」

 

「絶好調なのはいいですけど、無理しないでくださいよ?葵姉さん達がまた心配しますし」

 

「たち?」

 

「ああ、葵姉さんと奏ですよ。何だかんだ先輩が体調悪い時とかいつも心配してますしね」

 

「お二人にはいつも、助けられてばかりで申し訳ないです」

 

「いやいや、あの二人は世話焼くのは好きですから、問題ないですよ」

 

「あの…」

 

「はい?どうしました?先輩」

 

「八幡くんは?」

 

「はい?」

 

「八幡くんは心配とかしてくれたりするんですか…?」

 

「………………はい。そりゃあ、しますよ。姉の大事な友人ですし」

 

「…むう」

 

「なに顔膨らませてるんですか。茜の真似かなんかですか?」

 

「まあ、いいです。引き続き清掃頑張ってくださいね。八幡くん」

 

「はあ、まあ。何だったんだ…?」

 





個人的報告
アズールレーン始めました。
巨影都市が楽しみ。
卒論とかなくなればいい。

では、また次回お会いしましょう!

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