捻くれた先輩   作:超素人

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ようやく、体育祭終わりました。
長かったー!
って思ってました。
読み返すと4話目くらいまで、1日ずつしか進んでなかった。
なので、三部になったのは、許して下さい。

ということで体育祭編ラストです。

よろしくお願いします。




8.運営委員は辛いです。終

 

あれから、顔を何度か触れて確かめて、ようやく会議室に戻った私。

待っていたのは、零度の視線×2。

ひぃぃ、先輩?助けて。

目だけで先輩を探す。

椅子に座って目を反らす先輩がいた。

 

「一色さん?」「いろはちゃん?」

 

「「後でね♪」」

 

あー、今日は夕日が綺麗だなあ。

サッカー部はがんばってるかなぁ。

サッカー部?

あ、忘れてた。

連絡してないや。

 

「あの、葉山先輩に連絡だけしてきていーですか?部活は行けそうにないんで。」

 

あ、連絡しといたよー。

と軽く言う結衣先輩。

そんな逃したくありませんか?

と思ってたら、

 

「こっちが無理言って残ってもらうのだから、先に連絡したのだけれど。」

 

なんか心配した顔してる。

余計な事しちゃった?とか思ってます?

特に結衣先輩。ショボーンとした犬みたい。

かわいー。よしよししたら怒りますかね?

よしよしとか考えて、さっきの事を思い出す。

知らず、自分の手を頭に乗せる。

やっぱり全然違う…。

 

そんな事してると、先輩と目が合う。

顔ごと反らされた。

なにそれ、かわい…くない。キモい。

危ない危ない。

眼の腐ってる先輩が可愛い?

ないない。よくてキモ可愛い。

なにそれ、結局どっちよ?

 

閑話休題(使い方あってる?)

 

全員が席に着く。

ここに残っているのは、6人+生徒会役員。

委員長の相模南先輩。

生徒会長の城廻めぐり先輩。

奉仕部部長の雪ノ下雪乃先輩。

アホの子担当、由比ヶ浜結衣先輩。

そして我らが先輩、ひきがやはちまん先輩。

(実は先輩の漢字は知らない)

あと私、一色いろは。

そして、生徒会の役員さんたち。

凄い面子ですね。

私ここにいていいのかな?

さっきまで、和気藹々としてたのに。

今は空気が重いです。

 

「城廻先輩、先に1つよろしいでしょうか?」

 

「あ、そうだね。先に言っとこうか。」

 

なんだろう。2人ともこっち向いて。

実は呼んでないとか?

もう帰れとか?

怖いよー。

とか思ってたら、頭を下げられた。

え?なんで?

 

「一色さん。今日の会議の最初のこと、覚えてる?」

 

城廻先輩の言葉に私は頷く。

 

「あの時、一色さんが声をあげてくれなかったら、空気を壊してまで発言してくれなかったら、あの空気はずっとあのままだったわ。だから、ありがとう。」

 

今度は、雪ノ下先輩。

あんなことでいーんですか?

私それしかしてないですよ?

それに、

 

「わたしがしなくても誰か答えてましたよね?結衣先輩とか。だから余計なことしたかなーと思ってたんですけど。」

 

「一色。それは違う。あの空気の中で、現場班から自発的に声が上がった事に意味があるんだ。だから、全員止まっただろう。俺たち首脳部側も含めて。」

 

よかった。意味があったんだ。

先輩に心配かけただけかと思ってた。

 

「そうだよ!すごかったよ、いろはちゃん!」

 

結衣先輩が、褒めてくれる。

嬉しい。

先輩の、先輩達の役に立てたんだ。

 

「あの、一色さん。うちからも。誰もうちの声なんて聞いてないって思ってた。だから、ありがとう。」

 

相模先輩まで。

こんな事言う人じゃないと思ってた。

でも、私はあなたが許せません。

先輩は、まだきっと苦しんでる。

 

「別に相模先輩のためじゃないです。それに、わたしは相模先輩に対して、どうしても許せな「一色!」…むー、わかりました。あの空気にムカついただけですー。」

 

いいじゃないですか。

言える機会なんてそうそうない。

むしろ、ありがとうなんていらない。

先輩の噂を流すのをやめてくれればいい。

言ったら怒られるんだろうなぁ。

 

「一色さん。生徒会を代表してお礼を言うね。本当にありがとう。毎日の準備のこともね。」

 

「それは、他の2人に言ってあげてください。わたしはあまり役に立ってないです。」

 

「比企谷君みたいね。」「ヒッキーぽい。」

 

ボソッと言わないで、奉仕部女子!

先輩もなんでちょっと照れてるんですか。

私も照れちゃうんでやめてください。

早く、会議しましょう。

視線を城廻先輩に向ける。

 

「さて、どうするか、話し合おうか…。」

 

城廻先輩の言葉で、また空気が重くなる。

 

「でも、ゆきのんが説明したこと以上のものってない気がするんですけど……。」

 

先輩もそれに同意する。

私だって、あの時完璧だって思った。

少し沈黙が続く。

そんな中、口を開いたのは相模先輩だった。

 

「うちが辞めればいいのかな…。」

 

はぁー…。

結衣先輩と相模先輩が話してる。

 

正直、どうでもいい。

私には関係ない。

先輩達がやってきたことは、無駄になるけど。

それで、なにも起きないならそれでいい。

結衣先輩は次があるかもって言うけど。

ここで逃げて、次があるの?

文実で逃げて、ここがもう次でしょ?

 

「…けれど、それでいいの?」

 

雪ノ下先輩も同意見らしい。

次もいつかもないかもしれない、と。

先輩は黙ってる。

先輩はどう思ってるの?

あれ?何も考えてなさそう?

ホントに考えてなさそう。

 

誰もしゃべらない。

あるのは沈黙だけ。

どうするのかな。

 

「相模さんはよくやってると思うよ。」

 

え?

相模先輩も同じ反応。

本人も意外なんだ…。

 

城廻先輩の話。

意外だった。

生徒会長になるような人だから。

勝手に凄い人だと思ってた。

色んな苦悩があったんだ。

どの行事でも人前に立って。

でも、自分は凄くないって。

役員のおかげだって。

だから、相模さんもがんばろうって。

こんな事言える人は充分凄いと思う。

だからこそ、相模先輩に届いたのかもしれない。

どうかな?

って微笑みながら、聞く城廻先輩。

相模先輩はゆっくり頷いた。

 

 

ここからは、これからの事。

相模先輩は続投。

ならどうするか。

私、役に立つのかな?

方針は、向こうに折れさせる。

雪ノ下先輩にもぶつぶつ言う人達。

折れるのかなぁ。

会議は続く。

説得は無理。まぁそうだよね。

人員補強?

 

「あの、人員補強ならサッカー部とかダメですか?お願いすればみんな手伝ってくれそうですけど…。」

 

誰も答えてくれない。

え?結構マジメに言ったんですけど。

無視はひどいと思う。

 

「あぁ、一色。それはとりあえず後回しだ。先にサッカー部を呼べば、あいつらは出席すらしなくなる。だから、まずはあいつらを黙らせる。」

 

みんなが先輩を見る。

どうするんだろう。

そんな事ができるの?

 

「あいつらと同じ手を使おう。」

 

「具体的には?」

 

「相互確証破壊ってやつだよ。」

 

そうごかくしょうはかい?

なにそれかっこいい。

雪ノ下先輩はそれだけで分かったらしい。

また、夫婦漫才してるし。

私は、全くわからない。

多分、結衣先輩も城廻先輩も。

委員長の相模先輩も。

城廻先輩が先輩に問う。

 

あいつらの体育祭を人質にとる。

 

びっくりした。本当に。

この人の頭はどうなってるの?

きっと私がいくら考えても、浮かんでこない。

はぁ?とか言ってる相模先輩。

本気で殴りますよ。

 

ようやくみんな理解して。

城廻先輩の言葉が印象的だった。

 

「比企谷君って、やっぱり最低だね。」

 

言葉の割に、微笑を浮かべて。

少し、嬉しそうで。

だから、きっと言葉通りの意味じゃない。

そこに込めた意味はわからないけど。

 

この日はこれで終了。

私は勝負の会議の日に出番があるらしい。

帰り際に先輩が、葉山先輩に棒倒しの大将の事を仄めかしとけって言ってきた。

有力候補らしいですよー、くらいでいいらしい。

とりあえず、その日の内にメールを送った。

好感触だった。大丈夫でしょう。

 

ちなみに奉仕部女子2人からは逃げました。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

次の日から、また昼休みは先輩とごはん。

放課後は製作物。

その繰り返し。

先輩に相互確証破壊かっこいいです。

って言ったら、超ドヤ顔された。

先輩、その顔はないわー。キモい。

 

 

そして、遂に勝負の日。

体育祭前、最後の全体会議。

会議開始まで数分。

 

私の任務は、

 

『俺達が案を仕掛けやすいように敵役に徹しろ。奴らがもし黙ったりしたら、煽れ』

 

らしい。私に先輩達の敵になれと。

部員の2人も協力してくれる。

私も力になれるんだ。

誰でもできるけど、私が任された。

だから、精一杯敵になろう。

 

「では、定刻になりましたので全体会議を始めます。」

 

相模先輩の言葉で幕開けだ。

まずは、進捗状況の確認。

今回は、ここは動かない。

周りの委員の態度は、ひどいけどここは我慢。

 

そして遂に『チバセン』に議題が移る。

前回、雪ノ下先輩が提案した安全対策。

先輩達が考えたコスト削減。

首脳部でがんばってない人なんていない。

あの相模先輩でさえ、今も堂々と喋ってる。

 

ここで、はるかとゆっこが動く。

前と同じとか安全がーとか。

馬鹿の1つ覚えかよ。

さて、仕事だ。

 

「あのーそこの前の席に偉そうに座ってる先輩方は、ここ数日何をしてたんですかー?散々引っ張った結果がこれ?こっちは毎日作業してんのにー。」

 

これに、部員2人も乗っかる。

 

「だよなー」「年上だからって」

 

これには、周りに対する毒も入ってる。

これくらい許してください。

部員2人はもろに野球部への愚痴。

これで、周りの声は一層大きくなった。

もう一押しだ。

 

「委員長ー?だんまりですかー?」

 

わざと黙ってる相模先輩を攻撃する。

結果、現場班が煽られる。

周りからも、何か言えよーとか聞こえる。

それでも、話さない相模先輩。

それを見て、現場班も黙る。

そろそろじゃないですか?

 

相模先輩がゆっくり口を開く。

これ以上は策はないこと。

不満があるなら体育祭参加は自己責任。

危険があるのは、『チバセン』だけじゃない。

どの競技もケガのリスクは同じ。

だから、体育祭でるな。

部外者は、参加・見学も認めない。

 

ここで、またはるかとゆっこが茶々を入れる。

それに対して先輩が答える。

完全に校内の行事だーとか。

部外者は参加なしとか。

 

「えー?じゃ体育祭参加しない人は、休んでいーんですかー?」

 

これも、先輩から言われてた。

ここに突っ込む人間がいなかったら、私の仕事。

これもすぐに先輩が答える。

修学旅行と同様で自習。

それは、イヤだなー。

仮にそうなっても、参加しよう。

 

もう私がわざと煽る必要もない。

現場班からは、不満の嵐だ。

私は適当にブーブー言っとく。

 

そして、こっからだ。

先輩の相互確証破壊がこの程度だと?

ふふっ、あまーい。

 

体育祭出欠確認を事前に全校生徒。

今の委員の状況も全て説明。

現場班がごねてることも。

そのせいで、体育祭ができないかもって。

そうなった時、生徒達の悪意は?

当然あなたたちですよ。

 

散々、先輩を多数で傷付けたんでしょ?

多数派に潰されるかもしれない恐怖を知ればいい。

↑は、先輩の受け売りだけど。

 

 

まだ、ぶつぶつ言ってる。

相模先輩に嫌がらせしたいだけでしょ?

本当は『チバセン』なんかどーでもいんでしょ?

ほら、結局は相模先輩の文句になる。

 

聞き捨てならないことが聞こえた。

文化祭適当にしてた?

あんたらもでしょ。

そこの人?悪く言ってた?

それも、あんたらもでしょ。

嫌いなそこの人?

先輩だって、好きでいるわけじゃないし。

ダメだ。ごめんなさい先輩。

私は我慢できません。

 

「……けるな。」

 

隣のサッカー部員が驚いた顔でこっちを見る。

結衣先輩が先輩を庇う。

先輩が話し始めたのとタイミングは同じだった。

 

私は机を思い切り叩いた。

 

「いや、確かに相模はぜん『バンっ』バカ、「うるさい。」

 

うん。意味わかりませんね。

先輩話す。

私机バンっ!

先輩は、私を止めようと「バカ」。

相模先輩の「うるさい」。

 

先輩は完全に遮られ。

私は出鼻を挫かれ。

視線も、先輩→私→相模先輩。

相模先輩は、そのまま話し始めた。

 

「あんたは黙っててよ。うるさい、いつもいつも何様のつもりなの?」

 

はぁ?

 

「はぁ?」

 

あ、声に出ちゃった。

雪ノ下先輩も続く。

 

「相模さん、あなたの今の発言は…「うるさいっ!」

 

そこからは、子供みたいだった。

恥も外聞もなく、涙も隠さず。

ただ泣きじゃくった。

相模先輩は外へ。

 

結局、現場班を黙らせたのは、そんな泣き喚いた相模先輩だった。

先輩曰く、感情論には感情論。

ヒステリーにはヒステリーらしい。

先輩の相互確証破壊とは、なんだったのか。

かっこいいのに。相互確証破壊。

あ、ちなみに私は会議の後、先輩にめちゃくちゃ説教されました。

一歩間違えば、お前が喚いて、訳のわからない会議になったとのことです。

その件については、ごめんなさい。

 

でも、とにかく。

ようやく目玉競技も決定した。

運営委員の方針も決まった。

その後は早かった。

 

製作物を男子に任せ、私はミシン。

私の女子力が少し上がった。

雪ノ下先輩やヤンキー川崎先輩と衣装作り。

その後は、ざざ虫先輩が来たり。

三浦先輩が来て、ツンデレ?披露したり。

楽しく時間が過ぎました。

 

これだけ頑張ったんだから、体育祭楽しいよね!!

 

 

 

 

 

 

体育祭当日

 

 

本日は晴天なり。

てことで色々乗り越えてー。

やっと、やっとたどりついた体育祭!

うぇーい!うぇーい!

 

色々とがんばったなぁ。

ちなみに

 

奉仕部&めぐり先輩 「赤組」

 

わたし 「白組」

 

どーせ私は敵ですぅー。

この分け方、悪意を感じる。

 

ちなみに、先輩方は救護班。

先輩は、一回だけ走って、ずっとテントらしい。

いーなぁ、私もそっちがいい。

首脳部はそんな仕事があったなんて。

あーあ、つまんなーい。

 

私は遠くから、先輩達を見てるだけ。

あ、めぐり先輩も合流した。

3人で「おー」してる。

めぐり先輩と奉仕部の温度差…。

皆さんもっと乗ってあげましょうよ。

遠目に先輩と目が合った気がした。

気のせいかな。

はぁ、なんか遠いなあ。

 

今日のお仕事。

出場選手を整列させるお仕事が一件。

しかも、割と早い時間。

あとは、葉山先輩でも眺めてよう。

 

開会式も終わり、体育祭スタート。

私も製作に携わった、入場門。

そして、各プラカード。

それが使われてるのを見ると、嬉しかったりします。

うん。やってよかった。

 

さくっと仕事も終わり、あとはヒマだ。

あ、先輩走ってましたよ。

絶対、流してたけど。

高校生だし、そんなもんかな。

 

プログラムも進み、午前中終了。

葉山先輩が大活躍です。

葉山先輩はずっと女子に囲まれてた。

今までの私なら、あそこにいたのかな。

そんな姿を冷めた目で見てる自分がいて。

かといって先輩達のほうは見たくなくて。

なんか先輩が恋しいみたいで嫌じゃん?

ムカつくし、負けた気になるし?

 

 

先輩はごはんどうするんだろう。

今日は3人で食べるのかな。

私はいつもの場所に行こう。

先輩のベストプレイス。

静かで、たまに海からの風が吹いて。

ぼっちな先輩が見つけた場所。

こんな所で?って最初は思った。

でも、落ち着く。

1人はやっぱり寂しいけど。

 

はぁ。先輩こないのかな。

いやいや、今日は無理でしょ。

 

「お疲れさん。なんで首振ってんの?犬?」

 

「ふぇ?せ、せんぱい?なんで…。」

 

あざとい。とか言いながら腰を下ろした先輩。

私の分の飲み物も渡してくる。

絶対先輩のほうがあざといよ。

いて欲しいって思った時に現れるとか。

隣で、元々俺のベストプレイスだろ、とか言ってるけど、そうじゃないですよ。

 

「そうじゃなくて、こっちにいていいんですか?」

 

「捨てられた子犬みたいな顔してこっちのテントを眺めるバカな後輩がいなきゃ、あっちで食ったんだけどな。」

 

そんな顔してないし。してないはず。

『なんですか?俺はお前の事ちゃんと見てるアピールですか、まだまだ足りないと思うのでもっとちゃんと見てくれないと無理です。ごめんなさい。』

いつもの私ならこんな感じのはず。

 

でも、今はそんな言葉もでてこない。

わざと先輩達のほうを、見ないようにしてたのに。

だから、葉山先輩を見てたのに。

たまにチラっと見てただけなのに。

気付かれてたんですね。

気付いて、わざわざ来てくれたんですね。

ズルいなぁ。でも、嬉しい。

 

「それでわざわざわたしのとこに来るとか、はちまんせんぱいは、どんだけわたしの事が好きなんですかね〜。もう、しょうがないですね〜。」

 

ふざけてこんな事言ってるけど、私は嬉しさを隠せてないんだろうなぁ。

顔を赤くしながら、アホか。とかあざとい。とか言ってるけど、照れてるのバレバレですよ?

 

もしかして、本当に私のことが好きなんですか?

そんなこと、あるわけないけど。

 

先輩には、私より近くに素敵な人達がいるもん。

私じゃ、候補にもならないと思う。

それに、結衣先輩は先輩のこと大好きっぽいもん。

雪ノ下先輩も先輩のことは意識してると思うし。

だから、私なんてほっとけばいいのに。

 

そう思うのに、そう思ってるのに。

 

なんでこんなに胸が締め付けられるの?

なんでこんなに痛いの?

先輩が2人を優しく見てるのが嫌で。

私に向けて欲しいって思う。

2人に対して劣等感が湧く。

先輩の隣に2人がいると、どうしても見たくないって思う。

先輩の隣は、私の場所じゃない。

そう思っちゃうから、見れない。

 

「せんぱい。好きってなんですか?わたしわからないんです。」

 

この気持ちはなんですか?

ただの独占欲ですか?

わからないんです。

先輩に対する気持ちが。

 

「…わからん。俺は全て勘違いだったから。誰かを好きになったことなんてないのかもな。まぁ葉山は難しい相手だと思うが。時間をかけて知っていくしかないんじゃないか?」

 

葉山先輩かぁ…。

どうなんだろ。

そりゃ、かっこいいし、素敵な人だと思う。

でも、今はそれだけしかない。

葉山先輩の笑顔より、先輩の笑顔がいい。

滅多に見れないけど。

誰にでも見せる笑顔じゃない。

先輩の優しさが表にでたような笑顔。

そんな先輩の顔のほうが、見たいって思う。

 

「葉山先輩は関係ないです。もし、わたしが時間をかけてせんぱいを知りたいって言ったら、逃げずに近くにいてくれますか?わたしを突き放さずに今まで通り会ってくれますか?」

 

「もしかして口説いてます?勘違いしたくないので無理です。ごめんなさい。」

 

こんのアホ先輩が…!

真面目に聞いたのにー!

 

「茶化さないでください!真面目に聞いてるんです。せんぱいの本音が知りたいです。」

 

「……。なんで俺なんだ?意味ないだろ。」

 

なんでこんなに捻くれてるかな。

よーし、女は度胸だ。

 

「意味があるかどうかを決めるのはわたしです。正直に言いますね。せんぱいに対して、わたしは多分好意を持ってます。それが恋愛感情なのかわかりません。だから、せんぱいの近くにいてこの気持ちがどっちなのか知りたいです。せんぱいのことを知っていきたいです。」

 

先輩はポカーンって感じ。

でも、これが多分私の正直な気持ち。

人として先輩が好きかって言われれば、好き。

恋してるかって言われるとわからない。

散々考えてたけど、こういうことだと思う。

あ、これだけは言っとこう。

 

「先に言っときますね。勘違いじゃないですよ。好きなのは確定です。事実です。これが恋なのかわからないんです。わたしも、今まで誰かをちゃんと好きになったことがないからわからないんです。」

 

だから、お願いします。

本当に勝手だけど、近くにいさせて下さい。

 

「お前、葉山のことが好きなんじゃないのかよ…。」

 

そーなんですよねー。

先輩に対しても言ってたからなー。

でも、さっき気付いた。

葉山先輩の隣に三浦先輩がいても、嫌な気持ちになったことがないんですよね。

張り合ってやろうとかは思ってたけど。

恋愛感情はなかったんだろうな。

好きになりたかっただけ。

この人ならって思った自分を否定したくなかっただけ。

 

だから、ちゃんと口に出して言おう。

憧れだけで、好きって思ってた私との決別。

ここからが、スタートだ。

 

「憧れはあります。あんな女の子の理想そのままな人いませんでしたし。表面だけを見てこの人ならって思ってたんです。それを好きって思ってたんです。せんぱいの良く言う勘違いってやつです。」

 

なんかスッキリした。

悩みが1つなくなった感じ。

自分で言って、すごく納得できた。

 

「……。俺は、人の好意がわからない。お前がこれだけ言ってくれても、嘘なんじゃないか、裏があるんじゃないかって思う。お前の好意が恋愛感情じゃなかったら、どうせお前もいなくなる。恋愛感情だったとしても、きっと信じられない。だから…

 

悪いけど、その先は言わせません。

最初からいないほうがいいとか言うんでしょ?

もう遅いです。

 

「じゃぁ!じゃぁまず友達になりましょう。お互いのことを知って、いろんな事を一緒にしましょう。そして、時間かかってもいいからわたしを信じて下さい。」

 

先輩は戸塚先輩のことも友達とは言わない。

天使とか言って、頑なに友達と呼ばない。

戸塚先輩は、友達って言ってたけど。

だから、私が先輩公認の友達第1号になる。

 

「笑わせんな。友達ほど信用できないもんもねーよ。」

 

「今までのせんぱいの周りと一緒にしないでください。大丈夫です。わたしも友達なんて信用してませんから。だから、お互いにまず、信用できる友達を目指しましょう!」

 

逃がさないですよ、先輩。

もし、恋愛感情じゃなかったからと言って、先輩と離れるのは私もいやだ。

 

「絶対にあり得ないが、もし俺がお前に惚れたらどーすんだ?絶対にないけど。」

 

「その時は、ちゃんと告白してください。それに、そうやってあり得ないとか絶対とか言ってる時点で、多分脈アリです。せんぱい捻くれてますもん。せんぱい手出してください。」

 

私の想像だけど。

捻くれた性格は、せんぱいの予防線。

踏み込ませないための、踏み込まないための。

だったら、いつか私が壊します。

これが、その為の一歩です。

 

「はやく!!」

 

先輩は、ビクっと手を出した。

そう、それでいーんです。

私は先輩の手を掴む。

またビクってした(笑)

きも可愛い。

私もちょっと恥ずかしい。

 

「せんぱい。まずは、まずはですよ?友達としてこれからよろしくお願いします。もう握手したから成立ですから。はい、せんぱいとわたしは友達ー。もう解約できませーん。」

 

先輩は文句言ってるけど、知りません。

てゆーか、今までも友達みたいなものでしょ。

ほぼ毎日、一緒にご飯食べてたんだから。

あ、いー事思いついた♪

 

「せんぱい。せっかく友達になったんだから、下の名前で呼ぶってどーですか?はちまんせんぱいはどー思います?」

 

「百歩譲って友達は認めても、名前呼びは無理だ。絶対無理。」

 

あ、友達は認めてくれるんだ♪

素の私も、猫被った私も認めてくれる、初めての年上の友達。

一回でいいからいろはって呼ばせたい。

あれを使う時がきた。

 

「はちまんせんぱい?いろはって呼んで?お願い…。」

 

あ、固まっちゃった。

本気だしすぎたみたい。てへっ。

もうしょうがないなぁー。

よしよーし。戻っておいでー。

 

「ば、バキャじゃねーの?頭撫でんな。あざとい。もーやめて。恥ずか死ぬ。」

 

ぷっ、噛んだ。バキャって(笑)

もー可愛いなー。よしよーし。

ふふっ♪

友達が死ぬ前にやめてあげよう。

あー楽しいなー。

先輩が来るまで、テンション低かったのに。

ありがとうございます、先輩。

 

「よしっ!午後もがんばりますかねー。はちまんせんぱいも目玉競技がんばってくださいね。心の中で応援しますから。葉山先輩に勝ったらまたなでなでしてあげます。」

 

「いらねーよ。お前もケガすんなよ。」

 

 

 

 

 

先輩のおかげでやる気回復。

まぁ、私も目玉競技だけなんだけど。

午後も、そのまま白組優勢。

やっぱり、葉山先輩がすごい。

うん。葉山先輩は目の保養って感じで。

先輩もかっこ悪くないんだけどなー。

優しく笑った時は、ちょっとドキっとするし。

あれ、かっこいいんだけどなぁ。

問題はあの眼だよなぁー。あと猫背。

眼は、私は嫌いじゃないからいいや。

猫背は今度思い切り伸ばしてあげよう。

 

現在の点差は50点。

残すは目玉競技のみ。

 

先に女子の『チバセン』。

その後、男子の『棒倒し』。

 

体育祭の勝ち負けはどーでもいいんだけど。

でも、雪ノ下先輩と結衣先輩に勝つチャンス。

よーし、やる気でてきた。

 

「一色さん、手加減はしないわ。」

「いろはちゃん。負けないよー。」

 

わざわざ2人も声を掛けてくれた。

ふっ、甘いですねー。

 

「大丈夫です。雪ノ下先輩には勝てないし、結衣先輩も他の人が狙いそうなので、私は隠れてがんばりますから。」

 

そう。白組が勝てば、私の勝ちですから。

私は大将騎でもないし。

じゃ、がんばりますかねー。

 

 

 

はい。普通に負けました。

こっちには、三浦先輩もヤンキー川崎先輩もいたのに。

あ、私は隠れてたのに、雪ノ下先輩に普通に負けました。

雪ノ下先輩が強すぎる。

なんなんですかね、あの人。チーターや!

あとは、実況が戸部先輩達なのが悪い。

やる気が損なわれます。マジで。

くそぅ。悔しいですっ!

 

少しへこみながら、退場する。

雪ノ下先輩達は先輩とハイタッチしてる。

むーずるいずるいずるいー。

と思ってたら、すれ違う時に頭をポンっと叩かれ、お疲れさんって言ってくれました。

くっ、あざとい。

気分がよくなったので、大人しく座る。

先輩、がんばってくださいよ。

 

棒倒しが始まる。

実況は、三浦先輩と海老名先輩。

白組大将が葉山先輩。赤組は戸塚先輩。

王様 vs 王子様。

白組は円陣を組んで気合充分。

赤組はあんまりやる気ない。

まぁ、気持ちはわかる。

相手が葉山先輩だもんねー。

そう思っていたら、先輩と話してたざざ虫先輩が声を張り上げた。

 

簡単に言えば、男子の僻み根性そのまま。

ちょっとかわいそうになったけど、きもかったです。

でも、何故かそれで士気の上がった赤組男子。

やっぱ、みんな思ってるの?

 

葉山先輩と先輩が遠目で見つめ合ってる。

葉山先輩は爽やかに笑った。

それを受けて、先輩も少し顔つきが変わった。

やっぱこの2人仲良くない?

なんてゆーかライバル?

 

「せんぱい。がんばれ。」

 

 

 

 

号砲が鳴り響く。

両方から何人か飛び出していく。

歓声や雄叫びが入り混じり、私も少しテンションがあがる。

1番テンション上がってたのは海老名先輩だけど。

やっぱり白組のほうがやる気があるらしい。

先輩は、端のほうを悠々と歩いていく。

白組の陣地まで来ても誰も気づかない。

真ん中付近のざざ虫先輩に気をとられ、誰も先輩をみていない。

見てるのは私と、多分奉仕部の2人。

普段、ステルスとか言ってるけど、馬鹿にできないかもしれない。

と思ったら、先輩は頭に包帯を巻いた。

きたない。さすが、先輩。きたない。

もっと正々堂々と葉山先輩を倒してよー。

まぁ、先輩らしいけど。

 

そのまま先輩が倒して終わりとはならなかった。

葉山先輩はしっかり見ていたらしい。

んー、やっぱりライバル?

聞こえないけど、2人は話してる。

「いろはは、俺がもらう」

「君には渡さない」

んー、イイね。絶対言ってないけど。

そして、先輩が囲まれる。

あー、残念。もう少しだったのに。

と思った瞬間だった。

 

「材木座!」

 

珍しく先輩が叫び、ざざ虫先輩が走り出す。

先輩は、囮だったらしい。

そのまま、勢いをつけたざざ虫先輩は、戸部先輩達をまとめて押しのけ、ポールに突っ込んだ。

少しだけ静かになり、みんながポールを見る。

少し揺れたあとポールが倒れ、歓声が爆発した。

 

凄い…。ホントに勝っちゃった。

作戦考えたの先輩だろーなぁ。

よし、約束通り頭撫でてあげよっ!

なんにしても、先輩もお疲れ様です!

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時期が私にもありました。

体育祭から数日。

片付けや事後処理も無事終了。

今は昼休みのベストプレイス。

 

「あはは。ズルで反則負けって。包帯まで使ったのにー。せんぱいサイコーですね。ぷっ。ふふふ。」

 

あの後、棒倒しは両方に反則があったということでノーゲームになった。

結果、優勝は白組。イェーイ。

奉仕部的には、依頼を半分しか達成できなかったらしいけど、私はすごく、すごく楽しい体育祭だった。

 

やはり、奉仕部の2人も先輩を見ていたらしく、少しだけ小言を言われたらしい。

先輩曰く、誰も見てないと思ってたらしい。

甘いですねー先輩。

私はほとんど先輩を見てましたよ。

 

「でも、作戦もズルもせんぱいらしくてよかったですよ。ついでに反則になるところも。でも、本当に葉山先輩に勝った先輩にはご褒美のなでなででーす。」

 

逃げようとする先輩を捕まえて頭を撫でる。

やめろ、恥ずかしいとか言ってるけど、知りません。

あー、満足。

先輩は恥ずかしいのか、逆を向いてぶつぶついってます。

 

「せんぱい!わたしも運営委員がんばったので頭撫でてください。早く、はい、どうぞ。」

 

先輩は、無理とか言ってるけど、この前も触ったくせにーとか言ったら、恐る恐る私の頭に手を乗せた。

えへへっ、これいーなぁ。

もういい?って聞く先輩にまだっ!って言って、結局10分くらい撫でてもらった。

 

「わたし、せんぱいに頭撫でられるの好きですー。これから毎日なでなでの時間を作りましょう。」

 

マジナイスなアイディアでしょー。

先輩は嫌がってるけど、気にしない。

おねだりに弱いですからね、先輩。

あ、そうだ。

どうしてもしなきゃいけない事があった。

 

「せんぱい。友達になったんだから、番号とアドレス交換しましょー!ラインやってます?」

 

「ほれ、お前がやってくれ。ラインはしない。既読スルーとかお前怒りそうだし。」

 

なんで既読スルーする前提なんですか!

私は自分のと先輩のに登録していく。

先輩の電話帳、少なっ!

ふーん、やっぱ結衣先輩は入ってるんだ。

ぱっと見、結衣先輩ってわかんないけど。

なんて登録しようかなー。

ここは、普通に『いろは(嫁)』にしよう。

私のは、『はちまん先輩』です。

先輩にスマホを返す。

 

「せんぱい。既読スルーしても怒らないんでライン入れましょうよー。連絡しやすいですからー。それにラインなら一言で返信とか普通だから顔文字とかもあんまいりませんよ?」

 

「え?マジ?由比ヶ浜とか一言で返すと超うるさいぞ?」

 

そんな事言いながらスマホをいじる先輩。

むー、私と話してくださいよー。

なんか、ん?とかできた。とか言ってる。

ゲームでもしてんのかな。

先輩が急にコーヒーを吹き出した。

え?なに?

 

「ゲホっ。お、お前なんだ(嫁)って。アホか。」

 

あ、今気付いたんだ。

いーじゃないですか。

結衣先輩のもそのままなんだから。

 

「なぁ、ライン入れたけどどーすりゃいいの?」

 

「せんぱいって可愛いですよね。口ではしないとか言うのに結局するんだから。」

 

「よし、ライン消す「ごめんなさい」

 

先輩のスマホを借りて設定やらをすませる。

ふふ。私しかいない。ちょっと嬉しい。

結衣先輩はガラケーだもんね。

小町ちゃんもガラケーなのかな。

 

「あんまりスマホ見ないから、無視しても怒んなよ?あと既読スルーのときはめんどくさい時だから、連続で送ってくるなよ。」

 

あーはいはいわかりましたー。

先輩がマメなタイプなんて思ってないですから。

これで、先輩が修学旅行に行ってる間も連絡できる。

私も先輩と京都行きたかったなー。

こういう時、同い年じゃないとキツイなー。

 

あと少ししたら先輩は、修学旅行。

文化祭、体育祭、修学旅行。

私も来年は大変だ。

 

 

いい修学旅行になるといーですね、先輩。

 

 

 

 

 

 

 




疲れました。
こんなに長くなるとは…。

修学旅行の前に何か挟むかもしれません。

ありがとうございました。

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