捻くれた先輩   作:超素人

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前話は原作なぞっただけ。

がんばれと、自分にいったところ、こうなりました。

よろしくお願いします。


7.運営委員は辛いです。 中編

 

 

あの後、少ししてから先輩は戻った。

結衣先輩と『THE・青春』みたいな会話してた。

先輩が戻ったあと、ギリギリまで作業してその日は終わりになった。

 

こんな状態で体育祭は大丈夫だろうか。

各部活からきている人達の士気は低い。

また文化祭みたいになるのかな…。

また先輩が…。

ううん。前回は、蚊帳の外だった。

今回は、私も中にいる。

きっと、できることがある。

 

そんな決意をして、家路を歩く。

 

 

次の日。

 

朝練を終えて、昇降口に入る。

なんか戸部先輩が騒いでる。

朝練もあったのに元気だなぁ。

靴箱にゴミを入れられたらしい。

そんな小学生みたいなこと、する人いるんだ。

戸部先輩は、べーべー言いながら、葉山先輩に連れて行かれた。

戸部先輩、どんまいです。

 

授業中は、ずっと考え事。

体育祭運営委員のこと。

私に何ができるのか。

そもそもなんでこんな風になってるんだろう。

 

1番の原因は、間違いなくはるかとゆっこ。

あの人達の呼び捨てももう普通だなぁ。

 

あの人達は、体育祭の邪魔をしたい?

でも、だったら運営委員なんて来ないはず。

そういえば、会議初日のあの2人の言葉。

 

『偉そうに。』『ホントだよねー。』

 

相模先輩が原因?

でも、あの人達は文実のときは一緒だった。

それが、なんで今回敵に?

あの2人は実は真面目組だった?

もしそうなら、先輩の悪い噂なんて流す?

あーダメだ。わかんない。

こうなったら…。

 

「て事でですねー、ヒッキーせんぱい。わたしに何ができるか考えてくれません?」

 

そう。先輩に聞く。

きっと、先輩は裏まで見えてる。

私には見えない事が、見えてる気がする。

 

「待て。全然意味わからん。なに?ついに頭おかしくなった?あとヒッキーせんぱいはやめて。マジで。」

 

「まず、なんで相模先輩とはるかとゆっこはあんな風になってるんですか?文実では、3人とも仲良くサボってたんですよね?なんで今更仲間割れみたいになるんです?」

 

まずは、現状を正しく知ろう。

じゃないと何もできない、と思う。

 

「あー、俺の主観だがいいか?」

 

私は頷いて先を促す。

 

「おそらく1番は、立場の違いだろう。文実のときは3人一緒。なのに、今回は相模は首脳部側。あいつらは現場班。少なくとも対等じゃねぇな。そして、初日からの相模の態度。それらが、相模と首脳部側への反感に繋がってる。」

 

なるほど。

確かに初日の態度とか、あの2人じゃなくてもムカつく。

遅刻してきて、意見は出さない。

そのくせ、周りには意見を促す。

 

「せんぱい。正直わたしは自業自得だと思うし、せんぱいの噂をあんなに広めた相模先輩がこんな風になっていて、いい気味だと思っちゃいます。それでも、せんぱいは相模先輩を見捨てないんですよね?」

 

先輩は少し考える。

先輩はそんなこと思わないのかな。

 

「正直、俺は相模なんかどうでもいい。でも、依頼だからしょうがない。」

 

依頼だから。

だから、投げ捨てない。

相模先輩のためじゃない。

奉仕部にきた依頼を、全うするため。

 

「だったら、わたしが相模先輩なんか放っておいて、普通に体育祭を楽しんで下さいって依頼したら受けてくれますか?」

 

そんなわけない。

きっと先輩は1度受けた依頼を投げ出さない。

文化祭がその証拠だ。

 

「それは……、すまん。」

 

だよね。

自分で言ったくせに、その答えに安心する。

 

「ですよねー。わかってました。だから、依頼じゃなくてこれはお願いです。わたしにも手伝わせてください。せんぱいがまた傷付いたりしないように、わたしにできることをさせてください。ダメですか?」

 

「お前がそこまでする必要はないだろ。ただでさえサッカー部は真面目に仕事してくれてる。それで、充分助かってる。」

 

それは、サッカー部としてだ。

確かに、先輩の助けになればって思った。

でも、そうじゃないんです。

 

「もう、嫌なんです。本当の事を知ってても、噂の否定さえできない。それなのに、噂を聞くと腹が立って、後からせんぱいに全部教えてもらって。確かに、わたしは奉仕部じゃないです。でも、今回は部外者でもないです。見てるだけは、イヤです。」

 

私にできる事があるのかわからない。

これは、私の勝手な押し付けだ。

ウザがられるだけかもしれない。

今回は、そんな事にはならないかもしれない。

でも、またあんな思いをするくらいなら。

 

「はぁ〜。分かった。お前にも頼る。それでいいか?」

 

ごめんなさい、先輩。

ワガママばっかりで。

困らせてばっかりで。

 

「はいっ!!!ありがとうごさいまーす。せんぱい♪」

 

「…はぁ。変なとこで頑固な、お前。」

 

やっぱあざといわ、お前。

そう言って笑う先輩。

久しぶりに見た気がする。

先輩の優しい笑顔。

 

「はちまんせんぱいには言われたくないでーす♪」

 

だから、私も精一杯のあざとさで返す。

私にとっては、まだただの先輩。

だから、先輩にとって、ただのあざとい後輩でいい。

真っ赤な顔を隠すために、そっぽを向いた先輩。

そっちを向いててください。

私も多分、少し顔が赤いので。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

そして、放課後。

あれから、お互い普通に戻るまで無言。

やっと戻った頃には、昼休み残り5分だった。

でも、そんな沈黙が少し心地よかった。

 

よし!今日も運営委員だ。がんばろう。

いくら私がそう思っていても、周りはそうじゃない。

会議の時間なのに、止まらないお喋り。

ほとんどが、2年生なのに。

恥ずかしくないの?

 

相模先輩が進捗状況を聞いても、誰も答えない。

だったら、勝手にしよう。

私が、この人達に合わせる必要はない。

 

「んっ。んっ。あー報告していーですかね?入場ゲート、プラカードの作成は、順調とは言えませんが、少しずつ進んでます。」

 

いーね。一斉に静かになった。

首脳部側も現場班も。

先輩そんな顔しないで下さい。

大丈夫ですから。

当たり前の仕事をしただけですよ?

誰も喋らないなら、もう少し。

 

「あ、応援とかは大丈夫です。葉山先輩から、サッカー部はいつでも手伝うって言ってもらってるので。以上でーす。」

 

あなたたちは、この名前に逆らえないでしょ?

嫌われたくないもんね。

嘘は1つも言ってない。

運営委員をすると決めた時、言ってくれた事だ。

 

「う、うん。わかった。ありがとう。」

 

ようやく、静かになった会議室。

目玉競技の進捗状況。

雪ノ下先輩が報告する。

男子は問題なし。

はるかとゆっこが動いたのは、女子の競技。

さすがの結衣先輩もため息。

先輩、めんどくさいって顔にでてますよ。

で、雪ノ下先輩、怖いです。

口では丁寧な感じなのに。

先輩の言ってた『氷の女王』。

その意味が少しわかった。

 

はるかとゆっこが言った事を簡単にまとめると、

 

『危ない、怪我したくない』

『大会前だから』

 

だって。今さら?

あんたら、普段練習してんじゃないの?

じゃもう体育祭でなきゃいいじゃん。

 

それに周囲の女子が同調する。

所詮、マネージャーの私は何も言えない。

自分が試合にでるわけじゃないから。

結局、何もできないのかな。

 

先輩と目が合うと、先輩が小さく首を振る。

そして、雪ノ下先輩に目線を投げた。

すぐに雪ノ下先輩の手が挙がる。

 

そこからは、凄かった。

今、考え得る対応策。

それを、当然のように述べていく。

あぁ、先輩も信頼するはずだ。

あんな事、私には無理だ。

時間をかければ、思いつくかもしれない。

だけど、この数秒で。

1度も止まることなく、完璧に。

私が、何かしようなんて思い上がりだ。

最初からいらなかったんだ。

キッツイなぁ。

 

あの2人がまだ何か言ってるみたい。

でも、頭が理解しない。

周りが立ち上がる。

終わったのかな。

サッカー部の2人が声をかけてくる。

後から行くとだけ伝える。

2人も何か感じ取ったのか、先に行ってくれた。

 

予想以上にショックを受けてるのかな?

先輩にあんな事を言っておきながら。

結局、心配をかけただけ。

葉山先輩を盾にして、逃げただけ。

そんな事が頭の中をぐるぐる回って。

消えなくて。消せなくて。

そんな時だった。

 

「1年C組の一色いろはさん。で合ってるかしら?」

 

先ほどまで聞いていた声。

なんで私に?

私は、はい。とだけ答える。

 

「少し時間をもらえるかしら?部活のほうは大丈夫?」

 

次は、首肯だけ。

こんな凄い人が、何の用だろう。

先輩に信頼されて、頼られる人。

 

「もしよければ、首脳部側の会議に参加してほしいのだけれど。無理にとは言わないわ。あくまで、一色さんさえよければ。」

 

そこで、ようやく私は顔をあげた。

さっきみたいな冷たい雰囲気はない。

 

「どうして、わたしなんですか?わたしには、なにもできません。」

 

先輩には頼れる貴女がいる。

優しい味方もいる。

私は不要でしょう?

 

「そうね。私としても、お礼を言いたいことはあるわ。けど、それは本人に聞きなさい。」

 

そう言って後ろを向く雪ノ下先輩。

頭を掻いてる先輩がいる。

すぐ後ろにいたんだ。気づかなかったな。

 

「一色。力を貸してほしい。ダメか?」

 

どうして?先輩も見てたでしょ?

私じゃ、何もできないですよ?

私なんか…

 

「一色?ちょっ、お前なんで…。」

 

「あら、話しかけただけで後輩を泣かせるなんて、流石ね?比企谷君。一色さん、大丈夫よ。これでも一応害は…ない、とは言い切れないわね。」

 

泣いてる?わたしが?

そんなこと…。

え?ホントだ。

なんで?ちょっと待って。

人前で泣くとかホントありえない。

 

「おい。まず俺が泣かした前提をやめろ。そして、言い切れ。害はない。」

 

先輩達の夫婦漫才はいいんですよ。

漫才しながら、ハンカチ渡さないで下さい。

私の事、あざといとか言えませんよ?

 

「害はあるじゃない。比企谷菌。」

 

ヒキガヤ菌?

感染力高そうですね?先輩。

てゆーかこの2人、仲良いな。

先輩のハンカチを借りて、涙を拭く。

人前で泣いたのなんて、いつぶりかな。

しかも、気付かないとか。

 

「お前それ、小町もだからな。」

 

また妹さんですか?

ホント、シスコンですね。

 

「あら、小町さんは小町さんでしょう?あなたと一緒にするのは小町さんに失礼よ。」

 

「あの、せんぱいのシスコンは分かりました。とりあえず少しお手洗いに行ってきてもいいですか?化粧とか、ちょっとですね。」

 

雪ノ下先輩が許してくれたので、会議室をでる。

会議室では、先輩がまだ何か言ってる。

 

はぁー、なにやってんだろ。

しかも、なんで泣いたのか自分でもわからない。

トイレの鏡で確認。

幸い、顔はひどくない。

ナチュラルメイクのおかげ。

ただ、まだ少し目が赤い。

あああああぁぁぁ。

恥ずかしい。

 

トイレを出ると、先輩がいた。

いや、なんで?

顔見られたくないとか分かりません?

先輩は、「おう」とか言ってる。

おうじゃないよ、ばか。

 

「大丈夫か?てかどうした?」

 

どうしたんでょうね。

自分でもよくわからない。

何て答えればいいんだろう。

 

「何かあったなら、今日はいいぞ?言えることなら明日聞いてやる。だから、無理はすんな。」

 

「あざとい…。あざといです、せんぱい。大丈夫なので早く戻りましょう。」

 

先輩と一緒に廊下を歩く。

実はこれが初めてだったりする。

ねぇ、先輩。

心配してくれるんですね。

話聞いてくれるんですね。

明日が、あるんですね。

迷惑じゃないですか?

ホントはうっとうしくないですか?

 

「せんぱい?変な事聞いていいですか?」

 

勝手に先輩の力になろうとして。

それができなくて落ち込んで。

訳も分からず、泣いて。

 

「わたしは邪魔じゃないですか?迷惑じゃないですか?」

 

きっと、気を使って頼ってくれて。

先輩の枷にはなりたくないです。

 

「アホかお前。そう思ってる奴と一緒に飯食わねぇよ。」

 

捻くれた答え。

それと同時に、頭に置かれた手。

大きくて、あったかくて。

少し、乱暴に撫でられる。

それが、何故か心地良くて。

ズルいなぁ。

先輩のほうが絶対あざといよ。

 

「えへへ。素直に言っていいんですよー?いろは、隣にいてくれって正直に、ほら?」

 

「おう。明日から別のとこで飯食うわ。」

 

先輩の手が離れる。

まだ少しあったかい。

 

「わー、ごめんなさい。ごめんなさい。」

 

ふふっ。あーあ。

泣いた事なんかどーでもよくなっちゃった。

先輩も恥ずかしい思いすればいい。

先輩の袖を掴んで、こっちを向かせる。

人がいなくて、よかった。

 

「はちまんせんぱい?許して?」

 

顔を真っ赤に染めた先輩は、自分だけ足早に会議室へ戻っていった。

あの顔で戻っちゃうんだ。

結衣先輩に怒られても、知りませんよ?

 

 

 

廊下の窓を開けて、顔を冷ます。

秋の涼しさを肌で感じる。

少し火照った顔にはちょうどいい。

もうちょっとだけ、時間を下さい。

このまま戻ると私も怒られちゃいます。

 

 

 

 

先輩、何ができるかわかんないけど、私がんばります。

 

 




申し訳ありません。

まさかの中編になりました。

僕が、1番予想外です。

読んで頂きありがとうございました。


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