問題児たちと最後の吸血鬼が異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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十六話 襲撃と怒り

 中庭から屋敷に戻ろうとするライム達四人(ライムの腕の中の耀を入れて五人)。が、なんの前触れもなく異変が起きた。

 顔を上げると同時に遠方から褐色の光が四人(五人)に射し込み、レティシアはハッとして叫ぶ。

 

「あの光………ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」

 

 焦燥の混じった声と共に、レティシアは光から庇うように三人(四人)の前に立ち塞がる。

 光の正体を知る黒ウサギは悲痛の叫びを上げて遠方を睨んだ。

 

「ゴーゴンの首を掲げた旗印………!?だ、駄目です!避けてくださいレティシア様!」

 

 黒ウサギの声に状況を理解したライムは、

 

「チッ、よく分からぬがあれがヤバイのは確かなようだな―――十六夜!済まぬが耀を頼む」

 

「あいよ」

 

 十六夜に耀を託すと、レティシアの前に飛び出す。

 

「は?何をしているんだ君は!?下がれ!」

 

「それはこっちの台詞だ同類!―――こんな光、我が魔術の炎で………ッ!?」

 

 ライムは左手に炎を灯して褐色の光を焼き尽くすつもりで投げつける。が、そんなものは無意味とばかりに光は炎を呑み込み、更にライムの左手を呑み込んで石に変えた。

 

「(これは………不老不死の我にとっては最悪のギフトだな………っ)」

 

 そうしている間にも褐色の光は進み、みるみるうちにライムの左腕を石に変えていく。数瞬後には身体全体か。

 これでは今から逃げてももう助からないだろう。だがせめて、やっと出会えた同類だけは………!

 そう思いライムは咄嗟に右手ですぐそばにいたレティシアを突き飛ばす。

 

「……………ッ」

 

 ライムに突き飛ばされたレティシアは、黒ウサギの隣で尻餅をつく。

 レティシアはいきなり突き飛ばしてきたライムに文句の一つでも言ってやろうとして、

 

「―――――ぁ」

 

 顔を上げた時にはライムの身体はもう、褐色の光に完全に呑み込まれて瞬く間に石像と化してしまった。

 

「ライムさん!?」

 

 悲鳴のような声を上げる黒ウサギ。無言で石像(ライム)を見る十六夜。そして―――

 

「………ん………え?ライ、ム?」

 

 十六夜の腕の中で眠りから覚めた耀が、石像(ライム)を見つめて固まる。そうなるのは無理もない。ついさっきまで語らい合った彼女が、ちょっと意識をなくした後に目覚めたら、物言わぬモノに変わってしまっていたのだから。

 耀が固まっていると、光の射し込んだ方角から、翼の生えた空駆ける靴を装着した騎士風の男達が大挙して押し寄せてきた。

 

「いたぞ!吸血鬼は石化させた!すぐに………は?」

 

「違う!吸血鬼は石化していない!?別の奴に当たったのか、クソッ!」

 

「ならもう一度石化のギフトを―――」

 

「―――お前らかッ!私のライムにこんな酷い仕打ちをした奴は………ッ!!」

 

『―――――!?』

 

 騎士達の言葉を遮るように、十六夜の腕の中から抜け出していた耀が、石像(ライム)を抱き締めながら、激昂する。彼女の凄まじい怒りと殺気に、騎士達は一瞬言葉を失った。

 物凄い剣幕の耀に、黒ウサギとレティシアは唖然とし、十六夜も、これはすごいな、と少し驚いた表情を見せた。

 騎士達はハッとして耀に言い返す。

 

「な、なんだ貴様!我らに歯向かうつもりか!?」

 

「〝ノーネーム〟如きが、我ら〝ペルセウス〟に敵うとでも思うのか!?」

 

「馬鹿が。〝名無し〟が我らに楯突くなどよほど死に」

 

「五月蝿い黙れッ!!いいから私の質問に答えろ!やったのはお前らか!?」

 

『……………ッ!』

 

 騎士達の言葉を無視して怒りに任せてもう一度問いただす耀。石像(ライム)を抱き締めたまま。

 その態度に、流石の騎士達も我慢ならなかった。耀を鋭い視線で睨み付け、

 

「上等だ〝名無し〟の小娘ッ!」

 

「そんなに命が惜しくないなら、斬り殺してくれるわッ!」

 

 そう言って数人の騎士が剣を、槍を携えて耀に襲いかかろうとする。

 耀は瞳を紅く染めて石像(ライム)を背に守り、迎撃態勢に入る。十六夜も獰猛な笑顔を作り、拳を構える。

 このままでは戦闘が始まってしまう。慌てて黒ウサギが止めに入ろうと―――

 

「止めてくれ!」

 

 ―――する前に、騎士達と耀達の間にレティシアが割り込んで、両手を広げて止めに入った。

 騎士達は驚き、レティシアに当たりそうだった武器を慌てて引く。耀はムッとした表情でレティシアを睨んで、

 

「誰か知らないけれど邪魔しないで!ライムをこんなにしたあいつらは絶対に許さない………ッ!」

 

「駄目だ!奴等に手を出せば〝サウザンドアイズ〟と問題を起こすことになる!そうなったら君達のコミュニティはおしまいだ!」

 

「………ッ!?」

 

 レティシアの言葉に一瞬逡巡する耀。それはそうだ。〝サウザンドアイズ〟と言えば、ライムの攻撃を一切寄せ付けず且つ容易く叩き潰し返す星霊・白夜叉を幹部に持つコミュニティだ。そんな怪物が所属する組織に真正面から挑んで勝ち目などあるわけがない。

 だけれど、だからといってライムを石像に変えた奴等を許すわけにはいかない。

 

「元はといえば私が悪いんだ!」

 

「………え?」

 

「私が、〝ノーネーム〟に来なければ、彼女をこんな目に遭わせなくて済んだんだ………っ!」

 

 レティシアは非常に申し訳なさそうに顔を歪めて叫ぶ。

 

「レティシア様………」

 

 自分のせいでライムを酷い目に遭わせてしまった、と後悔するレティシアを、黒ウサギが悲し気に見つめる。

 耀は暫く無言になり、次の瞬間―――怒りに満ちた瞳をレティシアに向けて、

 

「そう………お前のせいで、ライムが………ッ!」

 

「………っ!」

 

 怒りに任せてレティシアに殴りかかろうとする耀。それを静観を決めていた十六夜が、ライムのギフトで強化された耀の拳打を受け止めた。

 

「落ち着きな、春日部」

 

「―――ッ!十六夜まで私の邪魔をする気なの!?」

 

「ああ。だってオマエ、真祖ロリが身体張って守った同類を殴ろうとしてたからな」

 

「………ぇ?」

 

 十六夜の言葉に、耀は一瞬フリーズした。今、なんて言った?この人はライムの同類で、ライムが身体張って守った………?

 その人に私は何をしようとした?吸血鬼のギフトを全開にして思いっきり―――

 

「ああ………っ!」

 

 耀は、自分がやろうとしていたことが愚かな行為だと理解して、その場に両膝を突いた。

 そんな耀を見て、もう大丈夫だろ、と十六夜は掴んでいた彼女の拳から手を放す。

 一部始終をハラハラと見守っていた黒ウサギは、ようやく胸を撫で下ろせた。

 レティシアだけは、本当に済まなそうな表情で耀を見ていると、

 

「何!?真祖だと!?」

 

 真祖という単語を聞いた騎士達にどよめきが広がった。そして、何かヒソヒソと騎士達が集まって話し始める。

 

「あん?」

 

 それを十六夜が怪訝な瞳で見ていると、話を終えたのか騎士達が十六夜達を見下ろして、

 

「我々が誤って石化させたその者が、真祖と言うのか?」

 

「ああ。そうだが?」

 

 十六夜が答えると、騎士達はまたヒソヒソと話しをしてから向き直り、

 

「その者が真祖ならば話が早い。実は我らの首領が真祖を所望しておられる」

 

「!?」

 

「だから譲れってか?」

 

「そうだ。真祖は〝名無し〟が所有しておく代物ではない。我ら〝ペルセウス〟の取引品になるべきだ」

 

「なっ!?」

 

 勝手な理屈を並べてライムを譲れと言ってくる騎士達。これには黒ウサギも激怒した。

 

「巫山戯ないでくださいッ!ライムさんを売り物として譲れとか冗談じゃない!そもそも彼女は〝ノーネーム〟の所有物ではなく」

 

「私のもの」

 

「そうですそうですライムさんは―――って違うのですよ耀さん!?」

 

「違わなくないだろ。春日部と真祖ロリはもうキスなんかしちまう仲なんだしよ」

 

「た、確かにそうですけど………所有物扱いはライムさんが許容してくれないと黒ウサギは思うのです!」

 

「大丈夫。寧ろ私がライムの所有物だから、逆にしても怒らない」

 

「………そ、そういうものですか?」

 

「うん。そういうもの」

 

 石像(ライム)を抱き締めながら頬を朱に染めて言い切る耀。これはもうライムさんにゾッコンだなあ、と黒ウサギは思った。

 そんな耀をニヤニヤと見つめる十六夜。今はのろけてる場合ではないだろう、と呆れるレティシア。

 騎士達はイライラしながら桃色空気に包まれている耀を睨み付け、

 

「………つまり、我らに真祖を譲り気はないと?」

 

「うん。誰がお前らなんかに私のライムをあげるか馬鹿野郎♪」

 

『―――――ッ!!?』

 

「ちょ、耀さん!?相手を挑発しないでください!」

 

 怒る黒ウサギをスルーして、十六夜の、よくやった、とでも言いたげな顔に親指を立ててグッとしてくるそれに、耀も、したり顔で親指を立ててグッと返す。なお、石像(ライム)は耀の腕の中。痛い頭を抱えるレティシア。

 青筋を立ててご立腹の騎士達は、チッと盛大に舌打ちし、

 

「本当は強奪してやりたいが、それは犯罪だからな………手を引こう。その代わり―――」

 

「………え?」

 

 不意にレティシアの身体が宙に浮き、そのまま騎士達の下へ飛んでいった。―――否、突如虚空から出現した二人の騎士がレティシアを拘束しているところを見ると、不可視のギフトでも使ったのだろうと推測できる。

 

「この吸血鬼は我らの所有物だから返してもらおう」

 

「な、レティシア様!?」

 

 いつの間に!?と驚愕する黒ウサギ。してやられた。お巫山戯に気を取られてさえいなければ………いや、もっと周りに警戒していればレティシアを奪還されることはなかった。

 耀も、油断した、と唇を噛む。せっかくライムが身体を張って守った彼女を、あっさり奪われてしまうなんて、ライムに顔向けできない。

 耀の五感をもってすれば、もしかしたら不可視のギフトを見破れたかもしれないのに。というより、ライムのことばかりに気がいっていたのがいけなかったかもしれない。

 十六夜は、石化や空飛ぶ靴の次は透明になる兜か、と面白そうなものを見れて笑みを浮かべていた。

 一方、騎士達はレティシアの奪還に成功して安堵した。

 

「これでよし………危うく取り逃がすところだったな」

 

「ギフトゲームを中止してまで用意した大口の取引だ。台無しになれば〝サウザンドアイズ〟に我ら〝ペルセウス〟の居場所はなくなっていたぞ」

 

「それだけじゃない。箱庭の外とはいえ、交渉相手は一国規模のコミュニティだ。もしも奪われでもしたら―――」

 

「箱庭の外ですって!?」

 

 十六夜達の前に出た黒ウサギの叫びに、連れて帰ろうとした騎士達が不愉快そうに睨み返し、

 

「なんだ〝名無し〟。まだ何かあるのか?」

 

「あるに決まってます!一体どういうことです!レティシア様は―――〝箱庭の騎士〟は箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ!?そのヴァンパイアを箱庭の外に連れ出すなんて………!」

 

「我らの首領が取り決めた交渉。部外者は黙っていろ」

 

 騎士は突き放すように語り、飛び去ろうとする。しかし黒ウサギはなおも食い下がる。

 というか本来ならば本拠への不当な侵入はコミュニティへの侮辱行為であり、世間体的にもよろしくない。信頼が命の商業コミュニティである〝サウザンドアイズ〟ならばこんな暴挙をする事はないだろう。これは明らかに、黒ウサギ達を〝ノーネーム〟と見下した上での行為だ。もう既に〝名無し〟と言って侮辱されているわけだが。

 

「こ、この………!これだけ無遠慮に無礼を働いておきながら、非礼を詫びる一言もないのですか!?それでよく双女神の旗を掲げていられるものですね、貴方達は!!!」

 

 激昂する黒ウサギを騎士達は鼻で笑った。

 

「ふん。こんな下層に本拠を構えるコミュニティに礼を尽くしては、それこそ我らの旗に傷が付くわ。身の程を知れ〝名無し〟が」

 

「なっ………なんですって………!!!」

 

 黒ウサギからバチコン!と、堪忍袋が爆発する音がした。レティシアを石化させようとしたり、コミュニティを侮辱する行動と発言の数々に、黒ウサギの沸点は一気に振り切れたのだ。

 怒りに震える黒ウサギを見下す騎士達は、その姿を鼻で笑う。

 

「フン。見逃してやったというのに、我らと戦うというのか?」

 

「愚かな。自軍の旗も守れなかった〝名無し〟など我等の敵ではないぞ」

 

「恥知らず共め。我らが御旗の下に成敗してやるわ!」

 

 口々に罵り猛る騎士達。彼らはゴーゴンの旗印を大きく掲げると、陣形をとるように広がる。

 しかし壮絶な薄笑いを浮かべる黒ウサギのウサ耳に侮蔑の言葉は届かない。彼女は騎士達を睨むと、らしくない物騒な笑顔で罵った。

 

「ふ、ふふ………いい度胸です。多少は名のあるギフトで武装しているようですが、そんなレプリカを手にして強くなった気でいるのですか?」

 

「何!?」

 

 今度は騎士達が怒声を上げる。黒ウサギは青髪を淡い緋色に変幻させ、高く舞い上がらせて威嚇した。

 

「ありえない………ええ、ありえないですよ。天真爛漫にして温厚篤実、献身の象徴とまで謳われた〝月の兎〟をこれほどまで怒らせるなんて………!」

 

 瞬時に一帯の空気が重圧に変わった。息を吸う事さえままならないほどの力が敵とレティシアを襲う。百もの空を駆ける騎士達は、黒ウサギの放つ威圧感にたじろいでいた。レティシアも、冷や汗を掻く。

 黒ウサギが右腕を掲げると刹那、空気が裂けるような甲高い音が響き渡る。まるで雷鳴のような爆音が周囲一帯を支配し、その右手には閃光のように輝く槍が掲げられている。

 騎士達に動揺が走った。

 

「雷鳴と共に現れるギフト………ま、まさかインドラの武具!?そんな話はルイオス様から聞いていないぞ!!」

 

「あ、ありえん!最下層のコミュニティが神格を付与された武具を持つはずが………!?」

 

「本物のはずがない!どうせ我らと同じレプリカだ!」

 

 稲妻の迸る槍を逆手に構えた黒ウサギは、

 

「その目で真贋を見極められないなら―――その身で確かめるがいいでしょう!」

 

 熱膨張した空気が、雷鳴を轟かせる。同時に、黒ウサギの髪がプリズムを放ち、緋色から蒼に染まる。

 

「やめろ黒ウサギッ!!〝ペルセウス〟に喧嘩を売ったらただでは済まされないぞ!?」

 

 レティシアが叫ぶが、黒ウサギは首を横に振って、

 

「黒ウサギもそれは重々承知です。ですがすみませんレティシア様。この無礼者共を今さら許すことはできません!」

 

「………黒ウサギ」

 

 レティシアも黒ウサギが怒るのは分からないでもない。自分も〝ペルセウス〟の所有物ではなく〝ノーネーム〟の一員だったら、彼らに槍を向けていたかもしれないのだから。

 レティシアが口を閉ざしたその隙に、黒ウサギはインドラの槍を天に向かって撃ち出そうとするが、

 

「「てい」」

 

「フギャ!」

 

 後ろから耀と十六夜にウサ耳を力いっぱい引っ張られた。すっぽ抜けたインドラの槍は雷鳴と共に明後日の方向に飛び、箱庭の天井に着弾する。解放された稲妻と熱量は数㎞に亘って天幕を照らした。

 

「お、ち、つ、け、よ!白夜叉と問題起こしたくないんだろ?つか俺が我慢してるのに、一人でお楽しみとはどういう了見だオイ」

 

「フギャア!!?って怒るところそこなんですか!?」

 

「そうだよ十六夜。お楽しみ云々なんかよりライムに当たったらどうするつもりなの!?」

 

「フギャア!!?………あ、すみません忘れて―――って黒ウサギはノーコンではないですよ!?」

 

 天に向かって投擲したものが、どうして地上に、しかも黒ウサギの後ろにいてかつ耀さんが背に守っているライムさんに当たるんですか!?と叫ぶ黒ウサギ。

 黒ウサギの投擲術の良し悪しなんてどうでもいい、と言わんばかりに耀はウサ耳を力いっぱい引っ張る。十六夜は十六夜で、リズミカルに力いっぱい、何度もウサ耳を引っ張っていた。

 

「い、痛い、本当に痛いです御二人さん!」

 

「「だが断る」」

 

 そう言って十六夜と耀は、せーの!と黒ウサギを持ち上げた。ウサ耳を根っこに掴み直して。

 

「痛い痛い痛い痛い!い、いい加減にしてください御二人さん!?ボケていい場面とそうでない場面をわきまえてください!今はあの無礼者共に天誅を」

 

「もうみんな帰ったぞ」

 

「え?って逃げ足速すぎでしょう!?」

 

「違うよ十六夜。姿が見えなくなってるだけ。あっちからあいつらの()()においと、ライムとは別の吸血鬼の気配をまだ感じる」

 

「「は?」」

 

 あっちから、と上空を指差して、〝ペルセウス〟の騎士達に向けて毒を吐く耀。愛しのライムを石像にしただけでは飽きたらず、売り物にさえしようとした彼らに怒っているのがよく分かる。

 いや、それよりも―――

 

「吸血鬼の―――レティシア様の気配が分かるのですか耀さん!?」

 

「うん。ライムのギフトを使えば、吸血鬼の気配を感知できる」

 

「真祖ロリのギフト?春日部は吸血鬼化してないのに吸血鬼のギフトが使えるのか?」

 

「うん」

 

 即答する耀に、驚く黒ウサギ。十六夜も、こいつも中々面白えな、と笑みを浮かべる。

 黒ウサギはキッと空を見上げて、

 

「あの無礼者共は不可視のギフトを使っているということですね。レティシア様の姿も見えないとなると、彼女にも不可視のギフトが使われてますか」

 

「〝ペルセウス〟ってコミュニティが俺の知るモノと同じなら、間違いないだろうよ。………しかし、箱庭は広いな。空飛ぶ靴や透明になる兜が実在してるんだもんな」

 

 感慨深く頷く十六夜をキッと睨み付ける黒ウサギ。しかし十六夜はウサ耳を放して首を横に振った。

 

「気持ちは分かるが今はやめとけ。俺はいいけど、〝ノーネーム〟と〝サウザンドアイズ〟が揉めたら困るんだろ?」

 

「そっ………それは、そうですが」

 

「詳しい話を聞きたいなら順序を踏むもんだ。事情に詳しそうな奴が他にいるだろ?」

 

 ハッと思い出す黒ウサギ。レティシアを連れてきたのが白夜叉ならば、詳しい事情を知っているかもしれない。

 

「他の連中も呼んで来い」

 

「え?」

 

「どうもキナ臭い。最悪その場でゲームになることだってあり得る。なら頭数はいた方がいいだろ」

 

「それ、私も賛成。というかあいつら全員叩き潰さないと気が済まない」

 

 ライムに酷いことしておいて逃げるとか本当許さない。絶対に全員叩き潰す………!的な雰囲気の耀に、苦笑する黒ウサギと十六夜。

 耀ってこんな性格だったっけ?と黒ウサギと十六夜が顔を見合わせて首を捻る。我関せずといった彼女も、〝愛〟が絡むと別人のように豹変するようだ。

 

「―――って耀さんはいつまで黒ウサギの素敵耳を引っ張っているんですか!?十六夜さんは放してくれてます!耀さんもいい加減に放し―――フギャ!?」

 

「はい、放した。これでいい?」

 

「よ、耀さん!?うぅ………もっと優しくしてください………っ!」

 

「注文の多いウサギは焼かれるよ?」

 

「注文多くないですけど!?というかなんで焼かれるんですかッ!」

 

 うがーっ!とやっと解放されたウサ耳を逆立たせて怒る黒ウサギ。我関せずと知らんぷりする耀。ケラケラと笑う十六夜。

 それから黒ウサギが飛鳥とジンを呼び出し、

 

「―――え?ライムさん!?」

 

「どうして石になって………!?」

 

 石像(ライム)を見て驚愕する飛鳥とジン。それに耀が不機嫌な顔で、

 

「敵の襲撃を受けた。ライムは私達を庇って、石にされちゃったの」

 

「な、敵の襲撃があったんですか!?」

 

「それ本当なの春日部さん!?私達の友人にこんなことして―――許せないわ!」

 

「うん。だから飛鳥、ジン。力を貸して」

 

「分かったわ!友人の頼みだもの。引き受けるわ!」

 

「僕も、仲間がやられたのを黙って見過ごすわけにはいきません!」

 

 耀の手を取る飛鳥とジン。なんか目的がずれていっているが、とても心強いのでいいかなあ、と思う黒ウサギ。

 そして十六夜・飛鳥・耀(と腕の中にいる石像(ライム))・黒ウサギ・ジンの五人(六人)は〝サウザンドアイズ〟二一〇五三八〇外門支店を目指した。




結局レティシアは奪い返されて、ライムの行為は徒労に終わった。

リメイク前は月夜が鎌でゴーゴンの威光(レプリカ)をぶった斬ってましたが………リメイク後のライムはとある方々のせいで〝石化〟は弱点の一つにされており、対抗手段はなく受けたら自力では復活できません。殺す力ではないため。
ちなみに〝凍結〟もライムの弱点の一つです。受けたら自力では復活できません。こちらも殺す力ではないため。凍死………?そうなる前に氷の牢獄に捕らえられるわけですので、〝凍結〟は吸血鬼を殺す力ではありません。
〝石化〟と違って全身氷漬けにされる前に炎で溶かすなりすれば〝凍結〟に対抗できますが。

次回はルイルイ登場ですね。レティシア興味ないけど黒ウサギは超欲しいルイルイって単純に巨ぬー好きなのかな………?だとしたらロリ巨ぬーのライムはルイルイの肉奴隷にされたりするのかな………

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