問題児たちと最後の吸血鬼が異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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十三話 〝ハンティング〟【後】

「―――よう。待ちくたびれてたぜ、名無し共」

 

 紅い瞳と白く長い牙を光らせて、獰猛に嗤うガルド。その背後には、指定武具とおぼしき〝白銀の十字剣〟が床に突き刺さっていた。

 

「「「―――ッ」」」

 

 昨日とはまるで別人のような強大な気配を纏うガルドに、飛鳥達三人は息を呑む。

 一方、ライムは瞳を細めてガルドを見据え、

 

「………見違えたな虎よ。昨日の弱々しいお主とは段違いだ」

 

「ああ。今の俺はこの場にいる名無し勢の中で、テメェ以外には圧勝する自信さえあるぜ―――吸血鬼の真祖様よ?」

 

 ガルドの口から、ライムの正体が告げられる。

 それに一同は一瞬だけ驚きの表情を見せたが、すぐに掻き消えた。ライムの言っていた事を思い出したことによって。

 ライムは、ふん、と不機嫌な顔を作り、ガルドを睨みつける。

 

「お主に我の正体がバレているのは承知済みだ。だが別件でお主に訊きたいことがある」

 

「………なんだ?」

 

「虎よ、お主は何故―――我が姫の眷属になっておる!?」

 

「………は?」

 

 予想外の問いに、ガルドは固まる。だが、自分に与えられた〝真祖を倒しうる力〟を与えたのは、修道女が〝姫〟と口にしていた黒ローブの幼い少女―――

 

「―――!ああ、そういうことか!修道女が連れていたあの〝姫〟ってのは、真祖(テメェ)のお姫様だったってことか………!」

 

「修道女………?お主、何の話をしておるのだ?というかお主………誰に力を貰ったのかも知らなかったのか!?」

 

 ガルド本人さえ、ライムが言うまで誰に力を貰っていたのかも分からなかったらしい。流石のライムも目を丸くした。これには飛鳥達も驚愕である。

 

「ああ。あの修道女は教えてやるとか言ってたくせに、起きたらいなくなってやがった。本拠はあちこちに木が蠢いていて滅茶苦茶になってるし、ワータイガーにはなれねえし、瞳は紅くなってるしで軽くパニックになった」

 

 ガルドは頭を抱えて起きたあとの出来事を語る。それを聞いて、敵ながら憐れだな、と思う一同。

 だがすぐにガルドは表情を獰猛な笑みに変えて、

 

「俺が吸血鬼になってることに気がついたのは、そのあと冷静になってからだ。試しに走ったり殴ったりしてみたらとんでもねえ!脚力も腕力も、ワータイガーの頃とは比べ物にならねえくらい強力になってたぜ!」

 

「「へえ、そう」」

 

 ガルドの話が自慢話に路線変更したことを悟った飛鳥と耀は、テキトーに流すことにした。

 その二人の態度に、ちょっ!?と慌ててやめるようにジンが口を開こうとした―――が、一手遅かった。ガルドが、あ?と鋭い視線で二人を睨んで、

 

「舐めた真似してるとぶっ殺すぞ小娘共がッ!!」

 

「「やれるものならやってみろ、この外道虎男(とらお)」」

 

「なんだその俺を貶した上に馬鹿にしたような名前は!?―――テメェらがその気なら、今すぐにでもぶっ殺してやるよ………ッ!!」

 

 ガルドは怒号を上げると、両手から鋭い爪を生やして、飛鳥達に突進してきた。その速度は音速に匹敵するほどだった。

 しかし、ガルドの亜音速で振り下ろした鬼爪は飛鳥達には届かなかった。ライムが真正面から受け止めたからだ。

 

「耀達には指一本も触れさせぬぞ虎よ」

 

「………チッ!」

 

 力任せに押し切ろうとするガルド。が、相手は真祖だからか、逆に押し返されてしまった。

 

「くく、如何に我が姫の眷属になったからといって、吸血鬼の真祖たる我に力では勝てまい」

 

「………そうみてえだな」

 

 ライムは挑発のつもりで言ったが、ガルドは冷静に呟いて一旦跳び退き距離を取る。

 冷静なガルドに、ライムは眉を寄せる。確かにこちらのギフトは〝契約(ギアス)〟により通じないから向こうが有利なのは分かる。だが、彼の落ち着き方は何か嫌な予感がした。

 

「ライム、大丈夫?」

 

「ぬ?うむ、子細ない。心配は無用だ耀」

 

 心配そうに背後から声をかけてくる耀に、ライムは笑顔で問題ないと頷く。

 それからすぐにガルドの方に視線を戻す。するとガルドはニヤリと笑い―――両手を掲げた。

 

「………?」

 

「よく見とけよ真祖様。これがテメェのお姫様から貰った異能(ちから)だ―――灼き裂け、〝灼熱の爪牙〟!」

 

 そう告げた刹那、ガルドの両手………否、両手に生えた鬼爪が激しく燃え上がった。

 その光景を耀達三人が呆然と見つめる中、ライムだけは、くっ、と表情に焦りを滲ませていた。

 低位吸血鬼は、〝霧化〟や〝変身〟などの高位吸血鬼が行使できる異能は使えない。使えない………はずだが、特例が存在していた。

 その特例とは、真祖及び真祖の子に血を啜られ眷属化した吸血鬼のことである。

 彼らは、真祖の血を直接体内に取り込むことによって、通常の異能とは別格の特殊異能を個々に手に入れ、発揮することができる。

 その特殊異能は、低位吸血鬼達にとっては下克上のようなもので、唯一、高位吸血鬼にも届く必殺の一撃を秘めている。

 そしてその特殊異能を手にしているのが、まさに眼前にいる真祖の姫君(アイリス)の眷属となったガルドなのだ。

 すぐさまそれを悟ったライムは、後ろにいる三人に視線を向けて叫んだ。

 

「あれはまずい!逃げろお主達―――ッ!」

 

「「「え!?」」」

 

 悲鳴に近い声を上げるライムに、一瞬驚き固まる三人。その隙をガルドは見逃さなかった。

 

「逃がさねえよッ!」

 

 ガルドは亜音速で突っ込んできて、まず灼熱の鬼爪を飛鳥めがけて振り下ろす。

 

「え?きゃあ!?」

 

「させるかっ!」

 

 飛鳥を切り裂こうとしたガルドの灼熱の鬼爪―――ではなく右腕をライムが殴ってその一撃を撥ね飛ばす。

 しかしガルドの二撃目が既に亜音速でライムの右肩を切り裂こうと迫っていた。

 

「………っ!」

 

 躱そうと思えば躱せる一撃だが、躱せば後ろにいるジンが鬼爪の餌食になってしまう。だからライムは―――

 

「ぐぅ………っ!」

 

「何!?」

 

 ―――わざとその左手の灼熱の鬼爪の一撃を食らって、右肩に焼けるような(実際に焼かれている)痛みを感じながらもガルドの腹部を全力で殴り飛ばす。

 真祖の一撃を受けて後方へ吹き飛び、壁に叩きつけられるガルド。だが〝契約〟によってダメージは一切負わなかった。

 ライムは夥しい量の血が噴き出す右肩を押さえて、苦悶の息を吐く。特殊異能をまともに食らって死ぬほど痛い。

 死ぬほど痛いが唯一助かったのは、白夜叉の時とは違って再生を阻害されるような力はなく、緩慢ではあるが切り裂かれた右肩が癒えていくことだった。

 

「ライムさん!?すみません!僕達を庇って」

 

「気にするな。我は不老不死。この程度の傷、じきに癒える」

 

「で、ですが………っ!」

 

「よい。それよりも、お主達に怪我がなくてよかった」

 

「ライムさん………はい、ありがとうございます!」

 

 深く頭を下げてお礼を言うジン。やれやれと肩を竦めるライム。

 右肩を激しく切り裂かれたのに元気そうなライムを見て、安堵する飛鳥。だがふと右隣にいる耀に視線を向けて、

 

「―――え?」

 

 飛鳥は硬直した。耀の姿がなかったからだ。

 まさか、と思い指定武具が刺さっていた方に目を向ける飛鳥。そしてそこには、今まさに床に突き刺さっていた〝白銀の十字剣〟を抜き取った耀の姿があった。

 

「な、春日部さん!?」

 

 悲鳴のような声を上げる飛鳥。だって指定武具を手に入れたところで、吸血鬼化したガルドに太刀打ちできるはずがないのだから。

 飛鳥の声に、ハッとしたジンとライムは振り返る。耀が〝白銀の十字剣〟を手にした瞬間、ガルドは凶悪な笑みを浮かべて亜音速で駆け出す。

 

「………ッ!耀ッ!!」

 

 ライムもすぐさま耀をガルドの鬼爪から守るために音速で駆け出す。そして―――

 

 

「指定武具、確保。これで―――ッ!?」

 

 私は〝白銀の十字剣〟を手にした途端、ぞわりと身の毛もよだつような感覚に襲われた。

 恐る恐る背後に視線を向ける私。すると視界に、自分を串刺しにせんと亜音速で迫る灼熱の鬼爪が映った。

 咄嗟に躱そうとしたが、駄目、間に合わない!向きを変えるだけでもうガルドは眼前に迫っていた。

 

「………ッ!!」

 

 私は死を悟って目を瞑る。次いで、ずぶり、と肉を刺し貫く音がした。

 だが、貫かれた音がしたはずなのに、一向に痛みは襲ってこない。代わりに、ジュウッと肉を焼いた音と臭いに、かはっ、と喀血した声。そして、ひんやりと冷たい液体が私の顔を濡らした。

 私は、え?と声を洩らし、閉じていた目をゆっくり開け―――

 

「―――――ぁ」

 

 全身が凍りついた。

 私を貫くはずの灼熱の五本の鬼爪は、私の眼前で止まり―――代わりにライムの背中から深々と胸を刺し貫いていた。

 

「ぁ、ぇ………ラ、イ………ム………?」

 

 顔面を蒼白にさせて、震える声を途切れ途切れに発する私。そんな私をガルドは嗤い、

 

「ハハハハハ!助かったぜ小娘。あんたのお陰で、一番厄介な真祖様を簡単に仕留めることができたッ!!」

 

「―――ッ!!?」

 

 お前のお陰だと言って嘲笑う。そんな、私のせいで、ライムが………!?

 戦意喪失。絶望し、持っていた〝白銀の十字剣〟を取り落とす私。

 そんな私を卑しい笑みを浮かべて見つめてくるガルド。

 

「―――ぁ………ぅ、」

 

「え?」

 

「何!?」

 

 不意に小さくて弱々しい声が聞こえて、私はハッと顔を上げる。ガルドも自分の灼熱の鬼爪で串刺しにしたライムを驚愕の表情で見た。

 ライムは今にも死にそうな虚ろな瞳で私を見つめて、

 

「よ、う………無、事………か?」

 

「―――ッ!ライム!?」

 

 死にかけているのに、ライムは自分のことより私のことを気にかけてくる。

 私は涙を流しながら強く頷いて首肯した。よかった………本当に、よかった………!死んじゃったんじゃないかって思ってたんだよ!?

 ライムは私の無事を確認すると、血塗れの口元に笑みを浮かべた。

 けれどライムが生存していたことで、ガルドが面白くないように、チッと舌打ちした。

 

「こいつは魂消た!確実に心臓を貫いて焼いてるはずなのに、まだ生きてやがるとはな!」

 

「………ふ、ん。真祖、たる、我を………この、程度、で………殺せ、ると………思っ、たか?虎、よ」

 

 瀕死だというのに、ガルド相手に軽口を叩くライム。ガルドは、ハッと嗤って、

 

「そうかよ。だが、テメェを串刺しにしてる俺の爪を抜き取ったあとでも、同じことが言えるか?」

 

「―――っ!?」

 

「ガルド!?待って―――ッ!!」

 

「待たねえよッ!!」

 

 ガルドはまた嗤って、ライムの胸を串刺しにしていた五本の灼熱の鬼爪を勢いよく抜き取る。

 がふっ!と再び喀血したライムの胸元から、噴水のように勢いよく血が噴き出し、夥しい量の血が床に流れ落ち、私の全身を赤く濡らした。

 立っていられなくなったライムが、私に倒れかかってくる。血を大量に失ったライムの身体は、とても軽かった。

 目を閉じて動かなくなったライムを、私は力いっぱい抱き締めて、

 

「あ、ああ、ああああああああああ―――ッ!!!」

 

 慟哭する。ライムは吸血鬼。不老不死。だから彼女は気を失っているだけだと。でも、こんなにも軽くなってしまった彼女を見て、泣き叫ばないわけにはいかなかった。

 飛鳥も、ジンも、悲痛の声を上げている。ガルドは、憎たらしい顔で私達を嘲笑っている。

 ―――許さない。ライムをこんな目に遭わせた。お前を絶対に………ユルサナイ!

 ―――殺してやる。ライムに爪を立てた。お前を絶対に………コロシテヤル!

 私はガルドに憎悪の感情を宿した視線を向けて―――彼の顔面を全力で殴り飛ばした。

 

「………!?」

 

 流石のガルドも予想外だったらしく、驚愕に表情を歪めて、私に殴り飛ばされた。

 飛鳥達も唖然とした様子で私を見ている。一番驚いているのは私本人だけれど。

 ………よく分からないけれど、もしかしたらこの力は―――吸血鬼(ライム)のギフトなのかもしれない。

 私は動かなくなってしまった血塗れのライムを左腕で抱えて、右手に〝白銀の十字剣〟を手に取ると、飛鳥達の下へ()()で移動した。

 

「飛鳥、ジン。ライムをお願い」

 

「え?………っ!?わ、分かったわ!春日部さんは!?」

 

「………ガルドを(ころ)してくる」

 

「「―――ッ!!?」」

 

 私らしくない過激な発言に、愕然とする二人。いや、もしかしたら違う意味で驚いていたのかもしれない。

 私は、ごめん、と言って飛鳥達に託した、動かなくなってしまったライムの頭を撫でた。

 それから二人に背を向け、〝白銀の十字剣〟の柄を握る手に力を籠めて、ガルドを憤怒の炎を燃やした瞳で睨み付ける。

 そんな私を見てガルドは嗤い、

 

「ハッ、小娘如きが俺を殺すだと!?笑わせんな!」

 

(ころ)すよ。私はライムをあんなにしたお前を、絶対に」

 

 私が吐き捨てるように宣言すると、ガルドは額に青筋を浮かべて、

 

「………上等だ小娘!やれるもんなら―――やってみやがれえええええッ!!」

 

 灼熱の鬼爪を構えて亜音速で襲いかかってきた。私は、ふう、と細く息を吐いて心を落ち着かせる。

 大丈夫。今の私なら、ガルドの動きが―――見える!

 

「死に晒せ小娘ェ―――ッ!!!」

 

 怒号と共にガルドが灼熱の鬼爪を私めがけて振り下ろしてくる。それに私は、

 

 

「―――見切れ、〝絶避の魔眼〟!」

 

 

 真祖の眷属の証ある、特殊異能を発動した。

 ガルドの攻撃を()()()()()()()()完璧に見切った私は、それを敢えて紙一重に躱し、〝白銀の十字剣〟で彼の胴を横一文字に深々と斬り裂くカウンターを決めた。

 

「グハ―――ッ!?」

 

 ガルドは喀血し、〝白銀の十字剣〟で斬られて焼けるような痛みを伴った脇腹を押さえて膝を突く。

 私はガルドに振り返って、〝白銀の十字剣〟の切っ先を向ける。ガルドはギョッと瞳を見開いて慌てて横に跳んで距離を取った。

 ガルドは私の紅い瞳を見て、驚愕に表情を歪めた。

 

「な、小娘、テメェも吸血鬼だったのか!?」

 

「違う。私は吸血鬼じゃない。これは―――ライムのギフト」

 

「はあ!?嘘吐いてんじゃねえッ!じゃあなんでテメェの瞳は―――っ!?」

 

 そこまで言って、ガルドは何かに気づいたように口を閉じて瞳をいっぱいに見開く。

 そう。私は確かにライムに血を啜られて吸血鬼になるはずだった人間。でも、吸血鬼()()ならなかった。その原理は私にも分からない。

 けれど一つだけハッキリしたことがある。それは、ライムの血を大量に体に浴びた時、私の身体が熱を帯びたこと。

 そして、新たなギフトを手に入れた、そんな感覚が私の全身を巡って伝わったこと。

 私は吸血鬼化してないから、鬼の爪も、鬼の牙も生えない。その代わりに私は―――とても大切なライムの力をギフトとして手に入れた。

 吸血鬼の真祖の、眷属クラスの身体能力。再生能力。そして―――特殊異能を。

 ガルドは、クソッ!と汚い言葉を発して私を睨み付け、

 

「あと少しで名無し共を皆殺しにできると思ったら、これかよ………ッ!!」

 

 ガルドは大方、ライムを戦闘不能にしたから、あとは楽勝………とか思っていたんだろう。悪いけど、お前に明日はやらない―――!

 悲鳴のような声を上げるガルド。そんな彼に、私は〝白銀の十字剣〟の切っ先を向けて刺突の構えを取る。狙うはあの男の―――心臓!

 それを察したガルドは、絶叫のような声を上げて、

 

「図に乗るんじゃねえよ小娘がァアアアアアッ!!灼き裂け、〝灼熱の爪牙〟ァア―――――ッ!!!」

 

 鬼爪だけじゃなく、鬼牙にも灼熱を纏わせた。あれは恐らく、ガルドの全霊の攻撃に違いない。

 私は一度だけ目を瞑り、ライムの顔を思い浮かべ、願った。―――お願いライム。私に、ガルドを(ころ)す力を………!

 

 

『良かろう。我が力を受け取れ、耀!』

 

 

 不意に、ライムのそんな言葉と声が私の脳内に響き渡る。ライム………!うん。一緒に、行こう!

 私は心の中で嬉しそうに呟いて、床を思い切り踏み抜いて駆け出す。その速度は、音速の二倍に達していた。

 ガルドも、全霊の一撃を籠めて床を全力で踏み抜き、亜音速よりも速い音速で駆け出す。

 一瞬で互いの距離を詰めると、先にガルドの灼熱の鬼爪が煌めき、私を切り裂こうと音速で振り下ろしてくる。

 それを私は、

 

「―――見切れ、〝絶避の魔眼〟!」

 

 ()()()()の魔眼を発動させ、ガルドの一撃を完璧に見切って紙一重で躱し、〝白銀の十字剣〟でガルドの心臓を貫こうとした。

 

「―――――ッ!?」

 

 ガルドは、音速の二倍で繰り出された私の刺突を回避できないと悟ったのか、灼熱の鬼牙で私の首筋を噛み千切ろうと悪足掻きを見せる。

 そして―――

 

「―――――ガハッ!」

 

 ガルドの鬼牙が、私の首筋を噛み千切るよりも速く、私の〝白銀の十字剣〟の刺突がガルドの胸を深々と抉り、心臓を刺し貫いた。

 ガルドは〝白銀の十字剣〟で心臓を貫かれて口から大量の血を吐き出す。

 最期にガルドは、チッと舌打ちしたあと、私の耳元で笑って、

 

「―――やるじゃ………ねえか」

 

 それだけを言い残して、ガルドは絶命した。

 私はガルドの胸を串刺しにした〝白銀の十字剣〟を抜き取る。既に絶命したガルドは支えを失って崩れ落ちる。

 床に転がった、死に絶えたガルドを見下ろした私は、〝白銀の十字剣〟を高々と掲げて勝利を噛み締める。飛鳥とジンの歓喜の声を聞きながら。

 そんななか、私の勝利を祝福するように、気を失っていたライムの口元が、笑っているような気がした。




ガルド戦、決着です。

よく喋る虎でしたね。
ライムは瀕死の重傷を負って気絶。
耀が覚醒して虎撃破。
………飛鳥とジンが空気ですね(^_^;)

タグにオリ設定追加した方がいいかな?


ガルド=ガスパー
追加ギフト 真祖の姫君(アイリス)の眷属
・特殊異能〝灼熱の爪牙〟
読んで字の如く、吸血鬼の能力の一つ〝自然元素の操作〟のうちの〝炎〟を鬼爪及び鬼牙に纏わせる攻撃特化型の異能。
低位吸血鬼なら、切り(噛み)裂いた部位を一瞬で焼き尽くすほどの破壊力を持つ。高位吸血鬼でも、切り(噛み)裂かれれば致命傷を負うほど。
これが人間の場合は、掠っただけでも〝炎〟は全身に燃え移り一瞬で焼き尽くされる。

春日部耀
追加ギフト 真祖(ライム)の眷属
・特殊異能〝絶避の魔眼〟
絶対回避の防御特化型の異能。
必中のギフト以外なら基本何でも躱せる回避力を持つ。
使用者の速力で回避不可の攻撃も、相手が攻撃しようとする前に発動すれば回避可能である。ただし、ちょっとでも遅かったら発動しても躱せないので要注意。

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